【第2回、第3回の開催が決定しました】

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3カルカル名義で行ったワークショップ、すごかったです。なにがすごいって、参加者のみなさんの開眼っぷりが。開眼というか、もともとそういう気のある人が参加しただけという可能性もぬぐいきれないけれど。

今回のワークショップ、「ワークショップ」とは銘打ちましたが写真の技法には一切何も触れていません。というか、写真技法なんてぼくが教えてもらいたいわ。

そうじゃなくて、「しつこく同じものを見続けると自分の中で不思議なことが起こる」境地にカメラというツールを使うことでてっとりばやく到達して、その感覚を共有したい、という趣旨。つまり、ぼくがデイリーポータルZでやっているようなことをみんなにもやってもらいたかった、ということ。

みんなに撮る「モノ」を決めてもらって、それだけを血眼になって探しながら街を歩いてもらう。で、さいごそれらをスライドショーして、コメントしてもらう、というもの。

ぼくがカメラ雑誌なんかで気に入らないのは、「自分だけの写真」とか「あなたらしさを大事に」とかいう、あれ。これ、要するに「自分探し」じゃん。なんでわざわざカメラ抱えて自分探ししなきゃならんのよ。そんなこというから写真撮れなくなっちゃうんでしょ。カメラ雑誌がわざわざ撮れなくする呪詛吐いてどうする。

自分探すより団地探したほうがいいよ。

courseで、今回のワークショップのルールは、「ずっとひとつのモノだけ撮る」「好きなもの撮るの禁止」「きれいな写真撮るの禁止」などとしました。何撮ったらいいか分からなかったら、ぼくが決めてやる!あるいは人の真似をする。だいたいそういうアイディアレベルのオリジナリティなんてくそくらえなんですよ。とにかく延々撮ってみることだけに意味がある。

「しつこく同じものを見続けると自分の中で不思議なことが起こる」っていうのは延々撮ると、なにかが分かってくるんじゃなくて、どんどん分からなくなるのね。

たとえば今回は住宅入り口の照明撮った方やゴミのカラスよけネット撮った方、タイヤ撮った方、バケツ撮った方、段差解消のステップ撮った方、などなどいらっしゃいましたが、みんなある域越えるとへんなもの撮り出すのね。それはわざと奇をてらってるんじゃなくて、「照明ってなんだろう?」とか「これはバケツといっていいんだろうか?」ってなってくる結果なわけ。これこそやった人だけが至る境地。

よくいるんだけど「ああ、団地ならオレも昔面白いな、って思ってたよ」とか「工場?ああ、まあ撮ったらきれいだよね」とかいうやつが一番ダメ。アイディアには価値ない。しつこく見て、撮った末に上記のような境地に至ったことに価値がある。

「バケツ」っていうものがどういうものかなんて自明だと思っているものだけど、たかだか2時間撮り続けただけで「そもそもバケツとは?」っていう思わぬ形而上の悩みに落ち込むわけですよ。で、そのような事態を前に自分で「バケツの再定義」を行うことになる。そのときどうしようもなく「自分」が表れちゃう。だから最後に発表してもらいたかったわけです。あきらかに通常「バケツ」とは言えないモノを撮ったことを指摘されてなんと言って「言い訳」をするか。それが楽しい。

ちょっとまえにダムの萩原さんに好きなダムがどれかをきいたら、正式なダムの定義上ダムではないもの(高さが低い)ものを答えて、やっぱりなあ、と思ったことがある。つまりずっとダムを追っかけてると「自分の中でのダム」と「正式な定義上のダム」に乖離ができる。そこをどう折り合いを付けるか、それがおもしろい。ぼくだって「団地がなにか」って撮れば撮るほどわからなくなるもの。

あとは発表してもらうと、みんな勝手なネーミングでカテゴリをはじめる。照明撮ってた方の「ヨーロピアン」というネーミングには場内大受けでした。たぶん、これもウケを狙おう、とかそういうことではなく思わずそう言っちゃうなにかがあったはず。で、一緒に同じミッション抱えて巡ったみんなだと、その感覚がよく分かる。だから最後のカルカルでの発表はものすごくエキサイティングでした。エキサイトしすぎてぼくが時間配分を全く忘れてしまって全員分紹介できなかったのは痛恨のきわみ。ほんと申し訳ない。

あと、まったく同じ構図で撮っているのに、ひとりは「室外機」ひとりは「バケツ」ひとりは「照明」で、お互い自分の決めたモノ以外には全く気がついていないのが興味深かった。ほんと、人間がいかに「目に入っても見てない」のかがよく分かった瞬間。でも、こうやってみんなでワークショップやることで、それが分かる。すばらしい。

参加した皆さん、ほんとうにありがとう。たぶんぼくが一番エキサイトしたよ。みんな、すごい。すばらしい。予想をはるかに超えた面白さでした。

あと、「さいごの発表がいやなので参加しません」という方がいらっしゃるようですが、だいたいその「他の人にどう思われるだろう」というプレッシャーを無効にするのがこのワークショップの醍醐味なので、次回はぜひ。参加した人に聞いてみて欲しいな。だれもそういう意味でのプレッシャーは感じなかったはずだし、他の人のものすべてが興味深かったはず。で、それはその人たちがアイディア、技法的に優れているからではないということも。

だいじょうぶ。かりに「つまんない」って思われたとしても、それはあなたのせいじゃなくて、こういうことをやらせたぼくのせい。すべてぼくのせいにして思う存分写真を撮ってください。写真っていうものがいつのまにか「撮影者の個性・能力を表現するもの」になってるけど、それは幻想。人のせいにして撮りましょう。みんなで撮って、みんなで鑑賞すると、その時点で価値が生まれるはず。それをやりたいのです。

また開催させてもらえるのであれば、次回は浅草あたりを舞台にしたいとい思ってます。撮影後、船でお台場のカルカルへ、というコースね。

【参加された方々のエントリ】

さぶかるちゃん : 大山顕 街歩きフォトワークショップ〜全員即席マニアフォトカメラマンになってもらいます写真講座〜に参加してきた - ロスジェネ世代のゆるふわ系サブカルニュース
2009-05-10 - Hippopotimes
大山顕さんの街歩きフォトワークショップに参加してきた - ため日記
大山顕フォトワークショップ at 大森/カルカル - iccw blog // はてな避難所
shigekixさんのアルバム 大山顕 街歩きフォトワークショップ〜全員即席マニアフォトカメラマンになってもらいます写真講座〜 - フォトアルバム・写真共有のlivedoor PICS