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ボンクラ360魂クロスカルチャーゲームブログ 

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【Midway Arcade Origins】Down at the Arcade

   ↑  2024/03/27 (水)  カテゴリー: XBOX 360
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カルト的な人気を誇ったロックバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの元ヴォーカルであるルー・リードの長いソロキャリアの中に「New Sensations」という1984年作がある。
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軽めでポップな曲が並ぶ、彼のコアなファンほど評判が悪いアルバムなのだが、70年代の残滓と軽佻浮薄なニューウェーヴ時代の空気が混じり合う、個人的にはとても好きな一枚だ。
このアルバムが印象に残るもうひとつの理由に、ルー・リードのキャラクターとしては意外なビデオゲームへのアプローチがある。
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ジャケットからしてゲームのジョイスティックを握る姿だし、シングルカットされた曲はそのものズバリ"My Red Joystick"。
そして何より興味を惹くのが末尾を飾る"Down at the Arcade"。
ジェフ・ミンターにも大きな影響を与えた『Defender』や『Robotron:2084』など、当時のゲームセンターを彩っていたゲームの固有名詞が登場するルー・リード流のアーケードゲーム讃歌である。
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80年代のアメリカのアーケードゲームで幅を利かせていたのが、MidwayやWilliamsといった元々はピンボールを手掛けていたメーカー。
これにATARIを加えた80年代の有力タイトルは、色々とややこしい合併や吸収を経てMidwayブランドのもとに統合される。
日本でも『ゲーセンUSA』の邦題でPS2国内版が発売された『Midway Arcade Treasures』は、そんなMidway、Williams、ATARIのアーケードタイトルを網羅したアンソロジーだ。
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Xbox 360の最初期には『Robotron』や『Smash TV』などMidwayブランドの諸作が配信されていたが程なくしてMidwayが破綻。そのブランドはWarner Bros.に買収されてしまう。
そしてWarnerが責任を持って(?)発売したのがこの『Midway Arcade Origins』。
『Midway Arcade Treasures』の仕切り直しとも言えるアンソロジーで収録作はほぼ一緒。
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『Rootbeer Tapper』『Joust』『ガントレット』『Spy Hunter』『Arch Rivals』『ピットファイター』『Super Sprint』『ランパート』など、80年代から90年代初頭にかけての綺羅星のごときUSA産アーケードビデオゲームを31も収録。
『Smash TV』や『マーブルマッドネス』なんかはいまプレイしても充分楽しい。
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だけどやはりこの手のレトロゲームアンソロジーの一番の楽しみはメニューのゲームセレクト画面に尽きる。
クセだらけで舶来の香りをぷんぷん漂わせていた、そして置いてあるゲーセンを見つけるだけでも一苦労だったゲーム。そして日本には未紹介で終わってしまったゲーム。ルー・リードをも魅了し「♪オレは最高のディフェンダー」と歌わせたゲーム。
その派手なアップライト筐体をぐるぐるローテーションさせているだけでワクワク感が止まらなくなってくる。

<国内未発売タイトル>

この記事に含まれるtag : ミッドウェイ 

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2024/03/27 | Comment (1) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

【Space Giraffe】宇宙キリンとNeonビジュアライザー

   ↑  2024/03/23 (土)  カテゴリー: XBOX 360
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1984年の『Psychedelia』に端を発した光シンセサイザーによるデジタルサイケデリックの追求はジェフ・ミンターの大きな業績だ。
80年代のいくつかの実験的作品を経て、ハードスペックが向上した90年代のVLMでそれはひとつの完成を迎えるのだけど、その境遇は決して恵まれたものではなかった。
初代はJaguar CD、二代目はNUONと、まず搭載されたハードそのものが幻に近い存在。
Game Cubeに搭載予定だった三代目に至ってはお蔵入りになってしまう。
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それがやっと結実したのはNeonと名を改めた次世代からだ。
音楽プレイヤーと連動したNeonはXbox 360に標準搭載され、挿入したCDなどに合わせて光狂うNeonの過剰なビジュアルはハイデフ時代の新ハードを彩ってくれた。
残念なことにこのビジュアライザー機能は後継のXbox各機に受け継がれなかったのだが、Neonの本領を遺憾なく発揮したシューティングゲーム『Space Giraffe』は、現行Xboxの後方互換により今でもたっぷりと体験できる。
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特異なルールを擁したSTG、光シンセサイザーによるデジタルサイケなビジュアル、そして偶蹄目類。
この3本の柱により構成された『Space Giraffe』はジェフ・ミンターのワークスの集大成であり、そして文句なしに最高傑作といえる作品だ。
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すでに発売から15年以上も経過しているゲームだが、そのあまりにも突き抜けすぎた内容故か、いまプレイしてもちっとも古びていない。
特に酒を飲みながらプレイしているときは、この世にこれを超えるゲームは存在しないと思えるほどの至福感に浸れる。
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『Space Giraffe』以降、ラマソフトは『Tempest 4000』や『Akka Arrh』など数点の作品を放っているが、光と音の過剰さで若干ブレーキがかかったそれらのゲームは、やはり『Space Giraffe』ほどのインパクトに欠ける。
360版の後にリリースされたPC版の『Space Giraffe』ですらも、その点では同様だ。
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やはりこのゲームはサイケデリックのリミッターを解除したような360搭載Neonビジュアライザーと対になってその本領をフルに発揮する。
Neonがモニターの中で妖しげに蠢く中で、音楽CDをとっかえひっかえするだけでも得も言われぬ快楽があった。
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そして『Space Giraffe』に相伴させるCDをチョイスし、特にジェフ・ミンターの創作に大きな影響を与えたであろうピンク・フロイドを鳴らしながら、目も眩むような光と怪しげなキャラクターと得体の知れないルールに支配された宇宙を酩酊しながら無心で突き進むその瞬間だけ、オレは銀河の理との一体感を覚えるのであった。
いまや現行Xboxの後継機の話題すら上がるようになっているが、Neonビジュアライザーと『Space Giraffe』がある限りXbox 360は手元に残す価値が必ずある。

この記事に含まれるtag : XBLA 

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2024/03/23 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

【Llamasoft: The Jeff Minter Story】ラマソフト ジェフ・ミンター・ストーリー

   ↑  2024/03/21 (木)  カテゴリー: XBOX
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80年代から現在まで独自のスタンスを貫きながら活動を続け、カリスマ的なポジションを得ているゲーム制作者ジェフ・ミンター。
その特異な作風から奇才なんて表現と常に対になりがちだが、なにより彼の大きな特徴は常にインディペンデントである立場を一貫して崩さないことだ。
この『Llamasoft: The Jeff Minter Story』はただのゲームアンソロジーに留まらず、そんな彼の航跡を追ったゲームソフトの形を借りたドキュメンタリー的な作品だ。
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シンクレアZX81でリリースされた1981年のデビュー作に始まり、Atari Jaguarの伝説的なソフト『Tempest 2000』(そしてオマケ的な立ち位置で近作の『Gridrunner Remastered』)まで、40数本ゲームがプレイアブルな状態で収録されているが、それはあくまでも補完的な存在。
本作のメインはテキストや画像、ムービーで体系的に構成されたジェフ・ミンターとラマソフトのノンフィクションストーリーにある。
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時は1980年代初頭、ゲーム制作を志す多くの駆け出しクリエイターたちは、既存ゲームのクローンと手探りのプログラミングとハードスペックの制約から始まった。
ジェフ・ミンターもそうだ。
彼がシンクレアやコモドールで造った初期の作品は『センチピード』のクローン。やがてそれに独自のアイディアを加えて最初期の名作『Gridrunner』が生まれる。
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実際に時系列でプレイできる彼の80年代作品群を順を追ってプレイしていると、ジェフと純独立メーカーであるラマソフトのターニングポイント的な作品がはっきりと見えてくる。
まずは『Gridrunner』、偶蹄目類からのインスパイア、そして光シンセサイザー(あるいはビジュアライザー)への接近。それに加えて複雑で難易度が高い作風がソフィスティケートされた1992年のシェアウェア『Llamatron:2112』(オリジナルの『Robotron:2184』より遥かに遊びやすく、そしてより奇矯だ)も見過ごせない存在だ。
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過去の名作からのインスパイア、常人には理解できない偶蹄目類からの影響、そして光シンセサイザーから始まったサイケデリックなビジュアルの探求。
そうした彼の一連の歴史の集大成的作品となったのが伝説的カルトゲーム『Tempest 2000』。
この一作に至るまでの流れを体系的に理解し、そして存分にプレイできるだけで『Llamasoft: The Jeff Minter Story』は大きな価値がある。
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カルト的な扱いを受けることの多いジェフだけど、このドキュメンタリーソフトから伺える姿は決してマイナー的なものに耽溺したり意図的に奇を衒ったりするものではない。
一貫しているのは自分の創りたいものを造ること。そしてそのためにインディペンデントのスタンスを貫くこと。
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ただそのジェフが表現したいと思っている普通の中に、傍からは「え、なんで!?」って思わせるストレンジな要素がちらほら混じっていることが、彼が奇才と呼ばれる由縁なのだろう。
でもその原点は、あの当時ビデオゲームとホームコンピュータに魅せられた世界中の多くの人々となんら変わりはない。
些細な違いは手にしたコンピュータがシンクレアであったりMZであったりアタリであったりと様々であっただけだ。
そしてジェフはその初期衝動を失うことなく現在までその活動を継続させた。
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ジェフ自身や関係者のインタビューを収録したムービーは公開予定のドキュメンタリー映画「Heart of Neon」からの一部。
この映画とプレイアブルなゲームを収めた本作を合わせた形こそがジェフ・ミンターとラマソフトの物語の完成形であるかもしれない。

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2024/03/21 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

【ユーラシアエクスプレス殺人事件】

   ↑  2024/03/13 (水)  カテゴリー: PS1
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主演を務めていたり受賞歴があったりと錚々たるキャリアを持つスターや名優が一堂に介したら、どうすれば全員の顔を立てられるのか?
列車に押し込めて全員容疑者にしてしまえばいいと教えてくれたのはシドニー・ルメットの「オリエント急行殺人事件」だ(これはケネス・ブラナーの2017年版にも受け継がれる)。
では人気が拮抗している若手アイドル女優が顔を揃えた場合は?
やはり列車に押し込めて全員容疑者にすればいいと教えてくれたのは、何故か当時ドラクエの傍らで実写ゲームをばんばんリリースしていたエニックス(現スクエア・エニックス)なのであった。
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榎本加奈子、深田恭子、新山千春、馬渕英里何、加藤あい、中島礼香、佐藤仁美。黎明女学園は色んな意味でハイレベルな生徒を擁する夢の女子校。
上海からユーラシア大陸を横断する弾丸特急での修学旅行中、教師の一人が殺害される事件が起こったため、プレイヤーは捜査の名目でこの夢のパラダイス列車に乗り込むことができるのだ。
「この死体は窓から放り捨ててなかったことにして、みんなで枕投げでも楽しみましょう!」
そう宣言したいのはやまやまだが、一応このゲームの建前は推理ADV。
そしてこの夢の面々はあくまで容疑者の立場なのであった。
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事件関係者は七名の女子高生に車掌の高田純次、教師の斎藤陽子と大野幹代、そして田口浩正。
少しでも捜査にもたついていたら、タイムリミットはすぐに訪れてしまう。だから事件現場や死体の検証なんて余計な事をしている暇はない。現場第一主義なんてのは、どっかのへボ刑事のおめでたいお題目だ。
事件を解き明かす糸口は生徒たちへの聞き込み以外にはない。楽しい修学旅行中、突然起こった殺人事件に彼女たちもショックを受けているだろうが、ここは心を鬼にして尋問するしかない。
「正直に答えてね。……スリーサイズはいくつですか?」
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敵意むき出しの子、おどおどしている子、やたらクールな子、事件なんかお構いなしに脳天気な子、そしてちっとも口を利いてくれない子。
ただでさえこちらに不信感を抱く彼女たちから、事件の真相に迫る証言を得るのはなかなかに難事だ。
狭い個室内で顔を突き合わせ、女子生徒たちの重い重い口が開くのをじっくり眺めつつ待つ。
そんな重苦しつつもむず痒いひとときこそがむしろこのゲームの主眼だ。
ああ、オレも馬渕英里何とこのままずっと睨み合っていたい! 消え去れタイムリミット! 止まれ列車!
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エキストラとして、飯野賢治、小島秀夫、黒田愛実、森川幸人、金子一馬といった、豪華なんだか身内で済ませただけなのか判別つかないような面々が出演。
そして事件解決後に登場する主人公の秘書役は、事件解決ポイントに応じて四人に分岐するという、これまた意味不明な凝りようだ。
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被害者には申し訳ないが(まああんまり同情できなかったりする)、列車内殺人事件は素晴らしい。
なにせ人ひとりが亡くなっているのだ。どこぞのワケの分からないおっさんと名門女子高生という関係性を超えて、眼と眼を見つめ合いながら膝を突き合わせて深い話をすることができる。
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シリアスなコンカフェ状態と化した豪華列車の中で、オレは馬渕英里何の、榎本加奈子の、そしてこの面々ではもっとも芸能界からのおさらばが早かったためより神秘性の高い中島礼香の眼をしっかりと見据えながら、なるべく優しい響きで尋問を繰り返すのであった。
「正直に答えてね。……スリーサイズはいくつですか?」
消え去れタイムリミット! 列車よ着くな終点へ! ああ、この至福の空間をいつまでも!

この記事に含まれるtag : ミステリ アドベンチャーゲーム タレントゲー 実写ゲーム 

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2024/03/13 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

【マリンエクスプレス殺人事件】Murder on the Marine Express

   ↑  2024/03/11 (月)  カテゴリー: XBOX
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マリンエクスプレスは太平洋の海面下を日本からアメリカまでつなぐ海底列車。
そのお披露目運転のご相伴に預かったのは名門女子校の一行。
しかしそんな癖のあるシチュエーションで何かが起こらないわけがない。
案の定コンパートメントで発見されるのは男性教師の他殺体。
カリフォルニアに着くまで司直は介入できない状況下で事件の解決に乗り出すのは、東川乱子というちょっと面倒くさそうな性格の女子生徒。
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旅情あふれる豪華列車は古くから殺人事件と相性が良いが、それはゲームにおいても一緒。
8ビット機時代の西村京太郎ものに始まり最近では『アガサ・クリスティ オリエント急行殺人事件』など。
何より列車は関係者一同を逃げ場のないまま自然と拘束してくれるメリットがあるし、客船などと違って適度なタイムリミットもある。
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レトロ風のビジュアルが目を引く『マリンエクスプレス殺人事件』は、そんな王道シチュエーションを踏襲した一作。
とは言っても厳密にはゲームではない。
ストーリーやエンディングの分岐など一切ない、プレイヤーができるのは文章送りのボタンを押すだけ。純然たる電子ノベル。
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だけどミステリとしてあまり奇を衒わない展開と、軽妙な会話で構成された文章は、ゲームであるかないかなんてことを意識させずに読み進ませてくれる。
かなり教条的でクセの強そうな東川乱子のキャラクターも古典的なミステリ探偵像のモダナイズといった趣だし、その無二の親友で相方となるアストリッドも、これまた能天気でお人好しを極めた性格がワトソン役の現代版に相応しい。
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タイトなボリュームやゲーム的な要素の欠如も、連作のプロローグ的な位置づけだと思えばさほど気にならはならないだろう。
作者のSNSでは続編となる『どこにもいなくなった少女』の登場がすでにアナウンス済み。
そして次作はインタラクティブ的な要素を備えた作品になるらしい。
遠く海を隔てたスペインの開発者がここまで80年代日本製ミステリADVの空気を再現したことにも驚きだが、それが次なる作品ではさらにどのように昇華するのだろうか。

この記事に含まれるtag : アドベンチャーゲーム ミステリ 

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2024/03/11 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |