2月9日は、夏目漱石の誕生日です。
慶応3年(1867)正月5日の生まれですが、新暦に直せば2月9日。
文章のうまさ、と言うより、思索を広く深く展開する文章の力に感心します。
漱石は、ジャムをなめたり砂糖豆をかじったりの甘党でした。
なかでも羊羹、それも青磁の器に盛ったものを絶賛しています。
(どの小説かはお調べ願います)
では、ご覧ください。高麗青磁、立菊白黒象嵌の皿です。13世紀の作と判断します。
(羊羹は13世紀ではありません)
北海道の和菓子屋さんが作りました。
材料に小豆を使わないところ、ちょいと変わった味です。
さて漱石小説の魅力の一つは、女性像でしょう。
たとえば『彼岸過迄』の千代子。
(小間使いの作もなかなかうまく書かれています)
「男は卑怯だから、さう云ふ下らない挨拶が出来るんです」
これは名台詞、どう思われますか。
つい「研究者は卑怯だから、そう言うくだらない理屈をこねるのです」
などと言ってみたくなり・・・
泉鏡花や芥川龍之介、また室生犀星の甘い物好きについては、いずれ。
鶴見大学文学部日本文学科研究室
研究室から出て、本山の境内を歩きました。
白梅がほころびはじめています。
「梅咲きぬどれがむめやらうめじゃやら」
蕪村の句です。
「あらむつかしの仮名遣ひやな、字儀に害あらずんば、アアままよ」の前書。
何のことやら、と思われるでしょう。
かの大学者本居宣長によれば、梅は「むめ」と書くべき、とか。
ともあれ咲き始めた境内の梅です。蕪村は、意味が損なわれなければどちらでもよい、ようです。
なお碩学亀井孝さんに関連の論文がありますので、どうぞ。
(これがさらさらと読めるならば、あなたの学識は大変な水準です)
なお亀井さんは、20年ほど前の1月に亡くなられました。
鶴見にも来ていただいたことがあります。
この話は、いずれ。
鶴見大学文学部日本文学科研究室
さすがに冬、研究棟のあたりでは落葉が風に舞っています。
曇り空から雪でも降ってくるような天気が続きそう。
最近は、都会の雪が少なくなりました。
江戸とまでは言わずとも、戦前まではよく積もったようです。
(残念ながら、担当者の全く知らない時代)
では、明治の雪景色をどうぞ。隅田川東岸から浅草方面を眺めた図です。
赤く塗られた建物は、待乳山の聖天様。
明治28年の石版画ですので、樋口一葉が名作を書き綴っていたころです。
『たけくらべ』『にごりえ』は、この年に書かれました。
担当者のおすすめは『にごりえ』ですが、『十三夜』もなかなかおもしろい。
ついでに申しますと、落語の『癇癪』は『十三夜』を軽くした作り方です。
さらについでを申せば、桂文楽の『癇癪』は絶品でした。
大晦日までに一葉の『大つごもり』を是非一読してください。
鶴見大学文学部日本文学科研究室
この言葉から、何を思われますか。
五言七言の絶句、梁塵秘抄の今様はなかなか良い答えです。
(近代今様の手練れは、佐藤春夫)
三行ならば石川啄木の短歌を思い出してください。
でも今日はペルシャの四行詩ルバイヤート。
数学・天文学に優れたオマル・ハイヤームは、ルバイヤートの名手でした。
(当時世界最高水準の数学者で、暦の研究でもグレゴリオ暦を超えています)
フィッツジェラルドの英訳により、欧米全体で高く評価されます。
では、1872年版をご覧ください。巻頭にハイヤームの略伝があり、これがまた良く出来ています。
日本語訳もいくつかありますので、英訳と対照してはいかが。
(太宰治も小説中に引用しています)
ついでに申しますと、今日(4日)がハイヤームのなくなった日。
日本で言えば、平安時代を生きた詩人です。
その頃、我が国では今様が流行していました。
東西の四行詩を読み比べてみるのも、おもしろいでしょう。
さて、洋書を手にしている方、古典籍を読んでいる人、
(影印本や複製本でも結構)
あなたはとっても素敵です。
鶴見大学文学部日本文学科研究室
晩秋のこの頃、いろいろな方のお世話になってきた、としみじみ思います。
ご命日が近い秋山虔先生も、そのお一人。
出来の良くない弟子を、寛容に見ていてくださった。
先生のご配慮で、研究者の道を歩むことが出来たのです。
90歳になられるまで、幾度も鶴見へ足を運ばれました。
展示や講演会へ来てくださると、お菓子をお出しします。
たいてい最中か甘納豆を選んでいました。
(結局のところ、担当者の好みを押しつけてしまったのかもしれません)
今日は、古伊万里に甘納豆の組み合わせです。甘納豆は珍しくありませんが、古伊万里段重は稀品。
1段1段の胴が丸みを帯びていて、とてもやさしい表情です。
これからお茶を淹れて、先生を偲びます。
「仰げば尊し、わが師(和菓子)の恩」です。
駄洒落なんぞ不謹慎とおっしゃっては、いけません。
鶴見大学文学部日本文学科研究室