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筆不精者の雑彙

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初代門司駅遺構の発掘現場を見学しました

 ずいぶん間が空きましたが、タイムリーな話題がありましたので久々に更新を。

 しばらく前のことですが、JR門司港駅すぐそばに新しい区役所などの複合施設を作ろうと、もともと駅敷地の一部だったところを北九州市が買収したそうです。で、建設に先立って敷地を発掘したところ、初代門司駅の貴重な遺構が出てきたのです。さる11月に現地説明会も開かれ、かなり盛況だったようです。

 この遺跡の発見を最初にネットで取り上げ、盛り上がりに一役買われたのが、産業遺産がご専門の熊本学園大学の市原猛志先生のフェイスブックでした。こちらをご覧ください。

 で、幸いにも、この遺構を見学できる機会に恵まれましたので、さる11月24日の午後に、同じく鉄道史に関心ある研究者の方がたと一緒に、この遺構を見学してきました。その概要を以下にお伝えしようと思います。


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# by bokukoui | 2023-12-31 16:07 | 鉄道(歴史方面) | Comments(0)

続・歴史修正主義と植民地の鉄道建設 インド篇



 先日インドで大規模な鉄道事故があったそうで、300人に近い死者が出たとのことです(もっと増えるかも)。米中に次ぐ鉄道大国のインドは、人口増や経済発展に鉄道インフラの整備が追い付いていないようで、大事故の報道を聞いた覚えは今回にとどまりません。犠牲者の冥福を祈るとともに、インドの鉄道の改良が望まれるところですが、人口密度の高いところで高密度な運転をする技術は日本の鉄道の得意とするところなので、技術協力ができれば……いやでもインドは貨物も多いから、イギリスから移植されたという点で日印の鉄道は同じ起源を持つとはいえ、今は相違点の方が多そうではあります。

 その事故と直接関係あるわけではないのですが、事故の直後にたまたまネット上でインドの鉄道に関するトンデモなツイートを見つけてしまい、うんざりさせられました。
 それは以下のようなツイートです。
 いったいどこから、こんな屁理屈が捻り出されたのやら。

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# by bokukoui | 2023-06-06 13:34 | 歴史雑談 | Comments(0)

日本学術会議法の「改悪」反対署名のお知らせ

 
 長らくブログを更新していませんでしたが、重要なお知らせがありますので、こちらを更新しておきます。

 かねてから続いている、日本学術会議の会員任命拒否問題と、一方的に不適切な措置をしておきながらその理由を説明せず、逆ギレしたかのように学術会議をいじくりまわして、政財界が介入しようとしている制度の「改悪」問題ですが、ひとまず今国会では見送りされました。
 しかし、政府による「改悪」が諦められたわけではありません。目先の金になる研究ばかり優遇する、政治が介入して軍事研究ばかりをやらせることが、過去の反省に学ばない、結果的には経済成長にも安全保障にも貢献しない愚策であることは確かだと思うのですが、権威主義的傾向を強める日本の政治は権威から自立した存在を嫌悪しています。根本的には政権を変えるしかないのですが、権威主義的な国へ雪崩落ちていくのをひとまず食い止めるためにも、日本学術会議問題については反対の声をあげ続けていくことが必要です。

 というわけで、新たな日本学術会議法「改悪」反対署名が立ち上がりましたので、一人でも多くの方のご協力をお願いします。
 前回と同じく、日本大学の古川隆久先生が呼びかけられた運動です。
 古川先生の声明文の一節を引用します。

「学術会議は、これまでの人類の叡智をふまえた学問的な立場から社会や政府に助言をする組織です。その学術会議までも政府に服従すれば、社会にとって貴重な(時には耳が痛い)「セカンドオピニオン」を発し得る重要な仕組みがなくなってしまいます」

 まったくその通りなのですが、耳に痛いことは聞きたくない、というご都合主義が、近年日本に瀰漫したように思われてなりません。理想を掲げることを偉そうだとけなし、正論を冷笑し、権力にすり寄ることを現実主義とはき違えてはいないでしょうか。問題を指摘する声を抑圧して、問題までなかった気になってはいないでしょうか。
 問題を指摘する声を押しつぶしても、問題がなくなるわけではありません。そうやって地道な課題解決から逃げてきた結果が、停滞かつ閉塞する日本を作ってきたのではないか、そんなふうに思われてなりません。いわば考えることから逃げ、それを精神的合理化であるかのように正当化しているのです。「タイパ」だの「コスパ」だの最優先に考えるのなら、理想を掲げて営々と努力するよりも、答えの出ない問いを考え続けるよりも、目前の現実にとにかく適応した方が合理的かもしれません。でもそれは、大局的には不合理なのです。考えることから逃げる姿勢が、学術への敵愾心を生んでいるのです。
 しかし、苦言を忌んで反省しない姿勢は、この国の政治では一層あらわになっています。原発事故がなかったかのように原発推進を図り、過去の歴史を忘れて軍拡に走り、新型コロナ対策への反省もなく規制をなくし、数え上がればきりがありません。それに反発するどころか、忖度して反省の声を押しつぶす連中の多さには危機感を感じますし、そういった連中が学問の世界にすら見られるのは、自殺行為としか思えません。人文社会系研究の核心を突いた、この学術会議問題の記者会見で東京大学の鈴木淳先生が述べられた言葉を、締めくくりに代えて引用しておきます。

「人文社会系の学問とは100%現状を肯定しているということはないと思う。どこかやはり問題を感じるところがある。それが今の政権に対してどうかとかそういうことはもちろん人によってさまざまだが、ないところにも問題を探すようなのが人文社会の本質というか、あるいは問題がなさすぎるのがおかしいと言ってみるくらいまで、人の心とか社会のあり方に対して敏感に感じ取る、課題を探す学問」

 この言葉の出典は以下の記事です。
※本記事は2023年4月21日のツイートをもとに作成しました。

# by bokukoui | 2023-04-23 12:50 | [特設]日本学術会議会員任命拒否問題 | Comments(1)

鉄道150年記念・鉄道史のおすすめ本紹介15点+α

 今日は1872年に日本で初めての鉄道が新橋~横浜間に開業してから(厳密には品川~横浜間で仮営業してましたが)、ちょうど150年の佳節にあたります。有為転変を経ながらも、日本社会で鉄道が一定以上のプレゼンスを保ちながらここまで発展してきたことは、一ファンとしてまことに喜ばしく思います。現在は新型コロナウイルス禍によって鉄道事業も大きな打撃を受け、また近年の温暖化に伴う天候の激変によるものか、被災による運休や廃止も目立ち、現に復興が問題となっている路線もあります。今後の鉄道事業の様相は予断を許さず、国鉄の分割民営化のような大きな変化が起こる可能性(いや必要性というべきか)もあるでしょう。しかし、鉄道を一貫して基幹的な交通機関としてきた日本では、今後もその社会の構造自体がすぐに大きく変わるわけではないでしょうから、まず当分は鉄道は重要な交通機関であり続けると思っています。

 という口上はひとまず措いて、鉄道史を専門としている私としては、この機会に鉄道の歴史についての面白い本をいくつかご紹介して、記念日の賑やかしにできればと思います。まあ過去に取り上げた本の再紹介になる場合も結構ありそうですが……。
 取り上げる本については、なるべく一般の読者の方を想定して、鉄道に関心のある方が読んで面白そうなものを取り上げたいと思います。ですので学術書としては古典であっても、例えば中西健一『日本私有鉄道史研究(増補版)』ミネルヴァ書房(1963年初版、2009年再々版)などは、除外することとします。
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 鉄道の本はたくさん出ており、それなりに読んでいるつもりの私でも到底網羅できているわけではありません。あくまで一ファン、私鉄の歴史に傾いた者の思い付き(割と愛読して記憶にある本)ですが、何かしら手引きになりましたら幸いです。


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# by bokukoui | 2022-10-14 08:45 | 鉄道(歴史方面) | Comments(0)

足立正生監督作品『REVOLUTION+1』上映&トークイベントを安倍国葬の日時に観る

 今日は、法的根拠がなく国会の承認も得ていないのに多額の国税を使って故・安倍晋三元首相の「国葬儀」なるものが強行された日でした。さまざまな世論調査によっても、国民の過半、三分の二くらいは反対しているにもかかわらず、「一度言い出したことは全ツッパ」という安倍政治の弊風がいまだ拭えていないことがあからさまになりました。
 安倍元首相殺害事件についてはいろいろ述べたいこともありますが、それはまたの機会にしまして、そんな国葬の日のまさに国葬の時間帯に、いろいろ有難い縁から、話題となっている映画の特別上映を観て、制作陣のトークも聞けるという好機に恵まれましたので、取り急ぎ感想をまとめておきたいと思います。

 その映画とイベントとは、こちらです。
 
 ネットでは一部話題になっていたり、メディアでも報じられましたので、ご存じの方も少なくないと思いますが、足立正生監督が安倍晋三殺害事件を題材に、犯人である山上徹也容疑者を主人公に据えた映画、『REVOLUTION+1』です。



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# by bokukoui | 2022-09-27 23:59 | 出来事 | Comments(0)