「世界の工場」と言われてきた製造大国・中国。しかし近年は、人件費を始めとする様々なコストの高騰などを背景に、「チャイナ・プラス・ワン」を求めて中国以外の国・地域に製造拠点を移す企業の動きも目立ち始めているほか、成長優先の弊害として環境問題も表面化してきた。20年にわたって経験を蓄積し技術力を向上させた中国が今後も引き続き、製造業にとって不可欠の拠点であることは間違いないが、一方で、この国が世界の「つくる」の主役から、「つかう」の主役にもなりつつあるのも事実だ。こうした中、1988年の留学から足かけ25年あまり上海、北京、香港で生活し、ここ数年は、アップル社のスマートフォン「iPhone」を受託製造することで知られるEMS(電子機器受託製造サービス)業界を取材する筆者が、中国の街角や、中国人の普段の生活から、彼らが日常で使用している電化製品や機械製品、衣類などをピックアップ。製造業が手がけたこれら「モノ」を切り口に、中国人の思想、思考、環境の相違が生み出す嗜好を描く。さらに、これらモノ作りの最前線で働く労働者達の横顔も紹介していきたい。本連載のサブタイトルに入れた「速写」とは、中国語でスケッチのこと。「読み解く」「分析する」と大上段に構えることなく、ミクロの視点で活写していきたい。
シリーズ
中国生活「モノ」がたり~速写中国制造
完結
全66回 完結
ゴミ拾いが夢を語れる貿易戦争下の中国の現実
廃品回収をして生きてきた農民工の友人が、上海の「異変」に気付いたのは、2018年の夏の終わりごろだった。夜も8時ごろになると町が真っ暗になり閑散としてしまう。米中貿易戦争の影響が出始めたことによるものかと思いきや理由は違う。
新興チャイナタウンと高齢化ニッポンの共生
いまやあちこちで強烈な中華の気を放っている西川口。訪れてみると中国色が色濃く漂っているのは間違いないのだが、それよりも強く感じたのは、団地などで見かける日本人のほとんどが高齢者ということだった。
中国に「属国」と言われたら日本はどうすべきか
中国の歴史学者として著名な岡本隆司・京都府立大学文学部歴史学科教授をお招きして、中国との付き合い方について考察する第3回。今回は、中国を理解するための歴史の重大性などについてご教示いただいた。
「自分が上に行きたい」中国人との付き合い方
中国の歴史学者として著名な岡本隆司・京都府立大学文学部歴史学科教授をお招きして、中国との付き合い方について考察する第2回。前回に引き続き、中国を見誤らないためには、どんなことを理解しなくてはならないのかなど議論した。
西洋の物差しで中国を測るから見誤る
中国は、その本質が昔と変わっているわけではない。中国の歴史学者として著名な岡本隆司・京都府立大学文学部歴史学科教授をお招きして、歴史的な背景を学んだうえでの、地に足が着いた中国との付き合い方について考察してみたい。
中国人の火葬嫌いと自殺見物と村上春樹と
ビルから飛び降りようとしている女性に「早く飛べよ」とはやし立てる声がいくつも上がった、というニュースを聞いたとき、私はとっさに、10年以上前に私から離れていった友人の引きつったような顔を思い出した。
中国の大工はなぜイレズミを隠したのか
サッカーのW杯を見ているとアルゼンチンのメッシをはじめ、タトゥーを入れている選手が多いことを認識させられる。一方で、W杯出場を逃した中国のサッカー界で、最近もっとも大きな話題になったのもタトゥーなのだ。
中国の14億総主流化と「殺馬特」の死
中国である人物の「卒業」が話題になった。垢抜けないX JAPANのような出で立ちで街を闊歩する「殺馬特」と呼ばれる若者たちの一群のリーダーだ。何故彼は殺馬特を卒業したのか? メディアを通さない彼の肉声からは、中国の現状が垣間見えた。
海外旅行年6回に車はベンツ、中国中産階級の謎
私は中国に足かけ20年近く暮らしたが、いまだに分からないことだらけだ。ただ、最近になってようやく分かりかけてきたことがある。それは、日本と比較してしまうから、分かるものも余計分かりにくくなるのではないか、ということである。
中国の小売業は激変最中、貧民層も救われる?
中国のスタートアップに特化した情報発信グループ「ChinaStartup」を運営する家田昇悟氏との対談の2回目。新しいインターネットのサービスは、中国で最初に起こっているという家田さんに、今の中国、これからの中国について聞いた。
新しいネタは中国で起こる、それが世界の常識
今回は、とても若い方とお話しした。中国のスタートアップに特化した情報発信グループ「ChinaStartup」を運営する家田昇悟氏だ。家田氏は、現在26歳。学生の頃から中国に興味を持ち、IT関連を中心に常に中国の新しいものをウォッチしている。
「充電だ」と消えた運転手、北京のEVバス事情
国を挙げて電気自動車(EV)シフトを進める中国。公共機関のバスにも着実にEV化が進められ、EVバスも多く見られるようになってきた。北京内での移動にEVバスに乗り込んだ筆者。そこで体験したものは?
中国には優秀な人材を吸い上げる仕組みが必要
哲学者で『街場の中国論』をはじめ多くの著書を持つ内田樹さんにお聞きする最終回。今回は、憲法改正について、メディアの在り方について、そして今後の中国について、おおいに語ってもらった。
中国に国境線の概念なし、そう理解して付き合う
哲学者で『街場の中国論』をはじめ多くの著書を持つ内田樹さんにお聞きする2回目。今回は、グローバル化を進めるうえで、日中が抱えるそれぞれの問題などについて、意見をいただいた。
内田樹氏に改めて聞く『街場の中国論』
ここ数年の中国、そして日本を見る上で、ぜひ考えを伺いたい方がいた。哲学者で多くの著書を持つ内田樹さんだ。内田さんが考える、現在の『街場の中国論』などについて尋ねた。
中国の出稼ぎ青年を無差別殺傷に追い込んだもの
農民工の立ち退きを巡り騒動があったという北京北部の町を訪ねた。そこで見たのは「売血」の張り紙。農民工たちは追い込まれている。そして起こったのが、ショッピングモールでの無差別殺傷事件だ。
売血・売春…行き場なくす中国の「下層の人間」
上海、北京など中国の大都市では、農民工を追い出す動きが目立ち始めている。習近平国家主席は、貧困対策を強化すると言っているが、なぜ正反対のことが起きているのか。北京の貧困地域を歩いてみた。
実利重視の日本だから中国を強くできる
毎月のように中国を訪問して経済の実態について調査しているキヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之氏に今後の中国についてお聞きする第3回。最終回となる今回は、これからの日中関係の理想的な姿などに話が及んだ。
今なら中国の貧困層を追いつめてもまだ耐える
毎月のように中国を訪問して経済の実態について調査しているキヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之氏に今後の中国についてお聞きする第2回。今回は、中国で進むと考えられる産業転換構造などについて聞いた。
日本企業が欧米企業よりも中国で成功するワケ
2017年の経済成長率が6.9%と発表された中国。中国の動向は、多くのビジネスマンの気になるところ。中国のマクロ経済に精通し、頻繁に現地を訪れて調査を重ねているキヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之氏に今後の中国を聞く。