米国の力が相対的に低下している。
オバマ大統領に代わって政治経験ゼロの不動産王ドナルド・トランプ氏が大統領の座に就いた。
大統領選中に掲げた「米国第一主義」と「偉大な米国」を錦の御旗に、内政外交の舵を大きく切った。
東アジアでは、北朝鮮の挑発行為に対抗して軍事力を誇示。緊張を高める政策を取る。一方、欧州では、防衛費の分担をめぐって、北大西洋条約機構(NATO)加盟国との関係をギクシャクさせている。政権発足早々に中東諸国を歴訪したが、イスラム教過激派組織によるテロの撲滅につながる糸口をまったく掴めていない。
転換期を迎えた米国が今後どう出るかは、日本にも重要な影響を及ぼす。日本にとって米国の後ろ盾は欠かせない。これまでにも増して米国政治の動向を注視する必要がある。
米国に拠点を置いて25年のベテラン・ジャーナリスト、高濱賛氏が米国政治の最新の動きを追う。
シリーズ
アメリカ現代政治研究所
完結
全67回 完結
「ドナルド・シンゾー蜜月関係」は終焉か
「トランプという男は外交のイロハが分かっていない。もし本当に中国と対峙するのであれば、同盟国である日本、韓国、オーストラリア、NATO加盟国の理解と支持が必要だ。それを忘れて日本を除く韓国やNATOとぎくしゃくしている」
民主が下院奪還、弾劾とロシア疑惑追及をにらむ
民主党が下院を制したことで、トランプ大統領の弾劾が視野に入ってくる。ただし、司法委員会の委員長に就任するナドラー氏は慎重に事を進めるようだ。共和党が過半数を維持した上院で3分の2の賛成を得るのが困難なためだ。両党の攻防やいかに。
下院は民主優勢、トランプ「弾劾発議」に現実味
民主党の現職議員のうち、トランプ共和党が狙い撃ちしているのは、ミズーリ州のクレア・マカスキル候補だ。16年の大統領選では熱烈なクリントン支持者として反トランプキャンペーンを繰り広げた。トランプ大統領は同氏を目の敵にしてきたそうだ。
セクハラ疑惑一色に染まった米最高裁判事の人事
トランプ米大統領が連邦最高裁判事に指名したブレット・カバノー氏の承認をめぐって上院司法委が大混乱に陥った。同氏のセクハラ疑惑が浮上したから。FBIがセクハラ疑惑を調査すると決定。本会議での承認は1週間持ち越されることに。
対北朝鮮で「内部分裂」に陥ったトランプ政権
米国の北朝鮮専門家の間で一冊のフィクションが話題となっている。主題は、非核化が進まなければトランプ大統領は再び軍事圧力を強化する、との予測。戦争が勃発し、在韓・在日米軍基地は壊滅する。「非核化」の完全実施を真剣に考えるべきだ。
ペンス副大統領はトランプの首を斬れるか?
ウォーターゲート事件を暴いた著名記者がホワイトハウスの内情を明らかにした『Fear:Trump in the White House』が発売される。その記述は「理解力は小学校5~6年生並み」と衝撃的だ。副大統領が無能な大統領を解任する権限に注目が集まり始めた。
南北朝鮮に騙されたトランプ、「牙」をむく
トランプ政権内部で、文在寅・韓国大統領に対する不信感が高まっている。「文政権は米国の同意なしに北朝鮮との和解に向けて独走しようとしているのではないのか」という危惧の念が広がっているのだ。
トランプ反撃「弾劾してみろ。経済は破綻する」
「私を弾劾にしようものなら、米市場はクラッシュするだろう。雇用を増やし続ける私の政策が危険にさらされるからだ。(そうなれば)皆が貧しくなり、(好調な雇用や景気の)指数は一気に逆方向に向かうだろう」
リアリティー次第で豹変する「トランプ原則」
こんな小論文が注目を集めている。「壮大な外交構想を描いてそれに沿って外交を動かしていく歴代大統領もいたにはいた。しかしトランプ大統領は異なる。同氏は新たなリアリティーに直面するや、これまでの政策や路線は一切無視して、戦術的に動く」
米、完全非核化の表現を「CVID」から「FFVD」に
ポンペオ米国務長官が7月7日、3回目の訪朝を終えた。この過程で米国は「完全な非核化」の表現を「CVID」から「FFVD(最終的かつ完全に検証された非核化)」に改めた。北朝鮮が求める「段階的」を受け入れ、第一歩である「申告」に焦点を当てるようだ。
「米朝会談」の成果はどうであれ、これは歴史だ
米メディアは米朝首脳会談に辛い点数を付けた。この伏線は会談の前からあった。米朝首脳会談の開催を決めてから2か月強、政府部内の専門家や官僚を一切遠ざけて、一握りの側近と策を練るトランプ流に厳しい目を向けていた。
米朝会談ぶち壊し? 強硬派ボルトンの面目躍如
「ドナルド・トランプは文在寅の口車に乗せられていた。文在寅は金正恩の非核化発言を過大に評価し、トランプに伝えた。金正恩は完全な核放棄など考えていなかった」。米朝首脳会談の開催が危ぶまれる中、米国ではこうした不満が高まっている。
トランプ氏、「途中退席」覚悟で米朝首脳会談へ
トランプ大統領の心境はこうだろう。「金正恩は金王朝の存続を韓国に約束させるとともに米国の軍事力行使を封印してしまった」。それでも米朝首脳会談では強気を崩さないと見られる。会談の途中、机を蹴って退席する可能性が十分ある。
トランプは「森友問題」から安倍を救えるか?
安倍晋三首相が訪米し、トランプ大統領との首脳会談に臨む。だが、前回のような歓迎ムードは期待できそうもない。同大統領は中間選挙に向け、強気の姿勢をかためている。「buddy(相棒)」と呼んだ安倍首相といえども特別扱いとはならなそうだ。
米国務長官解任の裏に元ロシア・スパイ殺人未遂
英国で起きた元ロシアスパイ殺人未遂事件に対する見解の違いから、トランプ大統領は烈火のごとく怒った。まさに、トランプ氏がテレビ番組「ジ・アプレンティス」に出演した際によく使っていた「You're fired」(お前は首だ)だった。
大統領として振る舞い出したトランプ氏の虚と実
一般教書演説に望んだトランプ米大統領は、「これがあの毒舌家のトランプ氏か」と思わせるほどの内容と振る舞だった。声は落ち着き払っており、滑らか。大げさな身振り手振りもなし。ドギツイ表現は一切封印。大統領然たる年頭の一般教書演説だった。
金正恩氏はトランプ氏に「尊敬の念」を伝えた?
金正恩委員長が元旦に演説して以降、トランプ大統領の言動は微妙に揺れ動いています。というより支離滅裂で本心が奈辺にあるのか分かりません。
バノンはなぜトランプを刺したのか
話題の暴露本『Fire and Fury』に、バノン氏がコメントを寄せた意図について2つの説がある。一つは、これはトランプ氏とバノン氏が仕組んだ「猿芝居」だというもの。もう一つは、バノン氏自身が大統領選に出馬するために語ったとの説だ。
2018年「一寸先は闇の米国」をあえて占う
2018年の米国を取り巻く情況を展望する。国内的には、トランプ大統領をめぐるセクハラ問題が大きく取り上げられる可能性がある。外交面では、北朝鮮問題が相変わらず影を落とす。この厳しい環境の中でトランプ大統領の精神・健康状態を懸念する声が上がり始めた。
セクハラ候補を擁護するトランプの賭け
12月12日に米アラバマ州で実施される上院の補選が注目される。司法長官になり退任したセッションズ氏の議席を補充する補選だ。共和党から立候補しているロイ・ムーア氏(70)にセクハラ疑惑が浮上。38年前に当時14歳だった女性が告発した