撰集抄』の入力が終わって、「さて、次は何にしよう」と考えた。

この流れでいくと、次は鴨長明『発心集』か無住『沙石集』・『雑談集』あたりだが、さすがにオッサンくさい隠者文学は飽きてきた。並行して入力している『今昔物語集』もしばらく仏教説話が続くし、このへんで華やかな歌物語でも読みたくなった。

というわけで、『平中物語』はじめました。

静嘉堂文庫本『平中物語』:やたナビTEXT

幸い、手元には『校注平中物語』(山田巌 水野清 木村晟・洛文社・昭和45年5月)という本がある。この本、大学の教科書用に編まれたものだが、影印・翻刻・主要注釈書5本の対校と、いたれりつくせりのとんでもない便利本である。これを使ってテキストを作成する。
欠点は古い本なので、影印の印刷が悪く、やや読みにくいこと。なぜか妙な紫色で印刷されていて、余白があるのにちょっと小さい。
平中影印
それでも、松平文庫本『撰集抄』と違い、漢字が少なく、変に気取った字母・字形を使っていないから、非常に読みやすい。どうしても潰れて読めないところは、翻刻を見ればいいので、『撰集抄』よりはずっと楽だ。

問題は文章の方で、中世説話文学脳になっているので、読んでイマイチぴんとこない部分がある。その上、『平中物語』は天下の孤本なので、ちょっと文章がおかしくても他の本が参考にできない。

幸い、『平中全講』(萩谷朴・同朋舎・1959年10月初版 1978年11月復刊 )など、いくつか注釈書を持っているので、何とかなるだろうと思っている。

始めてみたが、写本の字が美しく、目玉とノーミソが洗われる気がする。印刷がきれいだったら、もっと気分がよかったに違いない。『撰集抄』のときは、ときどき頭痛に悩まされたものだが、これならたぶん大丈夫だろう。