『魔法少女にあこがれて』第7話

 前期、マジアアズール(主人公の敵)のエロいシーンを期待して観続けたと言っても過言ではない『魔法少女にあこがれて』(以下『まほあこ』)ですが、その第7話。過去の場面で、幼少時の主人公がアニメを観る描写があった。

 その劇中アニメでは、怪物から逃げる人たちの姿と動きが、リピートする省力的な作画で描かれ、「昔のアニメ」であることが強調されていた。

 それで思い出したのは、90年代に観た『機動戦艦ナデシコ』第3話の劇中アニメ『ゲキ・ガンガー3』と、さらにさかのぼって『新・天地無用!』第11話の劇中アニメ『宇宙警察ポリスマン』でも「昔っぽさ」の演出として似た見せ方が用いられていたことだ。

 

 (この2つは大畑清隆さんの絵コンテ・演出回)

 Twitterでも同じものを連想したという感想をいくつか見かけた。ただ、確かに似てはいるのだけど、自分にとっては大きく違うのである。どこが違うのか。

 画像を見れば分かるように、『ゲキ・ガンガー3』『宇宙警察ポリスマン』では逃げる一人ひとりに関して、顔の向きや腕の位置などを少しずつ変える芸の細かさがあるのだが、『まほあこ』では同じポーズのコピペが並んでいるのだ。

 

 そのため、初見時には「いくら昔のアニメだからって、これはさすがに無いのでは……」と呆れてしまった。

 構図は違うが、『鉄腕アトム』(1963)の第1話にも逃げる群衆をリピートで表現したシーンがあったけど、その時代ですら、露骨な手抜きに感じさせないような工夫はあった。あとはなんだろう、『こどものおもちゃ』第90話の巨大ヒーロー物パロディ回で逃げる人たちの姿も、やはり全員が同じポーズではなかった(断片的なアニメ知識)。

 

 ただ一方で、僕も「昔のアニメ」に詳しくはないので、ちょっと調べてみるか……と、手探りで「人が逃げていそうな場面」を探してみた。その結果、『まほあこ』に似た表現を、とりあえず1つ見つけることができたのである。(探せばもっとあるかも)

 『超合体魔術ロボ ギンガイザー』(1977)第25話。

 完全に同じポーズの人が並んでいる……!!

 こうして『まほあこ』劇中アニメの第一印象「昔とはいえ、いくらなんでもこれは無いだろう」は覆されたのだった。

 

 以上、まとめると、マジアアズール(主人公の敵)のエロいシーンを期待して『魔法少女にあこがれて』を観続けた結果、意外にも新たな学びを得た、というお話でした。

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原画マン・動画マンの「~マン」が気になる今日このごろ

 アニメに関する文章を書く時に、今まで僕も使ってきた言葉、「絵コンテマン」「原画マン」「動画マン」「レイアウトマン」。ふと意識してみると、「man=男」なので、日本が男性中心社会をやめる方向にかじを切る今、このまま使い続けて良い言葉なのだろうかと気になりだした。

 アニメ以外の世界だと、「営業マン」「カメラマン」「テレビマン」「サービスマン」といった言葉は、今どういう扱いになってるのだろうか。それらは、昔は主に男性が就く職業だったから「~マン」で通用したのだろうけど、今は女性の割合も増えているだろうし。……と、気になって検索してみたら、問題意識を持って「カメラマンではなく、フォトグラファーを名乗る」とかいろんな動きはあるようだ。

 とはいえ、「アニメ業界には昔から働く女性が大勢いて、その時代から「~マン」という言い方をしていた歴史を踏まえると、例えば「営業マン」ほどには男性を連想させる言葉という印象は受けない」「アニメ用語の「~マン」は男女問わず「人」を表す言葉に感じられる」という実感が今のところ僕にはある。

 あるのだけども、それは自分が古いアニメファンだからそう感じるだけで、まっさらな状態で目にしたら、「原画マン」も「営業マン」とかと同じ古めかしさで「男性も女性もいるのに、今どき「マン」!?」って印象を受けるだろうな~と思った。なので、(他人の使う言葉に目くじら立てるまではしないけど、)僕は別の書き方に変えていこうかな~と思ったのでした。

最近WEB記事で読んだ押井守監督のレイアウト集の話

www.cinra.net

この記事を読んで、押井守監督のレイアウト集の話が気になった。

私の作品でも『攻殻攻殻機動隊)』あたりはほぼなくなっているし、『パトレイバー機動警察パトレイバー)』なんてもう影も形もない。個人的にどうしても保存したくて出版社を口説き落として出してもらったレイアウト集があるだけ。

この「レイアウト集」は、『METHODS 押井守パトレイバー2」演出ノート』のことかと思うのだけど(※違ったらすみません)、同書あとがきの押井さんの言葉を読み返すと、出版の経緯に関して違うことが書いてある。

昨今のメディアミックスやらマルチメディアやらの風潮で、資料集やムック本の類いは数多く出版されるようになりましたが、いずれも現場で作業する人間の目には不満の多いもので、いつか自分で手掛けてみたいと思いつづけていたところ、無謀にも本格的な資料集を出版したいという申し出があり、一も二もなく飛びついた結果出来上がったのが本書という訳です。

(『METHODS 押井守パトレイバー2」演出ノート』より)

「個人的にどうしても保存したくて出版社を口説き落として出してもらった」「無謀にも本格的な資料集を出版したいという申し出があり、一も二もなく飛びついた」では、かなり違った印象を受ける。実際のところは知らないけれど、もしかしたら、出版の申し出を受けたあとに、「資料集」から「レイアウト集」という方向に持っていくために出版社を口説き落とす場面があったのかな、と読みながら想像した。

作品や制作素材が残らず、消えていくのはつらいというWEB記事での主張には共感するし、押井守監督の言うように作画やアニメーターももっと評価されてほしいとも思う。それと同じように、「無謀にも本格的な資料集を出版したいという申し出」をした人の存在だって忘れてはいけないと思う。あのWEB記事を読んだだけだと、そういう存在は見えづらいと思ったので、ちょっと気になってこのブログ記事を書いた。ちなみに、『METHODS』の押井さんのあとがきには、編集者の野崎透さんへの謝辞が書かれている。

今月のアニメ雑誌の雑感(2023年4月号)

『月刊Newtype

◆「新房昭之のあの人とヒミツの話」。ゲストの倉田英之さんが「買うことに対する悩みがない。本も映画も自分で作ったら莫大なお金がかかる。その点、制作費10億円の映画の映像ソフトを5000円で分けてもらえるなら安い」みたいな話をしていて、僕には無い考え方だったので印象に残った。僕は買うことに対する悩みはあるなぁ。

◆新作映画紹介コーナー。ガイガン山崎さんが、スティーブン・スピルバーグ監督の自伝的映画『フェイブルマンズ』について書いていた。僕は既に鑑賞済みで「これはぜひ解説を読みたいけど、モンスターが出てこないから、ガイガンさんは書かないんだろうな」と思っていたので、予想が外れて嬉しかった。「こういう瞬間が描かれる」という文章を読んで、「ああ、漠然と受け取っていたけど、言葉で整理してみれば確かにそうだ!」と理解が深まった。

◆「井上俊之の作画遊蕩」。ゲストは『たてなか流クイックスケッチ』でもおなじみの立中順平さん。記事中でも「実は会ったことは一度しかなくて」と語られていたけど、見るからに珍しい組み合わせ。僕はディズニー作品に対する興味が薄いので、本質的なことはほとんど受け取れていないと思うけど、それでもこういう試みが行われる「雑誌の良さ」と、立中さんに幅広い知識で切り込んで話を引き出すインタビュアーとしての井上さんの凄さが味わえた。

花澤香菜さんの連載で「デビュー20周年」という言葉をチラッと見かけて、「20周年!」と素直に驚いた。

◆脚本家の小太刀右京さんが、復刻版の逆襲のシャア 友の会』に言及していて、入手性が高まることって大事だなと思った。

アニメージュ』(Kindle版)

「設定資料FILE」は『お兄ちゃんはおしまい!』。ちょっと模写してみたくなる画。表情集がお腹の辺りまで描いてあって服を着ていないのだが、胴体が「生々しい肉体!」と言うよりは「素体」的な印象を受けるのは如何なる線の作用によるものなのだろうと思った。あと、今月号は、奥付に前Qさんの名前があって珍しいなと思ったのだが、Twitter情報によると、この記事のテキスト類の担当とのこと。

『ストップ!!ひばりくん!』第9話

 U-NEXTでストップ!!ひばりくん!梅津泰臣さんの作監回を観ていたら、劇中で小学生男子が使う勉強ノートに「幻マ大戦」と書いてあった。で、「ああ、ちょうどアニメ界で幻魔大戦が話題になった時代だったのかな?」ぐらいに思ったのだけど、WEBで梅津さんのインタビューを読んだら印象が変わった。

そのうち、「ストップ!! ひばりくん!」(1983年)で作監に抜擢されたんです。当時まだ23歳ぐらいでしたから、先輩たちにやっかまれて「出る杭は打つ」みたいなことを言われました(笑)。当時の東映動画は実写映画の世界と同じように、職人気質の人が多かったんです。それで、ちょっと居心地が悪くなってきたころに「幻魔大戦」(1983年)の情報を聞いて、この大友克洋さんのキャラクターなら、ぜひ描いてみたいとマッドハウスへ移籍しました。

新作アニメ作品を制作中の梅津泰臣が語る「これまで」と「これから」【アニメ業界ウォッチング第85回】 - アキバ総研

 

 これを読んで、「当時、他社作品の劇中に文字で登場させてしまうぐらい、幻魔大戦の情報に心を奪われていたのだろうか!?」と想像がふくらんでしまった。いや、もちろん、この回の別のスタッフが書いた文字という可能性もある。ただ、その「幻マ大戦」の上に「うめつやすおみ」「てらさわしんすけ」と書いてある。ネット情報によると寺澤伸介さんは梅津さんと交流のあったアニメーターの名前のようだが、エンドクレジットを見るとこの回には参加していない。そう考えると、やはり梅津さんが遊びで思いつくままに書いた文字なのかな、と思った。

 場面的にも、小学生男子がひばりくんに一目惚れしてしまって、心を奪われて、頬杖ついてハートマークが出まくっている場面なので、視聴者の勝手な感想(妄想)としては「もはや、ひばりくんに憧れる小学生男子の姿と『幻魔大戦』に憧れる人の姿がダブって見える…!」と思った。

 ちなみに勉強ノートの反対側のページには、「ガッチャマン」と「女子高生大好き」と書いてある。タツノコプロ作品に思い入れのあった梅津さんが、のちのち科学忍者隊ガッチャマンのリメイクOVAに参加したり、女子高生が主人公のアニメを監督してタランティーノ監督のキル・ビルに影響を与えたりする未来の出来事のことを思うと面白い。