2024年04月16日
【アマゾン】、トレーダー・ジョーズをパクる！スーパーから転職する際は気をつけろ？
■ネット通販最大手アマゾンでは、当時のＣＥＯであったジェフ・ベゾス氏が社内会議にて「コストコのプライベートブランド（ＰＢ）『カークランド（Kirkland）』を見てみろ。コストコの売上全体の25％以上をたたき出しているではないか。なぜ、うちではそれができないのか。なぜわが社ではＰＢ売上が全体の1％しかないのか」と檄を飛ばしたことがあったという。
これによりアマゾンは2022年までに、ＰＢを売上全体の10％にする目標を立てた。
アパレルなどを中心にアマゾンのＰＢは45ブランドにまで拡大し、2020年の資料によると合計で24万3,000アイテムにもなっていたのだ。
同時にアマゾンはマーケットプレイスの人気商品をコピーするやり方でしばしば批判されてもいた。
アマゾンのマーケットプレイスに出品したり提携すれば、非常に貴重で重要な販売データすべてが競合になる大手ＩＴ企業に筒抜けとなる。
販売数量や平均販売価格、利益率などがアマゾンの前で裸になる。どの商品がどの顧客に売れており、トレンドから売れ筋、さらに死ぬ筋までアマゾンがすべてを把握できてしまう。
ギャップのような大手ファッションブランドから得た販売データを活用して自社のプライベートブランドに活かせてしまうのだ。
アマゾンのコンピューター上で覗き見できることで人気商品を片っ端からコピーしプライベートブランドのラベルを貼ればいいだけだ。
サンフランシスコにあるカメラ・アクセサリー・ブランドが数年前、アマゾンにコピーされた事例がある。
スタイリッシュで機能的なデザインで知られるピークデザイン（Peak Design）の人気カメラバッグがパクられアマゾンＰＢで発売されたのだ。
ピークデザインはアマゾンのマーケットプレイスで販売しているのだが、2017年から販売を開始した69.99ドルのバッグ「ピークデザイン・エブリデー・スリング（Peak Design Everyday Sling）」に怪しいほど激似の35.14ドルの「アマゾン・ベーシック・エブリデー・スリング（Amazon Basic Everyday Sling）」が2020年から発売された。
人気商品の売上が落ち、これに怒ったピークデザイン側は告発動画をYouTubeにアップした。ピークデザインの人気商品をまんまパクるアマゾンを皮肉的に描いたものだ。
大騒ぎとなったことでアマゾンはすぐに同商品を商品ページから削除しているが、数億以上の商品を扱うアマゾンでは同じようなことは日常茶飯事になっている。
こういったことを問題視する議員などから批判を受けたことも要因となりＰＢを縮小しだしたのだ。
実は同じようなことが食品でも起こっていたと、23日に発売される「エブリシング・ウォー：大企業のパワーを作って自社の世界を作る、アマゾンの無慈悲な探求（The Everything War: Amazon’s Ruthless Quest to Own the World and Remake Corporate Power）」に記されている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記者、ダナ・マッティオリ氏はアマゾンの食品ＰＢ「ウィッキドリー・プライム（Wickedly Prime）」の開発でトレーダー・ジョーズのスナック食品事業から上級マネージャーをヘッドハントした様子を綴っている。
しかしヘッドハンティングされた女性は当初、アマゾンの本当の目的を知らされていなかったという。
入社直後、ドアや窓がブラウンペーパーで覆われた本社会議室に通され際、そこで山積みされたトレーダー・ジョーズのスナック菓子の箱を見て、その目的を得心したのだ。
彼女は食品ＰＢ開発でトレーダー・ジョーズをパクるため雇われたのだ。
トレーダー・ジョーズはアマゾンのマーケットプレイスに出品していないばかりか、ネットスーパーさえ行っていない。
秘密主義で知られるトレーダー・ジョーズでは、何が売れ筋なのかさえもアマゾンは知らなかったのだ。
結果、スナック食品の元上級マネージャーは、ベストセラー商品について詰問を受けることになる
トレーダー・ジョーズ時代に保管していた詳細な売上情報を明かすよう指示されたばかりか、各商品の粗利率データまで要求されたのだ。
彼女が拒否すると上司は怒り「データさえ渡せばいいんだ！」と叫んだという。このやりとりを目撃した人によると、何ヶ月間にも及ぶ重圧から、その女性は泣き出すほどだった。
トレーダー・ジョーズの機密情報をシェアすることに倫理的な問題があると思った別のスタッフは法務部に相談。
その結果、トレーダー・ジョーズのエクセル情報を共有した従業員は解雇となったのだ。
アマゾンは適切な対応をとったものの、他社の機密情報さえシェアするほどの重圧にさらされるのは従業員にとって象徴的な出来事なのだ。
ジェフ・ベゾス氏はかつて「競合の利益率は私のチャンスだ」と言ったされることをアマゾンは否定している。
「商品パクって、安く売る」はアマゾンの販売手法だが、これは消費者を映す鏡でもあるのだ。
トップ画像：2021年から始動したアマゾンの食品ＰＢ「アプレンティ（Aplenty）」。アマゾン・フレッシュでは、トレーダー・ジョーズで見かけるチョコレートをアプレンティで販売しているのだ。 続きを読む
2024年04月15日
【ウォルマート店長】、高卒も年収4,000万！従業員アプリで労働生産性も飛躍的に向上？
■チェーンストア最大手のウォルマートは２月、ストアマネージャーとなる店長の平均給与を年12万8,000ドル（約1,900万円）に引き上げた。
店長の給与引き上げは10年以上ぶりで、それまでの平均11万7,000ドルから1万1,000ドル（165万円）の引き上げとなる。
店長の給与は年6万5,000〜17万ドルの範囲だったが、ネイバーフッド・マーケットやスーパーセンターなど業態に基づき、この範囲を９万〜17万ドルに引き上げたのだ。
ボーナスも売上に加えて店舗の利益に強く反映させる計算方式を導入。
すべての目標を達成すると、ボーナスは最大で基本給の200％になる可能性もあるのだ。この場合、スーパーセンターの店長になると最大で年40万ドル（約5,850万円）の年収にもなる。
ウォルマートは国内に3,560店のスーパーセンターを展開しており、平均の店舗面積でさえ17.8万平方フィート（約5,000坪）にも及ぶ。
なおディスカウントストア業態は国内に360店舗あり10.5万平方フィート（約2,940坪）で、4.2万平方フィート（1,170坪）のネイバーフッド・マーケットは695店となる。
１店舗当たりのスーパーセンターの売上高はおよそ10年連続して前年を上回り、１億ドルを超えるまでになっているのだ。
ウォルマートは昨年、オムニチャネル・リテーラーと自身のビジネスを再定義しており、ネットスーパーなどオンラインショッピングの成長が著しい。
ウォルマートＵＳのＣＥＯであるジョン・ファーナー氏も「私が店長だったころとは比べものにならないほど複雑な仕事だ」と指摘するほどストアマネージャーの責務を重くなっているのだ。
しかし興味深いことに店長の約75％が時間給からスタートした叩き上げだ。実際、ファーナー氏もワシントン州にあるウォルマートのスポーツ用品売場で時給キャリアから始めている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は14日、テキサス州ウェイコ郊外にあるウォルマート・スーパーセンターの店長について記事を掲載した。
スーパーセンター・ベルミード店のストアマネージャーであるニコル・ハート（40）さんは20年前、二人の子を持つ高卒の母親としてウォルマートに入社した。
19歳だった彼女は当時、デリ部門でロブスターを調理する仕事からキャリアをスタートしたのだ。
懸命な仕事ぶりや人々に慕われる誠実な人柄なども幸いしフォトの部門長やアパレルセクションの部門長を経て2018年には店長となったのだ。
2021年からベルミード地区のスーパーセンターでストアマネージャーに異動したという。水曜日と日曜日を休みにする彼女は通常、午前７時〜午後５時までの勤務で火曜日だけは正午〜午後10時までの夜勤となる。
店長としてハートさんは昨年、11.9万ドル（1.785万円）の給与に12万ドル（1,800万円）のボーナスを得たのだ。
年収4,000万円近くにもなるも１日当たり5,000坪の店内を何度も歩き回ることになる。
ハートさんによるとスーパーセンターの店長になると、お店のオーナーのように行動するため１日で距離にして８〜10マイル（13〜16キロメートル）、およそ２万歩を歩くことになる。
ファーナー氏が指摘するようにスーパーセンターの店長ともなれば、14万品目以上ともなる品揃えに常に注視しなければならなくなる。
店長でさえリージョナル・マネージャーや店長候補とされる副店長と店内を歩き回り、ニル・ピックス（Nil Picks）と呼ばれる"穴"を埋めていく必要があるのだ。
ニル・ピックスとはデータ上では商品在庫を確認できるものの、売り場では在庫を切らしていたり、あるべき場所になかったりすることを見つける仕事だ。
スーパーセンターはネットスーパーの倉庫でもあるため、「ゼロ」や「無し」を意味するニル（nil）を見つけることにより機会損失を防ぐことになる。アナログながらも重要な仕事になる。
その一方、店長や現場スタッフはウォルマート・アプリを駆使する。
店舗スタッフ（フィールド・アソシエイツ）用の「ミー＠ウォルマート（Me＠Walmart）」を使い、作業確認から売り場の画像を撮影してニル等の問題点を報告したりするのだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は店長が使うアプリ画面の一部を掲載。瞬間接着剤のページで、在庫数や商品売上、さらに利益＆粗利なども参照できるようになっているのだ。
ウォルマートでは従業員の平均時給を18ドル（約2600円）に引き上げており、さらに作業効率をアップするためスタッフ用アプリにも多額の投資を行っている。
スーパーセンターの店長の年収は、日本でいえば敏腕の経営コンサルタントや投資信託の運用を行うファンドマネージャー、外資系金融のトップ営業マンらを遥かの凌ぐほどにもなっているが、現場の人財に投資する価値があるということになるのだ。
トップ画像：ウォルマートのスタッフ用アプリ「ミー＠ウォルマート（Me＠Walmart）」にはリアルタイムの売上高の閲覧のほかシフト確認、在庫管理、トランシーバー機能もある。 続きを読む
2024年04月14日
【サンフランシスコ】、象徴的なメイシーズも閉鎖！クリスマスツリー点灯式はどうなる？
■イーロン・マスク氏は昨年５月、「サンフランシスコ・ダウンタウンでは多くの店舗が閉鎖されています。まるでポストアポカリプスのような雰囲気です（So many stores shuttered in downtown SF. Feels post-apocalyptic.）」とツイートした。
ここから１年近くが経過しても今なおサンフランシスコ・ダウンタウンの衰退が続いている。
不動産サービス大手CBREによると2023年３月時点でサンフランシスコ市内のオフィス空室率は過去最高となる29.5％を記録した。
2022年から金利が急騰し株価は下落傾向で今年は旧ツイッターやセールスフォース、メタ・プラットフォームズなどの大量解雇に銀行危機もあり、サンフランシスコ・ダウンタウンでは人材の流出が顕著になっていたのだ。
さらに第２四半期ではサンフランシスコ市内の空室率は31.6％を記録。第３四半期では市内のオフィス空室率は33.9％とまた記録を更新した。
第４四半期にはＡＩ開発のスタートアップであるオープンＡＩやアンスロピック（Anthropic）がサンフランシスコ市内にオフィスをリースしたと話題になったものの、空室率は35.9％と過去最悪を更新した。
さらに今年第１四半期には36.6％とまたしても空室率が上昇したのだ。
オフィス空室率の上昇はコロナ以降、働き方が大きく変わってしまったのが原因だ。特にサンフランシスコ市内に本社等を構えたＩＴ企業の影響は大きい。
ＩＴ企業の多くは、リモートワークができる商品やサービスを開発してきた当事者なのだ。
多くの企業は完全出社に戻そうにも、リモートワークに味をしめた従業員により、自宅やシェアオフィスなどオフィスと離れた場所で働く「テレワーク」を組み合わせたハイブリッド型の勤務体制を続けようとする力学も働いている。
サンフランシスコでもフィナンシャル・ディストリクトでの空室率がひどいのはＡＩの台頭も見逃せない。
ＡＩに代替される職種は「決まったことをする定型業務が多い職務」だ。特に「経理・財務・会計系」などの金融関係にＡＩが積極的に導入されている。
フィナンシャル・ディストリクトからリモートワークでオフィスがなくなり、将来的に金融街で働く人がＡＩに代替されれば、ゴーストタウン化は間違いない。
オープンＡＩが昨年10月、サンフランシスコで50万平方フィート（約1.4万坪）近くのオフィススペースのリースを契約した。
ＡＩのスタートアップが衰退が進むサンフランシスコ市中心部の復活になるのではないかとの期待もある。
しかし業務を自動化するＡＩはむしろ人から仕事を奪うことになる。ＡＩが活躍すればするほどオフィスが不要になり、サンフランシスコのポストアポカリプスはさらに継続することになる。
そしてサンフランシスコの中心地にとどめの一撃となる発表が２月にあった。
老舗デパートメントストアのメイシーズは２月27日、向こう３年間で不採算店となる約150店を閉鎖することを公表。その中にサンフランシスコ市ユニオンスクエアにある旗艦店が含まれていたのだ。
メイシーズ・ユニオンスクエア店といえば観光名所でもあるユニオンスクエアの象徴でもある。
ユニオンスクエア近く1929年（昭和４年）にオープンしたデパートメントストアをメイシーズが1945年に買収し、２年後に店舗名をメイシーズに変更した歴史がある。
拡大などを経て長い間、メイシーズがユニオン・スクエアの真ん前にあるため「ユニオン・スクエアといえばメイシーズ」というぐらい街の顔となっているのだ。
ユニオン・スクエアではブラックフライデー（11月第４金曜日）の夜、高さ約25メートルにもなる巨大な電飾クリスマスツリーが点灯する。
35年前から続くクリスマス・イルミネーション「メイシーズ・グレート・クリスマスツリー点灯式（Macy's annual Great Tree Lighting Ceremony）」を主催しているのがメイシーズなのだ。
メイシーズが閉鎖されれば電飾クリスマスツリーのイベントも危うくなる。
このメイシーズの８階にはチーズケーキ・ファクトリーもある。多くのビジネスマンや観光客、サンフランシスコの住民にとって、屋外テラスからユニオン・スクエアを眺望できる飲食店は憩いの場所だ。
閉鎖されるメイシーズ内のチーズケーキ・ファクトリーは閉鎖を発表していない。が、人気レストランの灯が消えるのは時間の問題だろう。
メイシーズが撤退後、サンフランシスコの中心地はさらにディストピア化しそうだ。
トップ画像：サンフランシスコ市内ユニオンスクエア前にあるメイシーズ。チーズケーキ・ファクトリーが入店するメイシーズ旗艦店は来年初めには閉鎖となる。ユニオン・スクエアの象徴的な巨大ビルが空室となるのだ。 続きを読む
2024年04月13日
【ウォルマート・アプリ】、生成ＡＩをマジで使ってほしい！商品検索からプロンプトへ？
■チェーンストア最大手のウォルマートは、ウォルマート・コムのホームページ（ＨＰ）や専用アプリのデザインを刷新している。
刷新されているウォルマートＨＰやアプリはＳＮＳ時代を意識したデザインで、利用者の嗜好にあうようパーソナライズされている。
チーフＥＣオフィサーのトム・ワード氏によると店に入った時のワクワク感をウォルマートのストア・アプリで表現している。
言い換えればウォルマートのワンストップショッピングを使いやすくなったアプリのエンドレスアイルでさらに拡大しているのだ。
ウォルマートがネット販売に力を入れるのにはＺ世代の存在がある。5〜25歳のＺ世代は幼少期からスマートフォンを使いこなしており、ＳＮＳネイティブ世代だ。
テレビのリモコンのようにスマートフォンを使いこなしながら勉強から遊び、友達や親との関係も自分にあうようにアプリを介して便利にしていく。
買い物でさえスマートフォン・アプリで管理することになる。若い世代が社会にでて消費者として台頭する前にウォルマートはストア・アプリで囲い込みたいのだ。
特に意識することもなく冷蔵庫を開けるように、ウォルマートはスマホアプリを起動してもらいたいのだ。
ウォルマート・アプリの専用ページにも、ウォルマートが顧客にアプリをいかに簡単に使ってもらいたいかが溢れている。
トップに「アプリで簡単（It' easier in the app）」と紹介し、ＡＲ機能を使った「ボイスショッピング（Try on Frame）」「バーチャル試着（Virtual try-on）」「ビュー・イン・ユア・ホーム（View in your home）」などで使いやすさを訴求している。
特にネットスーパーにおけるウォルマート・アプリの使い勝手はチェーンストア中、最強レベルとなっている。
ストアアプリに触れたことのない主婦でも生鮮品等のショッピングを直感的に楽しめるようになっているのだ。
若い世代にとってショッパブル・レシピからのウォルマート・アプリへの自然な流れは秀逸だろう。レシピサイト「テイスティ（Tasty）」等から特に意識することなく必要な食材だけをウォルマートのショッピングカートに入れることができるのだ。
自然なカスタマージャーニーをデザインした注文後のオーダートラッキングもストレスフリーでフォロー可能となる。
カーブサイド・ピックアップの際にはチェックインをすることで店側が利用者の居場所をフォローしながらピックアップ時間枠内で迅速に注文品を渡せるよう工夫されているのだ。
ウォルマート店内でもストアモードが起動することでストアマップや利用者作成のショッピングリストに対応して買いやすいプラットフォームに変化を遂げている。
ウォルマート・アプリは生成ＡＩにも対応している。例えばアプリの検索窓に「お誕生日会（Birthday party）」と入力する。
検索結果のトップに「ＡＩで生成されました（Generated by AI）」と表示され、誕生日会についての「検索結果（Results）」に「お誕生日会の飾り付け（Birthday decorations）」「お誕生日会の出し物（Party favors）」「お誕生日会のゲーム（Party games & activities）」「お誕生日会のテーブルウェア（Party tableware）」「お誕生日会のサプライセット（Party supply sets）」が表示されるのだ。
それぞれの項目にある商品から、子供から大人まで楽しめる誕生日パーティー向けのアイディアやヒントも提供されるようになっている。
お誕生日会に関するデコレーションからゲーム、テーブルウェアまで見ると、ペットや子供のための出し物や演出が浮かんでくるのだ。
時間のないご両親にとって、面白そうなゲームを眺めるだけでも今年の誕生日パーティのテーマを決めやすくなる。
コンサルタントが生成ＡＩを使って「新事業の事業計画書を作成する」と使うように、顧客が日常のイベントのアイディア出しにアプリを使って買い物までできるようになっているのだ。
ウォルマート・アプリはどんどん洗練され使いやすくなっている。アメリカで流通視察する際はぜひ使ってみてほしい。
トップ画像：当社の米国流通ワークショップ研修。買い物に便利な機能を満載するウォルマート・アプリを使って流通現場で、生成ＡＩがどのように活用されているのかを学習する。 続きを読む
2024年04月12日
【ターゲット】、セルフレジに"万引きＧメン"ＤＸ！例の悪いマジシャンをどう見抜く？
■コロナ禍以降に起こった頑固なインフレで生活苦に陥った低所得者層や高齢者が多くなり、魔が差して万引きすることが増えている。
特に目立つのがセルフチェックアウトレジでの盗みだ。
アメリカ国内を中心に19,986店を展開するダラーストアのダラーゼネラルは凄まじい勢いでセルフレジでの万引きが増加していることで有人レジを増やしレジ業務を以前のスタイルに戻す改革案を発表した。
セルフレジでの万引きは極めてイージーなのだ。
有人レジよりもセルフレジのほうが21倍も商品を盗みやすい傾向にある。さらに意図せず万引きを行ってしまうのもセルフレジの問題点だ。
意図しない万引きとは、盗むつもりがなかったのに結果的にお金を支払わなかった商品がまぎれ混んでしまったパターンだ。セルフレジは手間がかかることで、うっかり未払いアイテムが発生している。
オンライン融資のレンディングツリー（Lending Tree）の調査ではお客の５人に一人となる21％が意図しないうっかり万引きを経験していると回答している。
また約2,000人を対象にした同調査ではセルフレジにて悪意ある万引き経験者が、７人に一人の割合となる15％にも上っているとしている。
キャンディなどの安い商品ばかり読み取らせ、ステーキなどの高額な商品はスキャンせずにそのまま持ち帰るとか、手に同じ商品を２つ持って、１つだけカウントして一緒に持って出ていくなど巧妙にできる。
仮にこれらの不正が見破られて捕まっても言い訳や言い逃れがしやすく、相手はお客でもあるわけで店側も捕まえにくい。立件できないだけで、水面下に隠れている窃盗数はかなり多くなる。
手慣れたセルフレジでの万引き行為に対してデジタル・トランスフォーメーション（ＤＸ）で対抗する大手チェーンストアもある。
全米に約2,000店を展開するターゲットはセルフレジにデジタル「万引きＧメン」を導入するのだ。
大手メディアが内部文書から報じたところによるとターゲットは年内までに「ツルースキャン（Truscan）」というセキュリティデバイスを全店のセルフレジに搭載する。
ターゲットは先月、セルフレジの利用を10アイテム以下の買い物客のみとするポリシーを発表。セルフレジのポリシーは３月17日から全米のターゲットで導入され有人レジも増やした。
10アイテム以下の買い物客を対象にした「エクスプレス・セルフチェックアウト（Express Self-Checkout）」はチェックアウトスピードが２倍に上昇し、買い物体験も向上したという。
これに万引きＧメンＤＸを加えるのだ。
ツルースキャンではセルフレジでスキャニングする顧客の行動をカメラが監視し、読み取り忘れた場合に音声や動画で買い物客にリマインドするという。
ツルースキャンが万引き行為に対してどれほどの精度なのか分からない。が、生活苦で魔が差してしまったお客に盗まれにくい環境を提供することは確かだろう。
セルフレジで会計する直前までは、盗むつもりはなくても、たまたま読み取りができなかったり、周りに人がいなかったりすると「このまま持ち帰ってもわからないかも」という気持ちがよぎるかもしれない。
そういったお客やスキャンし忘れたお客に「こちらはちゃんと見てますよ」と存在をアピールすることが万引きＧメンＤＸのポイントになる。
ターゲットは昨年５月、同社ＣＥＯのブライアン・コーネル氏は「将来を見据え、私たちは今年の収益性が前年に比べて５億ドル以上減少すると予想しています」とし「在庫の縮小には多くの潜在的な要因がありますが、盗難や組織犯罪がこの問題の重要な要因となっています」と述べていた。
盗難がターゲットの店舗運営に大きな足かせとなっており、これらの防止策で大規模投資をおこなっているとしていた。
そして昨年10月には窃盗犯罪による損失を抑えるために４州に展開する９店舗を閉鎖した。
スクラップされた店舗はニューヨーク市イースト・ハーレム店にワシントン州シアトル市内の２店舗、オレゴン州ポートランド地区の３店舗、さらにサンフランシスコ市内１店舗とオークランド市内の２店舗となり都心部の店舗が中心となったのだ。
組織犯罪には店舗閉鎖で対抗し、顧客の出来心にはＤＸを使う方針になるが、いかにアメリカでは盗難が多いかという証左でもある。
トップ画像：ターゲットではセルフレジに万引きＧメンをＤＸしたツルースキャンを導入し、スキャンし忘れた"うっかり"客に音声やビデオあでリマンドしていく。 続きを読む
2024年04月11日
【スマートカート】、２強をロサンゼルスで視察！流通イノベーションのホットスポット？
■ネット通販最大手のアマゾンは食品スーパー「アマゾン・フレッシュ（Amazon Fresh）」の新規出店を再開する。
撤去が発表された自動決済システム「ジャスト・ウォークアウト（Just Walk Out）」に代わり、新規店舗ではスマートショッピングカート「ダッシュカート（Amazon Dash Cart）」にセルフレジを導入した店舗になるのだ。
日本ではＡＩレジカートとも呼ばれているスマートショッピングカートは端末とスキャナーやセンサー等を搭載したショッピングカートで、買い物の利便性を高めることを目的にしている。
セルフレジ機能を搭載したスマートカートを使って買い物することでレジ待ち行列やレジ付近の混雑を解消する。
カート上でユーザーが会計も行うことで食品スーパーの課題である人手不足も緩和できるのだ。
アマゾン・フレッシュの新規店舗はスマートカートの利便性を強調して集客していくことになる。
ロサンゼルス国際空港からほど近い距離で、アマゾンのダッシュカートと競合する最新のスマートカートを試せる食品スーパーがある。世界最先端となる２種類のカートを比べることができるのだ。
南カリフォルニアで20店舗ほどの高級スーパーを展開しているブリストル・ファーム（Bristol Farms）は最新スマートカート「ケイパーカート３（Caper Cart 3）」を導入している。
ブリストル・ファームではサンタモニカ店（3105 Wilshire Blvd., Santa Monica CA 90403）にてケイパーカート３をすでに配置しているのだ。
ケイパーカート３は前機種のケイパーカート２より65％ほど収納容積が増えている。
全天候型のタフな作りで耐久性がアップした上に、カート本体にスキャン?カメラを4つ装備。商品バーコードの認識率が向上した他、液晶ディスプレーのUI（ユーザーインターフェース）を改良し使い勝手を向上させている。
ユニークなのは充電方法だ。
ポータブルチャージャーという装置が搭載されたカートに、（普通の）カートをスタックする（＝カートの背中側の空間に、他のカートの先頭を差し込んで数珠つなぎのようにする）と、つながったカート全部が充電される仕組みであり、面倒な充電作業を容易にしたのだ。
ケイパーカート３の使い方は簡単だ。タッチスクリーン上に映すハウツー動画を参考（もしくはスキップ）にし、スタートボタンを押して買い物を始める。
商品バーコードを４つのカメラに読み込ませながら商品をカートに入れていけばいい。野菜や果物・デリなどの量り売りはＰＬＵコード（もしくは商品名）を入力後、ゆっくりカートに入れればカートが計りになっていて計量してくれる。
重さと価格が表示されたら確認ボタンを押すとスクリーン上の買い物カートに商品が入る。
決済はチェックアウトのボタンを押して、タッチスクリーン横にある決済端末にクレジットカードを挿入すればお会計が終了する。
レシートが必要ならメールアドレスか携帯番号を入力しておけば即座に送付してくれるのだ。
ケイパーカート３では35ドル以上の買い物で「懸賞ルーレット」が回るようになっている。ルーレットには「２ドル引き」「５ドル引き」「10ドル引き」「15％引き」といったご褒美があり、筆者は５ドル引きを当てることができた。こちらのカートではその場で５ドル引きとなったのだ。
ケイパーカート３があるブリストル・ファーム・サンタモニカ店はロサンゼルス国際空港から12マイル（約19キロメートル）の距離で車での移動は20分弱となる。
フリーウェイを使って移動するのだがロサンゼルス国際空港との間にはダッシュカートを導入したアマゾン・フレッシュがある。
アマゾン・フレッシュ・ラデーラ・ハイツ店（6855 S La Cienega Blvd, Los Angeles, CA 90045）にダッシュカートの最新バージョンがある。
ダッシュカートとケイパーカート３はともに商品バーコードを読み込み、量り売りはＰＬＵコードを入力するなど買い物の仕方が同じ。
異なるのは買い物の始め方でダッシュカートはアマゾン・アプリにＱＲコードのインストア・コードを表示させ、ダッシュカートに読み込ませる必要がある。
こうすることでカートとユーザー・アカウントが紐付けられ、チェックアウト時にはクレジットカードを挿入する必要なく、専用レーン「ダッシュカート・エクスプレスレーン（Dash Car Express Lane）」を通ることで、会計もストレスフリーで済ませることができるのだ。
ロサンゼルス国際空港から10分程度でアマゾン・フレッシュに行き、そこから15分弱でブリストル・ファームとアクセスが非常に良い。さらにいえば2022年８月にオープンした51,413平方フィート（約1,440坪）のホールフーズ・マーケットも近くにある。
ホールフーズ・マーケットでは生体認証「アマゾン・ワン（Amazon One）」での買い物が可能だ。スマートカート２機種を試した直後に、フードホールを意識したホールフーズ大型店でアマゾン・ワンで手のひら決済ができる。
ロサンゼルスは流通ＤＸが起きているホットスポットだ。スマートカートだけでなく、大手チェーンストアなど様々なイノベーションで競争を繰り広げている。これを体験しない手はない。
トップ画像：ブリストルファーム・サンタモニカ店にあるケイパーカート３。ここから車で15分程度のところにあるアマゾン・フレッシュにはダッシュカートがあり、両者を比べることができるのだ。 続きを読む
2024年04月10日
【ホールフーズ・マーケット】、もジャスト・ウォークアウトを撤去！使用前・後の画像？
■ネット通販最大手アマゾンの傘下で自然食品スーパー最大手チェーンのホールフーズ・マーケットがテスト中の自動決済システム「ジャスト・ウォークアウト（Just Walk Out）」を撤去する。
アマゾンは先週、同じく食品スーパー「アマゾン・フレッシュ（Amazon Fresh）」に導入されているジャスト・ウォークアウトを全撤去すると発表。
同技術を他社に販売するアマゾンにとって、さらなる痛手となりそうだ。
流通を専門にするニュースサイトのグローサリー・ダイブ（Grocery Dive）がアマゾン広報担当者と確認したところによると、ワシントンＤＣとロサンゼルス郊外シャーマンオークスにあるホールフーズのジャスト・ウォークアウトを撤去し、セルフ・チェックアウト・レジを拡大する。
ワシントンＤＣにあるホールフーズ・マーケット・グローバー・パーク店（2323 Wisconsin Ave NW Washington, DC 20007）は2022年２月、21,500平方フィート（約600坪）とホールフーズでは小型ながらジャスト・ウォークアウトを導入しオープンした。
また翌月にはロサンゼルス・ダウンタウンから北西に13.5マイル（約22キロメートル）のシャーマン・オークス地区（12905 Riverside Dr, Sherman Oaks, CA 91423）に9,100平方フィート（約250坪）とさらに小型でオープンしたのだ。
ジャスト・ウォークアウトを導入したホールフーズは、支払い方法が大きく分けて２つあるハイブリッド型となる。
アマゾン・アカウントに紐付いているアプリのＱＲコード、クレジットカード（もしくはデビットカード）の挿入、さらに手のひらによる生体認証「アマゾン・ワン（Amazon One）」での入店＆決済方法だ。
入り口にあるジャスト・ウォークアウト用「スキャン・ツーエンター（Scan to Enter）」ゲートで、ＱＲコードをスキャンするか、手のひらをかざすか、クレジットカードを挿入（もしくはタップ）する。
売り場から出る際も出口ゲートで同じ方式をとることになる。
ハイブリッド型には、ジャスト・ウォークアウトとは別にキャッシュなどで支払いができる通常のレジもある。
ホールフーズ・マーケット・シャーマン・オークス店では有人のフルサービスレジ１台とセルフレジ３台となっている。
フルサービスレジも10アイテムもおけば一杯となるテーブル型だ。したがって現金を使用するフルサービスレジとセルフレジでは10アイテム以上の買い物はおけるスペースがないため買い物客には難儀になる。
なおシャーマン・オークス店で筆者は昨年10月、ジャスト・ウォークアウトの入場ゲートを撤去したことを確認している。
エントランスのゲートが無くしたもののジャスト・ウォークアウトのシステムは維持し、出口ゲート（４台）でＱＲコード、クレカ、手のひらで決済を行うのだ。
アマゾン・フレッシュに続いてホールフーズ２店舗からジャスト・ウォークアウトを撤去するのだが、このホールフーズの評判はどうなのだろうか？
顧客の生の声は、世界最大級のローカル情報向けの口コミサイト「イェルプ（Yelp）」で見ることができる。
グローバー・パーク店のイェルプでは29件のレビューが投稿されている。５ツ星評価で2.8と低評価だ。シャーマン・オークス店では98件ものレビューが投稿され、さらに評価が劣った2.3となっている。
カスタマーサービスのほか、ジャスト・ウォークアウトの評判の悪さが目につくのだ。
食品にオーガニックを積極的に選択するホールフーズ客はアマゾン・フレッシュの顧客より学歴が高く、年収も高い。天井からぶら下がった、1,000個にもなるカメラやセンサーでプライバシーが気になるのだ。
またジャスト・ウォークアウトの会計ミスなどのエラーもしばし指摘されている。
シャーマン・オークス店ではあまりに不人気なため週末でも駐車場がいっぱいにならず、客数の少なさも取り沙汰されているのだ。
なおホールフーズではアマゾンが開発したスマートショッピングカート「ダッシュカート（Amazon Dash Cart）」を６店舗でテストを行っている。
トップ画像：ホールフーズ・マーケット・シャーマンオークス店でジャスト・ウォークアウトの入場ゲートを通る研修参加者（上画像）。下画像：昨年10月にはこのゲートが撤去され出口ゲートのみ残されていた。右手には生体認証「アマゾン・ワン（Amazon One）」の登録端末が見える。 続きを読む
2024年04月09日
【Amazon Fresh】、ジャスト・ウォークアウト３店を閉鎖！差別化は"skin in the game"？
■ネット通販最大手アマゾンの食品スーパー「アマゾン・フレッシュ（Amazon Fresh）」は８日、３店舗を閉鎖した。
ローカルのニュースサイトやアマゾン・フレッシュのホームページから分かった。
８日までに閉鎖となったのは本社のあるワシントン州シアトル市内のキャピトルヒル地区にワシントンＤＣのローガン・サークル地区、バージニア州アーリントン地区にある店舗。
ローガン・サークル店（1733 14th St NW, Washington, D.C., DC 20009）は2021年７月にアマゾン・フレッシュ15店舗目でオープンした。
7,302平方フィート（約200坪）となったローガン・サークル店は800坪前後となる他のアマゾン・フレッシュと比べて極めて狭く、決済方法はキャピトルヒル店と同様に自動決済システム「ジャスト・ウォークアウト（Just Walk Out）」しかなかった店舗だ。
アーリントン店（1550 Crystal Dr Arlington, VA 22202）は2022年７月オープンとアマゾン・フレッシュではかなり新しく、35店舗目となった店舗だ。
13階建てのオフィスビルの１階部分にある16,000平方フィート（450坪）は小型店ながら、ジャスト・ウォークアウトと通常のレジで併用する、いわゆるハイブリッド型となっていた。
これによりアマゾン・フレッシュは44店舗から41店舗となり、各店のチラシ等を閲覧できる「アマゾン・フレッシュ今週のお買い得品（This week's deals at Amazon Fresh）」でも上述の３店舗は消えている。
アマゾンは先週、アマゾン・フレッシュにあるジャスト・ウォークアウトを撤去し同社が開発したスマートショッピングカート「ダッシュカート（Amazon Dash Cart）」に切り替えていくことを発表した。
アマゾン・フレッシュではジャスト・ウォークアウトとダッシュカートを同時併用した店舗はない。
アマゾン・フレッシュ18店舗に導入されているダッシュカートはホールフーズ・マーケット６店舗にも導入されており、カンザス州やミズーリ州のプライスチョッパー５店舗にもテスト展開されている。
今回スクラップとなった３店は200〜450坪で、通常のフルサービスレジにセルフレジの設置、さらにダッシュカート（１店当たり20台前後）を配備するには狭すぎたのだ。
なお２世代目となるダッシュカートは、軽量でキャパも増大し買い物の利便性がさらに向上している。
ダッシュカート2.0とも呼べる次世代版は、店内での走行が気軽にできるように大幅に軽量化されているのだ。
商品を入れるバスケットの容量はオリジナル版より約２倍に拡大している。これまでは買い物袋が２つだけしか入らなかったが、最先端カートでは４袋も搭載できる。
バスケットの下には通常のショッピングカートのように棚が設けられており、ビールケースなどのかさばる商品を置けるようにも工夫されているのだ。
スキャナーやスクリーン等を内蔵するデバイスの下にも、バッグなどの所有物が収納できるスペースが設けられている。
進化版ダッシュカートは屋外にもだせるよう全天候型に改良されているのも特徴。風雨に耐えられるほか、重量のあるものをバスケットに落下させるなど10万回に及ぶ耐久テストも行っているという。
ホールフーズのダッシュカート専用ページにあるＦＡＱには「通常のカートと同様にダッシュカートを店の外に持ち出して購入した商品を便利に降ろすことができます」とあるのだ。
なおジャスト・ウォークアウトを導入しているアマゾン・フレッシュが、いつダッシュカートに切り替えていくかについてはアマゾンは発表していない。
トップ画像：ジャスト・ウォークアウトの出口ゲートでクレジットカードを挿入。後藤はこれまで2,000〜3,000ドルはジャスト・ウォークアウトしてきた。コンサルタントは"Skin in the game"だ。 続きを読む
2024年04月08日
【ウーバーイーツ】、ロボタクシーでスタバにクリスピークリームドーナツも無人出前！？
■日本のウーバーイーツは先月、東京・日本橋エリアで出前ロボによるデリバリーを開始したが、アメリカでは無人カーによる出前を始める。
アルファベット傘下で自動運転技術を開発するウェイモ（Weymo）は３日、提携しているウーバーイーツとアリゾナ州フェニックスにてロボタクシーによる出前を開始すると発表した。
走行距離の長い多目的無人車で遠距離にあるレストランからの出前も可能となる。自律走行車による出前でプライバシーが保たれ、女性の一人暮らしも安心して注文できるメリットがある。
ロボ出前で対象となるエリアはチャンドラー地区、テンピ地区、メサ地区で225平方マイル（約580平方キロメートル）以上。
ユーザーは注文時に自動運転車による出前を選択できないものの「自動運転車が宅配する可能性があります（autonomous vehicles may deliver your order）」と表示される。
人による出前を希望する場合は決済時にオプトアウト（自動運転車による出前には不参加）を選択できるようになっている。
自動運転車による出前では、ドア・ツー・ドアのウーバーイーツとは異なり道路まで出ていく必要がある。
ユーザーはアプリを操作し、路肩に停まっている無人カーのトランクを開けるのだ。トランクにある注文品をピックしてトランクを閉めれば出前完了となる。
無人カーによる出前なのでチップは返金となる。
配達員がいないため女性宅を狙って配達スタッフが後日、訪ねてくる手口もない。
一方、レストラン等の提供側にとってはウーバーイーツの配達員のように店の中まで注文品を取りにくることはなく、店側が注文品をトランクに入れる必要があるため手間が発生する。
なおウェイモは2022年10月、フェニックスでタクシーサービス「ウェイモ・ワン（Waymo One）」を開始している。
昨年５月にはウーバーとの提携を発表し、既存の自動運転車両を出前にも拡大するとしていた。
今回の出前サービスでは、利用する車両をタクシーサービスの車両から割り当てることでスピーディな展開となる。
自動運転車によるデリバリーサービスが上手く行けば、オンデマンド買い物代行＆宅配サービスのインスタカートとも提携する可能性がある。
食品スーパーのカーブサイド・ピックアップでインスタカート・スタッフが注文品をトランクにのせるのだ。
利用者は自宅の前の道路まで出て、トランクから注文品が入った複数の袋を取り出して運ばなければならないがチップを節約できる。
デリバリーによる人件費もかからないのでネットスーパーも利用しやすくなるのだ。
例えばチェーンストア最大手のウォルマートも一部にウェイモとの提携をするようになればより安価に生鮮品等の宅配を提供できるのだ。
ウェイモのロボタクシーはフェニックスの他、サンフランシスコでも運行されており先月にはロサンゼルスの一部地域でもサービスが開始された。
テキサス州オースチンにも年内中に運行が開始される予定なのだ。
遠距離にあるスターバックスにクリスピー・クリーム・ドーナツも無人カーで出前できる時代になるのだ。 続きを読む
2024年04月07日
【Just Walk Out】、ファイアフォン以来の大失敗！も無人レジの正体はインド人だった？
■ネット通販最大手のアマゾンは傘下の食品スーパー「アマゾン・フレッシュ（Amazon Fresh）」から自動決済システム「ジャスト・ウォークアウト（Just Walk Out）」を撤去することを発表した。
事実上の失敗となったジャスト・ウォークアウトに大きな誤解が生じていた。
自動決済システムを大手メディア等が「実は人間が目視で監視して決済を補助するという非常にアナログな手法（it actually uses a very analog method, with humans visually monitoring and assisting with payments）」と報じたのだ。
日本語訳にもされているギガジン（Gigazine）では「報じられたところによると、膨大な数の精密機器と1000件の買い物に対して平均700件の人間のチェックが必要だったそうで、技術としてはあまり洗練されたものではなかったようです（It was reported that the technology was not very sophisticated, requiring a huge number of precision instruments and an average of 700 human checks for every 1,000 purchases）」と記されたのだ。
さらに「少なくとも1000人を超えるスタッフが監視のために働いていて、人の手で作業が行われることにより決済の遅れや誤りが多発したほか、プライバシー上の懸念も生じていました（At least 1,000 staff were working to monitor the transaction, and the manual process led to frequent payment delays and errors, as well as privacy concerns）」と酷評している。
これに続いて大手メディアであるＵＳＡツデーも「アマゾンのジャスト・ウォークアウトはインドの従業員1000人だった？（Does Amazon's cashless Just Walk Out technology rely on 1,000 workers in India?）」と題した記事を掲載した。
全米向け一般新聞でさえ、ジャスト・ウォークアウトは人工知能（ＡＩ）やコンピューターヴィジョンを駆使したものではなく、人が中に入っている自販機のように報じた。
「レジレス」「無人決済」とも呼ばれるジャスト・ウォークアウトは、インド人スタッフがモニターに張り付いてレジ係りをしているのではと疑ったのだ。
世界を驚かせた、アマゾン独自の決済システムは賃金の安い海外の労働力を使った、いわば"オフショアレジ係り"だったと怪しまれたのだ。
こういった誤解を生じたのは最初にジャスト・ウォークアウトの撤廃を報じたメディアの書き方がまずかったからだ。
インフォメーションは「インドにあるアマゾンのチームは2022年、ジャスト・ウォークアウト処理で1,000件中700件をレビューする必要があった（About 700 of every 1,000 Just Walk Out sales had to be reviewed by Amazon's team in India in 2022）」と記した。
この「レビュー（review）」が様々に曲解されて、ＡＩでなくアナログ手法だったことにされたのだ。
無論、誤解したメディアの報道にアマゾンは反応しＵＳＡツデーに「（店内のカメラを介して）買い物客をインド人スタッフが生中継でフォローしているというジャスト・ウォークアウトに対する誤解は、ミスリーディングであり不正確です」とし「多くのＡＩシステムと同様、マシーンラーニングを基本としながら合成データの生成や実際のビデオデータの解釈により継続的に改善しています」と回答。
また「ジャスト・ウォークアウトの高い精度基準を確認するため、スタッフがごく一部の買い物について録画されたビデオクリップをレビューしているのです」とし「アルゴリズムと人的確認の両方を使うことで精度改善に常に役立てています」としたのだ。
アマゾン・フレッシュ内にある数千というカメラを通じて、インド人が一人ひとりのお客の行動を事細かくフォローするというのはさすがに無理筋だ。
見方を変えればジャスト・ウォークアウトがあまりにも進みすぎたイノベーションであるため、誤解を招きやすいとも言えるだろう。
トップ画像：アマゾン・フレッシュにあるジャスト・ウォークアウトのカメラ＆センサー。その正体はインド人だった！？ 続きを読む
2024年04月06日
【99セント・オンリーストア】、全371店を閉鎖し精算へ！ワンプライス業態も陳腐化？
■カリフォルニア州など４州に371店を展開する百均チェーンの99セント・オンリー・ストアは５日、全店を閉鎖し企業精算を行うことを発表した。
先月もダラーストアを展開するダラーツリーが傘下のファミリーダラー1,000店近くの閉鎖を発表しており、百均チェーンの生き残りの難しさが浮き彫りとなっている。
1982年に創業した99セント・オンリー・ストアはカリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州、テキサス州に展開している。企業精算の発表と同時に全店で店じまいセールを開催するという。
閉鎖について同社ＣＥＯのマイク・セモンシック氏は「企業精算は非常に難しい決断であり、我々が望んでいた結果ではありませんでした」と語った。
また「ここ数年は新型コロナウイルス感染症パンデミックによる前例のないインパクトや消費者の購買行動の変化、万引によるロス率の上昇、頑固なインフレ圧力、その他のマクロ経済的逆風など小売環境において極めて大きな影響から事業継続が難しくなっていました」と原因を述べている。
99セント・オンリーストアを利用する低所得者層にとって、継続する物価高は家計を仕切る人にとっては大きな問題だ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると2019年以来、数百もの食料品の価格は50％以上も上昇した。労働省のデータによると２月の食料品価格は前年同月比１％上昇で値上げ幅は以前ほど大きくない。
しかし2023年２月には前年比10.2％も上昇していたし、2022年８月には前年比13.5％の上昇だったのだ。
高止まりしている印象からどうしても消費者はさらに安売りを見つけなければならない。また提供側にとっても物価高はそれまでの薄い利益をさらに薄利となる。
99セント・オンリーストアの本拠地のあるカリフォルニアでは薄利な上に大きな問題がのしかかる。万引などの盗難だ。
筆者は以前、同じくダラーストアであるダラーゼネラルでまるでジャスト・ウォークアウトのように飲み物をもって店からそのまま出ていく万引き犯を目撃したことがある。
隠すこともなく堂々した様子で、レジのスタッフもあっけに取られるばかりだった。日常的に万引が横行している状況では薄利多売のビジネスはサステナブルにならないのだ。
またネットショッピングになれた消費者は１ドル前後の安い商品でも、売り場まで行くことがなくなってきている。
中国の企業が運営する激安通販サイトのシーイン（Shein）やティームー（Temu）で、送料無料のネットショッピングを利用しているのだ。
バーゲンハンターもボーダーレスで安物探しに夢中となる。近所にあるダラーストアは素通りされてしまうのだ。
百均のユーザーはさらなる激安品を追い求めてビンストアにも行くようになっている。
ビンストアのビン（bin）とは大きな箱や大型容器のことを指す言葉で、ゴミなど廃棄する可能性のある物を収納することを意味する。
パパママストアの少人数で運営するビンストアはトラック一杯分の返品をリサイクル業者から二束三文で買い、ビックリするような激安価格で販売するのだ。
ビンストアでは物価高に金利高を背景にバーゲンハンターとなる顧客を集めているだけでなく、激安の買い物を趣味にするトレジャーハンター（お宝探し）をも魅了している。
返品にダメージ商品、売れ残り品を購入したリサイクル業者はまだ販売できそうな商品をサプライヤーとなってビンストア（bin store）に激安価格に卸す。
ビンストアに入荷した直後、それらの商品は10ドル前後で販売し、日を追うごとに値段を下げていくのだ。そして最終的に売れ残ったものはガラクタ価格とも言えそうな25セントになる。
バーゲンハンターには99セント・オンリー・ストアよりビンストアの買い物のほうが面白く映るのだ。
極めて少ない人員で動かすダラーストアも慢性的な人手不足の問題もある。カリフォルニア州では今月から、州内のファストフード店で働くスタッフの最低賃金を時給20ドルに引き上げられた。
州の全業種の最低賃金である16ドルより25％も高く、全米のファストフード店でも最も高い賃金水準になったのだ。
安い賃金しか提供できない99セント・オンリーストアからスタッフがマクドナルドに大量移動もありえるのだ。
つまり薄利な百均では賃金を上げることもできず、全1.4万人の従業員をつなぎとめることが難しい。
こういったことも影響し99セント・オンリーストアは企業精算となったのだ。
北米に16,774店のダラーストアを展開するダラーツリーは先月13日、傘下のファミリーダラー1,000店近くを閉鎖すると発表した。
ファミリーダラーは2019年も400店近くを閉鎖しており、度重なる再建策もマネジメントがうまく機能していない。
ダラーツリーは今年前半にもファミリーダラーの不採算店舗600店前後を閉鎖する計画。数年以内にもファミリーダラー370店とダラーツリー30店をリース満了時に閉鎖する。
これによりダラーツリーが2015年に買収したファミリーダラーは12％の店舗がスクラップされることになる。リストラとなるスタッフ数や閉鎖対象となる店舗等の詳細は明らかではない。
店舗閉鎖の日程について99セント・オンリーストアは明らかにしていないが、店じまいセールによってまちまちになりそうだ。 続きを読む
2024年04月05日
【Amazon Fresh】、初となる店舗閉鎖！ピックアップ返品拠点にもならずレジも置けない？
■ネット通販最大手アマゾンは今週末、シアトル市内にある食品スーパー「アマゾン・フレッシュ（Amazon Fresh）」を閉鎖すると地元紙が報じた。
アマゾン・フレッシュとしては初の店舗閉鎖となる。
シアトル・タイムズ紙によるとリストラとなる店舗は2020年２月にレジなしスーパーマーケット「アマゾンゴー・グローサリー（Amazon Go Grocery）」１号店として開業したアマゾン・フレッシュ・キャピトルヒル店。
シアトル・ダウンタウンから東にあるキャピトルヒル地区のアパート一階部分（600 E. Pike St., Seattle WA 98122）で10,400平方フィート（約300坪）の店舗だ。
アマゾンゴー・グローサリー２号店は2020年９月、シアトル郊外のレドモンド地区（2010 148th Ave NE, Redmond, WA 98052）にオープンしたものの１年弱で閉鎖となっている。
2021年10月に店名をアマゾン・フレッシュ（19店舗目）に変更した小型フォーマットは、アマゾンの自動決済システム「ジャスト・ウォークアウト（Just Walk Out）」のみで営業している。
アマゾンは２日、アマゾン・フレッシュからジャスト・ウォークアウトを撤廃し、スマートカートの「ダッシュカート（Amazon Dash Cart）」に切り替えていくことを明かしたのだ。
シアトル・タイムズ紙によるとアマゾン・フレッシュ・キャピトルヒル店では３日、スタッフ全員を集めたミーティングが開かれ突然閉鎖が告げられたという。
３日と４日は臨時休業され５日（金）〜７日（日）は最大75％オフとなる閉店セールを開催する。また店舗スタッフは他のアマゾン・フレッシュへの異動になるようだ。
アマゾン・フレッシュは2020年９月にロサンゼルス郊外ウッドランドヒルズ地区に１号店をオープンし、現在までに44店舗を展開中だ。
アマゾン・フレッシュは地域別には南カリフォルニアに18店舗、イリノイ州シカゴ郊外に９店舗、シアトルを中心にワシントン州とバージニア州にそれぞれ５店舗、メリーランド州とペンシルベニア州にそれぞれ２店舗、ニューヨーク州、ニュージャージー州にそれぞれ１店舗、ワシントンＤＣに１店舗となっている。
フォーマット別ではダッシュカートを導入したアマゾン・フレッシュはカリフォルニア州の９店舗を含め全部で18店舗となる。
この１年でシアトル市内のオーロラ店とロサンゼルス郊外パサデナ店はジャスト・ウォークアウトのハイブリッド型からダッシュカート導入店になっているのだ。
一方、フルサービス・レジとジャスト・ウォークアウトを併用したハイブリッド型アマゾン・フレッシュは24店舗となっている。
ジャスト・ウォークアウトのみのアマゾン・フレッシュはスクラップされるキャピタルヒル店とワシントンＤＣのローガン・サークル店の２店舗。
ローガン・サークル店（1733 14th St NW, Washington, D.C., DC 20009）もビルの１階部分にある7,302平方フィート（約200坪）と小型であるため、閉鎖される可能性が高い。
アマゾンにとって食品スーパーはネット注文品のピックアップ拠点＆返品拠点として重要なのだ。
注文品を店でピックアップしてもらうことで置き配による盗難を防ぐことができコスト的にも割安となる。
返品についても顧客に梱包等で手間を煩わせることなく、即座に返金できるメリットもある。返品拠点があることでリバース物流でもコスト面で有利になるのだ。
したがって注文品の一時保管等で狭量な小型フォーマットでは、繁忙期となる年末商戦やプライムデー・セールではどうしても手狭となる。
ジャスト・ウォークアウトのみのアマゾン・フレッシュでは新たにセルフレジやフルサービスレジを導入するのも無理が生じる。
アマゾン・フレッシュ１店舗あたりには20台前後のダッシュカートが配置されているが、キャピトルヒル店に複数のスマートカートを置けるスペースもないのだ。
したがってアマゾンは小型フォーマットでの食品スーパー展開は難しいと判断したと推測できる。
アマゾン・フレッシュでは15店舗目となるローガン・サークル店もいずれスクラップされる日が近いといえるのだ。
アマゾンＣＥＯのアンディ・ジャシー氏は昨年２月に「（アマゾン・フレッシュの）差別化と経済価値の方程式が見つかるまでアマゾン・フレッシュをしばらく出店しないと決めました」と発表した。
アマゾン・フレッシュとアマゾンゴーの苦戦を認めただけでなく出店凍結を明らかにしたのだ。
昨年７月にはアマゾン・フレッシュで「ゾーン・リード（zone lead）」と呼ばれる管理者が数百人規模でレイオフになった。これに前後して対面式のシーフード精肉コーナーも次々と閉鎖された。
また翌月にはシカゴ郊外のシャンバーグ店とオーク・ローン店が明るい基調の店内に改装され、クリスピー・クリーム・ドーナツのカウンターとセルフレジが導入された。改装される店舗として発表されたのだ。
1,500品目を新たに導入した店舗テコ入れは11月、ウッドランドヒルズ店に２号店目となるアーバイン店、そして2022年９月にオープンしたばかりの44店舗目となるパサデナ店にも施された。
店内改装だけでなくパサデナ店ではジャスト・ウォークアウトが撤去され、ダッシュカートが導入されている。
トップ画像：今週末で閉鎖となるアマゾン・フレッシュ・キャピトルヒル店。アパート一階部分（600 E. Pike St., Seattle WA 98122）で10,400平方フィート（約300坪）の店舗だ。 続きを読む
2024年04月04日
【Amazon Fresh】、ジャスト・ウォークアウトを撤廃！不適切にもほどがありすぎた決済？
■ネット通販最大手のアマゾンは２日、同社が開発した食品スーパー「アマゾン・フレッシュ（Amazon Fresh）」にある自動決済システム「ジャスト・ウォークアウト（Just Walk Out）」を撤廃することを明らかにした。
長年かけて開発した無人決済システムをスクラップにすることで、空港やスタジアムの売店など他社に同技術を販売するアマゾンの多角化戦略にも大きな影を落とすことになる。
ジャスト・ウォークアウトは、人工知能（ＡＩ）やコンピューターヴィジョンを駆使することで、レジでの精算なしで食品を買うことができる革新的なシステム。
お客は商品を手にとって出ていくだけで、代金は自動的に口座に請求される仕組み。レジ不要でレジ待ちの時間がなくなり、ストレスフリーで買い物ができるメリットがある。
ジャスト・ウォークアウトは2016年、アマゾンのコンビニエンスストア「アマゾンゴー（Amazon Go）」に導入され、2020年には食品スーパー「アマゾンゴー・グローサリー（Amazon Go Grocery）」（翌年には閉鎖）にも拡大された。
2021年にはハイブリッド型アマゾン・フレッシュとして通常のレジで併用するタイプも開始。2022年にはハイブリッド型はアマゾン傘下の自然食品スーパーチェーンのホールフーズ・マーケットにも２店舗に導入された。
ジャスト・ウォークアウトは外販もされており、一部のスポーツ観戦スタジアムやアリーナ、空港などの売店にも導入されている。
ジャスト・ウォークアウトはアマゾンゴー全23店のほかに全44店舗となるアマゾン・フレッシュでは27店舗、520店近く展開するホールフーズでは２店舗のみに導入されている。
ジャスト・ウォークアウトを導入しているサードパーティは130ヶ所を超えている。
アマゾン・フレッシュなどを統括する食品スーパー上級副社長であるトニー・ホゲット氏がインフォメーション（The Information）に語ったところでは、アマゾン・フレッシュ既存店のジャスト・ウォークアウトをスマートショッピングカートの「ダッシュカート（Amazon Dash Cart）」に切り替えていく。
またアマゾン・フレッシュは選択的に新規出店していき、ダッシュカートを導入した食品スーパーになるのだ。
アマゾンゴーやジャスト・ウォークアウトを設置したホールフーズについてはいまのところ継続していく考えだ。
アマゾン・フレッシュから破壊的技術をスクラップにする理由については、カメラで顧客の動きを監視することに膨大なコストに加え、多くの利用者にとってイノベーションが早すぎたことも示唆している。
また顧客からのフィードバックを受けた際、ショッピング直後にレシートと節約した金額を確認したい要望があったことも認めている。
ジャスト・ウォークアウトではゲートを出たあともレシートを受け取るまで大きなタイムラグがあるのだ。
レシート遅延を含めて当ブログで扱ったジャスト・ウォークアウトの問題点をもう一度上げておく。
＜ジャスト・ウォークアウト問題点＞
●購入品や購入金額が即座にはわからない
ジャスト・ウォークアウトで買い物後、ゲートを出てもすぐには何をいくら購入したのかがわからないのだ。アマゾンゴーはアマゾン・フレッシュで買い物すると、アマゾンのアカウントで購入履歴を閲覧できるようになっているのだが、即座には反映されない。
アマゾンゴー１号店のオープン当初は何をどれほど購入したかが５分程度で判明していたが、現在は数時間も待たされることがしばしばだ。１〜２品程度なら問題ないが、数十品の購入で合計金額等がすぐに提示されないのは不快だ。
クーポンを使っても、ディスカウントされたかどうかもあとにならなければわからない。
●エラーが多い
ジャスト・ウォークアウトで買い物すると問題になるのが、エラーが多いということだ。購入していないのに購入しているとなっていたり、逆に購入しているのにレシートに反映されていなかったりだ。また生鮮品などでは数量を間違えるのも結構多いことだ。
筆者は生活者として何度もアマゾン・フレッシュで買い物を繰り返しているが、２回に１回の割合で間違いを見つけている。
●カメラ・センサーが不気味で室温が寒い
ジャスト・ウォークアウトでは買い物客の行動をフォローするように天井からセンサー等が何千と設置されている。
いつも見られているようでプライバシーを気にする人などは視線を感じて不快になることもあるだろう。女性など一部のお客の中には一挙手一投足などの立ち居振る舞い、しぐさを常にフォローされている感覚となる。
冷え性の人にとって不快になるのは、他の店に比べてジャスト・ウォークアウトを導入しているアマゾン・フレッシュは寒いということがある。
精密機器のセンサーが山のようにあるため室温を常に下げておかなければならない。したがってどんな真夏日であってもスタッフはいつも長袖となる。
ジャスト・ウォークアウトが不人気で使われないという裏付けは年１のプライム会員専用セール「プライムデー（Prime Day）」での珍事が有名だろう。
アマゾンは2022年の７月12日と13日、アマゾン・フレッシュでもプライム会員に向けたセールを行った。40ドル以上の買い物で20ドル引きとなるディープディスカウント等のセールを行っていた。
いつもはまばらな駐車場が平日の午前中にもかかわらずほぼいっぱいになるほど盛況だった。４台ある有人レジには店の中央にまで長い行列ができていた。
その一方でジャスト・ウォークアウトで買い物する人はほとんどいなかったのだ。有人レジではその場で値引きされた金額がわかり、合計金額等を確認もできる。
しかしジャスト・ウォークアウトではすぐには何をいくら購入し、40ドルで半額になるクーポンがちゃんと適用されたかもわからない。
アマゾン客も（有人レジの）長い行列を待つほうが価値があると判断しているのだ。
レビューサイトのイェルプ（Yelp）でも上記の問題点はレビューワーから度々指摘されている。
またインフォメーションによるとアマゾン・フレッシュのジャスト・ウォークアウトの決済処理では1,000件に700件で人的査読が必要だった。
アマゾンでは1,000件中50件以下の割合での人的レビューを目標としていたが、実際は目標に大きく届かなかったのだ。
トップ画像：廃止が明らかになったアマゾン・フレッシュのジャスト・ウォークアウト専用ゲート（右側）。多くのお客はジャスト・ウォークアウトの専用ゲートを避けて、左側にある一般ゲートから店内に入る。 続きを読む
2024年04月03日
【イケア】、ペットの"あるある"で割安感をキャンペーン！ワンコの高い共感能力に感動？
■世界最大手の家具チェーンのイケアは最近、犬や猫などのペットと生活する上での"あるある"でお手頃価格を訴求するキャンペーンを始めた。
巣ごもり生活となったコロナ禍からペットを飼い始める世帯が急増する一方、ペットオーナーが思わず「あるある」とうなずいてしまうコマーシャルをイケアが開始したのだ。
それは犬や猫が家具を破壊するというもの。室内飼育が当たり前になった今、ペットオーナーをときおり悩ませるのが犬や猫の破壊行動。
壁紙をビリビリにしたり、家具をかじってボロボロにしたり、クッションやソファーは中わたが飛び出すまで破壊するといった行為だ。
イケアのペット世帯に向けたキャンペーンは、植物の鉢をひっくり返したり、花瓶と落として割っていたり、クッションがボロボロになっていたり、マグカップが割れてコーヒーが散らかったりを映したもの。
申し訳なさそうにする子犬や猫もフレームに入れながら「心配しないでください、余裕で買えますよ（Don’t Worry, You Can Afford It）」と表示するのだ。
英語のアフォード（Afford）とは「（金銭的・時間的・心理的に対して）余裕がある」という意味で"You can afford it"で「それを買える余裕があるほど安い」であり、「余裕で買えますよ」ということになる。
つまりイケアでは鉢や花瓶、クッション、マグカップもお手頃価格で販売している、ということになる。
壊れたものが部屋中で散乱する様子はペットオーナーなら一度は遭遇することなので印象として強く残っている。
ペットオーナーのもつあるあるイメージを上手く使いながら値段を訴求しているのがイケアのスマートなマーケティングなのだ。
実際、ペットオーナーが増えているばかりか、ペットに使う支出も拡大の一途となっている。
アメリカペット用品協会（ＡＰＰＡ：America Pet Prduct Association）が最近発表したレポートによると、アメリカ国内のペット市場の規模は2023年、前年（1,368億ドル）から7.5％増加し1,470億ドル（約22.2兆円）となった。
二桁成長となった2021年と2022年からは成長が鈍化しているものの引き続きペット市場が元気であることがわかるだろう。
ペット関連支出の内訳を見ると、全体の約４割を占めるペットフード＆おやつは昨年、インフレの影響もあり10.8％も増加し644億ドル（9.7兆円）になった。
オーガニックなど高額なペットフードや高級ペット用おやつへの関心がペットフード支出を押し上げているのも要因だ。
またペット医療（獣医医療）への支出は2022年から6.7％の増加となる383億ドル（5.8兆円）となったのだ。これは2023年のペット市場規模全体でみると４分の１となる26.1％となるのだ。
犬や猫といったペット購入の市場規模は前年から1.6％と微増して320億ドル（4.8兆円）にとどまった。2021年は15.1％の増加、2022年は17.8％の増加から比べると鈍化の具合が分かるだろう。
コロナ禍では寂しさからペットを飼い始めた人が急増したものの、最近の物価高の影響がありお金がかかるペット購入を控える傾向が強まっている。
グルーミングなどのペット関連サービスも増加し7.9％増となる123億ドル（1.9兆円）となったのだ。
ペットホテルやしつけ教室などのトレーニング、デイケア（一時預かり）も2021年の17.3％の増加から、2022年は8.3％の増加となり、昨年は7.9％と鈍化している。
ペット支出ではこういったサービスでの費用が厳しくなっている様子が見え隠れする。
急拡大するペット市場にはチェーンストア最大手も反応した。ウォルマートは昨年９月、同社では初となるペットサービスをオープンしたことを発表したのだ。
ここのところ富裕層を上手くとりこんでいるウォルマートが利益率の高いペットサービスに本格的に乗り出す。
犬用にセルフウォッシュルームまで完備した「ペットサービス（Pet Services）」センターはアトランタ郊外ダラス地区にあるスーパーセンター（3615 Marietta Hwy, Dallas, GA 30157）にある。
専用のエントランスをもつウォルマート・ペットサービスではペットサービスを提供するペットＩＱ（Pet IQ）と提携し獣医サービスにグルーミング等のサービスも提供している。
ペットサービスでもウォルマートはエブリデー・ロープライスに明瞭会計プランで顧客にワクチン等を提供。
例えば狂犬病ワクチンは25ドル、定期検診は70ドル、医療サービス等をトータルにパッケージしたサービスは97ドルとなっている。
詳細は明かされていないもののペットサービスのサービスリストには子犬サービス（77ドル）や子猫サービス（85ドル）も表示されている。
グルーミングでは爪切りが15ドル、シャンプーが24ドルからとなっており、シャンプーやトリミングを含めたグルーミングは42ドルからとなっている。
専用ルームで飼い主がセルフでシャンプーを行う場合は９ドルという価格設定だ。
生鮮品など食品を扱う売り場にペットなどの動物を持ち込むことが禁止されているため、ペットサービスでは買い物中のペットの一時預かりも行うとしている。
ウォルマートでは2016年から獣医サービスを開始しており、現在までに65店舗で展開している。ウォルマートにある全薬局ではペット用の医薬品も扱っており、処方箋にも対処できるのだ。
ウォルマートでは同社のサブスクリプション「ウォルマート・プラス（Walmart +）」の会員に期間限定オファーとして、ペット保険のパープ（Pawp）のサービスも特典に加えディスカウントも提供する。
ＡＰＰＡは2030年のペット市場を2,500億ドル（38兆円）と予想している。
ペットを絡めた"あるある"キャンペーンから、これまでになかったペットサービスまで様々な取り組みが小売チェーンで見て取れそうだ。 続きを読む
2024年04月02日
【米国流通視察】、「学校の『タブレット教育』格差」と同じことが企業間でも起こる！？
■日本の東海テレビは昨年５月、「ただの連絡帳と化した学校多く．．．『タブレット教育』格差はなぜ生まれるのか？同じ学校で"先生単位で差"も」を報じた。
日本政府は５年前、義務教育を受ける児童生徒のために１人１台のパソコン等と高速ネットワーク環境を整備する「ＧＩＧＡスクール構想」を開始した。
この構想から４年ほど経過したが、多くの小学校で１人に１台ずつのタブレットが配られたものの同じ公立の小学校でもタブレットを活用した教育レベルに大きな格差があることがわかったのだ。
東海テレビが学校間で起きているデジタル格差の原因を追ったレポートだ。
名古屋市東区の市立矢田小学校では生徒がリレーのバトンパスの技術をタブレットを使って向上させている。その様子を再生しながら生徒でフィードバックを行っているのだ。
算数の授業では生徒がタブレットを使いながら課題に取り組み「できる子・できない子」を先生がリアルタイムで把握する。
子供たちの理解度から先生やできる生徒が個別でサポートする、まさに授業のパーソナライゼーションを行っているのだ。
同番組では基礎的なプログラミング操作からオリジナルのゲーム作りまで行うＩＴプログラミング教室についても取り上げている。
90人が通う同プログラミング塾は最大で１年待ちになっているほどの人気だという。塾に通う生徒によると（ＧＩＧＡ構想に遅れている学校では）クラス間でデジタル格差があり、先生から学習ソフトやタブレットまで禁止されているのだ。
この番組では学校間のデジタル格差から、タブレットをほとんど活用できていない学校もあると指摘している。
さすがにデジタルを禁止している学校を報じることはなかったが、なんとか頑張っている学校を取材しながら校長先生から「学校間格差」という原因を引き出しているのだ。
「先生達の中には、やはりちょっとパソコン苦手だとか、こういうの使った授業ってやりづらいって感じてる先生もいることは事実」は校長の言葉だ。
また市の教委学校ＤＸ推進課の担当者も「“学校ごとの格差”だけでなく、先生１人１人の能力の違いによって格差があることを認識」と話している。
つまり先生個人の能力でデジタル格差が学校間で生じているというのだ。
コンサルタントである筆者は同番組を視聴しながら米国流通視察でも全く同じことが起こっていると感じた。
アメリカで流通研修を行うと100％といっていいほどモバイルアプリ等を使うことになる。
チェーンストア最大手のウォルマートでは３年連続してＤＸ等への設備投資を増やしている。例えばウォルマートのストアアプリは１ヶ月間に最大10回もアップデートされているのだ。
昨今大きな話題になっている生成ＡＩ機能もウォルマート・アプリからアマゾン・アプリにまで実装されている。
アメリカ小売業ではデジタルから逃れられないほど大きく変化し、買い物がより便利に進化している。
日本の流通より５〜10年先をいくアメリカ流通業の視察も、全くデジタルを使わない研修もある。
研修といっても店舗めぐりにとどまり、売り場に陳列・商品パッケージなどを見て回るだけの視察研修だ。
研修内容に基本・基礎・本質・原理原則など仰々しい言葉が並ぶものの、アメリカ流通のイノベーションやリアルタイムで捉えた現場内容はまったくない。
"徹底指導"の研修カリキュラムも売り場の価格調査等、日本でも学習可能なアナログのみで構成されておりデジタルからは距離をとっている。
むしろタブレットやスマートフォンを使った買い物については避けているような印象だ。
しかしアメリカ小売業ではセルフレジにスマホレジ、レジカートが売り場で使われており、現場でデジタルを回避できない。
具体的にいえばネットスーパーのカーブサイド・ピックアップにスキャン＆ゴー、アマゾンのダッシュカートやインスタカートのケイパーカート、ファストフード店のモバイルオーダーにロボット出前、さらには拡大しつつある店からのドローン空輸もある。
スマホを自在に操るＺ世代は大きく台頭する消費者であり、アプリでの買い物を提案にしなければ生き残れないのだ。
小学校のデジタル格差でも見たように、流通視察も研修を引率するコンサルタント自身がデジタル不案内となっている。
原因の一つは流通コンサルタントの高齢化だ。彼らが世界最先端になるアメリカ流通に追いついていない、言葉は悪いが老害コンサルタントに根本原因がある。
アメリカ小売業のストアアプリは小学生でも使えるほど使い勝手が向上している。小学生の場合、学校間・地域間のデジタル格差でしょうがないかもしれないが、企業が負担するビジネス研修ではコンサルタントの能力で妥協を許してはならない。
トップ動画：東海テレビが報じた「ただの連絡帳と化した学校多く．．．『タブレット教育』格差はなぜ生まれるのか？同じ学校で"先生単位で差"も」。番組を画像＆テキスト化したものはこちらでも読める。自分たちの子供は大丈夫だと思っても、流通研修ではどうだろうか？と考えてほしい。 続きを読む
2024年04月01日
【スマートカート】、アマゾン対インスタカートのレジカートシェア競争！御社はどっち？
■独立系スーパーマーケットへの国内最大の協同食品卸売業者であるアソシエイテッド・ホールセール・グローサーズ（Associated Wholesale Grocers）とオンデマンド買物代行＆宅配サービス最大手のインスタカートは25日、ネットスーパー展開で提携していくことを発表した。
ホールセール・グローサーズに加盟する地域の食品スーパーがインスタカートのネットスーパーテクノロジーを導入する。
加盟スーパーの約800店でインスタカートの宅配サービスを提供しているが、提携合意により2,300の加盟店がネットスーパー展開が可能になるのだ。
さらにコンピュータービジョンとＡＩを利用したスマートカートのケイパーカートも加盟店でテストが行われる。
日本でＡＩレジカートとも呼ばれるスマートカートはセルフレジ機能を搭載したショッピングカートだ。
ケイパーカートはインスタカート傘下のケイパーＡＩ（Caper AI）が開発したスマートカートでコネチカット州に７店を展開する食品スーパーのゲイスラーズ・スーパーマーケット（Geissler's Supermarket）に導入されている。
最新版となるケイパーカートはニュージャージー州スポッツウッド地区にあるショプライトやニューヨーク・マンハッタンにあるフェアウェイ・マーケットでも導入されテストが行われている。
昨年８月にはミズーリ州など中西部４州に115店を展開する食品スーパーのシュナック・マーケット（Schnuk Markets）がケイパーカートの実験をセントルイスの店舗で行うと発表した。
またロサンゼルス郊外に展開する高級スーパーのブリストルファーム（Bristol Farms）も、一部の店舗でテストを続けている。
アソシエイテッド・ホールセール・グローサーズとの提携で一気にケイパーカートが加盟スーパーに拡大する可能性がある。
その一方、ネット通販最大手のアマゾンが開発したスマートカート「ダッシュカート（Amazon Dash Cart）」でも興味深い動きがあるのだ。
ダッシュカートのホームページになんとアソシエイテッド・ホールセール・グローサーズの加盟スーパーの店名が記されている。
アマゾンが開発した食品スーパー「アマゾン・フレッシュ（Amazon Fresh）」の18店舗にアマゾン傘下で自然食品スーパー最大手のホールフーズ・マーケット６店舗にダッシュカートが導入されている。
そこにミズーリ州とカンザス州に展開するマキーバーズ・マーケット（Mckeevers Market）とプライスチョッパー（Price Chopper）の５店舗が店名と住所とともに表示されているのだ。
これらについてアマゾンとアソシエイテッド・ホールセール・グローサーズからプレスリリース等は３月31日時点で発表されていない。
ただアソシエイテッド・ホールセール・グローサーズの加盟スーパーがインスタカートとアマゾンのスマートカートを導入することは間違いなさそうなのだ。
実は筆者は全米小売業協会（NRF）が主催する世界最大規模の小売業の展示会「NRF2024リテール・ビッグショー（NRF2024 Retail's Big Show）」でアマゾンとインスタカートの両ブースでそれぞれのスマートカートを見ることになった。
自動決済システムの「ジャスト・ウォークアウト（Just Walk Out）」や生体認証デバイス「アマゾンワン（Amazon One）」のようにダッシュカートもまたアマゾンは外販を開始していたのだ。
ニューヨークで１月に開催されたコンベンションでアソシエイテッド・ホールセール・グローサーズ関係者が２つの異なるスマートカートの興味を示したと推測できる。
可能性として両スマートカートを加盟店で試させてみて、お客からの反応を見ながらケイパーカートもしくはダッシュカートの導入を決定するのだ。
ケイパーカートの最新版となるケイパーカート３とダッシュカートの最新バージョンはカートに内蔵されたカメラが商品バーコードを読み取って認識する。
両カートともカート自体が計量器となっていることからタッチスクリーンに商品コードを入力することでカートに商品を入れると質量を計り価格を割り出してくる。
どちらも買い物途中の使い方に大きな違いがないのだが、ひとつだけ異るポイントがある。それは決済手段だ。
ダッシュカートは起動時にアマゾン・アプリで表示したインストアコード（ＱＲコード）を読み込ませることでアマゾン・アカウントと紐付けることになる。
決済はレジ横にある専用のレートを通れば自動的に決済しアマゾン・アカウントからの支払いとなる。
一方、ケイパーカートは買い物が終わった際にカートに搭載した端末にクレジットカードを挿入しカード払いで会計になる。
ダッシュカートは最近、スクリーン上でユーザーの店内位置を表示しお買い得品の訴求も一部で開始している。
ケイパーカートはスクリーンに広告等を表示しリテール・メディアとして新たな広告収益源を確保しようとしている。
アマゾンとインスタカートは独立系スーパー等を中心にスマートカートのシェア争いをしていくことになりそうだ。
トップ画像：「NRF2024リテール・ビッグショー（NRF2024 Retail's Big Show）」のアマゾンブースではデモンストレーションされていたダッシュカート。アマゾンはスマートカートをジャスト・ウォークアウトやアマゾンワンのように外販し始めたのだ。 続きを読む
2024年03月31日
【ドローン宅配】、次世代はロッカー？コスト安も安全に「あったらいいな」をカタチへ！
■すでに実用段階に移っているドローン宅配ではコスパよくスケールが可能なフェーズを模索しつつある。
とくにドローン宅配でネックとなる宅配物をドローンに装着する人的部分の省力化が大きな争点となっているのだ。
課題となるのはドローンが来るのを待ち、ホバリング中に降ろしてきたケーブルを掴み、先端のフックに専用パッケージをつける作業だ。
ドローンを外で待つ時間だけでもコストが費やされてしまい、一つ一つの箱を装着するにも作業員に大きなストレスを与えてしまう。
これを解消するためにグーグルの親会社アルファベットの関連企業でドローン宅配のウィング（Wing）はオートローダー（Autoloader）を発表した。
ドローン開発のジップライン（Zipline）はドッキングステーションのある新システムを開発している。
ウィングやジップラインとともにチェーンストア最大手のウォルマートと提携するスタートアップのドローンアップ（DroneUp）もロボットポートを明かしたのだ。
高さ２メートル近くあるドローンアップの「ＤＢＸ（Distination Box）」は駐車スペース１台分程度を要するドローン専用ポートだ。
ロッカーにもなるＤＢＸが注文品が入ったパッケージをドローンに自動装着するロボットになるのだ。
ドローンアップによると注文品が入ったパッケージに専用のバーコードステッカーを貼り、それをＤＢＸにあるスキャナーで読み込ませて横のロッカードアを開ける。
ロッカー内にパッケージを置くと自動的に計量され、ドローンの最大積載量10ポンド（約4.5キログラム）以下であることを確認する。
パッケージはＤＢＸ上部に運搬され、指定されたドローンがパッケージ部分の取っ手を掴みピックアップして指定されたユーザー宅へ空輸することになる。
ＤＢＸではドローンにピックアップされるまでパッケージが一時的に保管されることで、一度に複数のパッケージが待機できることになる。そのため１時間で最大50個のピックアップキャパシティを有することができるという。
つまりスタッフはドローンのピックアップを待つ必要がなく、ＤＢＸにパッケージが満杯になるまで預けることが可能になるのだ。
一方、ウィングのＹ字型の支柱となるオートローダーではＶ字型に２メートルも伸びた２本の細長い棒がドローンからのケーブルを挟み込むように誘導する。
ドローンから降ろしたケーブルのフックがＹ字の交差するポイントまでいき、下からパッケージの取っ手を引っ掛けることになる。
動力源を持たないオートローダーは１台に１個のパッケージしか待機できないのだ。そのためＤＢＸに比べてコスト安だが、複数のオートローダーを持たなくてはならない。
複数の注文を一度にさばくため例えば10台のオートローダーを設置すれば費用がかかる上に離れた場所にあるオートローダーならスタッフは異動しなければならず時間的コストが発生するのだ。
またジップラインの子機をもつ次世代型ドローン「Ｐ２ジップ（Platform2:P2 Zip）」とドッキングステーションではポートの導入で工事が必要となる。
アップルが開発したマグセーフ・チャージャーのような形をしたドッキングステーションの支柱を施設の外に設置し、そこから室内に伸びるシューター（換気口のような通路）も導入しなければならないのだ。
Ｐ２ジップがドッキングステーションで充電している間、そこから子機のドロイドがシューターを通じて降ろされ、スタッフがドロイドの上部カバーを開けて配達品を入れる。
スタッフが屋外にでなくても配達品をドロイドに積み込むことができるのだが、最大でも数個分のパッケージの処理で作業キャパがいっぱいになってしまう。
作業スタッフがドローンにピックアップされるのを待つ必要もでてくるのだ。
ドローンアップではＤＢＸを利用することで人件費を大幅に低下できるため注文１件当たりのコスト38ドルが最大で10ドル弱になると試算する。ＤＢＸは年内中にダラスやバージニアビーチでの実証実験を行うとしている。
トップ画像；ドローンアップのロボットポート「ＤＢＸ（デスティネーションボックス）」。高さ２メートル近くあるＤＢＸは駐車スペース１台分程度を要するドローン専用ポートだ。
DBXのPR動画。ＤＢＸはドローンにピックアップされるまでパッケージが一時的に保管されることで、一度に複数のパッケージが待機できることになる。そのため１時間で最大50個のピックアップキャパシティとなる。 続きを読む
2024年03月30日
【アマゾンワン】、専用アプリで「手のひら登録」が"いつでもどこでも自宅でも"可能へ！
■ネット通販最大手のアマゾンは28日、同社が開発した生体認証デバイス「アマゾンワン（Amazon One）」で手のひら登録を可能にする専用アプリを発表した。
以前はアマゾンの店舗で専用デバイスを使って手のひら登録を行う必要があったが、アマゾンワン・アプリ（Amazon One App）でいつでもどこでも手軽にサインアップが可能となる。
アマゾンワンの認証システムは、手のひらと静脈パターンのパターンからＡＩで認証データを作成し、店舗のスキャナーでそれを読み取ることで決済から本人確認、入退場の管理などを可能にするシステムだ。
アマゾンワン・アプリからのサインアップでもユーザーは同アプリとアマゾン・アカウントと紐付けたあとにスマートフォンで両手を片方づつ撮影しながら登録していく。
アマゾンワンの読み取り用スキャナーは、アマゾンの食品スーパーの「アマゾン・フレッシュ（Amazon Fresh）」やコンビニエンスストア「アマゾンゴー（Amazon Go）」の店舗のみに置かれていたが、現在ではアマゾン傘下のホールフーズ・マーケットの全店にも導入されている。
アマゾンはまた自動決済システム「ジャスト・ウォークアウト（Just Walk Out）」と同様にアマゾンワンのシステムも外販も積極的に進めていることで空港にスポーツ・スタジアムやアリーナの売店、レストランにも決済手段として導入されている。
外食チェーン大手もアマゾン・ワンに興味を示しており、北米に2,100店以上のベーカリーカフェチェーンを展開しているパネラブレッドとも提携した。
パネラブレッド本社のあるミズーリ州セントルイスの近郊のブリッジトン地区とタウン・アンド・カントリー地区の２店舗に１年前からテスト導入されている。
またアマゾンワンはオフィス向けの入退室管理システムとしての拡大も目指している。
「スマートロック」とも呼ばれる入退室管理システムは、オフィスのドアの施錠や解錠をする際、従来型の錠を使うのではなくスマホやカードなどをリーダーにかざして行う。一般的には社員証をオフィスの鍵にしたり、入退室ログのダータを勤怠システムとしても活用されている。
アマゾンワンでは社員証の代わりに社員の手のひらで入退室できるようにする。
アマゾンによると、アマゾンワンをオフィスに導入する大手企業としてホリデーイン等のホテルチェーンを展開するＩＨＧホテル＆リゾートやセキュリティドアや回転ドアのメーカーであるブーンイダム（Boom Edam）、エレベーターや自動ドアのメーカーであるコネ（Kone）を上げている。
導入コスト等は明らかにしていないものの、パスワードやＩＣカードを使った従来型の入退室管理システムより安価であるとしているのだ。
アマゾンは2022年５月、コロラド州デンバーにあるスタジアム「クアーズ・フィールド（Coors Field）」で年齢確認の機能をローンチしたことを発表している。
手のひら認証により、免許証等のＩＤを出さなくてもアルコールを購入できるのだ。アマゾン・ワン年齢確認が導入されたのは、
ＭＬＢの球場としては初の導入となった醸造所「サンドロット・ブリューワリー（SandLot Brewery）」と地ビールも提供するフルサービスバー「シルバー・ブレット・バー（Silver Bullet Bar）」。
年齢登録はアマゾンワンの個人アカウントでスマートフォンなどカメラ機能がついたモバイルで行う。免許証などの物理カードの表・裏に自撮りも撮影する。
年齢認証を完了したユーザーがバーにあるアマゾンワン端末に手のひらをかざすと、バーテンダーが21歳以上であることと自撮り画像を確認できるようになっている。
ユーザーも財布からＩＤを取り出す手間を省けるほか、バーテンダーもスピーディにアルコール等の飲料をサーブできることになるのだ。
アマゾン・ワンの年齢認証機能はクアーズ・スタジアム以外でも拡大する計画で、酒飲みの痛点がなくなることでスポーツ観戦でもビール等のアルコール類がさらに売れことになる。
アマゾンワンの決済システムはアマゾン本社のあるワシントン州シアトル市内の商業施設での拡大が特に際立っている。
アマゾンキャンパス内のレストランやカフェ、アマゾンが命名権を取得して名付けたアリーナ｢気候誓約アリーナ（Climate Pledge Arena）｣、シアトル・マリナーズのホーム球場「T-モバイル・パーク（T-Mobile Par）」、その隣に位置する多目的スタジアム「ルーメン・フィールド（Lumen Field）」のそれぞれの売店等にもアマゾンワンが導入されている。
シアトル市内ではデリカテッセンのショップやマカロン専門ショップ等やベーカリー、複数店で展開する「マイティＯドーナツ（Mighty-O Donuts）」、アジア系カジュアル・フュージョンのレストラン「チマック（Chimac）」など個人経営の飲食店にもアマゾンワンは拡大しているのだ。
珍しいところではシアトルのランドマークで展望台や回転するレストランを有する「スペース・ニードル（Space Needle）」にも導入されているようだ。
アマゾン以外で150ヶ所に導入されているアマゾンワンは決済等ですでに800万回以上の利用実績がある。
アマゾンワンによる誤検出はこれまで一度もなかったと主張。本人になりすますために複製することも不可能でプライバシー等の問題もないとしている。
生体認証デバイス「アマゾンワン（Amazon One）」で手のひら登録を可能にする専用アプリのＰＲ動画。以前はアマゾンの店舗で専用デバイスを使って手のひら登録を行う必要があったが、アマゾンワン・アプリ（Amazon One App）でいつでもどこでも手軽にサインアップが可能となる。 続きを読む
2024年03月29日
【クローガー】、ネットスーパー物流拠点３ヶ所を閉鎖！オマハビーチ上陸が大失敗？
■スーパーマーケット最大手チェーンのクローガーは27日、オカドと提携しているネットスーパー物流のスポーク拠点３ヶ所を閉鎖することを発表した。
スクラップとなる物流拠点には傘下の食品スーパーのないところも含まれており、クローガーの野心的なネットスーパー戦略で大きな後退を意味する。
５月25日に閉鎖となるのはテキサス州サンアントニオ、オースチン、フロリダ州マイアミ郊外オパロッカにある、ネットスーパー用のフルフィルメントセンター（Fulfillment Center:FC）。
オカドと協業するクローガーのネットスーパー物流ではハブ＆スポーク方式を採用している。
ハブ＆スポーク方式とは、車輪やプロペラなどの中心部となるハブ（hub）と、車輪の中心軸と輪を繋ぐ棒のスポーク（spoke）から命名されたネットスーパーの物流ネットワーク。
ちょうど自転車の車軸のハブから何本もの輻（や）であるスポークが放射線状に伸びている形をイメージするとわかりやすいだろう。
ハブとなる中心拠点にネットスーパーで注文となる貨物を集約させ、スポークの配送拠点でそれらを仕分けてユーザー宅に運搬する効率的な物流システムとなる。
クローガーではズーム（Zoom）と呼んでいるスポーク拠点ではクロスドッキング方式の小型フルフィルメントセンターとして注文品が仕分けされ、バンを使って利用者宅に宅配するのだ。
今回のスクラップでは、３ヶ所の小型フルフィルメントセンターが対象となった。
2022年８月にオープンしたサンアントニオＦＣは67,000平方フィート（約1,900坪）。2023年２月から稼働を始めたオースチンＦＣでは70,000平方フィート（約2,000坪）となる。
オースチンと同じ頃にオープンしたオパロッカＦＣはフロリダ州のスポーク拠点としては４ヶ所目となり60,000平方フィート（1,680坪）だ。
サンアントニオとオースチンのハブ拠点は35万平方フィート（約9,800坪）のダラスにあるカスタマー・フルフィルメント・センター（ＣＦＣ：Customer Fulfillment Center）。
オパロッカのハブ拠点は37.5万平方フィート（1.05万坪）を誇るフロリダ州グローブランドＣＦＣだ。
最大では40万平方フィート（1.12万坪）にもなるＣＦＣは生鮮品から日用品まで3.5万品目の在庫を保管・処理する能力を持ち、最新の人工知能（ＡＩ）やロボティクスの技術を活用しながら24時間稼働する。
「オカド・シェド（Ocado Shed）」とも呼ばれるＣＦＣは50アイテムを最短で３分でピッキングする1,000台以上のロボットが動いているのだ。
配送準備を完了するまでに掛かる時間は５分程度となる。約400台のバンやトラックで90マイル（140キロメートル）圏内にある店や利用客に届けるようになっているのもＣＦＣの特徴だ。注文の当日もしくは翌日の宅配となる。
なおクローガーはフロリダ州で傘下のスーパーとなるハリス・ティーター１店舗しか展開していない。しかも場所はフロリダ州の北部だ。
マイアミ地区などのフロリダ州南部はクローガーは無名に近い存在でいわば新参者となる。
フロリダ州は地場スーパーであるパブリクスの牙城であり860店舗も展開。チェーンストア最大手のウォルマートをスーパーセンター230店にネイバーフッドマーケットを100店近くも展開している。
フロリダ南部で低認知度にありながらネットスーパーで進出したことになる。が、オパロッカＦＣの閉鎖でネットスーパー戦略の方針展開に追い込まれているのだ。
またテキサス州には84の地区にクローガーや傘下のスーパーが209店を展開している。一方、サンアントニオとオースチンにはクローガーや傘下のスーパーは展開していない。
両地区にあるＦＣの閉鎖でテキサスの地場スーパーであるＨＥＢにウォルマートの堅牢さにネットスーパー展開が低迷していたことも浮き彫りにした。
クローガーは2018年、オカドと協力して自動注文フルフィルメントセンターを構築する計画を発表。オハイオ州モンロー地区に2021年３月、33.5万平方フィート（9,380坪）で初のＣＦＣを開設した。
同年６月にはフロリダ州グローブランドＣＦＣ、37.5万平方フィート（1.05万坪）のジョージア州フォレストパーク（2022年２月）もオープンした。
2022年春にオープンしたテキサス州ダラスＣＦＣに加え、５ヶ所目で34万平方フィート（9,800坪）のウィスコンシン州プレザント・プレイリーＣＦＣ、６ヶ所目となる35万平方フィート（9,800坪）のミシガン州ロムルスＣＦＣも稼働を開始した。
７ヶ所目のＣＦＣは35万平方フィートのメリーランド州フレデリック地区だ。建設中などを含め地域が明らかになっているＣＦＣは10ヶ所近くある。
アリゾナ州フェニックスＣＦＣやオハイオ州クリーブランドＣＦＣにノースカロライナ州シャーロットＣＦＣ、さらにカリフォルニア州の中型と小型のＣＦＣ、フロリダ州南部２ヶ所のＣＦＣも計画されている。
他にも地域名は明らかになっていないが、アメリカ北東部やアメリカ太平洋岸北西部も候補地となっている。
なお８ヶ所目となるＣＦＣはコロラド州オーロラ地区に30万平方フィート（8,400坪）の面積で昨年３月には建設を完了した。
同ＣＦＣではコロラド州デンバーにあるクローガー傘下のキングスーパーズ（King Soopers）やシティマーケット（City Market）のネットスーパーに対応を予定。
しかしクローガーは昨年９月、ネットスーパー物流の拡大を一時的に凍結することを発表した。昨年の春頃からクローガーのネットスーパー物流展開が減速と報じられていたことを裏付けたのだ。
この発表により８ヶ所目で最新のオーロラＣＦＣの稼働を保留している。
スポーク拠点の"ズーム"は、ハブとなるモンローＣＦＣから4.8万平方フィート（1,300坪）インディアナポリス（インディアナ州）、5.0万平方フィート（1,400坪）のルイビル（ケンタッキー州）、6.1万平方フィート（1,700坪）のロックボーン（オハイオ州）がある。
グローブランドＣＦＣに対してのスポーク拠点はタンパやジャクソンビル、オーランドにそれぞれズームがある。
傘下のスーパーもないオクラホマ州オクラホマシティでは、ダラスＣＦＣをハブにスポーク拠点となるＦＣが展開している。 続きを読む
2024年03月28日
【出前ロボ】、時給20ドルでスケール！不適切な令和15年には小川先生にドローンが直撃？
■カリフォルニア州のファストフードの最低時給が４月１日、20ドル（約3,000円）に引き上げられる。カリフォルニア州の現行の最低時給16ドルから一気に25％も上昇することになる。
カリフォルニア州の生活コストの高騰が背景にあり労働者にとっては喜ばしいが、経営者側にとっては人件費の上昇は新たな問題になる。
人件費の上昇分を吸収するには値上げをする必要があるが、ただでさえ物価高でメニュー料金が上がっている昨今、簡単に値上げができない。
したがってスタッフの省人化が必要となってくる。つまりレイオフだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ピザハットなど大手ピザチェーンのフランチャイズオーナーが配達スタッフを中心にリストラを敢行している。
カリフォルニア州にピザハットとラウンド・テーブル・ピザ（Round Table Pizza）を400店舗展開するフランチャイジーは今年、配達ドライバー1,300人近くをレイオフする計画だ。
一部には12月に通知され２月に解雇となった配達スタッフもいるのだ。専用の配達スタッフを止めて、ウーバーイーツやドアダッシュに配達を委託するところも増えている。
その一方、徐々に注目され始めているのがロボット出前だ。
自動運転車開発のスタートアップ、ニューロ（Nuro）は三世代目となる無人デリバリーカー「Ｒ３」を今年、テキサス州とカリフォルニア州でスケールしていくことを発表した。
ニューロの新世代デリバリーロボは前世代となる「Ｒ２」から基本フォルムは踏襲しながらより安全性に配慮したデザインとなっている。
ニューロ三代目も無人運転を行う目的で設計されており自動運転システムのみを使った車両だ。
人間のドライバーが乗車しないため、縦の長さは3.2メートルも高さは1.5メートル（中央にあるライダーまで含めると2.1メートル）ほどで幅は1.40メートル。普通の車両に比べて極めて小型となる。
従来の乗用車に欠かせなかった、サイドミラーや透明なフロントガラスなどの装備がないのでトースターのようなスッキリしたデザインなのもＲ２と同じだ。
光を用いたリモートセンシング技術であるライダーにレーダー、カメラを装備しており周囲360度の視野をＡＩドライバーに提供しながら走行する。
最大速度はＲ２の時速25マイル（時速40キロメートル）から、三代目は時速45マイル（時速72キロメートル）に上げられている。電気自動車のＲ３は一回の充電で100マイル（160キロメートル）まで走行が可能だ。
小型ながら密集した市街地での運用を想定し、歩行者への安全にも配慮。万が一歩行者と接触するケースでは、衝撃を和らげるためフロントからエアバッグがでるようになっている。
無人デリバリーカーとして最も注目されるのが配達荷物を収納する２つのコンパートメントだ。ドアがガルウィングで開く２つのコンパートメントは合計で容量が32立法フィート（0.9立方メートル）となっている。
コンパートメントに買い物袋をおよそ24個置けることでＲ２から２倍の積載量となったのだ。また最大積載重量は495ポンド（約226キロ）となっている。
コンパートメント内部の温度がマイナス５度Ｃから最大46度Ｃにまで設定可能となったことで、アイスクリームなどの冷凍食品からアツアツのピザまで保存を最適化できるのだ。
さらに、前後のコンパートメントの間にあるタッチスクリーンも大きくなり操作しやすいよう配されている。
Ｒ３などロボットデリバリーの利用の仕方は、モバイルアプリやウェブサイトを介してピザなどを注文・決済する。
注文を受けると店スタッフがＲ３の側面にあるドアを開けて注文品を置く。
Ｒ３が自動で走行すると利用者のアプリで現在地をフォローできるようになっている。
利用者には注文内容と車両のロックを解除するためのコード番号がメールで送られ、Ｒ３が利用者宅に到着するとアプリ等に通知される。
利用者はＲ３のタッチスクリーンにコード番号を入力して、ドアを開けて注文品を取り出すのだ。
スナック菓子がある場合では利用者が商品をピックアップすると３Ｄカメラを通じてＡＩが認識し、ドアを閉じたあとに商品代金が利用者アカウントに自動請求される。
ニューロはアルファベット傘下で自動運転技術を開発するウェイモ（Weymo）で活躍していた二人の技術者が独立し2016年に創業したスタートアップだ。
奇しくもウェイモは先々週、ロサンゼルス市内の一部エリアで自動運転による「ロボタクシー」の運行を開始した。
ウェイモの無人タクシーはサンフランシスコ、アリゾナ州フェニックス、ロサンゼルスに続きテキサス州オースチンでも年内中に運行が計画されている。
ウェイモが徐々にスケールする中、ファストフード店の最低賃金が一気に上昇するカリフォルニア州でニューロの出前ロボットのスケールが期待されている。
トップ画像：ニューロＲ３のスペックシート。Ｒ３は人間のドライバーが乗車しないため、縦の長さは3.2メートルも高さは1.5メートル（中央にあるライダーまで含めると2.1メートル）ほどで幅は1.40メートル。普通の車両に比べて極めて小型サイズとなる。
ＣＮＥＴが20日報じた次世代ニューロ。ピザを注文したユーザーは送られてきた暗証番号をタッチスクリーンで入力する。ガルウィングドアが開くのでピザ等をピックアップする。後部のスナック菓子は手に取ることで３Ｄカメラを介してＡＩが認識し自動的にユーザーアカウントに課金するのだ。 続きを読む
2024年03月27日
【トレーダー・ジョーズ】、20年以上も価格を変えなかった「物価の優等生」を値上げ！？
■米国内に600店近くを展開する人気食品スーパーのトレーダー・ジョーズが最近、20年以上も価格を変えなかった人気青果物をついに値上げした。
ニュースサイトなどが大きく報じているのはトレーダー・ジョーズのバナナだ。
１月22日に発表された「トレーダー・ジョーズ第15回カスタマー・チョイス・アワード（Trader Joe's 15th Annual Customer Choice Awards）」の青果部門で１位となったバナナが値上げされた。
１本19セントが23セントになったのだ。４ペニー高くなったのだが、値上げ率にすると21％にもなる。
20年以上にわたりトレーダー・ジョーズではバナナを値上げしなかったという。
しかしトレーダー・ジョーズの広報担当者は大手メディアに「費用が変わったときにのみ販売価格を変更しています」とし「バナナの価格は20年以上１本19セントに据え置いてきましたが、価格変更が必要なポイントに達しています」と説明している。
カスタマー・チョイス・アワードでは１本15セントになっていたが、バナナの商品ページでは現在１本23セントになっている。
労働統計局によると、米国のバナナの平均価格は2023年２月〜2024年２月まで１ポンド（約450グラム）当たり62〜64セントで安定している。
専門家が集う世界バナナフォーラムにて今年３月、気候変動と気温上昇によりバナナの価格が上昇する可能性があると警告していた。
生活者として筆者は健康にも良いバナナを毎度購入している。トレーダー・ジョーズ以外でもバナナの価格上昇を目撃しているのだ。
例えばネット通販最大手のアマゾンが開発した食品スーパー「アマゾン・フレッシュ（Amazon Fresh）」の事例がある。
アマゾン・フレッシュでは2020年９月の１号店オープンからバナナを１本15セントでロスリーダー（原価割れ商品）にして集客ツールにしていた。
それが今年に入って単品売りを止め、バナナ一房（５〜６本）に99セントに値上げされた。そして現在までに一房1.29ドルになっているのだ。
ちなみに１号店のオープンから1.79ドルだったスライスピザは2022年６月から1.99ドルに値上げされている。8.99ドルだったホールピザも同じ今年に9.99ドルに値上げされている。
その一方で89セントのフランスパン、4.97ドルのロテサリーチキンは現在も値段は変わっていない。
ロテサリーチキンはコストコや同業でウォルマート傘下のサムズクラブも1980年代から価格を変えない定番商品となっている。
コストコは今も4.99ドル、サムズクラブでは4.98ドルでアツアツのロテサリーチキンを販売中だ。
ロスリーダーといえばコストコ・フードコートのホットドッグとソーダのセット1.50ドルが有名だ。
最近ではフードコートでの購入も会員カート提示が義務付けられており、同社ＣＦＯの声明からいつ値上げされるかわからない商品となっている。
コストコのホットドッグセットより価格を下回るのはサムズクラブのホットドッグセット。こちらは2022年11月から1.38ドルになっているのだ。
集客を目的として、採算を度外視して価格を極めて安く設定されたロスリーダーであることには間違いはないのだが、コストコより12セントも安くしているのは頭がおかしいとしか言いようのない正真正銘のロスリーダー。
インフレを考慮したホットドッグの価格は４ドル近くと見られている。
ホットドッグのクレージー価格でフードコートはさらに長蛇の列となる。ホットドッグ以外にも「無限におかわり自由」なドリンクに加え、ピザ等も安く販売しているのでサムズクラブのフードコートは昼食や夕食時に大変な混雑となっている。
フードコートの混雑に拍車をかけているのは会員以外でもサムズクラブ・カフェを利用できることだ。商品のロスリーダーに会員費を払うことなく利用できるロスリーダーサービスともいえる。
話題がロスリーダーの話にそれてしまったが、トレーダー・ジョーズによるとバナナを値上げしたものの生アーモンドやロメインレタス、オーガニック三色ピーマン（tri-color bell peppers）、ネギなど他の農産物の価格を下げている。 続きを読む
2024年03月26日
【コストコ】、フードコートも非会員を排除！人気なしはローストビーフ・サンドイッチ？
■メンバーシップ・ホールセール・クラブのコストコは昨年から厳しい対応を行なっている会員確認をフードコートにも広げている。
コスパが最強となるホットドッグとソーダのセットも非会員が買えなくなっているのだ。むしろ地域によってまちまちだったフードコート利用が統一されようとしているのかもしれない。
掲示板ソーシャルサイトのレディット（Reddit）では、フロリダ州オーランド地区のコストコで表示されていた｢2024年４月８日以降、フードコートで商品を購入する際にはコストコ会員カードが必要になります（Effective April 8, 2024, an active Costco membership card will be required to purchase items from our food court）｣との案内が投稿されたのだ。
ただし見方を変えれば４月８日までは会員カードがなくてもピザなどを購入できることを意味している。
筆者の近くにあるコストコではフードコートでも数年前から会員カードの提示が求められるようになっている。むしろカード提示がなくても購入できるフードコートが今もあることに驚くのだ。
ロサンゼルス国際空港近くにあるコストコ・ホーソーン店では最近、レジ対応の窓口をなくして注文用タッチパネルとクレジットカード決済端末、レシートプリンターの「フードコート・セルフサーブ・キオスク（Food Court Self-Serve Kiosk）」のみの注文に対応するようになっている。
フードコートでは注文用の窓口がなく、「ホールピザ・ピックアップ（Whole Pizza PickUp）」と「キオスク注文ピックアップ（Kiosk Order PickUp）」のみとなっている。
実はコストコは2018年１月、ロサンゼルスの２店（タスティン店とパコイマ店）を含む４店にタッチパネルの注文端末を導入したテストを開始した。
このキオスクが徐々にコストコに拡大しており、一部にキオスクのみでの対応に変わっている事情がある。
キオスクを導入していないフードコートではオーランド地区のコストコようにカード提示のルールが厳格化されている。
セルフサーブ・キオスクの使い方はまずは会員カードをスキャンするところからはじめる。その後は注文したいメニューをタッチしてスクリーン上の左側にあるカートに入れていくのだ。
決済はカート下にある「注文を払う（Pay for Order）」をタッチして会計する。支払いはタッチパネル下のクレジットカード決済端末にクレジットカード（もしくはデビットカード）を挿入する。
決済完了後、注文番号を表示したレシートがプリントアウトされるのだ。このレシートを持って窓口に並んでピックアップする。
ピックアップ窓口ではレシートを見せながらアイスクリームやホットドッグなどの注文品をスタッフに言うと用意してくれるのだ。
確認はしていないが非会員の分まで購入されないようキオスクでは１回の注文時にホールピザ以外でホットドッグ等の注文数を限定しているのではと推測している。
なおフードコートで現金を使いたい場合、コストコのギフトカード「コストコ・キャッシュ（Costo Cash）」カードを使用することになる。
コストコのレジでチャージ金額に応じて現金を支払うことでコストコ・キャッシュカードにチャージされる。つまりフードコートでキャッシュをそのまま利用できないため、２度手間がかかることになる。
コストコでは昨年初めより非会員の取り締まりを強化している。2023年に入ってから、コストコではレジで写真付きの会員カードを見せるよう言われることが増えているのだ。
昨年７月には一部店舗でのメンバーシップの抜き打ち検査を正式に行うことも発表した。
会員カードの貸し借り問題に対処し、家族や友人がカードを借りて不正使用していないかをスタッフが確認できるのだ。
粗利益率が10〜11％となるメンバーシップ・ホールセール・クラブにとって営業利益のほとんどが会員費となっている。
メンバーシップ・ホールセール・クラブの収益モデルから会員数がそのまま利益となるため、非会員を増やすわけにはいかないのだ。
"店に入れるのは会員のみ"というルールで、さらに厳しく対応しているコストコもある。ワシントン州イサクアにある本社隣のコストコでは入り口で会員証のスキャニングが求められているのだ。
Ｘにアップロードされた画像では会員が入り口で止められ、スタッフが端末で会員証をスキャンしているところが映っている。
また画像には「倉庫に入る前にメンバーシップをスキャンすることを求められます（You will be asked to scan your membership before entering the warehouse）」と表示されている。
コストコのフードコートはいつも長蛇の列となっている。格安のホットドッグやピザ等を販売しているフードコートでは昼食や夕食時、大変な混雑になる。
週末や休日だとカートを持った家族連れも増えることもあり、アイスクリームの購入でも長い行列に並ばなければならないほどだ。非会員が減ることで行列が少しでも解消されるのは歓迎だが、若干世知辛い感じもするのも確かだ。
トップ画像：コストコ・ホーソーン店のフードコートではキオスク注文のみに対応しており、窓口はピックアップ用のみになっている。 続きを読む
2024年03月25日
【ウォルマート】、設備投資額が３年連続して二桁増！ＥＣ等のＤＸには1.79兆円も投資？
■チェーンストア最大手のウォルマートは15日、米証券取引委員会（ＳＥＣ）に提出したアニュアル・レポート（年次報告書：10-K）で設備投資額が３年連続して二桁増になっていることを明らかにした。
ウォルマートは昨年から自身のビジネスをオムニチャネル・リテーラーと宣言しており、デジタル・トランスフォーメーション（ＤＸ）などオムニチャネル投資が積極的になっていることを改めて浮き彫りにした。
ウォルマートは１年間で国内の店舗数が３桁も減少しながら、売上高に既存店・売上高も前年を上回っている。
年次報告書にあるウォルマートの店舗数で今年、以前のものとは大きく異なっている。州別内訳となるスーパーセンター、ディスカウントストア、ネイバーフッドマーケットを省いているのだ。
スーパーセンターは前年（3,572店）から12店舗減少し、3560店となった。ディスカウントストアは前年の364店舗から４店減り360店へ。小型フォーマットを含むネイバーフッドマーケットは前年の781店舗から86店舗もスクラップされ695店舗となっているのだ。
ウォルマートＵＳの店舗数は合計で4,615店となり前年の4,717店から102店舗の減少となった。
興味深いのはアメリカ国内でのカーブサイド・ピックアップ営業店舗で前年は「4,600店以上（more than 4,600 pickup locations）」と記述されていたが、「大多数の店舗（the vast majority of our stores）」と数字は明記されていない。
国内の店舗数が4,700店以上から4,600店以上と大幅に減少したことで、実質的にピックアップ拠点は前年より減少していると推測される。したがって店舗数を控えたのだろう。
一方、当日宅配サービスを実施しているのは前年の「3,900ヶ所以上（more than 3,900 same-day delivery locations）」から「4,300ヶ所以上（more than 4,300 locations」と大幅に増えている。
海外事業部（Walmart International）を除いたアメリカ国内の設備投資費は2024年１月通期で176.95億ドルとなり前年の142.32億ドルから24％も増加した。
国内の設備投資費は「サプライチェーン、顧客対応の取り組みとテクノロジー（Supply chain, customer-facing initiatives and technology）」「店舗改装（Store and club remodels）」「新規出店等（New stores and clubs, including expansions and relocations）」の３つに分けている。
目立ったのはＤＸ等を含む「サプライチェーン、顧客対応の取り組みとＩＴ」で前年の920.9億ドルから30％近くの増加となる28.4％増となった。
金額にして118.28億ドル。１ドル151円計算では1.79兆円は日本のチェーンストアにとって途方も無い投資額だろう。
店舗改装の投資額は前年の49.90億ドルから16％増加し57.92億ドル（約8,900億円）となった。他の２項目と比べ極小となる新規出店等の投資額は7,500万ドル（約110億円）で前年（3,300万ドル）から２倍強となる127.3％だった。
サプライチェーン等への投資が大幅に増えたことは、自社の物流技術をグループ以外の他の小売り企業に提供することにも現れている。
ＡＩを活用した配送ルート最適化（Route Optimization）のノウハウをSaaS（サービスとしてのソフトウェア）ソリューションとして外販するのだ。
ウォルマートの「ルート・オプティマイゼーション（Route Optimization）」はお客が望む商品を、いつでも、どこでも、望む方法で配送できるよう支援した物流テクノロジーだ。
ウォルマートの商業ＩＴ部門である「ウォルマート・コマース・テクノロジーズ（Walmart Commerce Technologies）」のサプライ・チェーン・ソフトウェアは配送トラックのルートを最適化することで二酸化炭素の排出量の大幅削減に成功している。
ルート・オプティマイゼーションは様々な規模の企業に提供でき配送ルートを最適化し、トレーラーを効率的に梱包、移動距離を最小限に抑えるのだ。
ウォマートは同ＩＴを利用していることで3,000万マイルの不要な走行距離を削減できたという。また11万件にも及ぶ非効率なルートを効率化していることで9,400万ポンド（約4300キログラム）のＣＯ２を回避したのだ。
こういったサプライチェーンばかりではなくウォルマートは顧客対応の取り組みとなるＤＸにも積極的に変革している。
ウォルマート・アプリは月に最大10回も更新するほど、ＡＩやＡＲ等の機能を大胆に導入しながら使いやすさに注力しアップデートしているのだ。
ウォルマートは現場スタッフ以外の本社等で働く従業員５万人に向けて生成ＡＩアシスタントを提供する計画を昨年９月に発表した。
ウォルマート従業員には大きく分けて２つのアプリがある。一つはフィールド・アソシエイツ、つまり店で働く現場スタッフに向けた「ミー＠ウォルマート（Me@Walmart）」だ。
もう一つは本社スタッフに向けた「ミー＠キャンパス（Me@Campus）」アプリだ。ウォルマートはミー＠キャンパス・アプリに生成ＡＩ機能「マイ・アシスタント（My Assistant）」を搭載させる。
生成ＡＩを本社スタッフ用のアプリに組み込むことで、骨の折れる定型化された業務から開放し、従業員の能力の拡張を図るのが目的となる。
例えば長い文章の要約や分析、レポートやメールの作成等でマイ・アシスタントを使ってもらうようになる。
煩わしい業務をＡＩ支援で行わせることで、企業環境におけるクリエィティブな問題解決から迅速な意思決定まで人の能力の向上が見込まれるのだ。
ウォルマートは物流施設への投資も積極的で昨年６月には同社としては最大級となる次世代フルフィルメントセンター（Fullfillment Center：ＦＣ）を正式にオープンした。
インディアナ州インディアナポリスから20マイル（32キロメートル）北東にあるマコーズビル地区の新ＦＣは、次世代システムとしては２ヶ所目。３階建てマコーズビルＦＣは、広さが220万平方フィート（6.16万坪）にも及び同社のＦＣとしては最大となる。
このＦＣではインディアナ州にイリノイ州、ケンタッキー州、オハイオ州が配達の対象となる。
ウォルマートは昨年10月もテキサス州ダラス郊外ランキャスター地区に150万平方フィート（約4.2万坪）の次世代FCをオープンしているのだ。
すでに稼働しているジェリエットＦＣやマコーズビルＦＣ、ランキャスターFCの他、ペンシルベニア州グリーンキャッスル地区とカリフォルニア州ストックトン地区にもハイテク物流施設のオープンを計画しているのだ。
ウォルマートは今年１月、テキサス州ダラス・フォートワース都市圏にある75％（約180万）の世帯にドローン宅配を開始することを発表した。
さらに留守宅の冷蔵庫に宅配する「インホーム・デリバリー（InHome Delivery）」でＡＩを使ってアップグレードする「インホーム・リプレニッシュメント（InHome Replenishment）」を開発中であることも明かした。
２月にはスマートテレビメーカーのビジオを23億ドル（約3,470億円）で買収することで合意したと発表した。リテール・メディア・ネットワーク（ＲＭＮ）を強化し広告事業をさらに拡大するのだ。
ウォルマートは今年度もＩＴ等に多大な金額を投資することが予想され４年連続で二桁増となりそうだ。 続きを読む
2024年03月24日
【ウォルマート】、富裕層もターゲット！「利便性は価格に勝る」と国内トップの見解？
■チェーンストア最大手でオムニチャネル・リテーラーと宣言したウォルマートは低所得者層だけでなく富裕層もターゲットにしている。これまでリーチできなかった高額所得者層にウォルマートは照準をあわせているのだ。
厳密には言明していないもののお客の指摘や元幹部の証言、さらには国内ＣＥＯの最近の発言からこれを伺い知ることが可能となっている。
ウォルマートＵＳのＣＥＯであるジョン・ターナー氏は21日、全米小売業協会（ＮＲＦ）が主催した講演会「小売と消費者の現状（State of Retail and the Consumer）」に出席し、利便性への需要が価格を上回ると発言したのだ。
ターナー氏は「消費者は家族とより多くの時間を過ごしたいと考えており、便利なサービスへの需要が高まっています」と指摘。
さらに「利便性の高いソリューションは意思決定においてしばしば価格を上回っています」と述べている。さらに「利便性は今後も続く基本的な傾向と考えています」と主張。
同氏はまた「場合によっては人々は利便性を求めて価格を犠牲にすることをいとわないものです」とし「時間を節約でき、生活から手間を省き、一部の意思決定を軽減するような革新性をもった小売やサービスが勝ち続けると思っています」と主張したのだ。
ファーナー氏は、現在の小売業界や消費者環境は歴史上前例のないものであると述べており、その理由の一つとしてテクノロジーの急速な進化を挙げている。
こういった考えはウォルマートの直近の動きから一致している。
ウォルマートは昨年９月から夜10時の宅配にも対応し、今月からは朝６時からの早朝デリバリーにも乗り出しているのだ。ネットスーパー宅配で時間を節約できるだけでなく、生活から摩擦となる手間を取り除いている。
これには新たな客層である富裕層の影響がある。しつこいインフレからたまたま富裕者層がウォルマートで買い物を始めたわけではなく、意図的に彼らを狙ったものなのだ。
元ウォルマート幹部でトゥモロー・リテール・コンサルティング（Tomorrow Retail Consulting）の創業者ジョーダン・バーク氏はブルームバーグに「ウォルマートは高額所得者のオンラインショッピング・パターンを何年も研究しており、よりよく知ることができている」と述べたのだ。
一方で長年維持している価値重視の基本をウォルマートが忘れているわけではない。
ウォルマートは昨年６月、同社の価格戦略を変更し「私達は競合店との低価格に合わせません（We do not match the competitor's price）」と宣言した。
それまでウォルマートは競合店の同一商品の価格に合わせる「プライス・マッチ・ポリシー」を掲げてきた。ウォルマートで購入した商品が競合他社でより安く売られていた場合、ウォルマートにレシートと競合店の広告やチラシなどを持っていけば差額分を払い戻してくれていたのだ。
新しい価格戦略では、プライス・マッチをやめながらいつ買い物に来ても低価格で商品を購入できる「エブリデー・ロープライス（ＥＤＬＰ）」は提供している。つまり目を皿のようにして最低価格を探し回るお客からは遠のいていると言えるのだ。
富裕層はウォルマートにとって大きな顧客になっている。
実店舗の客足をモニタリングする調査会社のプレイサーai（Placer.ai）によると年収10万ドルから15万ドルの世帯がウォルマートに殺到しており昨年ウォルマートで２番目に大きな買い物客層となった。
ブルームバーグでは「ミズーリ州セントルイスのウォルマートで最近、鴨の胸肉を見つけて驚いた」とウォルマートの変化を気づいたお客の声も紹介している。高級店ではるかに高額な価格で販売されているのと同じブランドという。
またニュージャージー州セコーカス地区にあるウォルマートでは、イタリアン・レストラン「カーボン（Carbon）」のパスタソースから、スキンジム（SkinGym）やマリオ・バデスク（Mario Badescu）の最高級美容製品も取り扱っている。アパレルではリーボックや全米ポロ協会 (United States Polo Association)などのブランドも追加されている。
ウォルマートは先月、向こう５年間で150店を新規オープンしながら今後１年間で47州にある650店を改装することを発表した。
ロサンゼルス郊外にあるウォルマート・スーパーセンターではすでに「将来の店舗」コンセプトを反映した店舗になっており、部門表示ではブルーを基調にしたモダンでＰＯＰな仕様に変更されている。
商品通路のエンドではこれまでのような特価品のエンド陳列ではなく、ライフスタイルを提案する商品ディスプレイでの展開となっている。
食品コーナーの入り口近くにはサンドイッチなど軽食に飲み物で括ったグラブ＆ゴーを設置。ランチなどの素早い買い物にも対応している。
店舗全体に配置された新しいタッチポイントとして、ＱＲコードやデジタルスクリーンを通じてオンラインで提供される製品やサービスの提案まで行っているのだ。
授乳中の母親のための快適で清潔なプライベートエリアのマザーズルームを導入したり、高速充電ステーションも完備していく。これらはまさに富裕層に向けた施策といえるだろう。
最近では富裕層を囲い込む施策としてサブスクリプション「ウォルマート・プラス（Walmart +）」で会員専用のセルフレジも導入されている。
変わり続けるウォルマートは客層も変わりつつあり、激安から超便利な店に変貌を遂げつつあるのだ。
トップ画像：ウォルマート・ピコリベラ店では昨年からプラス会員専用のセルフレジ「メンバー・ファスト・レーン（Member fast lane）」を導入している。富裕層となる会員は長い行列に並ばなくてもすぐに会計を終えられるのだ。 続きを読む
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2024年03月23日
【フラッシュフード】、食品廃棄アプリが拡大！一番人気はお野菜の詰め合わせボックス？
■販売期限が迫っている生鮮品などを値引きして販売するアプリ「フラッシュフード（Flashfood）」は20日、サンフランシスコ郊外など北カリフォルニアに展開する食品スーパーのセーブマートと提携したことを発表した。
頑固に続くインフレの中、米国のスーパーマーケットでフラッシュフードを導入する事例が続いている。食材廃棄（フードロス）を減少させる意義に加えて、頑固な物価高でも顧客に買いやすい価格を提供できるからだ。
またスマートフォン・アプリが毎日の買い物にこれまで以上に役立てられていることも浮き彫りにする。
セーブマートは傘下にラッキー（Lucky）やフードマックス（FoodMaxx）など194店を展開する中堅スーパー。フラッシュフードはまずラッキー44店舗で導入され順次拡大していくとしている。
カナダ生まれのフラッシュフードの利用の仕方は無料のフラッシュフード・アプリをスマートフォンにダウンロードするところから始まる。
アプリをダウンロード後、利用者はフラッシュフードを起動しマップを開く。現在地近くのマップからフラッシュフードを協賛する最寄りのスーパーマーケットを選択するのだ。
マップ上ではホワイトにグリーンのショッピングカートが賞味期限切れ間近の食品を掲載中の店舗となり、店舗をタップするとグリーンに白抜きのショッピングカートのマークに反転する。
グレーで白抜きのショッピングカートのマークの店舗は、該当する食品がない（賞味期限切れのない）状態を示すのだ。
マップ下に映し出された商品を上にスクロールすると商品リストが表示される。青果物や精肉、シーフード、デリ、ベーカリーなどが正価の値段が二重線で示し、50％オフの価格が提示されていることを確認できる。
ペットフードの缶詰など、比較的賞味期限に余裕のあるものなどもリストアップされることもある。こまめに毎日チェックすることでペットの食費も大幅に節約できることになるのだ。
購入したい商品を見つけて、タップすると商品ページに切り替わる。希望の数量を選択して画面下部分にある「カートに載せる（Add to Cart）」をタップしてショッピングカートに追加する。
買い物を続けた後に「決済（Checkout）」ボタンをタップ。クレジットカードなどの支払い情報を入力して（事前のクレカ登録も可能）、注文品と価格の注文内容を確認して問題がなければ画面下にある「購入（Purchase）」をタップし支払いを完了するのだ。
最終確認の直前には、購入先の店舗（住所）に間違いがないかの念を押すリマインダーがポップアップ表示される仕組みとなっている。
なお賞味期限切れ商品の購入は店舗ごとになっており、いくつかの店舗をまたいだ購入はできないようになっている。複数の店舗で購入する場合は店舗ごとに注文していく必要がある。
支払い後は、カスタマーサービス近くにある専用コーナー「フラッシュフード・ゾーン（Flashfood Zone）」の冷蔵庫や棚から注文品を受け取ることになる。
利用者の友人・知人などが紹介コードを使ってフラッシュフードで買い物するとお互いにクレジットを得る紹介キャンペーンも行っているのだ。
フラッシュフード・アプリはミシガン州を中心に中西部６州にスーパーセンターなど約260店を展開するマイヤーやアホールド・デレーズ傘下でマサチューセッツ州など５州に400店以上を展開するストップ＆ショップも導入し拡大している。
ほかにもトップスフレンドリーマーケットやジャイアントイーグルなどの中堅スーパーも採用。オハイオ州中部にあるジャイアント・イーグル全店で導入が終了している。
これによりフラッシュフード・アプリはアメリカ国内とカナダにある2,000店以上に拡大した。
フラッシュフードによると、これまで9.000万ポンド（約4.1万トン）におよぶ食品廃棄を削減でき、2.5億ドル近く節約をもたらしたとしている。
フラッシュフードが昨年５月に発表した「2022年インパクトレポート（2022 Impact Report）」ではベストセラーランキングも掲載。
アメリカ国内ではもっとも人気が高かったのは「お野菜の詰め合わせ（Produce box）」で２位は「牛ひき肉（Ground beef）」、３位は「鳥の胸肉（Chicken breast）」だった。
４位以降では七面鳥のひき肉（Ground turkey）やイタリアン・サンドイッチ（Super sub Italian sub）、サーモン（Atlantic Salmon）が続いている。
トップ画像：当社のワークショップ研修でフラッシュフードの冷蔵庫にあるサーモンの賞味期限を確認する参加者。サーモンは残り物の中では特に人気商品となっている。 続きを読む
2024年03月22日
【ドアダッシュ】、ドローン宅配のウイングと提携で実験開始！イン＆アウトバーガーは？
■オンデマンド・フード・デリバリー大手のドアダッシュ（DoorDash）は21日、ＩＴ大手アルファベット（グーグル）の関連企業ウイング（Wing）と提携しドローン宅配のテストを開始することを発表した。
ドアダッシュとウイングは2022年、オーストラリアでドローン宅配のサービスを開始しており、すでにクィーンズランド地区の３ヶ所にスケールしている。
ウイングはチェーンストア最大手のウォルマートと提携しテキサス州ダラス・フォートワース地区でドローンによる空輸サービスの拡大を目指しており、出前サービス大手もドローン宅配のスケールを国内で目指すことになる。
両社の実験場所に選ばれたのはバージニア州クリスチャンズバーグ地区。同地区はウイングが2019年10月、ドラッグストアチェーン大手のウォルグリーンから米国初となる商用ドローンサービスをおこなった場所でもある。
ウォルグリーン・クルスチャンズバーグ店以外の地元のお店からのドローン宅配は拡大しており、ローカルのベーカリーショップやコーヒーショップからの空輸も行っている。
ドアダッシュはウイングによるドローン宅配をハンバーガーチェーンのウェンディーズ・クリスチャンズバーグ店（2355 N Franklin St. Christiansburg, VA 24073）から開始する。
ファストフードの空輸はドアダッシュのアプリを介して注文でき、チェックアウト時にドローン宅配を選択することで注文から30分程度でアツアツのハンバーガーが空から届くことになる。
注文が確定するとドローンはウェンディーズ近くにある基地の上空23フィート（約７メートル）でホバリングする。
ドローンから取っ手のついたケーブルを下ろし、お店のスタッフが注文品の入った専用パッケージを引っ掛けるのだ。
ドローンはケーブルを引き上げ、機体の下に注文品を収納する。その後は150フィート（45メートル）まで上昇し、時速65マイル（時速100キロメートル）で利用者宅まで届けるのだ。
ユーザーは他のドローン宅配サービスと同様、注文品の着地点でドライブウェイなど２メートル四方に木や枝などの障害物のないことを確認する必要がある。
ウイングのドローンは「ＶＴＯＬ（Vertical Takeoff and Landing）」型固定翼ドローンでヘリコプターのように垂直離着陸ができ、かつ固定翼機のような高速巡航も可能なドローンだ。
滑走路のようなスペースがなくても離着陸ができ、高速で長距離を移動できることが特長となる。現行のドローンは12個の垂直プロペラと４つの推進プロペラをもち、時速は最大65マイル（約104キロメートル）に達する。
６マイル（約9.6キロメートル）の範囲を往復可能としており、運搬可能重量は3.3ポンド（約1.5キログラム）だ。
そのためウェンディーズではドローン宅配が可能となるメニューを限定しており、１度の注文品が多数となり１機では無理がある場合、最大３機を使って空輸するという。
ウイングはオーストラリアやアメリカ国内の他、フィンランドやアイルランドでもドローン宅配を行っており空輸実績は35万件にも及んでいる。
クリスチャンズバーグ地区での成功をうけウイングは2022年４月からテキサス州フルスコ地区と近隣のリトルエルム地区でドローン宅配を開始。ダラス郊外にある成長著しい主要な大都市圏内での空輸を展開しているのだ。
このドローン宅配ではウォルグリーンからの空輸に獣医サービスの「イージーベット（Easyvet）」、応急処置キットから新型コロナウイルス抗原検査キットなども手掛ける「テキサス・ヘルス（Texas Health）」からの宅配を行っている。
また決済から注文品が届くまで最短で２分47秒という記録もあることからブルーベル・クリーミーズ（Blue Bell Creamies）のアイスクリーム・ショップからのドローン宅配も含まれている。
８月の日中の平均気温が34度を超えるテキサスの住宅街で、ドローンは決済から10分以内にアイスクリームを溶かさず届けているのだ。
そして昨年８月にはウォルマートと提携し、テキサス州フリスコ地区にあるウォルマート・スーパーセンター（8555 Preston Rd, Frisco, TX 75034）で空輸を開始している。対象となったのは同店舗から６マイル（約10キロメートル）圏内の６万世帯だ。
昨年12月にはウォルマートとウイングはダラス郊外での空輸をスケールすることを発表。これに続いてウォルマートは今年１月、テキサス州ダラス・フォートワース都市圏にある75％の世帯にウイングのドローン宅配を開始することを発表した。
空輸対象が一気に180万世帯にも広がることで、小売企業としてはドローン宅配で世界最大の規模の拡大となるのだ。今回の発表ではダラス・フォートワース都市圏の30以上の町や自治体の店舗が含まれている。
ウォルマートによるとウイングは連邦航空局（ＦＡＡ）から目視外飛行（BVLOS:Beyond Visual Line of Sight）の認可を受けている。有人地帯の完全自律・自動飛行によるＢＶＬＯＳが可能になったことでダラス・フォートワースのような広域に及ぶドローン宅配を開始する。
対象アイテムではウォルマート・スーパーセンター等が扱う12万アイテムのうちサイズや重さで空輸が可能な75％の商品を対象となる。
ドアダッシュもウォルマートがそうであったようにウイングとの提携とテストで実績を積みあげていく。
配達員の時給が上昇傾向にあるなか、ドアダッシュは地域当局からのドローン宅配の認可がおリ次第、郊外を中心に一気に拡大したいところだ。
トップ画像：NRF2024のエクスポでグーグル・ブースにあったウイングのドローン。
ドアダッシュとの提携によるウェンディーズからのドローン宅配ＰＲ動画。ウイングはすでにウォルマートとも提携しており、ドローン宅配実績を確実に積み上げている。 続きを読む
2024年03月21日
【マクドナルド】、CosMc's２号店がダラス郊外にオープン！午後３時のスランプを解消？
■外食チェーン最大手のマクドナルドは19日、テキサス州ダラス郊外に冷たい飲み物をコンセプトにした「コズミクス（CosMc's）」２号店をオープンした。
日本のニュースメディア等はコスマックスと表記しているが、アメリカ人の発音はコズミクスが近いためここでは発音に近いほうで表記する。
マクドナルドのスピンオフ・ブランド名は1980年代後半から1990年代前半のマクドナルドの広告に登場した宇宙人キャラクター「コズミック（CosMc）」が由来。
外食の巨人がファーストフード店の「午後３時のスランプ（the 3 p.m. slump）」を解消する目的で作ったコズミクスにより、ファストフードに代わる新たな業界の誕生を予感させている。
コズミクス２号店（6033 Campbell Rd, Dallas, TX 75248）はダラス中心地から北へ17マイル（27キロメートル）場所にあるショッピングセンター「プレストン・トレイル・ビレッジ（Preston Trail Village）」内だ。
スーパーマーケットチェーン最大手クローガーが核テナントになるネイバーフッドショッピングセンターにある。
コズミクス１号店は昨年12月、イリノイ州シカゴ郊外のボーリングブルック地区にオープン。
コズミクス・ダラス店はドライブスルー・オンリーの１号店と異なり、店内にウォークアップウィンドウがあるところだ。
コズミクス・ボーリングブルック店の敷地には４つのレーンのドライブスルーがあり、そこで注文した後に支払いを終えピックアップ窓口で注文品を受け取る。
複数のレーンからピックアップ窓口用にレーンが一つになることでフォーク並びの逆向きとなるドライブスルーだ。
一方、コズミクス２号店はドライブスルーに加えて店内にイートインスペースはないものの受け取り用のカウンターが導入されている。
ウォークアップ店には注文用メニューボードが掲げられておらずレジ注文はなく、セルフ注文端末のキオスクから注文と決済を行う仕組みだ。
営業時間はオリジナル店と変わらず午前６時〜午後９時まで。
１号店は通常のマクドナルドに隣接していたが、２号店の近くに通常店はない。なお両店とも「モバイルオーダーは近々リリース予定」となっている。
２号店のメニューも１号店と同様で冷たい飲み物が中心。
例えば「サワー・チェリー・エナジー・スラッシュ（Sour Cherry Energy Slush）」「トロピカル・スパイスエード（Tropical Spiceade）」「スモア・コールド・ブリュー（S'mores Cold Brew）」など。
様々な種類のエナジードリンクに特製のレモネード、贅沢なブレンドドリンクやフラッペ、冷たいコーヒー＆ティーがある。
フードメニューには「スパイシー・ケソ・サンドイッチ（Spicy Queso Sandwich）」と「クリーミー・アボガド・トマティーヨ・サンドイッチ（Creamy Avocado Tomatilla Sandwich）」にマクドナルドの定番メニューの「エッグ・マックマフィン（Egg McMuffin Sandwiches）」に「ソーセージ・マックマフィン（Sausage MacMuffin with Egg）」、「マックフルーリー（McFlurry）」がある。
マクドナルドの人気バーガーであるビッグマックやクォーターパウンダー、チーズバーガーはないのも１号店と同じだ。
サイドメニューには「ハッシュ・ブラウン・バイツ（Savory Hash Brown Bites）」にディップソースをつけて食べる「プレッツェル・バイツ（Pretzel Bites）」も。
ペーストリーとしてはヘイゼルナッツやクッキーバター、アップルシナモンがそれぞれ入ったドーナツ「マックポップス（McPops）」。
またデザートには「ブルーベリー・レモンクッキー・サンデー（Blueberry Lemon Cookie Sundae）」や「キャラメル・ファッジ・ブラウニー（Caramel Fudge Brownie）」なども１号店と同様に用意されている。
実店舗の客足をモニタリングする調査会社のプレイサーai（Placer.ai）によると22〜29歳を中心に集客しているコズミクス１号店には初月、マクドナルドの通常の客数の２倍の集客があったという。
国内で14,300店を展開するマクドナルドは4,000〜4,500平方フィート（110〜130坪）を考慮すると、2,500平方フィート（70坪）しかないコズミクス１号店の広さからは３倍以上の客数になるという。
マクドナルドではテスト展開となるコズミクスをテキサス州ダラス・フォートワース地区やオースティン地区にも出店を予定し、2024年前半までには10店舗展開となる計画だ。
すでにフォートワース地区の出店先（5341 McPherson Blvd Fort Worth, TX 76123）のように場所が明らかになっているところもある。
ファーストフード店の午後３時のスランプは、マクドナルドのアフタヌーン・ティーで大いに解消できそうだ。
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2024年03月20日
【ロボタクシー】、ロサンゼルス市内で運行を開始！ＬＡワークショップに無人タクシー？
■アルファベット傘下で自動運転技術を開発するウェイモ（Weymo）は14日、ロサンゼルス市内の一部エリアで自動運転による「ロボタクシー」の運行を開始した。
無人タクシーとも呼ばれるロボタクシーはサンフランシスコ、アリゾナ州フェニックスに続いてロサンゼルスが３番めの運行都市となる。
ウェイモは昨年からロボタクシーのテストイベント「ウェイモ・ワン・ツアー」をサンタモニカやセンチュリーシティなど６ツの区域に分けて開始。
ウェイモによるとテスト期間を含む過去５ヶ月間で15,000件のライドを提供できたとしている。また５ツ星評価では4.7と高評価を得ている。
今月初めにはカリフォルニア州公共事業委員会（California Public Utility Commission: CPUC）からロサンゼルス市内での営業が了承されたことで無人タクシーの営業を始めたのだ。
ロボタクシーの営業対象エリアは西はサンタモニカやベニスビーチで東はロサンゼルス市庁舎やリトルトーキョーを含むロサンゼルス・ダウンタウンまでの63平方マイル（160平方キロメートル）となる。
北はサンタモニカ・ブルバードで南はエクスポジション・ブルバード辺り。
対象となるエリアにはロサンゼルスの副都心であるセンチュリーシティ、ビバリーヒルズやウエストウッド、ウエストハリウッド、カルバーシティなどの一部エリアも含まれ大阪市とほぼ同じ面積となる。
ただ対象エリア内にあるサンタモニカ・フリーウェイは対象外で現段階でフリーウェイを通ることはないとしている。
対象エリアは今後、徐々に拡大していくことも計画している。
当初はウェイトリストに載った５万人の乗客を中心に無料でロボタクシーを提供し、二回目以降は有料に移行する。
ロボタクシーの使い方はカンタンだ。配車アプリ「ウェイモ・ワン」を使ってライドシェアのウーバーのようにスマートフォンから専用アプリを起動して目的地を入力する。
ピックアップ時間と目的地の到着時間、さらに料金が表示されるので後はライド・リクエスト・ボタンをタップして決済を終了するだけだ（無料ライドにはコードを入力する必要がある）。
日本のタクシーと違いアメリカの場合、タクシーのドアを乗客が手動で開くことになる。ウーバー等の場合では、ドアを開けると運転手が乗車する側の名前を確認してくる。
一方、ロボタクシーでは停まった際に他人が勝手にドアを開けて乗り込んでしまう可能性がある。そのため、乗客がアプリを使って後部座席のドアをアンロックする仕様になっている。
ただ到着後５分以内（停車後にカウントダウン開始）にアンロックしなければ乗客がいなかったと認識してどこかに去ってしまう仕様となっている。
また乗客は目的地までのルーティングについてリクエストはできない。なおロボタクシーの料金はサンフランシスコ市内で1.3マイル（約2.1キロメートル）90セント（約140円）で１分間あたりだと40セント（約60円）となっている。
それに基本料金として５ドルに加えて、1.5％のシティタックスがつくことになるのだ。
一般的にウーバーで10.41ドルに対して、クルーズのロボタクシーは8.72ドルになる。
現在のところ利用料金には大きな差はないものの将来的にはＩＴの進化や台数の増加等で大幅に値下げされるという。またロボタクシー競争も激化すればさらなる値下げが期待されるのだ。
ウェイモのロボタクシーは年内中、テキサス州オースチンにも運行が開始される予定だが、無人タクシーには課題がある。
これまでの無人タクシーの実験走行により、一部が路上で突然停止して動かなくなり渋滞を引き起こしていたりするのだ。
工事現場等の場所によっては救急車や消防車などの緊急車両をブロックするように停まってしまう事例も散見する。
昨年夏にはゼネラルモーターズ（ＧＭ）の子会社クルーズのロボタクシーがサンフランシスコで人身事故を起こし、州の陸運局から運行許可の取り消しにあっている。
ロボタクシーに対する反発もあってか先月、サンフランシスコ市内のチャイナタウンでウェイモ車両１台が人々によって破壊され炎上という事件も起きていた。
ロボタクシーは全焼し残骸だけが残った。襲撃された様子はＳＮＳで拡散。ウェイモによると幸いにも車内に乗客はおらず、けが人などは出なかった。
その一方、米国運輸省道路交通安全局（National Highway Traffic Safety Administration）によると、国内の交通事故による死亡者数は2021年、約4.3万人になった。そのうち半数近くがスピードの出しすぎやアルコール等による飲酒運転による人為的なものだった。
ロボタクシーが増えることで飲酒運転による事故の減少が期待でき、多くの命を助けることにもなる。また、高齢ドライバーによる交通事故も防止できることにもつながるのだ。
ロサンゼルス・ダウンタウンにあるビルトモアホテルやリトルトーキョーにあるミヤコホテルに宿泊する日本人観光客も今年中にもロボタクシーを使ってサンタモニカ・ピアやビバリーヒルズのロデオドライブ、ハリウッドのチャイニーズシアターなどの観光地めぐりができるようになりそうだ。
流通視察でロサンゼルスに来るビジネスマンも無人タクシーでショッピングセンターや店舗も気軽に行くこともできるのだ。
トップ動画：ロサンゼルスでロボタクシー運行開始を伝えるローカルニュース。 続きを読む
2024年03月19日
【空洞化モール対策】、巨大な空き屋に学校！廃墟寸前のBack to the futureモールにも？
■老舗デパートメントストアのメーシーズは今月初め、向こう３年間で不採算店となる約150店を閉鎖することを発表した。ショッピングモールの核テナントになっている大型店が今年だけでも50店舗スクラップされるのだ。
この大胆なリストラでさらに頭を抱えるのはモールオーナーだ。
全米大都市に展開するショッピングセンターをモニターしている不動産調査会社レイス社によると、2022年第４四半期（10月〜12月期）のモール空室率は前期から0.1ポイント上昇し11.2％となった。11.2％となるモール空室率は前年同期と横ばいとなっている。
直近のデータについては報じられていない。
が、昨年破綻したベッドバス＆ビヨンドなど大手チェーンストアが大型店舗を次々に閉鎖しモールから撤退している事情から、ショッピングモール空室率が改善するどころか悪化している可能性を示唆している。
空き家となった大型商業物件がそのままの状態で残っているのだ。そこに企業を誘致しようにも広すぎたり、リノベーション等にコストがかかりすぎたり、家賃が見合わないことで手つかずで閉鎖されたままの状態になっていたりする。
メーシーズの150店の閉鎖でさらに頭を抱えるモールオーナーが増えることになるのだ。
ニューヨーク州アルバニー郡ギルダーランド地区にあるクロスゲーツモール（Crossgates Mall）のオーナーは店舗閉鎖により賃料が得られず債務不履行に直面し、係争中でもある地方当局に減税を求めていた。
1984年にオープンした同モールは現在、１億ドル以上の価値があるものの数年前に比べてほんの一部でしかないのだ。つまりクロスゲーツモールの不動産価値が異常なほどに下がっているということになる。
小売り業界の不良資産を専門にするニューヨークの業者が最近、シカゴ郊外のルイス・ジュリエット・モール（Louis Juliet Mall）を3,140万ドルで買収した。
以前のオーナーは同モールを債務不履行で手放したのだが、2012年にローンを組んだ際の評価額は１億3,180万ドルだったのだ。つまり低迷していたルイス・ジュリエット・モールは約10年で評価額が３分の１以下になってしまったのだ。
核テナントは2018年にはシアーズを含め４つもあったが現在はメイシーズとＪＣペニーだけとなっている。
インディアナ州マンシー地区にあるマンシー・モール（Muncie Mall）は９年前の評価額が7,300万ドルだったのだが今年３月には600万ドルに価値を暴落させているのだ。
オープンから52年が経過しているマンシー・モールも10年弱で資産価値が10分の１以下になる惨憺たるデッドモールになっているのだ。
ニュージャージー州にある110万平方フィート（約3.1万坪）となるスーパーリージョナル・モール（超広域型モール）のウッドブリッジ・センター（Woodbridge Center）も2014年時の資産価値から今年はじめには76％も下落して8,600万ドルの評価額となってしまっている。こちらも1971年オープンのモールであり、築年数が長いところの下落が顕著になっているのだ。
モール側も資産価値を落とさないよう苦肉の策として学校を誘致している。
空洞となったビルを校舎にしてしまったハイスクールがある。ダウンタウン・バーリントン・ハイスクール（The Downtown Burlington High School）は2021年４月、バーモント州バーリントンの中心街にあるメイシーズが以前はいっていたビルを校舎としてオープンした。
しかもメイシーズで使われていたエスカレターやエレベーター、デコレーションなどをそのまま使って学校を再開したのだ。
ダウンタウン・バーリントン・ハイスクールはそこから２マイル（約3.2キロメートル）離れた場所にあるのだが、古くなった校舎のリノベーション中に建物や土壌から有害物質のポリ塩化ビフェニール（ＰＣＢ）が見つかったことで学校を完全に閉鎖せざるえなくなった。
ＰＣＢをすべて除去するには数年以上かかり、生徒の安全を一番に考えたからだ。
当時はコロナ禍でもあり、オンラインでのリモート授業を展開。リモートクラスに切り替えたものの、登校とリモート・ラーニングを行う「ブレンド・ラーニング」があるため、どうしても校舎が必要だったのだ。
しかもダウンタウン・バーリントン・ハイスクールは生徒数が1,000名近くにもなるマンモス校であり、大きな校舎を必要としていた。
学校側が市の当局者に相談したところ、臨時校舎として紹介されたのが2018年から閉鎖となっていたダウンタウンにあるメイシーズだ。
ダウンタウンにあるデパートを校舎にするアイディアに否定的だった学校側も、建築士との話から施設の様々な面を気に入り校舎に決定したという。
メイシーズ校舎は州から約350万ドル（約3.9億円）の支援で店内を高校にリフォームをおこなった。といってもメイシーズの内装や設備、什器備品をそのまま使った「居抜き」校舎となっている。
したがって建物の真ん中にあるエスカレーターはそのまま使っており、エレベーターも稼働する。床は鏡のようなピカピカのタイルに一部の教室には真っ赤な絨毯がそのまま残っている。
カルバン・クラインやマイケル・コース、ラルフローレンのブランドサインも壁にそのままになっているのだ。巨大なリーバイスのポスターも什器と共に残されている。お洒落になったのは図書館で、陶器売り場の間接照明が書籍を下から照らし出している。体育館は地下にあるバックルームを改装。
ただ課題はクラスルームだ。教室を仕切りで区切っているだけで天井まで届いておらず、先生や生徒の話す声が隣のクラスに聞こえてしまうのだ。
ダウンタウン・バーリントン・ハイスクールの約半数の生徒が登校するメイシーズ校舎は今のところ、上手く行っているという。
モールに学校を開校する事例は他にもある。
サウスカロライナ州サムター地区にあるサムターモールにチャータースクールがある。
サムターモールのＪＣペニー跡地に州や学区の認可（チャーター）を受けた公設民営型の学校（Liberty STEAM Charter School）が、読み書きや算数のできない生徒にむけて教育を提供しているのだ。
農地などに新築すれば工事費用は１平方フィートあたり300ドル以上になるが、モールの空き部屋を改装するとコストは１平方フィートで200〜250ドルに収まる。モールオーナーにとって学校を誘致することは小売店から得られる賃料より低いものの空き家をそのままにするよりずっといい。
約60パーセントが空きテナントとなるサムターモールは地域社会に貢献でき、教育弱者救済に役立つことでチャータースクールを選んでいるのだ。
すでにサウスカロライナ州グリーンウッド地区とジョージア州オーガスタ地区の空き家となった商業施設にもチャータースクールがあるという。
広い建物に電気・水道設備などが整ったユーティリティ、さらに広大な駐車場があるモールは学校誘致は意外に上手くいく組み合わせかもしれない。
子供を送迎する親がモールで"次いで買い"も期待できるのだ。少なくとも空き家放置よりコミュニティにとっては健全だろう。
トップ画像：ロサンゼルス郊外にあるプエンテ・ヒルズ・モールの"あの駐車場"。1985年に封切られた映画「バック・ツー・ザ・フューチャー（Back to the future）」でストーリー上の重要な出来事で使われたモールだが廃墟寸前となっている。学校を誘致してバック・ツー・ザ・フューチャー・スクールにすべき？ 続きを読む
2024年03月18日
【ウォルマート】、チェーンストア最大手がサース（SaaS）企業へ！物流ルート最適化？
■チェーンストア最大手のウォルマートは14日、ＡＩを活用した配送ルートの最適化サービスをソフトウェアとして外販していくことを発表した。
ウォルマートは急成長している広告代理店事業だけでなく、他の物流サービス等へ「サービスとしてのソフトウェア（ＳａａＳ：Software as a Service）」ソリューションを提供し、新たなＢ２Ｂ事業の拡大を目指す。
ウォルマートがＡＩを活用しながら効率的なサプライ・チェーンを構築した「ルート・オプティマイゼーション（Route Optimization）」はお客が望む商品を、いつでも、どこでも、望む方法で配送できるよう支援した物流テクノロジーだ。
ウォルマートの商業ＩＴ部門である「ウォルマート・コマース・テクノロジーズ（Walmart Commerce Technologies）」のサプライ・チェーン・ソフトウェアは配送トラックのルートを最適化することで二酸化炭素の排出量の大幅削減に成功している。
ウォルマート・コマース・テクノロジーズ事業部とウォルマート・グローバル・テック事業部で上級副社長でＣＯＯとなるアンシュ・バルドワジ氏は「当社はルート最適化などのソリューション構築に多大な時間や資源、運用ノウハウを投資してきましたが、それが多くの他の企業にとって障壁となっている可能性があります」と指摘。
バルドワジ氏は「ウォルマートのＡＩを活用した物流ＩＴを導入することで、テクノロジーを独自に開発する必要がなくなりコスト削減が可能となり、顧客サービスに集中できるようになります」と胸を張る。
ルート・オプティマイゼーションは様々な規模の企業に提供でき配送ルートを最適化し、トレーラーを効率的に梱包、移動距離を最小限に抑えるのだ。
ウォマートは同ＩＴを利用していることで3,000万マイルの不要な走行距離を削減できたという。また11万件にも及ぶ非効率なルートを効率化していることで9,400万ポンド（約4300キログラム）のＣＯ２を回避したのだ。
ルート・オプティマイゼーションを展開したことを評価され、2023年には権威ある「フランツ・エデルマン賞（Franz Edelman Award）」を受賞した。
1972年から始まったフランツ・エデルマン賞は、独自に開発した最先端ＩＴで物流コストを大幅に削減した組織や企業に贈られる賞だ。
ウォルマートではルート・オプティマイゼーションで５つのメリットを提供できるとしている。
一つは配送トラックのマルチストップ。時間や場所、店舗の配達時間帯などから、ＡＩがルート・マッピングを作成して複数の出荷先を経由する移動を効率化できるのだ。
２つ目として最も効率的な方法でトレーラーを活用できる。冷凍・冷蔵品など温度管理が必要な食品を含め、トレーラーの積載量を最大化できるのだ。
３つ目には、リアルタイムに天気や渋滞を予想しながら最適なルーティングに常にアップデートすることでオンタイムな入荷を可能にする。
４つ目は店への配送完了後、空荷の状態で走る「空車回送」を削減する。ルート・オプティマイゼーションを利用することで、復路における「帰り便の集荷」も計画できるようになるのだ。
５つ目はトレーラーの使用状況や移動時間、貨物なしでの移動距離などが一目で分かる、優れたＵＩ（ユーザー・インターフェイス）だ。分かりやすいＵＩによりチームがより迅速により多くの情報に基づいた意思決定を行えるようになる。
これらのソリューションメリットによりミドルマイルの効率を向上させ、温室効果ガス削減で地球規模に貢献できるのだ。
ウォルマートは過去10年以上にわたり革新的なオムニチャネル・テクノロジーを開発してきている。
ルート・オプティマイゼーションはウォルマートにとって「ゴーローカル（Go Local）」に続くホワイトラベル・システムソリューションとなる。ゴーローカルは他社が受注した商品を購入者に届けるラスト・ワン・マイルの宅配サービス。
ゴーローカルと提携しているホームデポでは受注したデータをウォルマートに送信し、受注データに基づきウォルマートが配送車両やドライバーを手配し、ホームデポの購入者に商品を届けている。
ホワイトラベル（White Label）とはウォルマートの名前を明かさず、提携先の事業者名やブランド名で提供することを指す。
他のＢ２Ｂ事業では急成長している国内広告代理店事業部「ウォルマート・コネクト（Walmart Connect）」がある。同事業部を含むグローバル広告事業の年間売上は直近で前年比28％増となる34億ドルとなった。
トップ画像：効率的なサプライ・チェーンを構築した「ルート・オプティマイゼーション（Route Optimization）」を利用することで、配送トラックのマルチストップが可能に空車の回送を削減し、天気や渋滞状況に合わせて自動にルーティングをアップデートする。 続きを読む
