子どもの王様 (講談社ノベルス) 新書 – 2012/8/7
殊能 将之 (著)
子ども向けの企画により書かれた、殊能センセー最後の作品。
主人公の小学生の男子の視点から描写された学校や団地、そして登場人物たちがとてもリアルで、子ども向けではあるが、大人でも十分に読み込める。
おそらく子どもと大人ではこの物語の感想はだいぶ違うだろう。
殊能センセーが団地に住んでいたことがあるのは知らなかったが、どこか薄暗い団地の光景は私も住んだことのある団地ととてもよく似ていた。
そしてラストは非常に考えさせられる結末で、シングルマザーの家庭の現実や、いまのコロナ下のDVをいやでも連想してしまう。
「王様」という象徴は、庇護や守護でも残酷や横暴でもあり、常に両義的な存在である。
そんな世界の象徴に対して、殊能センセーがこの少年に託したものはなんなのだろう。
この閉塞的な社会に出て行く子供たちへのメッセージというより、著者が遠い少年時代に持っていた何かの投影なのだろうか。
作品が作品のすべてであり、作者には興味のなかった殊能センセーだから、そんな無意識的な作為ではないと思う。
遺作は物語を楽しむというより、とても考えさせられる物語りだった。
主人公の小学生の男子の視点から描写された学校や団地、そして登場人物たちがとてもリアルで、子ども向けではあるが、大人でも十分に読み込める。
おそらく子どもと大人ではこの物語の感想はだいぶ違うだろう。
殊能センセーが団地に住んでいたことがあるのは知らなかったが、どこか薄暗い団地の光景は私も住んだことのある団地ととてもよく似ていた。
そしてラストは非常に考えさせられる結末で、シングルマザーの家庭の現実や、いまのコロナ下のDVをいやでも連想してしまう。
「王様」という象徴は、庇護や守護でも残酷や横暴でもあり、常に両義的な存在である。
そんな世界の象徴に対して、殊能センセーがこの少年に託したものはなんなのだろう。
この閉塞的な社会に出て行く子供たちへのメッセージというより、著者が遠い少年時代に持っていた何かの投影なのだろうか。
作品が作品のすべてであり、作者には興味のなかった殊能センセーだから、そんな無意識的な作為ではないと思う。
遺作は物語を楽しむというより、とても考えさせられる物語りだった。