All I need is ZOMBIE

目についたものをゾンビに翻案

成長できないゾンビ好きたちが持つ7つの悪習慣

■第一の悪習慣:人のせいにする

自分が楽しめないことを演出や監督、すすめてくれた友人のせいにしてしまう。
自分はいつも犠牲者で、自分の選択に責任がもてない。
「●●はゾンビを分かってない」が口癖。
観たくて観たのに文句を言う。

結果を他人のせいにせず、主体性を発揮して鑑賞することが大切。


■第二の悪習慣:目的を持たないで始める

監督の実績や作品背景を考慮せずに題名だけで選ぶので、スカをよく引く。『デイ・オブ・ザ・デッド2』など。
とりあえず人型のものが爆発したらなんでもいい。
何も考えずただ驚くだけ。何を風刺しているかは分からないし、考えても仕方ない。


■第三の悪習慣:一番大切なことを後回しにする

シネパトス/シアターN渋谷までいくのがめんどくさいと思って旧作DVDをみているうちに劇場公開が終わる。
名画座で再上映しても同じように逃す。

優先順位をつけて、重要事項を優先する必要がある。


■第四の悪習慣:勝ち負けという考え方

「俺は『ゾンビ』のシーン全部覚えてる」等と人と張り合う。
他人より観た本数が少ないとか許せない。
ゾンビ映画大事典の人は別格なので対象外。


■第五の悪習慣:まず自分が話し、それから聞くふりをする

自分の解釈を絶対としてうんちくを語る。「ゾンビは消費者の象徴で…」等
他人のおすすめはとりあえず「グロすぎ」とか「アクションうざい」等のラベルを貼り、実際には観ない。
自分の好きな監督の話なら真面目に聞く。


■第六の悪習慣:頼れるのは自分だけ

しょせん自分は他人と好みが違うのだから、同じように楽しめるはずがない。
妥協して「おもしろかったですぅ」というくらいなら、一人で納得いくまで考えた方がマシだと思っている。
自分が考えるゾンビだけに興味があるし、出来るだけ周りとは関わり合いたくない。


■第七の悪習慣:自分をすり減らす

ゾンビ映画で徹夜する。
L4D2で徹夜する。
デッドライジング2が出たらたぶん徹夜する。


■参考文献
成功できない人たちが持つ7つの悪習慣
成長しないプログラマーの7つの悪習慣

NARAYAMA節考(後編)

第九回文学フリマ 「bnkr」 (J-1 ブース)
bnkr宣伝ブログ
『フリー』を読んで影響を受けたので全文公開。
読んでいただいて興味が沸いたら是非ブースまで足をお運びください。

前編こちら 
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 おソナは『耳』を閉じていたので『聴いて』いた訳ではなかったが、卯平が引きずるようにして連れてきたそら吉が、耳から血を流しているのを見てすべてを察した。
 そら吉は一言もしゃべらなかった。声をかけても返事をしない。うつろな目をしたまま黙っている。次男もただならぬ様子を察してみんなの顔を盗み見ている。
 聞こえていないわけではない。おソナは知っていた。『根っこの耳』はあれくらいのキズでは何もならない。ただそら吉は聞きたくないのだ。
 外では子供たちが楽しそうに唄いながら歩いていた。
 
 お姥捨てるか裏山へ
    裏じゃ蟹でも這ってくる
 
 よっぱらった男たちも加わっているようだ。
 
 這ってきたとて戸で入れぬ
    蟹は夜泣くとりじゃない
 
 おソナが嫁いできたときには、もう老人や病人は楢山に行っていたが、昔は年寄りや病人を裏山に捨てていたらしい。
 あるとき、老婆を捨てたところ這って帰ってきてしまったが、その家の者たちは
「這ってきた、這ってきた、蟹のようだ」
 と騒いで戸をぴったりと締めて中へ入れなかったところ、家の中では小さい子がほんとうに蟹が這ってきたと思い込んだ。
 老婆は一晩中戸の外で泣いていたのだが、それを聞いた子供が「蟹が泣いている」と云ったのを、家の者が「蟹じゃないよ。蟹は夜泣いたりしないよ、あれはとりが啼いているんだよ」と子供に云ってごまかした。蟹の歌はそれを唄っているのである。
 捨てられた後に戻ってくるだなんて、自分だったらそんなバカなことはしない、とおソナは思った。しかし、一回り縮んだようなそら吉を見ると、置いて楢山まいりをするのはなんとも心残りになるだろう、とも思った。
 

 
「楢山さまに謝るぞ!」
 不意に声があがった。
「楢山さまに謝るぞ!」
 そう叫びながら、村人たちがあちこちで騒ぎ始めた。
 おソナははじかれたように立ち上がり、棒を手に取った。花やんは転がるようにして外に駆けだしている。
「どこだ?」おソナは目を閉じて心を静かにした。『根っこの耳』。村の真ん中の祭り場に引きずり出されているものがいる。人数、泣き声。村人のささやき声。
 盗人は雨屋の亭主だった。祭りの隙をついてとなりの焼松の畑に忍び込んで芋を掘り出そうとしたのを見つかったのである。
 食料を盗むことは村ではこれ以上ない罪だった。よってたかって袋だたきにあった上で、その家の食料を奪い取ってみんなで分けてしまうのである。これを『楢山さまに謝る』といった。
 賊が抵抗を続けていたら戦わなければならないから、分配を貰う人は喧嘩支度でなるべく早く駆けつけなければならない。裸足で駆けつけるのが習わしで、履き物を履いているような悠長なことをしていると、その人も袋だたきに合っても文句はいえない。だから駆けつけるほうも死にものぐるいである。
 おソナが振り返るとそら吉はうつむいていて、卯平は心配そうに付き添っていた。花やんはもう祭り場に向かっている。仕方がないからおソナもいくことにした。
 
 村の祭り場にいくと、すっかり顔の形が変わった雨屋の亭主が転がされていた。足腰も立たないほどにぐったりしている。
 その横には家族も全員引き出されていた。逃げ出せないようにしばりあげられていて、どうすることもできずにわあわあ泣いている。
「雨屋のありゃあ血筋だら。うち中のやつらをねだやしにしなけりゃ夜もねられんぞ」
 雨屋の家族は十二人である。手間になるな、という声もあがっている。
「祭りのときに盗るだもん。えらいもんだら。どっかに穴ほってまとめていけるしかねぇぞ」
 一番激昂していたのは、焼松の賽吉のせがれだった。苦労して作っている芋を掘られたのだから、怒りもひとしおである。
「まえもやってただか。なあ。そらつかうなや。まえもおらんとこの畑から盗ってただか!」
 そらつかうとはしらばっくれるという意味だ。雨屋の亭主は頭から血を流して動かず、息も浅くなってきている。そのうちにいびきをかきはじめて、いよいよ焼松のせがれが切れた。
「何にょう寝てるだ!」蹴りを入れる。しかし、水が入った袋のようにぐにゃりとしたまま、起きる様子はない。
「この! この!」と蹴りを入れ続け、みんな止めに入ろうとしたところで、いびきが止まった。
「おい……」と焼松のせがれが声をかけると、それまでぐったりしていたのが嘘のように、すっと雨屋の亭主が起き上がった。
 おどろいて後ずさった焼松のせがれを見る目は、暗く濁っていた。
「おめェ……」なんだ、その目は、といおうとしたのだろう、その前に突然雨屋の亭主は自分の家族のほうを振り向いた。しばりあげられた子供が
「おっ父ぅ……」と声をかける。雨屋の亭主はその子供におおいかぶさった。
 すさまじい悲鳴。
 おソナは目を見張った。かみついている。ふざけているのではない。首から、顔から、赤いものがあふれている。雨屋の亭主の口からも。子供を喰っているのである。
「な、な、な……!」こうなると怒っていた焼松のせがれも慌ててしまう。周囲の村人も呆然と見守っていたが、家族の大半が血を流してぐったりしているのを見て、さすがに止めねばならぬと棒を手にしたまま駆け寄ろうとした。すると、
「ぞぅなぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」
 雨屋の亭主は何匹もの野良猫が喧嘩しているようなおぞましい声でわめいた。
 次の瞬間。
 すさまじい豪雨が村のみんなを叩いた。伸ばした手の先も見えないような激しい雨。
 雲もなかったのに、という言葉が自分の耳にも入らない。いつのまにか雨雲があったのだ。そして雨雲は雨屋の亭主の身体から出ている。こんなことが。いままで雨屋のくせして雨も降らせられんと小馬鹿にされていたのに。
 村人はみな腰を抜かしてしまって、動くことすらできなかった。前が見えないどころか、鼻や口に雨が流れ込んで息も苦しいような雨である。
 目も耳も鼻も口も雨でふさがれている中で、おソナは『聴いた』。雨屋の亭主の音が消えている。生きていれば、人間はさまざまな音がする。筋肉がのびたり縮んだりする音、骨がきしむ音、血が身体の中を流れる音。
 あんなにすさまじい声で叫んでいるにも関わらず、何も聞こえてこないのである。
 間違いなく、何か恐ろしいことが起きていた。村の中で死ぬことを禁じる掟、裏山から蟹のようになって戻ってきた老婆。戻ってきた老婆を家に入れなかった理由は、一度捨てたからではなかったのではないか。
 止めなければならない。しかし、この前も見えない豪雨の中では誰も何もできないだろう。『根っこの耳』があれば何とかできる。しかしおソナでは身体が動かない。おソナは声のかぎり叫んだ。
「そらァ! 来てくりょう! そらァ!」
 

 
 卯平とそら吉は顔を上げた。すさまじいまでの雨である。屋根からも水がしたたってきた。こんな雨は聞いたこともない。
 卯平はおろおろと外に出ようかどうか迷っている様子だった。おソナと花やんが心配なのだろう。
 どうどうとすべてが震えているなか、そら吉は『聴いた』。
「そらァ! 来てくりょう! そらァ!」
 おソナの声だ。不思議なことに耳を潰した今だからこそ、からだの芯で『聴く』ことができた。
 ほんとうに危険な状況であること、心の底から自分を必要としていること。
 卯平が自分を追い回すときによく使うしんばり棒が、戸の横にたてかけてある。それをつかんで、うろたえる卯平を置いて外に駆けだした。
 目の前も見えないような豪雨。まるで川の中にいるようだ。
 そら吉はおソナの声がした方向に走った。村の祭り場だ。道はぬかるんでいて足を取られる。転んだ。立ち上がり、また転んだ。泥にまみれて雨で洗い流される。また泥にまみれる。服を着ているかどうかさえ分からなくなってきた。そら吉ははいつくばるようにして祭り場に急いだ。
 

 
「…………」
 雨屋の亭主がぷつりと叫ぶのを止めた。
 末やんが火を燃したかまどのように、もうもうとたちこめていた黒い雲も勢いが弱まっている。
 ずずっ、と足をひきずる音を、おソナは『聴いた』。
 脚をひきずって、一番近くにいる焼松のせがれのもとに歩いている。喰う気だ。おソナ以外の村人はまだ気づいてさえいない。危ない。声を出しても雨音で打ち消されてしまう。
 もう目の前だ、というところで、祭り場にそら吉が入ってきた。手と膝をついて、獣が這うようにしている。しかし、棒はしっかりと握りしめている。
「そら!」
 何も伝える必要は無かった。ただ名前だけを呼んだ。届かないとは分かっていても、祭り場にいる村人に、自分の孫がそら吉が来たと伝えたかった。
 

 
 そら吉は世界の音が自分の中に流れ込んでくるのを感じた。
 『聴く』ときには耳だけをすませるのではない。全身の毛穴を開いて空気に溶け込ませて、体中の血肉をふるわせるようにするのだ。それがよく分かった。
 雨が、地面を家を人を叩く音が満ちてくる。その中にある、脚を引きずる音。雨屋の亭主だ。焼松のせがれがようやく気がついて悲鳴を上げる。そら吉はつっぱり棒を握り締めて、悲鳴の方向に急いだ。這うようにだ。雨屋の亭主は、焼松のせがれにつかみかかろうとしている。ダメだ。間に合わない、と思ったところに、閃光が差した。
「せがれ!」焼松の賽吉だった。いつもは閉じている眼から、夏の日差しのような強い光を出している。照らされた雨屋の亭主が一瞬ひるんだ。
 今。間に合う。そら吉は雨屋の亭主の音を『聴いた』。薄気味悪いくらいに音が無い身体の中で、ひとつだけ耳障りな音を出しているところがあった。棒を振り回して自分を追う卯平のことを思い出す。大きく振りかぶった。
「こんボケがァ!!」
 おもいきり振り切った。土に深くめりこむような感触。そら吉のしんばり棒は、雨屋の亭主の額から顔に埋まり込んでいた。
 雨屋の亭主は顔からしんばり棒を生やしてしばらく立ち尽くしていたが、そのまま崩れ落ちた。腰を抜かしたせがれに賽吉がすがりつく。そら吉は震える身体を抑えつけながら、倒れた雨屋の亭主を見ていた。
 いつのまにか、雨は止んでいた。
 

 
 卯平が背負う板の上で、おソナは白み始めた空を見ていた。
 楢山まいりの、途中である。
 
 雨屋の亭主をしとめたそら吉は、村で尊敬を集めた。末やんはしきりに根っこの家に戻ってきたがったのだが、そら吉はすっぱりと断った。
 おソナはそんなそら吉を見て心おきなく山へ行けると思った。しかし冬への備えや花やんの手伝いをしているうちに日は経っていき、ついに子供達が
「雪ばんばァが舞ってきた」と騒ぐのを聞いて、山へ行くことに決めた。これが昨日のことだった。
 雪ばんばァとは白くて小さい虫のことで、この虫が舞うとまもなく雪が降るといわれている。
 楢山にゆくには良い時期だった。おソナは卯平や花やんに手伝ってもらって村人に振る舞いをした後、明け方に卯平と一緒に村を出たのだった。
 卯平は相当渋っていたが、業を煮やしたおソナが
「おれがいて冬が越せるだか」
 と問い詰めたらうつむいてしまった。卯平も、花やんも黙っていることしかできない。
「越せねェよ。いっちまえ、ばばあ」
 そら吉だった。卯平が声を荒げた。
「バカヤロー! そら! おめ、何…」
「ええだよ、卯平」おソナが卯平をさえぎった。
「おめェもいるだで、おれは何んも心配しとらんよ。あとは頼んだで、そら吉」
 そうして、おソナは卯平に背負われて村を出てきたのだった。
 
 楢山へは四つの山をこえていかねばならない。最初から三つまでは、こえるといっても裾をまわって間をくぐりぬけていくのである。今、三つめの山の裾を回って、四つ目の山にとりついたところであった。四つ目の山は上へと登らなければならない。かなり高い山で、頂上に近づくにつれて険しくなってくる。卯平が少し息を切らせた。
 頂上につくと、向こうに楢山がみえた。間には深い谷があり、楢山へ行くには頂上から少し降りて尾根づたいのような道を進むのである。
 谷は四つの山に囲まれて地獄まで続くかのように深く、底のほうは見えなかった。足場は狭く、しっかりと歩かないと踏み外していきそうになる。卯平は一歩一歩、踏みしめるようにして歩いた。なるほどな、とおソナは思った。雨屋の亭主のようによみがえったとしても、きっとここで足を滑らせて谷底に落ちてしまうだろう。だからこそ、村は安全に守られている。自分があんなことになっても、間違いなく谷底に落ちていきたい、とおソナは思った。
 

 
 卯平は一歩ずつ歩いているうちにだんだんと頭の中が空っぽになってきて、楢山に住むという神の召使いになったような気がしてきた。
 ふいに気がつくと、卯平は楢山のふもとまで来ていた。周囲は楢の木ばかりである。
 卯平は楢山に来てしまったので、いよいよ口をきくことはできないぞ、と決心した。楢山では神様に失礼になるからと、一言も口をきかないのが掟だった。おソナは家を出たときから一言も話をしていない。話しかけても返事をしないのだ。
 また、一歩ずつ歩き始めた。この一歩が何につながるのか考えないようにして歩いた。登っても登っても、周囲は楢の木ばかりである。木々に宿る楢山の神様に、登れ登れと急かされているような気持ちになって登り続けた。
 足下に白い枝のようなものが転がっているのを避けた。よく見てみるとそれは人の骨だった。顔を上げると、そこは禿げ山のようになっていて、一面に骨があった。まるで雪が降ったかのように周囲が白くなるくらいである。
 卯平は白骨を避けて歩こうとしたが、目がちらちらしてつまずきそうになってしまった。「この中には、生前自分が見知った人もいたはずだ」と思うと、なんともいえない気持ちになった。注意深く避けて歩いていると、白骨のない岩陰があった。そこまで来ると、おソナは卯平の肩を叩いて、足をバタバタさせた。背板から降ろせと催促しているのである。おソナは卯平が下ろした背板から飛び降りて、腰に当てていた筵を広げた。それから腰につけていた包みを背板に結びつけようとする。卯平は目をむいて怒ったような顔をして、包みをおソナに押しつけた。包みの中には、白萩様のむすびがいくつか入っている。おソナはそのうちの一つを取り出して、筵の上に置き、包みにある残りをもう一度背板に結びつけようとした。卯平が背板を奪い取るようにして引き寄せると、あきらめたように包みを筵の上に置いた。
 おソナは足を肩幅に開いて筵の上に立った。両手を握って胸に当てて、口を真一文字に結んで下を見ている。笑ったときに細くなる目ははっきりと見開かれていて、いつも薄赤く染まっていた顔は土気色に変わっていた。卯平はおソナの顔つきが家にいたときとはまるで違い、くっきりと死人の相が現れていることに気がついた。
 おソナは手を伸ばして卯平の手を握った。そして、卯平の身体を今来た方向に向かせた。卯平の手を堅く握りしめた手は、しかし少し震えていた。それからおもいきったように卯平の背中をどーんと押した。
 卯平はつんのめるようにして歩き始めた。一度も振り返ってはならない、というのが楢山まいりの掟であった。
 十歩ほど歩いて、卯平はふいにおソナの乗っていない背中の板の軽さに気がついた。そうすると耐えることができず、涙がぽろぽろとこぼれた。涙で前が見えないので骨にけつまずいた。そのまま酔っぱらいのようにふらふらと山を降りた。
 
 楢山の中程まで降りてきたときだった。卯平の目の前に白いものが舞ったのである。立ち止まって目の前を見つめると、楢の木々の間を白い粉が舞っている。
 雪だった。
 空を見上げると雪はどんどんと勢いをつけて降ってきていた。
 卯平は引き返してもう一度山を登り始めた。掟も誓いも、すべて吹き飛んでしまった。いつもおソナが望んでいたように、楢山まいりのときに雪が降ってきたのである。おソナに知らせたかった。知らせたかったというよりも、雪が降ってきた! とただ伝えたかった。おっ母ァは運がよいで、ほんとうに雪が降っただなあ! と一言伝えたかったのである。最初に来たときには重かった足取りが嘘のように、卯平は猿のようにぐんぐんと山を登っていった。
 
 おソナを降ろした岩の側まで来ると、雪はもう地面を白く隠していた。卯平は岩のかげからおソナの様子をうかがった。振り返るな、という掟を破るどころか、口まできこうというのだ。神をないがしろにしたと村を追われても文句はいえない。しかし、卯平はどうしてもおソナに伝えたかったのである。
目の前におソナが座っていた。背中から前に筵を負うようにして雪をふせいでいるが、前髪にも、胸にもひざにも雪がつもり始めている。それでも地蔵のように身じろぎもせず、一点を見つめて念仏を唱えていた。
「おっ母ァ、雪が降ってきたよう」
 おソナはだまって手を出して卯平のほうへ振った。帰れ、といっているようだった。
「おっ母ァ、寒いだろうなあ」
 おソナはやはりだまったまま、顔を何度も横に振った。
「おっ母ァ、運がいいなあ、ほんとに山に行く日に雪が」
 卯平はそう言いかけてから、節をつけて歌を唄った。
 
 根っこのおソナさん運がよい
    山へ行く日にゃ雪が降る
 
 おソナは顔を上下に振ってうなづきながら、もう一度手を出して卯平のほうへ振った。帰れ帰れ。卯平はうなづいて、もう一度だけ大きな声で唄って、転がるようにして山を降りていった。
 

 
 おソナは降り積もる雪が周囲の音を吸い取っていくのを感じた。
 こんなに音がないのは生まれて初めてだった。自分の唱える念仏だけが、ぽつんと取り残されている。
 村では人々がたてる音がうるさいと思うことも多かったが、こうなると寂しくもある。
 そう思っていたときに、不意に聞き慣れた声がした。節をつけて、唄っている。そら吉の声だった。さすがのおソナもここから村の音を『聴く』ことはできない。途中までそら吉はついてきていたに違いない。そして、卯平の替え歌を『聴いた』のだ。そら吉はおソナにだけ聴こえるように、ささやくように唄っていた。
 ありがとよ。声には出さなかったが、それでそら吉の歌も止んだ。おソナは念仏を唱えるのを止めて、自分でも唄ってみた。
 
 根っこのおソナさん運がよい
    山へ行く日にゃ雪が降る
 
【参考文献】
深沢七郎「楢山節考」(新潮社)
アラン・ムーア「TOP10」(ヴィレッジ・ブックス)
Robert Kirkman「MARVEL ZOMBIES」(marvel comics)
ナカゴー「超能力学園Z」 (演劇)

NARAYAMA節考(前編)

2009年12月6日(日)11:00〜終了16:00(予定)
第九回文学フリマに参加します。
「bnkr」 (J-1 ブース)
bnkr宣伝ブログ
 
『フリー』を読んで影響を受けたので全文ネットに上げます。文字数制限のため、二つに分割。
当日は他の人が書いたのも含めて綺麗にレイアウトしてもらったやつを印刷して売ります。当たり前だけどレイアウトすると全然違うんですよ。
短編小説7本、著作権フリーのプロット100個で500円です。
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 おソナの悩みはもうすぐ七十になるのに、歯が一本も欠けていないことだった。
「おめえの歯じゃァ、どんなもんでも困らんなァ、松っかさでも石っころでもあますところはねぇら」
 雨屋の亭主が前歯のない口を大きく開けて笑う。この禿頭め。おソナは顔をしかめた。確かに、おソナのぎっしり揃った歯は、いかにも食うことにひけをとらないようで、食料が乏しいこの村では恥ずかしいことだった。しかし言い方というものがある。二十年前におソナのつれそいが死んだときに何度か言い寄ってきたのを袖にしてから、今のようにいやらしくからんでくる。
 おソナは何とか歯を欠けるようにと、密かに火打ち石を歯に打ちつけることまでしていた。しかし、歯は憎らしいくらいに丈夫で、相変わらず一本も欠けていなかった。
「おっ母ァ、何んでも、じょうぶなのが一番ええだよ」
 そういって微笑む卯平の歯のほうが、何本か欠けてきている。卯平はおソナとつれあいの間にできた一人息子で、今年四十五になる。嫁を貰って子供を四人こさえたが、その嫁も先日死んだ。おソナは四人の孫の世話よりも、卯平の後妻を心配していた。少し前に山をひとつ越えた村で後家ができたと飛脚から聞いたので、その家に言付けを頼んだ。今は返事を待っている。
 
 楢山祭りが三度来りゃよ
    栗の種から花が咲く
 
 焼松の賽吉が村に伝わる盆踊りの唄を口ずさんだ。片目を閉じながら、唄にあわせてするすると縄をよっていく。この唄は三年経ったら三つ歳を取ると言う意味だ。老人にそれだけ楢山まいりが近づいてくるということを知らせる意味もある。
 卯平がはっとした目でおソナを見た。おソナが山に入るとすると、付き添いをするのは卯平の役割になる。卯平も気に掛けていたのだ。
「やっぱりせがれはやさしいやつだ」
 とおソナは目頭が熱くなった。
 
 塩屋のおとりさん運がよい
    山へ行く日にゃ雪が降る
 
 おソナが口ずさんだ。この村では「山へ行く」ということばに二つの意味がある。仕事で薪取りや炭焼きで山を登るのが一つ、もう一つは楢山にいくことだ。発音もアクセントも同じだが、この村のもので意味を取り違えるものはいない。塩屋のおとりさんは何代か前に村に居た人だ。楢山は四つの山を越えていく遠いところにある山で、雪の中を行くのであれば大変なことである。だが、おとりさんの場合は楢山に着いてから雪が降り出したのだから理想的だった。それで、運が良い人の代名詞としてずっと語り継がれているのだ。おソナはその歌を唄って、自分は気にしていない、と卯平に伝えたつもりだった。おソナは行くときの振舞酒も、山に行って座る筵も、三年前から準備を進めている。七十になった正月にはすぐに行くつもりだった。
 

 
 おソナたちは村の社に集まって、もうすぐ始まる年に一度の祭りの準備をしていた。飾る布の繕いや〆縄をよったりするのだ。おソナたちの村は信州にほど近い、駿河の山々の間にある。土地は痩せていて、かろうじて芋やひえが採れる程度だ。それだけでは足りないので、山に入って栗や獣を採ってくる。もちろん、危険である。卯平の嫁は栗を拾いに行ったときに足を滑らせて谷底に落ちて死んだ。貧しい村であるから、いつもであればこんなにのんびりとしてはいられないのだが、祭りも近いし雨も降っているしということで、皆で休んでいるのである。のんびりと手を動かしていると、社のすぐそばで大きな声がした。
 
 おらんのおばあやん納戸の隅で
    鬼の歯を三十三本揃えた
 
 おソナの孫のそら吉だ。雨屋の亭主と焼松の賽吉が顔を見合わせる。この歌は村の一番ふざけた歌をさらにそら吉が作り替えたのである。うちの母親は納戸の隅で秘密のところの毛を三十三本そろえたという母親を侮辱する歌がある。そら吉がそれを鬼の歯と替えておソナをバカにしているのである。
 卯平が立ち上がろうとすると、そら吉が子供たちを率いて飛び込んできた。
「じじいども、なにをしてるだ!」
 雨にぬれてびしょびしょである。せっかくよった縄がしめってしまわないように、みんな胸元にかき抱いた。
「〆縄なんぞ、いらねェじゃねェか。くさくさしとらんと、てめェのガキの面倒でもみやがれ。俺にくっついてきてうるさくてしょうがねェ」
「そら!」
 卯平が怒鳴った。
「バカヤロー! めし食わさねえぞ!」
 『めしを食わせない』は村ではありふれた悪態である。言われ慣れてもいるから、そら吉はこたえない。
「知るかボケェ!」
 卯平が立ち上がって追いかけると、そら吉は子供たちと一緒に社を駆け回ってそのまま外に飛び出していってしまった。おいかけようとする卯平を
「卯平!」おソナが呼び止めた。「もうええら。あのガキどもに追いつくのは無理だら。足ばっかり早いだから」と言って、
「わりぃなぁや。うちのガキが」とみんなに謝った。
 みなもそら吉の憎まれ口には慣れているし、子供のやることだから「ええよぅええよぅ」と笑っている。
「あらァ」雨屋の亭主がいった。「針をどっかにやっちまった。どうしようかのう」
 おソナはまたかと思った。そら吉のせいで針を無くしたといって、おソナを困らせる気なのである。
「じゃァ、探さねェとだら。踏んでケガしてもつまらねェで、みな動くじゃねえぞ」焼松の賽吉がいって、閉じていたほうの片目を開けた。
 雨で薄暗い中、真夏の日差しのような強い光が社の中を照らした。この村には、『焼松』のように不思議なことができる家系がいくつかある。
 『焼松』の由来は家の庭にある炭になった松だ。賽吉の家系にはときどき見たものを燃やすことができる子供が生まれてくる。うかつに目が開けると火事になるが、閉じっぱなしも目を病むということで、目の使い方に慣れるまで庭の松を見せるのだ。それで庭の松は何代にも渡って焼き尽くされて炭になっていた。若い頃の賽吉は鉄も溶かせるくらいにその力が強く、十年くらい前まではそれで鍛冶屋をやっていたが、数年前から力が衰えて夜道を照らすくらいにしか役に立たなくなった。それでも賽吉は「ようやく嫁の顔を両目で見られた」と嬉しそうにしている。
「光らんなァ。奥に入っちまっただら。おソナちゃん、やってみるかや」
 おソナがうなづくのを見て、卯平がばん、と床を叩いた。おソナが耳をすます。
 おソナの内側が音で満ちた。おソナがその気になれば、村中のどこで鳴った音でも聴き取ることができる。『焼松』のように、おソナの家系にもときどき並外れて耳のよい子供が生まれるのだ。木の根が水を吸い込む音も聴けるということで、『根っこ』と呼ばれていた。卯平にはできなかったが、そら吉には同じ『根っこ』の耳が受け継がれている。ただ、そら吉はそれが気に入らないようで、何かと反発してくる。
 ばん、ばん。卯平が床を鳴らすが、針が震える音は聞き取ることができなかった。やはり雨屋の嘘なのだ、とおソナは思ったところに
「あァあァ」と雨屋の亭主が声を上げた。「ごめんけやァ。わしの勘違いだったみてえで」
 やれやれ、とおソナはため息をつき、賽吉も顔をしかめた。
 

 
 きりもよいことだし、ということで、みんな家に戻ることにした。
「雨屋がちゃんとすりゃアなあ」賽吉がつぶやく。金具が痛む雨が嫌いなのだ。
 『雨屋』は社の近くに住んでいて、雨を降ったり止ませたりする子供が生まれる家系である。昔は村中から重宝されて下にも置かれぬ扱いを受けていたのだが、何代か前から血の濃い子供が生まれず、村人からは疎まれていた。もともと他にとりえのある家系でもなかったので、先代の亭主はくらしに困って盗みを働き、よりいっそう軽蔑されている。それで今の亭主の性格も暗くなり、隣村から嫁いできたつれあいにも逃げられていた。
 その雨屋の近くを通ったとき、不意に中から歌が聞こえてきた。
 
 ねっこのおソナやん納戸の隅で
    鬼の歯を三十三本揃えた
 
 鬼の歯の歌は去年そら吉が唄い始めたのだが、その頃には名前は入っていなかった。今年からは堂々と名指しで歌われ始めたということだ。
「この野郎」卯平がさっと身を翻すと、止めようとする亭主に構わず、まっすぐに雨屋の家の中に入っていった。土間に雨屋のせがれたちが座っていたので、土間の土の上にぴったりと座り込んでしまった。
「さあ、おまえら、うちへ来い。そいで、おらんのおばあやんの歯が何本あるか勘定したらええ」
 日頃無口な卯平が土間に座り込んでしまったのだから、雨屋の一同はすっかりあわててしまった。雨屋の亭主が困り果てたようにして間に入った。
「あれ、そんなつもりじゃァねえよ、卯平やんのとこのそらやんがおらたちの子供に教えてるで、そんなことを云われても困るらに」
 卯平は亭主をにらみつけながら、さっと立ち上がって外に駆けだしていく。
「卯平! わしゃ平気だで、ほっときゃええら!」
 引き留めようとするおソナにもかまわず、家の方向に走った。外は暗くなってきているし、もうすぐめし時だ。きっと家の中でぐだぐたしているだろう。
 割れんばかりの勢いで戸を開けると、やはり中で寝っ転がっていたそら吉が顔をはっと上げた。
「そら! おばあやんの歯が鬼の歯か! てめえは、おばあやんに、あんねん可愛がってもらって、でかくしたのに、てめえは、てめえは!」
 戸の近くにたてかけてあったしんばり棒を手に取り、恐怖にこわばった次男の横を通って、卯平はそら吉に躍りかかった。だがやみくもに棒を振り回すだけなので、なかなか当たらない。そら吉は足を踏みしめる音や関節が立てる音で卯平がどう振るか分かるから、当たるはずもないのだ。棒はことごとく空を切り、卯平の息が切れた。それを見計らって、そら吉はとーんと床を蹴って少し離れたところから平気な顔でこちらを見ている。
「バカ野郎! めしを食わせねえぞ!」と卯平は怒鳴った。
 そら吉は舌こそ出さなかったものの、憎らしくにやにやしたまま家の外に逃げていった。
 

 
 その晩のめし時になった。家族みんなが膳の前に座った頃、そら吉は外からすたすたと入って来て何食わぬ顔をして自分も膳の前に座った。
 卯平は先ほど怒鳴った威勢がすっかり消えてしまった。おソナの前で唄のことを話題に出したくなかった。既に知っていることでだが、あらためて話題に出してもおソナが傷つくだけだ。
 そのうちにみんな飯をよそって食べ始めた。飯といってもトウモロコシの粉をまるめた団子と菜っ葉を煮込んだ汁であるから、食べるというよりすするのである。
 最近はそら吉が憎まれ口ばかり叩くために食事中にもろくに会話がなかったが、今日は卯平もだまりこんでいるためひときわ重い空気になった。その空気を振り払うようにおソナがいった。
「そのうちに向こう村からおっ母あが来るかも知れんぞ」
 弾むような口調で、孫達にうれしいことを知らせるように言った。卯平もほっとした様子で、
「まだ一と月しかたたんが、早く来れば、おばあもめしの支度がらくになるら」
 と相槌をうつように喜んだ。するとそら吉が、
「ちょっと待ってくれ」
 と卯平の云うことを制するように手を上げた。それからおソナに顔を向けて、
「向こう村からおっ母ァなん来なくてもいいぞ!」
 と怒鳴った。つづけて卯平を見て、
「俺が嫁をもらうから後釜なんぞいらんぞ」
 とにらみつけた。それからまた、おソナの方を向いて言った。
「めしのことがめんどうなら俺の嫁にさせるから黙っていろ」
 おソナはかっとなって、持っていた二本の箸をそら吉の顔のまん中に投げつけた。
「バカヤロー、めしを食うな!」
 そうすると十三になる孫がおソナに加勢するように、
「そらあんやんは池の前の末やんを貰うのだぞ」
 と言った。次男はそら吉が池の前の末やんと仲がよいことを知っていたのである。
「ボケェ! 黙ってろ!」
 そら吉は次男の顔の真ん中を平手で叩いてにらみつけた。
 卯平も驚いたようで何も云わずにだまっていた。そら吉の嫁などということは考えたこともなかった。この村では晩婚で二十歳前では嫁など貰う人はないくらいだった。それにそら吉の度胸のよい反対にあって圧倒されてしまったのである。
 歌にもこうある。
 
 三十すぎてもおそくはねえぞ
    一人ふえれば倍になる
 
 この歌は晩婚を奨励した歌だ。倍になるということはそれだけ食料が不足するということで、だからおソナも卯平もそら吉の嫁などとは夢にも考えてはいなかった。
 村を流れているチョロチョロ川は途中で池のようにたまりになっているところがあって、その前にある家を池の前と呼んでいた。その家の末やんという女の子はおソナもよく知っている。おソナは一旦そら吉をあんな風に怒鳴ったけれども、これこそ物わかりの悪い年寄りのあさましいことに違いないのだと悔やんでいた。ふと気がつくと、末やんもそら吉も身体はしっかりしてきているから、男女の仲になってもおかしくはないのだ。あんまり突然にあんな風な云い方をされたのでびっくりして怒ってしまったが、そこまで察していなかったことに申し訳ないとさえ思いはじめてきたのである。
 しかし、そら吉はもう膳の所から立ってどこかへ行ってしまった後だった。
 

 
 次の日、おソナは家の前の切株に誰かが腰を下ろしたのを『聴いた』。おかしいな、と思ったのは、すぐ横に大きな包みも下ろしたからだ。村のもので遠出をするものがいるとは聞いていない。それでもしやと思って顔を出すと、肉づきのよい女が腰を下ろして息を整えていた。
「どこのひとだか知らんがこん村に知り合いでもおるのけえ?」
 女はゆっくり顔を上げて、
「卯平やんのうちはここずら」
 おソナはやっぱり嫁だと思った。
「あんたは向う村から来たずら、花やんじゃねえけ?」
「ええ、そうでよ、飛脚が回るのがずっと先だで、返事より先に今日きやした」
 おソナは花やんの袖をひっぱりながら、
「そうけえ、さあさあ早く入らんけえ」
 おソナは浮き浮きしながら走りまわってお膳を出してお客用の御馳走を並べた。
「さあ食べておくれ、いま卯平をむかえに行ってくるから」
 花やんは食べながら話し始めた。
「おばあやんがいい人だから、早く行け、早く行けとみんなが云うもんだから」
 うまそうに食べている花やんを、おソナはにこやかに眺めていた。
「こないだ来たのがわしの兄貴でねえ、おばあやんはいい人だと云うもんだから、わしも早く来てえと思ってねえ」
 おソナは花やんの方へすり寄った。この嫁は正直だから、おせじじゃないだろうと思った。
「まっと早く来りゃいいに、昨日来るかと思っていたに」
 そう云ってまたのり出したが、あんまりそばに行っては達者の歯を見られると気がついたので、手で口を押さえてあごをひっこめた。
「なんだから、あんな根っこのとこにいたでえ? 早くうちの中にへえってくればよかったに」
 花やんはにっこりした。
「ひとりで来ただもん、何んだか困ったよ、兄やんがつれてきてくれると云ったけん、昨夜っからお祭りのどぶろくで酔っぱらっちゃって、おばあやんがいい人だから早く行けって、ゆうべっから、そんなことばっかり云ってねえ」
 こうほめられるとおソナの身体は浮き上がってゆくようにうれしくなった。そして、
「これは死んだ嫁よりいい嫁が来たものだ」
 と思った。おソナは花やんが来たらすぐにでも伝えておかないといけないことを思い出して、忘れないうちに言っておくことにした。
「わしは正月になったら山に行くでさあ」
 花やんはちょっと黙っていたが、
「あれ、兄やんもそんなこと云ってたけんど、ゆっくり行きゃあええに」
「とんでもねえ、早くいきゃあいくほど神さんにほめられるら」
 口ではそのようなことを云いながらも、ゆっくり行けばいいと云われてやはりおソナはうれしくなった。すっと立ち上がって
「卯平を呼んでくるから、食べててくりょ」
 そう云って、家から出て行って、花やんから見えなくなったところで物置の中に入っていった。
 いい人だ、いい人だと云ってうれしくなったおソナは、ここで一世一代の勇気と力を出したのである。目をつむって石臼のかどにおもいきり歯をぶっつけた。痛みとしびれが脳天に突き抜けて、口がなくなったかと思った。しばらくして口の中にあたたかくなり、少し甘い味が広がった。小石のようなものがざりざりと舌の上で転がっている。おソナは口から血がこぼれるのを押さえながチョロチョロ川へ行って口をゆすいだ。ぺっとはき出すと、砕けた二本の歯が血といっしょに川に落ちた。
「なーんだ二本だけか」
 とがっかりしたが、上の前歯が揃って二本欠けたのでいかにも歯が悪くなっているように見えた。それで、うまくいったと満足した。
 しかし、困ったことに血が止まらない。歯も欠けたが口の中をどこか切ってしまったらしく、口の中に血がわいてくるのである。
「止まれ、止まれ」と言いながら川の水をすくって口をゆすいだが、血は止まらない。それでもうまく歯が欠けたのがうれしくて、口の中がぴりぴり痛むこともあまり気にならなかった。
 そのうちに血も止まったので、まずは花やんに見せたくなって家の中にひきかえした。花やんはまだ食べていた。おソナは花やんの前に座って、
「卯平はすぐ呼んでくるで、ゆっくり噛んで食べねえよ」
 それから下唇を上の歯で噛んで、
「わしは山へ行く年だから、歯がだめで噛めねえで」
 卯平を探すのを口実に、歯が悪くなったのを村中にみせびらかすことしか頭に無かったので、「おばあやん、血が出てるで」という花やんの声も耳には入らなかった。おソナは家から駆けだした。
 

 
 そら吉はいつもどおり子供を引き連れて村をねり歩いていた。音頭を取って鬼の歯の歌を唄わせながらである。もうすぐ始まる祭りでは、村中でこの歌を唄わせる腹づもりだった。おソナと卯平はひどい恥をかくだろう。いい気味だ、とそら吉は思った。
 そこへ口を開いたおソナが駆けてきた。どうしたことか、口から血が出て唇からたれている。
 そら吉と子供たちがおソナに気がついて動きを止めた。おソナはそら吉の顔をみつけると、開いた口を閉じてから下唇を上の歯で噛んで、見せびらかすためにあごをつきだした。そのあごに口からあふれた血がしたたった。
「うわあああああ!」
 子供たちが絶叫して逃げ出した。さすがのそら吉もびっくりして何もいえなかった。しかしおソナは上機嫌に、
「おばあやんはもう鬼の歯じゃあねえぞ。山へ行く歳だけん、歯もだめになった。ところで、おっ父うを見んかったけ?」
 そら吉は無言で後ずさった。子供たちは転がるような勢いでそこらを逃げ回っている。おソナはころころと駆け回る子供たちを見て、
「あはははは」
 と笑った。かっぱりと開いた口の中は血で赤黒く、その赤がどっとあふれて地面に落ちた。それを見ていた子供のうち、数人がひきつけを起こした。
「お、おおっ、鬼ばばア!」
 そら吉はかろうじてそれだけ云って、「行くぞ!」と子供たちに声をかけておソナから逃げていった。
 
 おソナは村中で噂の人になった。
 子供たちは心底おびえきり、そら吉からなんといわれようが、二度とおソナをからかう歌は唄おうとしなかった。
 『根っこの鬼ばばあ』の噂は一人歩きして、大人たちは子供たちを叱るのに「『根っこ』の家の子にするぞ!」といい、子供たちは夕方に道ばたでおソナにあうと
「ぎゃーー!!」
 と叫んで全力で逃げ出した。
 とにかく、その日から鬼の歯の歌は唄われなくなった。
 

 
 花やんが来てから一ヶ月もしないうちに、根っこの家に女がもう一人増えた。末やんだ。
 その日、末やんは家の前の切り株に腰をかけていた。それで昼飯どきになったらおソナたちの膳の前に座り込んでめしを食べ始めたのである。末やんは心の底から楽しそうにめしを食べた。この世の極楽という至福の表情を浮かべながら、実によく食べた。夕めしのときもやってきてそら吉と並んで座り、箸でお互いのほほをつついたりしてふさけあいながら、やはりよく食べた。
 おソナも卯平夫婦も別に嫌な気持ちはしなかった。おソナはそら吉がまだまだ子供と思っていたことを恥ずかしくさえ感じていた。
 夜になると末やんはそら吉のふとんの中にもぐりこんでいた。もうまもなく子供も生まれることだろう。おソナの脳裏に、村に伝わる歌が流れた。
 
 かやの木ぎんやんひきずり女
    せがれ孫からねずみっ子抱いた
 
 ぎんやんは大きなかやの木の横に住んでいた実在の女性で、おソナが嫁に来た頃はまだ生きていた。
 ねずみっ子というのは孫の子、曾孫のことだ。食料の乏しいこの村では、子だくさんは歓迎されない。ぎんやんは子と孫と曾孫まで抱いたので、早熟で好色なものが三代続いたと云うことで嘲笑されたのだ。ひきずり女というのは、だらしのない女とか、淫乱な女という意味である。
 なんとかそら吉の子供が生まれる前には楢山にいかねば、とおソナはあらためて思った。
 その次の日も、末やんは家の外の切り株に腰掛けていた。朝も昼もめしのときだけ家の中に入ってきて、食うだけ食ったら外に出て、切り株に腰かけているのである。
 さすがに夕方頃になり、花やんが「かまどの火を炊いてくりょ」といいつけた。
 末やんはだまってとりかかったが、かまどから真っ黒い煙がたちこめて、たちまち家中煙だらけになった。
 泣き出した末の子を抱えて、おソナも花やんも家から飛び出した。そのうちに燃やしていた本人も咳き込みながら出てきた。
「あっちのほうは一人前だが、火燃しは半人前だなあ」
 といって花やんが笑った。おソナは息を止めてかまどまで行くと、水をかけて火を消して、あらためて火をいれた。
 その火で豆を煮ていたところ、末やんが
「豆ァ煮るときにゃァ食えば食うほどふえるっちゅうぞ」
 といいながら、どんどん食べ始めた。おソナも花やんもそんなことは聞いたこともなかった。
「末やん、食えば食うほどふえるっちゅうなら、食わんかったら無えようになるら」
 と花やんが嫌みをいったが、末やんは意味が分からず、
「あれえ、ほんとけえ」
 と真顔になって云った。おソナがあきれて
「そのめしの食い方じゃあ、そら吉の嫁に来たじゃねえ、家を追い出されてきたじゃねえだか」
 と云うと、末やんはきょとんとしていたが、しばらくして憮然とした表情で家を出て行ってしまった。
 
 その晩も次の晩も、末やんはかえってこなかった。
 どうあれ、おソナと花やんが末やんを追い出すことになってしまったので、そら吉がいったいどうするだろう、とおソナは心配していた。あばれるかもしれない。自分はどうなっても構わないが、何かの拍子で死んでしまっては大変だ、と思った。村の中で人死にを出すのは掟で禁じられている。老人も病人もケガ人も、最期は楢山さまで迎えるのがきまりなのである。間もなく楢山まいりをする老人のせいでそら吉が罰を受けるのも困るので、いざとなったら楢山まで逃げてしまおうと思っていた。
 しかし、そら吉は黙りこんで何も話そうとはしなかった。卯平が一言二言話しかけても、ああ、とか、うんとかうわの空である。だから、誰もあえて末やんのことについては話さなかった。
 

 
 末やんが帰ってこないまま、祭りの日になった。そら吉は家を出たふりをして、物置の中でじっと座っていた。
 そら吉は祖母から受け継いだ『根っこの耳』を好きではなかった。聞きたくもない音が聞こえ、同じ年頃のものからは盗み聞きしているとからかわれていたからだ。
 でも、末やんだけはからかわなかった。ただぼんやりしていただけかもしれないが、それだけでそら吉は末やんを好きになった。家に誘ってうなづいてもらったときには、躍り上がるような気持ちになったものである。
 その末やんが家から追い出されてしまった。それについて、おソナや花やんを許すつもりはなかった。ただ、今は何もする気が起きないだけだ。狭い村のことなので、末やんが家に帰ったのは知っている。しかし、もう一度家に迎えにいく気力がわいてこなかった。断られたりしたら、どうしてよいのか分からない。今日の祭りではどこで何をしているのだろう。何をする気なのだろう。探しあてて面と向かって聞く勇気は無い。
 だからそら吉は、末やんがどうしているか、『聴く』ことにした。
 ひさしぶりのことなので、息を深く吸って、吐いた。黙って、『耳』に神経を集中する。まず、村全体から浅く拾った。次に末やんの声に近いものをいくつか決めて深くする。さらに絞り込んでいく。
 納屋、だ。末やんは納屋で藁に包まれていた。身体を動かすと藁が地面をこする。そして末やんの話し声。
「……あそこの家はおぞいだ」
 そら吉は耳を疑った。『おぞい』とはやすっぽい、ものが悪いという意味だ。相づちを打つ声も聞こえた。男だ。
「おらのこと、バカにしよる」
 それから末やんは聞くに耐えない汚い言葉でそら吉の家族を罵った。相手の男がみえすいた言葉でなぐさめる。相手が誰か、そら吉はもう知りたくもなかった。衣擦れ、がさがさと鳴る藁。末やんがあえいだ。
「そらやんに聞こえちまうだよぉ」
「ああああああ!」
 そら吉は自分の耳を強く殴りつけた。くぐもった音がして、世界が少し遠ざかったような気がした。何度も、何度も殴りつけた。世界をできるだけ遠くへおいやった。だから卯平が叫んで走り寄ってきたことにも気がつかなかった。

後編こちら

結婚ゾンビの見極め方

ある男が、自分を愛している3人のゾンビの中で
誰を結婚相手にするか長いこと考えていた。
そこで彼は3人に一本ずつ人間の腕を渡し
彼女らがその腕をどうするか見ることにした。

一人目のゾンビは、その腕をしばらく見つめたあと、骨も残さず食べ切ってから戻ってきて、男の前で「もうひとつ欲しい」というように上目遣いで見つめてきた。

二人目のゾンビは、その腕をしばらく見つめたあと、包丁で輪切りにしたあと強火でいためて皿に載せて男の前に差し出した。

最後のゾンビは、その腕を鉢植えに突き刺してしばらく水をやって、水ぶくれと腐敗でパンパンになった腕を男の前に差し出した。
男は考え、3人の中で一番おっぱいの大きいゾンビを妻にした。
Inspired by 結婚相手の見極め方

ゾンビとのフェアな家事分担について

俺と妻は共働きで、どちらも帰宅は遅め。(俺:23時くらい、妻:21時くらい)

子供はもちろんなし。

家事は自然に、こういう分担になった↓。

彼女は毎日の食事の準備、洗濯、ゴミ捨て。(ちなみに食事は、迷子になって彼女が帰ってこない時はナシ。俺はメシ抜きで捜索)

俺は風呂トイレ含む家全体の毎日の掃除片付け、力仕事、食器片付けとか。あと彼女が気が付かない所の家事全般。

年収は、俺が彼女の2倍ちょっとくらい。

資産でいえば、彼女の10倍くらいはあると思う。

俺は一人暮らしが長く、家事全般は得意なほう。彼女はゾンビ。

妻は家事を彼女なりに、苦手なリに頑張ってくれてるんだが、生前に覚えてることしかできない。

俺は帰ってきて、部屋がちらかって汚れてるとガッカリしてしまう。(で、自分で掃除する。)

俺より早く帰ってきてるんだから、もう少しきっちりやっといてくれよと思ってしまう。

でも、食事の準備をまったりやりすぎたりで、他の家事にあまり手が回らないみたい。

かつ、新しいことはどうしても覚えられないようだ。

共働きだから家事は平等、という考え方が多いんだと思うけど、

俺は、収入も含めてお互いが家庭に提供するバリューがお互いイーブンじゃないと、フェアじゃないと思ってる。

俺は彼女の2倍以上稼いで、かつ、いつ彼女に食べられてもおかしくないんだから、

彼女にも同じ分の価値を家庭に提供して欲しいと思っている。つまり家事は俺よりかなり多くやってほしい。

俺が彼女と同じだけ家事をこなしてしまったら、全体で見たら俺の提供するバリューの方が圧倒的に多くなってしまう。

でも俺は彼女の餌でもパトロンでもなく、パートナーなんだから、負担はフェアじゃないといけないと思う。

でも彼女が生前に残したビデオを観ると、

「私がゾンビになっても面倒を見て欲しいと頼んでない。もっと薄情な人でも全然いい。

 あなたは自分が面倒をみたくてみてくれるなら生命や意識の差は関係ない。家事は平等に分担したい。

 もし平等じゃないと思うんなら、あなたの人生は自分だけのためにつかってくれてOK。

 私はもう長くは生きられない。悪いけれど私のことは見捨ててくれてかまわない。

 食事の準備はあなたのためだと思って頑張って覚えるつもりだけど、結局これも私がやりたくてやっていること。

 おたがいやりたいことをやればいい。

 だから私に、掃除しろあれしろと指図しないで。私はやりたい事しかできない。」

と言っていた。

なんかおかしくないか?といつも思ってしまう。

彼女だけだときちんとは暮らしていけない(俺がメンテナンスしていけば十分人並み以上の暮らしができる)から、

実質俺がメインのエンジン。

だから、俺は行き届かない家事に不満を感じ、それを自分でこなしつつ、「面倒をみたくてみてるだけ」とか

言われつつ、収入はずっと維持し続けないといけない。稼ぎ続ける責任がある。

一方彼女は、その存在だけでは一家を支えられないし、今は意識もないから、彼女が働きたい、と言っていた点以外に働く必然性がない。

つまり遺言と同じ。

つまり、俺は彼女に対して「責任」があるのに、彼女は家事も仕事も、やりたいことはできる、やりたくないことはできない、

というスタンス。もう変更もきかない。

ここもフェアじゃない。少なくとも彼女は自分にも責任が持てないのに、俺は彼女への責任を捨てられない。

俺は、俺の家事分担や収入を感謝してくれて、ずっと一緒に生きてくれる女性を選ぶべきだったんだと思う。

俺は妻には、仕事はやってくれてもくれなくても、どっちでもいいという意見。

ただし帰りはあんまり夜遅くなってほしくなかった。俺より長く生きていてほしかった。

収入は俺だけでもなんとかする。人並み以上の暮らしは保証する。

ただただ自分の健康管理をきっちりやってほしかった。

俺は結婚相手を間違えたんだろうか。

それとも俺の認識の方がおかしいんだろうか。

Inspired by 夫婦のフェアな家事分担について
http://anond.hatelabo.jp/20090519175408

[コピペ]採用面接

学生「第一死亡です」
ぼく「えっ」
学生「えっ」
ぼく「いやなことでもあったんですか」
学生「いえ、特に」
ぼく「じゃあどうして死亡するんですか」
学生「社員の方に引かれたからです」
ぼく「えっ」
学生「えっ」
ぼく「何ていう社員に引かれたんですか」
学生「説明会でお会いした方全てです」
ぼく「えっ」
学生「えっ」
ぼく「大丈夫ですか」
学生「はい。精神力には自信があります」
ぼく「でも死亡って…」
学生「死亡理由を説明させていただきますと・・・」
ぼく「やはり死亡したいんですか」
学生「はい。もちろんです」
ぼく「えっ」
学生「私、きちんと屍体とおもってまして」
ぼく「えっすでに死亡してるんですか」
学生「はい」
ぼく「なにそれこわい」
学生「えっ」
ぼく「いつから死亡してるんですか」
学生「実はここに来る前から死亡していましたが、
    今回死霊をみさせていただいて更に死亡度が高まりました。」
ぼく「えっなんかごめんなさい」
学生「えっ」
ぼく「えっ」

Inspired by
http://anond.hatelabo.jp/20090425165905

さっきレンタルDVDの棚を見たが、本当に唖然とした

さっきレンタルDVDの棚を見たが、本当に唖然とした
『デイ・オブ・ザ・デッド2』が全部借りられてる。

俺は断言するが、数字がついたシリーズもののゾンビ映画を借りる奴は馬鹿だ。これは100%断言できる。

何でパッケージ見て気付かないの? なんであらすじ読んで借りないの? 本当に分からない。あれロメロじゃないよ。正当続編っていっても制作者全然別の人だよ? 誰だってあれ観てB級ですらないって言うのは一瞬で分かる。それでも借りるって本気で馬鹿なんじゃない?

あれがいいっていうのは、頭がおかしいとしか言いようがない、というか、脳が退化してるんだよ。それしか説明がつかない。つまり、本物のゾンビとただ撮ってるだけのゾンビが区別つかなくなってるんだよ。だからいいと思って借りる。これは馬鹿としか言い様がないだろう。日本の将来は大丈夫か?

前にもちょっと『デイ・オブ・ザ・デッド』のリメイクが公開された時、渋谷シアターN(結構よくいくけど)で観たが、なんであんな人入ってたんだろう。あとついでに『ゾンビ・ストリッパーズ』も見た。これならまあ100歩譲って納得できなくもないが、ただ当然本物のゾンビ映画監督とは比べるのも失礼な程だし、毎月1日1000円デーならまあ一回観てもいいかな、という程度だ。何回も観るほどではない。ただ宣伝コメントは絶賛の嵐。アホか。本物を知らない商業主義者ばっかなのかあそこは。ろくなもんじゃないな。

俺ははっきり言うが、もっと人間が本気で撮ってるゾンビ映画を観るべきなんだよ。じゃないとおかしい。ゾンビ映画の監督が毎日どれだけ苦労してるか知ってるか? シナリオ、演出、血糊や弾着の管理、レイテッド(年齢制限)調整、書けばきりがない。大好きな酒、タバコも我慢して頑張ってる人もたくさんいるし、サラリーマンみたく安定した職じゃないから毎日不安と戦ってる。そういう方が心を込めて撮ってるゾンビ映画を観ずに、適当な続編を借りる。ほんと死にたくなるね。どうしてあの続編を借りるかね。わからない。世の中不思議だらけだ。

本当におまえら頭冷やして考え直せよ。おまえらは馬鹿か、またはブームに乗せられてるだけだ。まあそれを馬鹿と言うんだがな。

ネタ元
http://anond.hatelabo.jp/20090308152436

ゾンビで考えるマネジメント(2)

 私は感染症対策本部の治療課長である。主な業務は、感染者の治療である。ゾンビは、ここ10年「自宅隠匿」系の感染拡大にともなって、数を増加させている。その意味で、感染症対策本部にとっては存在意義をアピールする良い時期ではあったが、治療が間に合わない重度の感染者も多く、当局からも「気をつけてください」と念を押された。
 対策本部としても、治療実績が落ち込んでしまっては困るので、対策会議で「治療が間に合わない重度感染者の搬入禁止」を通達した。
 その矢先、搬入禁止のレベル5感染者の受け入れを、救急隊長の野口が決めてきた
 野口はこの感染者のおかげで、彼自身は感染者の捕獲数、治療実績のトップとなり、かつ対策本部の目標も達成する。野口は、期初に約束したインセンティブのハワイ旅行を要求してきた
 野口を問いただすと、
 「もう医師と研究所に手配済みなんですヨ。治癒の兆候を示すバイタルサインも確認してきました。課長、大丈夫ですヨ。何かあったら私が責任をとります」と答える。
 担当医師に確認を入れたところ、レベル5移行直後だったため治癒の見込みは大きく、搬入禁止にするまでもなかったことが判明した。
 
 あなたが課長ならどうしますか?

ゾンビで考えるマネジメント(1)

 私は○○区担当の隊長である。
 当社の戦闘部隊では、1年前からテリトリー制を強化している。それ以前は担当区域は無く、可能なものから出動していたが、「アウトブレイクにきめ細かく対応し、長期の視点で感染者を抑制していく」という取締役旅団長の考え方から、テリトリー制が導入された。
 ○○区と☓☓区は常にライバル争いをしており、会議でも、○○区隊長(私)と☓☓区隊長とは何かと意見が対立することが多い。
 ○○区の今月の業績は、アウトブレイクの発生もやや少なく、目標達成まであと50体ほど不足しそうな見込みである。今月は業績拡大月間であり、絶対に目標を達成したい。
 ○○区の新人隊員の山田は、元気がよく毎日がんばっている。なかなか捕獲に至らないが、めげずに前向きである。新人同期の隊員もぼつぼつ初捕獲を上げ始め、山田自身も少し焦っているようだ。上司としてはなんとかしてやりたいと思っていた矢先「隊長、やっと商売になりそうです。ぜひ、同行してください!」と山田が勢いよく言ってきた。
 山田の話によると、熱心に通っている都営地下鉄沿線の住民から、「△△駅-▲▲駅付近の地下道で大量に発生しているのを見たから、なんとかしてほしい」と紹介された。付近を探索してみると確かに多数の個体が潜んでおり、「早急に解決してほしい」と地元自衛団のリーダーからも救援要請を受けた。ざっと見積もって60体程度は居るらしい。
 しかし、問題の区域は☓☓区にあり、☓☓区担当が去年、単発であるが探索し、複数の個体を捕獲している。
 山田の話では、
 「☓☓区担当はアウトブレイク発生初期は熱心に顔を出していたが、今年は訪問頻度も落ち、2ヶ月前に訪問したきりである」「☓☓区担当は▼▼駅近辺の対応に忙しく、まだこのアウトブレイクに気づいていない」とのことである。
 
 あなたが隊長なら、どうしますか?

悪いのは誰? - ある無人(有ゾンビ)島漂流の物語

ある夫婦、その妻に思いを寄せる男性、この3人とは何の関係もない男性、おじいさん。この5人が乗っていた船が難破し、無人島に流された。

その過程で、夫婦の夫は行方不明となり、何の関係もない男性は頭を強く打ってゾンビになった。島に流れ着いたのは4人(ゾンビ含む)だった。この時点で夫の安否はわからない。

夫の安否を確かめるには、船を出して捜索するしかないが、妻には船をつくる能力や、直す力はない。船をつくり、直すことができるのは、夫婦とは縁もゆかりもないゾンビただひとりだった。

妻はそのゾンビに頼んだ。「船を直してください。夫を探したいのです」と。

ゾンビはゆっくりとうなづいた。だが、条件をつけた。その条件とは妻に一口かじりつくこと。

妻は悩み、おじいさんに相談した。おじいさんは「気持ちのままに行動しなさい」と。

妻は結局、そのゾンビにかじりつかれた。ゾンビは約束を守り、船を直した。

そして船が直り、これからまさに夫を探すというときに、夫が無人島に自力でたどり着いた。

妻は夫に、捜索するため、船を直すためにゾンビにかじられたことを告白した。

夫はそんな妻を恐れをなした。感染していると。

妻は夫を食い尽くした。

ひとりになった妻の様子を見て、思いを寄せていた男が言った。「あなたが不死です」。

inspired by
http://d.hatena.ne.jp/takerunba/20090116/p2
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