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  • 小飼弾の論弾 #275 「肥料の要らない農作物は実現できる?超伝導研究者による論文捏造の手口、クラウドのCPUはArmベースへ」

    2024-04-23 07:0010時間前
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     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!

     今回は、2024年4月16日(火)配信のテキストをお届けします。

     次回は、2024年4月30日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2024/04/16配信のハイライト

    • 山本弘先生の訃報と「スポーツと八百長」
    • 「OpenAI日本拠点の狙い」と電力
    • 視聴者質問「ローカルLLMでないとできないこと」「フォトニックコンピューティング」
    • 視聴者質問「カカポについて」「東電に対して何をすべきか」
    • 「結石を食べるマクロファージ」とコーヒーについて
    • オッペンハイマー、ノイマン、ニュートン、だれが人外?

    山本弘先生の訃報と「スポーツと八百長」

    山路:今日最初はちょっと楽しいニュースでは全くないんですけれども。作家の山本弘さんがお亡くなりになったという。

    小飼:先月末なのでもうちょっと経つんですけれどもね。

    山路:以前、じつは山本先生をお呼びした回がありまして。

    小飼:この番組でも、ゲストでお招きした会が。

    山路:8年前になるんですね、もう。

    小飼:え、そんなに!?

    山路:2016年ですね。

    小飼:マジっすか。

    山路:で、その時に私サイン本もいただきまして。

    小飼:僕もサインもらってますね。こっちにサインもらってますね。僕は『神は沈黙せず』にサインいただいたんですけど。サイン入りの。あれ、こうか。

    山路:これでいいかな、ちょっと角度。映ってると思いますよ。

    スタッフ:フォーカスが。ちょっとフォーカス直すんで、ちょっとお待ちください。もう1回、もう1回映してもらって。どうだ。直らない。

    山路:でも、見えてるよって。ああ、映りましたね。

    スタッフ:こんな感じですね。弾さんもそのまま。

    小飼:ズームしすぎじゃない? もう少し引いたほうがよくない?

    スタッフ:見えたよって。申し訳ないです。

    山路:この私、ゲストに来ていただいたからではぜんぜんなくて、その前から山本先生の作品はよく読んでて、非常に好きなんですけど、なんていうのかな。すごく真面目でめんどくさいオタクを最後までやりきった人だったかなという。

    小飼:そうですね。

    山路:これはもう完全にいい意味でのオタクですね。

    小飼:ちょっと晩年はかわいそうというのが、よりによって脳梗塞だったので、一番最後まで機能してて欲しかったところが先にやられたというふうに本人もおっしゃってて。

    山路:そうですね。カクヨムとかでちょっとそういうエッセイみたいなものは綴られてましたけど、ハードSF書けないかもな、みたいなことはおっしゃってましたよね。本当にいろいろ素晴らしい作品多いんですけど、私なんか個人的に好きなのは『地球移動作戦』とか、

    小飼:ああ、

    山路:さっき弾さんが表紙を出した『神は沈黙せず』。

    小飼:あと『アイの物語』ですね。今ちょっと本棚のどこにあるのか、

    山路:とりあえずリンクだけ出しておきますね『アイの物語』。このあたりの作品、これもう大作じゃないですか。

    小飼:大作です。

    山路:私思うに、彼ってタイミングによっては、今の『三体』の劉慈欣と同じようなポジションにいてもおかしくなかったんじゃないかとすら思うんですよね。

    小飼:劉慈欣というよりも、確かに運が良くなかったといえば良くなかったかな。たとえば『アイの物語』が星雲賞を逃してたりとかね。

    山路:あれ、KADOKAWAで何か獲りましたけどね、『アイの物語』。何らかの賞は獲ってたと思いましたけども(※編注:第28回吉川英治文学新人賞候補になったが、受賞は逃している)。

    小飼:『アイの物語』は獲らなかった。一番獲ってて欲しかったんだけどね。

    山路:『アイの物語』ってけっこう、それこそAI時代のその先に人間が何をやるのっていうテーマでもあったりするじゃないですか。まさに今、私たちが直面しつつある問題、そういうのをいち早く捉えてたし。

    小飼:要するに人間が万物の霊長ではなくなった時代、どうするかっていうお話だったので。

    山路:そういう人間至上主義じゃないところっていうのはけっこう、彼の作品のあっちゃこっちゃにあるかなって。人類全体っていうのをある意味俯瞰して、べつに卑下するわけでもなく、過剰にあがめるわけでもなく、こういうもんだよね、ホモ・サピエンスっていう冷静な視点っていうのはけっこう好きでしたね。

    小飼:冷静通り越して、ちょっとケチもつけすぎなんじゃねとは思ってたけど。

    山路:たしかに(笑)。そこのところがワイドショー受けはしにくい人間だったかもしれないですけれどもね。

    「人類相手の皮肉っぽさが良かったよな」(コメント)

    山路:もっと影響力があっても良かったんじゃないかなと思う人ですけどね。あと最近だと、最近というか、病気される前に書かれた『プラスチックの恋人』というのも、これもやっぱり今これから私たちがおそらく直面するであろうエロの問題について書かれた本で。あと、彼自身が公表してたことだからぜんぜんいいと思うんですけど、けっこうエロい話書いてますよね、山本先生(笑)。堂々と。べつに隠してるわけでもなんでもなくて。

    小飼:けっこう重要なテーマなんだけどね。

    山路:自分の性癖全開のやつ、書いてたりするじゃないですか(笑)、エロいやつ。そちらも探して読んでみると。

    「山本先生といえば女ターザン」(コメント)

    小飼:やっぱりその点の性癖に関しては筒井康隆のほうが一つ上だな。最高級有機質肥料のものにした筒井康隆のほうが1本上だよ。ただね、これやっぱり時代もあって、筒井康隆はそれよりも前の世代の人なんだよ。何しろ戦争の時に疎開してた時代の人だからね。昭和一桁の人だからね。だから、作品中に自然に痰壺とか出てくるもんね。現代人、痰壺って言われても、ん? でしょ。でもそれが本当に、駅のトイレとかにあった時代があったんですよ。ちょっと話がずれちゃいましたけど(笑)。

    山路:『大いなる助走』でしたっけ、あれ何だったかな。痰壺とかがめちゃめちゃメインに出てくる話ありましたよ(笑)。

    小飼:あ、『俗物図鑑』とか出てきて、

    山路:『俗物図鑑』だったかな、

    小飼:痰壺評論家が出てきます。

    山路:腰を抜かしてしまうやつ、出てきますよね(笑)。筒井康隆さんはさておき、山本弘さんといえば、と学会とかの活動とかね。あの辺のところも本当に面倒くさいオタクとして活動されてましたけど。と学会は、途中で山本弘さんは手を引きましたけれども。本当に惜しい人を亡くされたという。

    小飼:まだ68歳だったというのもね。いやでも、鳥山明先生と同い歳だったんだね。

    山路:ああ、そうか。そうかそうか。じゃあそういう年ではあるわけなんですね。けっこう何というのか、人によっては亡くなって。特にマンガ家さんとか作家さんって、どうしても健康管理をおろそかになっている人みたいなイメージがあるんだけど、どうだったんだろうな、山本先生は。

    小飼:そういえば曙と僕は同い年だったというのも、ちょっとびっくりしたね。

    「今年はいろんな人の訃報ありすぎ」(コメント)

    山路:本当ね、訃報っていうのはきっといつでもあるんでしょうけど。

    小飼:加速度的に増えるというのは確定してるんだよね。まず人類の絶対数が増えているので、自然と死亡数というのもそれに従って増えてしまうし、その中でも日本って高齢化のトップを走っているので、やっぱりそれだけ多くなるわけだし。

    山路:それに自分が若い時に読んだ、その人が脂の乗っている時に読んだ作品の作者がが、どんどん亡くなっていく年代っていうのもあるのかもしれないですけどね。いやいや、本当にまたちょっと彼の作品を読み直してみようと思っております。
     ということで次の話題なんですけれども、これも軽かないんだけれども、ちょっとゴシップ的な話いきましょうか。よ、世界を騒がしている、世界一しでかした男の事件なんですけど。ふだん芸能スポーツニュースにぜんぜん興味のない私でも、このニュースはやっぱり読んじゃいましたからね(笑)。これ、弾さん、どうですっていう(笑)。

    小飼:まぁ、ある才能に長けてその結果大金持ちになった人というのはじつはけっこう自分の財産に無頓着だっていうのは、べつにこれに始まった話ではなくて。けっこう有名なところではザ・ポリスというロックグループがあって、そのシンガーのスティングが大いに売れたし、大いにお金を儲けたわけですけれども、それの会計士が11億円ぐらいちょろまかしてて。で、まぁ捕まったわけですけども。

    山路:それ見つけたのは誰なの?

    小飼:税務当局だったらしいですけども。で、スティングは「え、そうだったの?」って全く気がつかなかったと。ただ大谷の場合、もっとすごいですよね。そもそも、そうやって作ってもらった口座に自分でアクセスすらしてなかったのかという。

    山路:いやあ、野球バカですよね(笑)。

    「大谷翔平をトウキビ畑送りにしないための勧進帳」(コメント)

    山路:いやいや、これ発表してるのがFBIだったりするから、さすがにそんなのは通じないでしょう(笑)。そこで忖度はしないでしょうよ。だってピート・ローズ、日本で言ったら王とか長島クラスの人だって野球賭博で永久追放にしてるわけですからね。べつにメジャーリーグも、本当に大谷選手自身が違法賭博をやってたんだったら、永久追放してたと思いますよね。野球ファンとしては、FBIとかからも公式声明出て、被害者でぜんぜん瑕疵はなかったよみたいなことが発表されて、一安心っていうことなのかなと思いましたけどね。それにしても、こんだけ事件報道されてる中でホームランを打つ大谷の精神力っていうか(笑)、サイコパスっぷり。

    小飼:本当にここまで自分の金というのが他人事だというのはね。

    山路:さすがに弾さんも24億円盗まれたら、ちょっと腹立てたりとかするんじゃないですか?

    小飼:まぁ、腹立てないというか、それを人任せにするっていうのは、僕はもっとセコい環境で生まれ育ってきたので。だけど、額を他人任せにできるような環境には幸か不幸か、いなかったので。

    山路:ただ他人任せと言いつつも、いちおう口座を自由に使えるようにしてたつもりは本人はないわけじゃないですか。まぁ口座開設の時の情報を使って、その後もアクセスしてたみたいですけど、この通訳ってすごい特殊な立場ではありますよね、ある意味、雇い主の生活に相当密着して入り込んでるところは。

    小飼:ここまで密着して入り込んでても平気なんだっていう感覚はあるよね。ウザくね? とは思う、さすがに。でさ、一昔前だったらとにかくさ、今時の銀行口座っていうのはスマートフォンさえあれば、そこから見れるんだよね、残高照会とかできるんだよね。翔平君、自分でそれもやんなかったの? やってないかもしれないね。

    山路:いやー、すげーよな。

    「水谷さんは大谷選手がホームラン打つかの賭けにも賭けてたのかな」(コメント)

    山路:ってありますけど、いちおうそういう捜査当局の発表では、それはやってないという、

    小飼:それやったら、もっとしつこく調査されたはずですね、それやってたら。いや、だからなんでMLBが、ギャンブル、特に野球賭博を禁止してるかって言ったら、もう、それ認めちゃったら八百長され放題だから。八百長されたら、プロスポーツってもうアウトなわけですよ。アウトって言い切れないのは日本の場合、相撲の例があるからね。

    山路:あれがスポーツかどうかはまたちょっと微妙な話ですけどね(笑)。

    小飼:相撲の例があるからね。いやー、だからもしMLBが、日本の大相撲程度のコンプライアンスしかなかったら、もうとっくになくなってる。とっくに潰されてる。

    山路:あんな世界ビジネスにはなってなかった?

    小飼:うん。まぁでも世界ビジネスとは言ってもさ、べつにヨーロッパ人、「野球、何それ」に近いわけじゃん。まぁイタリアとか、あとオランダとか、ある程度やってる国というのは。

    山路:韓国で開幕戦ですからね、でも。

    小飼:すごい重要なことなんですよ、これって。

    山路:クリーンにするっていうのはキレイ事じゃなくて、もうビジネスのためにもクリーンにしておかないといけない。

    小飼:そう、ビジネスのためにもクリーンにしておかなければいけないわけ。

    山路:ビジネスのためにも。

    「台湾ではプロ野球選手の賭博が問題視されたことあったよね」(コメント)

    山路:ってありましたよね。

    小飼:いや、問題視じゃなくて、ダメなわけ。だから八百長というのは簡単なの。だから、わざと勝つというのは難しいけど、わざと負けるというのはチョロいわけじゃん。

    「トトは良くて、野球はダメなの?」(コメント)

    小飼:ちょっと待って。たとえばJリーグの選手がトトやっていいの? ダメじゃない、それは。そう、だから一般人がやるっていうのと選手がやるっていうのはぜんぜん違うわけ。で、選手でなければベースボールカードで投機してもいいわけよ。安く買って高く売っても。だから、普通の人だったらそれはいいわけ。選手がやったらさ、選手がやるっていうのはダメなわけ。

    山路:トレーディングカードも?

    小飼:そうそうそう。

    山路:なるほどね。言ってみたらあれって有価証券みたいなもんだもんな。

    小飼:うん。いや、だからまさにインサイダートレーディングなわけ。選手がやるっていうのは。

    「ある意味インサイダートレーディングだもんな」(コメント)

    小飼:そう、ある意味じゃなくて、定義通りの「ド」インサイダートレーディングです。もうThe Insider Tradingです。

    山路:それにしてもつくづく、これ、その水原容疑者、容疑者って言っちゃいけないんでしたっけ?

    小飼:いや、だから氏って言うべきですよ。Mr. Mizuharaでいいじゃないですか。いや、日本の敬称ってさ、まず「ちゃん」で「さん」で「氏」で「容疑者」で「被告」で、出世魚か何かか。

    山路:みんながそのルート行くわけじゃないでしょうけどね(笑)。

    小飼:氏でいいじゃん。

    山路:あるいはメンバーとかね。

    小飼:メンバー?

    山路:稲垣メンバーみたいな。容疑者って名前、容疑者って呼ぶ代わりに稲垣メンバーみたいに、その稲垣吾郎が、

    スタッフ:山口メンバーでしたか?

    小飼:山口メンバー? 山口?

    スタッフ:TOKIOじゃなかった?

    山路:違うよ。稲垣吾郎氏がちょっと事故か何か起こした時に、そういうふうに容疑者呼ばわりをしないで稲垣メンバーと新聞は言い続けたというのがありましたねっていう。

    「アメリカの保釈の速さに驚いたなぁ」(コメント)

    小飼:じゃなくて、日本の保釈されなさに驚くべきなんですよ。だから驚くというところが違うんです。11番さん、だからそれは驚き方が逆です。我々は驚くべきところに驚かないようになってしまって、驚かなくていいところに驚くようになっちゃったんです。保釈に関しては。人質司法に関しては。

     
  • 小飼弾の論弾 #274 「紅麹騒動で揺れる機能性表示食品、AIビジネスは儲からない?ビッグテックを訴える米司法省の勝算は?」

    2024-04-09 07:00
    550pt

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!

     今回は、2024年4月2日(火)配信のテキストをお届けします。

     次回は、2024年4月16日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2024/04/02配信のハイライト

    • フォーミュラE感想「フォーミュラゼロやってほしい」
    • xzコマンドの脆弱性、そのヤバさと「闇のもの」
    • 紅麹問題と「Apple対規制当局」
    • 視聴者質問「どの野党に投票すれば?」と税制のコスト
    • AIはどうやって儲けるのか
    • 6本足マウスとドラマ『三体』感想、おすすめの漫画

    フォーミュラE感想「フォーミュラゼロやってほしい」

    山路:タイトルにちょっと入れ損なっちゃったんですけれども、今日、かなり弾さん的に、そうとうデカいよっていう、IT関係のニュースがあった。

    小飼:xzは、これは、すごくヤバい。

    山路:ちょっとこれ、xzの話題、多めに語りたいと思います。最初は軽い話題でいうと、東京の公道で、公道レースが開催された。

    小飼:これ、軽いのか。

    山路:軽い(笑)、まあ、軽いエンターテイメント的ということで。

    小飼:でも、公道でやったというのはね。

    山路:私、わざわざJSPORTSにも加入して見てみたんですよ。

    小飼:でも、スクリーンで見たわけで、現場に行ったわけじゃなくて。

    山路:そうです。

    小飼:お台場だと、現場に行こうと思えば、行けて。だから、けっこう現地で見た人も多いんだけど。でもさ、あれってさ、一番良い観戦手法っていうのは、ドローンで追っかけだよね。

    山路:『MFゴースト』ですよね(笑)。

    小飼:そうそうそうそう。

    山路:あれを、『MFゴースト』みたいなドローンのやつで見てみたい。

    小飼:ほんのわずかなクリップで、ほんの5秒ぐらいのクリップでもいいから、見てみてください。今までのフォーミュラとは、何が違うか、音付きでね、ここが一番重要。音なんですよ、一番違うのは音なんです。

    山路:キュイーン、

    小飼:そうなんですよ。ヴェーンじゃないんですよ。内燃機関のヴェーンがなくて、シュイーンなんですよ。

    山路:なんか、面白い音ですよね。普通のEVの音ともちょっと違うというか。回転数とかが違う。

    小飼:それは全然、出力が違うけれど、でも、そこに内燃機関の音がない。やっぱり全体的にずっと静かではあるんですけれども。

    山路:あれやっぱり、公道レースとかもやりやすいってことあるかもしれないですよね。もしかしたら音の問題とかも。

    小飼:なんだけども、やっぱり一番の危険要素というのはスピードなので。だから、その部分っていうのは、ICEだろうが、BEVであろうが、要するに内燃機関であろうが、電磁モーターであろうが、変わらないといえば変わらないんですよ。

    山路:確かに(笑)。

    「チケット買えなくて東京ビッグサイト内でパブリックビューイングで見ました」(コメント)

    山路:おおー。チケット、3分でもう全部完売だったそうで。私も買おうかなと思ったんだけど、もう完全に出遅れました。

    小飼:っていうのはさ、ここまで来たらフォーミュラゼロやってほしいね。

    山路:ゼロ。

    小飼:どういうことかっていうと、要はモーターに関するレギュレーションを取っ払っちゃう。内燃機関だろうが、エレクトリックモーターだろうが、好きなのを使いなさい。その代わり重量はこれだけに抑えなさい、とか。

    山路:もうまさに『MFゴースト』の世界になっていくのかな、それは。

    小飼:いや、でもあったんだよね、フォーミュラ0というコンセプトは。でも今のところはフォーミュラEというのはフォーミュラ1とは別格、だから別の規格で。ストレートであればやっぱりフォーミュラ1のマシンのほうが今のところは速いんですよ。

    山路:しかし本当にそういう制約とかがないことだったら、べつに弾さんがよく言っているように、EVの方がもうモーターカーのほうが全然速いってことが。

    小飼:速いというのか、もうじつはトランスミッションがいらない。変速器がいらないんですよ。まあ厳密に言うと、普通にエレクトリックモーターを設計した場合というのは、トランスミッションがいらないようなトルク特性になるんですよね。トランスミッションがあったほうがいいようなトルク特性というような設計にわざとするっていうこともできるけど、基本いらないんですよ。そう、それだけでロスが減るし。

    山路:加減速なんかがすごくスムーズみたいなこともあるわけですよね。

    小飼:そうなんです。なんで内燃機関にはトランスミッションがついているかと言ったら、トルク特性がクソだからです。だからクソなトルク特性というのをギアチェンジでごまかしているわけです。そのギアチェンジの部分というのも、昔のフォーミュラ1とか今のでは全然違ったんです。昔は人間がクラッチを踏んでいたんですよ。今は電子クラッチでパドルシフトになっています。

    山路:ゲームとあんまり変わらないですよね。

    小飼:その操作もいらなくなる。

    山路:そうかそうか。今のフォーミュラ1はまだギアはあるのか?

    小飼:もちろんある。フォーミュラ1はインターナルコンバッションエンジンなので。

    山路:フォーミュラEのほうは?

    小飼:フォーミュラEのほうはどうなんだろう? ないんじゃないかな。

    山路:あ、そうなのかな? あの操作は本当にギア操作ではないのか? 私も今パッと思っただけでよく調べていないんですけども。それにしても、フォーミュラE、そういうEVの特性ももちろんなんですけど、ゲームのルールの設定の仕方も上手いなと思ったんですよね。例えばこのEVの出力、アタックモードというのが用意されていて、通常の状態よりもプラスした出力を出せる瞬間というのがあるんですよ。そのモードになるためにはあるポイントを通過しないといけないとか。

    小飼:それもなくして、やっぱりフォーミュラ1マシンとガチンコ勝負させて。

    山路:制限なしのスポーツってことですよね。ある意味。

    小飼:そういうことです。

    山路:いやいや、思った以上にフォーミュラEの可能性を感じましたよ。エンターテイメントとして。

    小飼:だからあれでいいでしょ、やっぱり一緒に走らせて、やっと少なくとも動力源として内燃機関というのは電磁モーターには敵わないというのがわかるので。

    山路:フォーミュラE、もう10年になるそうじゃないですか。そういうとこに早めに参加してきたドライバーの、何ていうか、開拓心というか、フロンティア精神すごいなと思いましたよ。まだ海のモノとも山のモノともつかん時に、そっちのほうに可能性を見出したドライバーとかもね。なかなか面白かった。

    小飼:でも、フォーミュラマイナス1すら提言できるな。

    山路:え? 何それ? 裸で走るみたいな(笑)。

    小飼:外部給電も解禁する。じつは今、フォーミュラレーシングの一番のフォーミュラというのか、レギュレーションで厳しいのは燃料周りなんですよ。フォーミュラ1もそうだし、フォーミュラEもそうだけど、そこの部分のレギュレーションというのが一番厳しい。

    山路:それこそ、マイクロ送電みたいなのとか、無線給電みたいなこともOKにしちゃうっていう(笑)。

    小飼:そうそうそう。そうなったら本当にどうなったのかな?

    山路:レーザー送電みたいなのもありにするとかね。面白そうですよね。モータースポーツ、やり方次第でもっと面白くなるかもしれないですよね。

    小飼:ただ、費用の方もどうかっていう。だから、そろそろホストするほうがきついんだよね。で、ホストするほうがしょぼいと、大会もしょぼくなるというのは、日本もトヨタがやらかしてるじゃないですか。富士スピードウェイで、ちゃんと観客の送迎インフラというのを全然整えてなくて。ものすごい大会になってしまったという。

    山路:ああ、確かに確かに。

    小飼:結局、鈴鹿一本に戻ったじゃないですか。

    「F-ZEROみたい」(コメント)

    山路:って。あの任天堂のF-ZEROですよね。たぶん、実際に記事に書いてあったんですけど、アタックゾーンとかのルールのアイディアは『F-ZERO』から来てるって書いてありましたね。

    小飼:いやでも、何度も言ってるように、スポーツの面白さ、競技の面白さを決める一番の要素というのはルールなんです。ルール、ルール、ルールなんですよ。で、なんで人類に一番人気のあるスポーツがフットボールなのか、サッカーなのかって言ったら、まさにそこなんです。手を封じたという。

    山路:ルールもいろいろバージョンアップしてるわけですしね。

    小飼:ルール細かく変えてるけど、一番根本なところは、手使っちゃダメよと。

    山路:ルール変える時の、もう何ていうのかな、錦の御旗っていうのが、それ、観客が喜ぶやろっていうのが一番強い。そこは、すごいわかりやすいですよね。

    小飼:だからそれが持続可能性を決めてるんですよ。

    山路:面白い話でしたんで、見る機会があったらぜひフォーミュラEとかの番組も見てくださいと。もう一つ軽い話題として、昨日、エイプリルフールだったじゃないですか。

    小飼:はいはい。

    山路:で、20年前のエイプリルフールに、このGmailが発表された。

    小飼:いやー、これ嘘から出たマコトというのか、ありがたいことはありがたいことでも、はしごを外された感がありますよね。

    山路:え、どういうこと?

    小飼:こう言ってはなんですけれども、Gmail一切使われてない人、ちょっと手を挙げてみてください。

    山路:うーん、確かにな。

    小飼:サブアカウントも捨てアカウントもなくて、Gmailは一切使ってないという方いらっしゃいます?

    山路:あー、それは確かに今の時代難しいかも(笑)。

    「そんなやつおるの」(コメント)

    山路:って(笑)。

    小飼:シーン。受験生とかでメールアドレスが要求された場合、真っ先に使うのは、仮に持ってなくても、作るでしょう、Gmailは。だから、たぶんそういった意味で一番大事なEメールインフラストラクチャーなのは間違いないんだけれども。その一方で、間違って自分の子供の裸写真をウプしちゃったら、Googleアカウントに(笑)、Gmailのアカウントも。だから、今、もはや単なるEメールアドレスじゃないんですよね。

    山路:あー、なんか、思いっきりGoogleに生殺与奪の権を握られちゃってるという(笑)。

    小飼:本当に、どっちが正しい? 「せいさつよだつ」? 「せいさいよだつ」? まあ、それはいいけれども。

    山路:「せいさつ」かな、この場合は。

    小飼:どっちだろう。早急(さっきゅう)なのか早急(そうきゅう)なのかって、まあそういうレベルの話。

    山路:そうそう、相殺の場合は「さい」ですけどね。

    「昔だったらHotmailだったけど」(コメント)

    山路:本当にGmailが出たことで、Hotmailっていうのがね、過去のものになってしまった。まあ、今でもまだあるのもありますけれども。

    小飼:いや、でも、Gmail以前っていうのは本当に、もうネットのゴミ溜め場だったじゃん。特にHotmailとかはすごいひどかったよね。今の、それの後継のLive.comとかOutlook.comというのはかなりまっとうな実装ではあるんですけど、なんか時すでにお寿司感じる(笑)のはあったよね。

    山路:昔ってもうHotmailって受け付けないようにしてるところってけっこうありましたよね、無条件で弾く(笑)。

    小飼:(僕のメールサーバーでも)捨てはしなかったけど、ジャンクメールフォルダに直行させてました。

    山路:いやー、懐かしい。ただ本当、この20年間かというのもまあまあびっくりな話ですよね。

    小飼:そうですね、本当に。

    xzコマンドの脆弱性、そのヤバさと「闇のもの」

    小飼:(コメントを見ながら)アウラ、それ、違った(笑)、「フェルンそれは嘘だ」と言いたくなってくるよ(笑)。あー、ヤバいの来た。

    山路:これっていうのが、そのヤバさがじつは普通の人にはわかりにくいっていうのと、さらに、なんていうのかな、影響の大きさっていうのが直感的に理解しづらいっていうところがあるんですけど、そもそもxzコマンドって何ですか? xzコマンド。

    小飼:xzコマンドというのは単に、データを圧縮する。具体的にはファイルを圧縮するコマンド、それだけですね。ただし、現在いろんな圧縮コマンドが、圧縮アルゴリズムですとか、圧縮コマンドですとか、圧縮ユーティリティっていうのがあるんですけど、その中では一番圧縮率が高い。そう、だから圧縮するのはすごい、そう、だからZIPのすごいやつ。圧縮する時間はかかるんだけど、圧縮率がすごい高いんですね、xzというのは。

    山路:これっていうのが、その脆弱性が見つかって大騒ぎって言うんだけども、そんなにこの影響って大きいものなんですか? xzって。

    小飼:xzというよりも、これ、xzを踏み台にして、Linuxの多くのディストリビューションで動いてる、SSHデーモン、要はSSHでアクセスする時のサーバ側にバックドアを仕掛けるというのがヤバい。

    山路:もしもこの脆弱性ってうまく攻撃側が利用したら、遠隔からもサーバーを好きなようにコントロールできちゃうようになっちゃう。

    小飼:そうです、そうです。だからLinuxサーバ入りたい放題になってたかもしれないんですね。xzコマンドというのは、たいていのLinuxディストリビューションだけではなくて、FreeBSDとかにも入ってますし、Macには直に入ってないんですけれども、MacPortsですとか、Hombrewですとかを使う。で、何かを入れると、大抵xzを使ってるのを入れるので、コマンドで。入るは入るんですけれども、一番大事なのはxzコマンドそのものではなくて、xzコマンドがデータを圧縮する時に使う共有ライブラリ、LibLZMAって言うんですけれども。最近のOSのコマンドっていうのは、コマンドそのものに重要な機能を入れとくんではなくて、共有ライブラリのほうに入れとくことが多いんです。それによって他のコマンドやアプリケーションも使えるわけですよ。xzコマンドだけではなくって。で、Linuxのディストリビューションでは、LibLZMAがSSHDにリンクされていることが多いんですね。そう、だから脆弱性が機能するためには、LibLZMAがSSHDにリンクされているっていうことが必要なので、じつはFreeBSDとかmacOSとかっていうのは、仮に脆弱性のあるバージョンを入れちゃっても、うまくいかない。バックドアが開かない。

    山路:素人考えなんですけど、SSHって遠隔でログインしたりとかする、そういうシェルなわけですよね。それってxzのライブラリとリンクしている必要なんてあるんですか? なんていうか、危険なだけなんじゃないんですか、あると便利なんですか?

    小飼:けっこうデータ圧縮というのは透過的にやるケースというのが今は増えているんですね。

    山路:透過的に行われる?

    小飼:透過的というのは、要は圧縮されていることを意識しない。何かデータを読むという時には、あらかじめそのデータというのは圧縮した状態で置いてあって、それを使う時に展開する。あるいはそのデータを送るという時には、圧縮してから送る。

    山路:じゃあもうユーザーはxzコマンドを使っているとか、ぜんぜん意識しないで使っている。

    小飼:意識してない。だからたぶん今一番よく使われているxzの事例というのは、Linuxのブートローダーです。今時のLinuxというのは、カーネルとそのカーネルを機能させるための最低限のユーティリティを収めたInitramfsという、メモリに展開するためのデータをあらかじめ用意してあって、ブートローダーはそれを読み込むんです。それを読み込む時に、xzで圧縮されたInitramfsを読み込むんですね。

    山路:そんな、最初の最初のところに脆弱性が(笑)。

    小飼:そうなんです。だから今時は普通に、特にzipとかしなくてもディスクに収納されている時に軽く圧縮されてたりもしますから。

    山路:へぇ。

    小飼:その中でもxzというのは、圧縮にはものすごい時間がかかるんだけれども、ものすごい圧縮率が高い。

    山路:バイナリに関してもテキストに関しても、両方とも。

    小飼:そういうことです。

    山路:この脆弱性が見つかったってことなんですけど、この脆弱性はうっかりだったんですか?

    小飼:いや、そこなんです。明らかにプロの犯行なんですよね。だから、これは事故でなくて事件なんですよね。

     
  • 小飼弾の論弾 #273 「TikTokは誰のモノに?4兆個トランジスタのAIチップ、死者も出たボーイングの闇」

    2024-03-26 07:00
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     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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     今回は、2024年3月19日(火)配信のテキストをお届けします。

     次回は、2024年4月2日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2024/03/19配信のハイライト

    • SFを超えたカウンターカルチャーだった『DUNE』
    • マイナス金利解除の影響と「目をつぶる」重要さ
    • 「体育会系的」自民党JCと航空機市場の寡占問題
    • 視聴者質問「本に読まれるとは」「『ゴールデンカムイ』感想」
    • 「AppleのAI研究」と「ヒューマノイドの定義」
    • TikTok問題の影響の範囲について

    SFを超えたカウンターカルチャーだった『DUNE』

    山路:最初軽い話題ということで、

    小飼:そう、いつも軽い話題、軽い話題ってさ、軽い話題詐欺という、僕は個人的に呼んでるんですけど、

    山路:いや、本当に軽い話題だと思うんですけど(笑)、映画、見た映画の話ですよ。『DUNE』が、『DUNE』のパート2が。

    小飼:そうそう、来週だと思ってたら、なんか1週間ちょっと感覚がずれていた。

    山路:弾さんがこの『DUNE』をまだ見てないというこの不手際、

    小飼:うん、不手際です。いや、本当に、本当にもう申し訳ないというのか。

    山路:まぁ見てない人のためと、あと見てない弾さんのために、まぁネタバレとかじゃないですけど、

    小飼:でも、こういうのもなんだけど、原作はもう散々読んだわけだから、

    山路:原作からちょっと変えてあるみたいですよ。

    小飼:だからどこが変えてあるのかなっていうのがたぶん一番のネタバレで、だからそこは。どこを変えたんだろうなー。

    山路:第3作ではもしかしたらダンカン・アイダホがどうのこうのっていう(笑)、

    小飼:あ、そうか、映画だと第3作になるんだ。じつは原作というのか、フランク・ハーバート、原作者の第3編というのは一番ウェーッとくる作品で、どうせ映像化するのであれば、そこまでやってほしいなという気持ちが。これはもう原作出て久しいんで、そこだけネタバレしちゃいますと、ポールの息子の皇帝になった話ですね。そのポールの父親、第3作目の主人公から見ると、じいさんから名前を取ったレトですね。レト二世の話なんだけども。これがなかなかエグくて。ただそのヒントというのは第1作から出てます。第1作の一番の、なんと言えばいいのかな、コアというのは、要はスパイスはどうやって作られていたのか、なんで惑星アラキスの特産なのかということで、これはもうさすがに言ってもいいかな。砂虫が作ってきたというね。

    山路:みんな薄々気がついていたとは思うが。まだナビゲーターとかは本格的には出てきてないんですよね。

    小飼:そうなんですよね。前に映画化された『デューン』では、いちおうギルドナビゲーターも実写化というのか、映像化されている。

    山路:前の映画って、スティングがフェイド・ラウサをやったやつですよね。

    小飼:そうです。本当に人間離れしちゃってるんですけど、もっと人間離れした映像を見せてほしいですね。でも、これは第1作目だけの印象なんですけど、オーネソプターはすごいよくできている。

    山路:羽ばたき機ね。

    小飼:そうそう。

    山路:建物とかその他のことの臨場感、実在感がすごいですよね。小道具のそれぞれもそうだし。

    「先行上映のIMAX見た、よかったわ」(コメント)

    山路:良かったですよね。IMAXで見てほしいなと思いました。あと、

    「なんで最近の映画は3時間ぐらいが当たり前なんだ、砂の惑星水の膀胱」(コメント)

    山路:っていうコメント(笑)。スティルスーツを着ていかんといけないですよね。水分を外に出さないためには。

    「どこまで作るんだろう」(コメント)

    山路:とりあえず、3作目、パート3まで作ることは確定で、『砂漠の救世主』を映画化するのは確定のはずですけどね。

    小飼:第2作はより悲劇なので。ポールを皇帝にしてしまったばっかりに、みたいな話なので、第2作は。原作通りだとしてね(笑)。

    山路:パート1って、いちおうアメリカでヒットしたけど、ようわからなかったって言ってる人もいっぱいいたんですよね。

    小飼:そりゃそうだよ、

    山路:イントロダクションですもんね。

    小飼:主人公が一番苦しいところで終わってるので。物語の谷の部分で終わってたので。

    山路:本当に作品世界の紹介みたいなところで。それでもパート2作られて、パート3も作られるって、ヴィルヌーブ監督、ヒットメーカーになってきたじゃないですか。

    小飼:というのか、それ以上に原作がすごい強い作品だからね。

    山路:『DUNE』ってややこしいって言う人いますけど、話の骨格自体はシェイクスピアの古典劇みたいな感じですよね。

    小飼:ああ、というのかな、って言われると、僕はシェイクスピアの悪口だったらいくらでも(笑)。でも悪口が出る程度に、半強制的に読まされるんですよね、シェイクスピアって。なんだけども、話してるとこんなの絶対ありえないというのが、現代だったら実在のところどころに差し障りがありすぎて無理だという。たとえば、『オセロ』という話があるじゃないですか。4大悲劇の一つなんですけども、これがいかにありえない話かというのは、塩野七生がエッセイで書いているので。

    山路:弾さん的にはつまり、小道具というか、物語のディティールみたいなところがめちゃめちゃやんけっていうところが気になるところ?

    小飼:めちゃめちゃというのか、なんと言えばいいのかな。ハリウッドとかの忍者的な感覚で中世イタリアをとり扱ってるんですよね。

    山路:なるほどね。

    小飼:『ロミオとジュリエット』もいかにありえない話かというのも、いろんな人がいろんなところで解説しているので。なんだけども、今時のイタリア人は同じくらいミーハーなので、日本人が忍者だ忍びだというのを英米で取り上げるというのをむしろ歓迎しているのと同じような感覚で、イタリア人はシェイクスピアを受け付けているので。

    山路:なるほどね(笑)、インバウンド需要的な。

    小飼:インバウンドの需要的な。インバウンドの先輩なので。

    「ロミジュリにたった数日であんな恋が盛り上がるわけないだろうとかって?」(コメント)

    小飼:いや、そっちではないんだよね。そっちではないんだよね、なにがありえないというのは、

    山路:私の知り合いにも、1日で結婚決めたっていう人がいますからね。だから恋が盛り上がるわけないというのはちょっと違うかなとも思ったり。

    小飼:だけれども、たとえばどんなところがありえないかというと、『オセロ』だと、オセロ本人がああいう形でベネチアで出世するというのがありえない。だから、血統貴族主義なので、外様中の外様のオセロがあんな偉い立場に立つということがありえないというのが。

    山路:ストーリーの根幹に関わってくるところの設定が雑っていう、

    小飼:そうなんです。ベネチアはそんな国ではない。

    山路:そういうところの作りが甘いって話なのね。

    小飼:日本の江戸時代の時代劇で、将軍を選挙で決めてたみたいな違和感があるわけですよ(笑)。それでもあまりに人口に膾炙してしまった話なので、もはやあれはあれ、それはそれになっているわけですよ。やっぱり笑いが込み上げてきちゃう(笑)、

    「ラストサムライ的な勘違いっぷり」(コメント)

    小飼:いや、それどころじゃないの、『ラストサムライ』とかっていうのはむしろ時代考証をしっかりしてるぐらいの感覚なわけ。
     でもやっぱり、時代劇って大きな嘘を入れたやつのほうが面白いんだよね、『ゴールデンカムイ』にしてもさ、あれだけしっかりアイヌのこととか調べした上で土方歳三が生きてることにしてるわけじゃん、そういう大嘘が面白いんだけれども。

    山路:大嘘をやっぱり効果的に使うためにも、脇をきちんとつくっておかないとってことね。

    小飼:やっぱり実際のところどうだったのっていうのは知っておいたほうがいいですよね。それで言うと、『源氏物語』とかっていうふうになると、あれくらい昔になると危うくなるんだよね。当時は本当にどうだったのかとかっていうのは。

    山路:あと『DUNE』の話ですけど、パート1にも言えることなんですけど、そういうフレメンって中東の部族、絶対にモデルにしてるじゃないですか、回教徒、

    小飼:その通りです、

    山路:パート2ってそういう彼らの宗教的な要素っていうのがクローズアップされてくるんですけど、これ、今アラブ世界の人が『DUNE』の映画なり見たらどう思うのかなっていうのはちょっと。

    小飼:いや、だからロレンス・オブ・アラビア(アラビアのロレンス)がカリフとかシークになったような話ではありますよね、ド外様じゃないですか、ポール・アトレイデスなんて。ただ外様でもいいんですけども、じゃあ今のベドウィン的に、フレメンを集束、まとめようとしたら、ポールはチャニしか娶るってないわけです。実際に婚姻で部族をまとめて国を作ったといえば、

    山路:サウジアラビア、

    小飼:そうです。アブドゥルアズィーズですよ。サウド家の。4人まで妻を持てますよね。4人まで持てるだけではなくて、ちゃんと契約にのっとれば、離婚もできるわけですよね。だから4人娶って、5人目を娶るとき、1人を契約にのっとって離婚して、手切れ金を渡してっていうのを100回だか200回だか繰り返したんだったけな(笑)。そういうこともあって、サウジアラビアっていまだに国王が2代目なんですよね。まだ息子の代なんですよ。まだ孫の代までいってない。まぁでもそれは置いといても。あくまでもベドウィンにインスパイアされたという(笑)、

    山路:ただ、かなりイスラムのテロの正当化みたいなことに繋がったりとか、そんなことないですか?

    小飼:何しろジハードという言葉をそのまま使ってるしね。原作もその通りです。

    山路:そこのところで、よくアメリカで好意的に受け入れられてるなっていうのもちょっと思ったんですよ、今。

    小飼:それゆえ好意的に受け入れられたというところはあると思いますよ。だから、単なるサイエンスフィクションを超えて、カウンターカルチャーだったんじゃないかなと思ってるっていうのも、これは完璧にカウンターカルチャーとして受け入れられたという作品として超有名なのは、ハインラインの『Stranger in a strangeland』という、日本語で『異星の客』、

    山路:火星のやつね、

    小飼:そうです、火星人の話。あれはもう完璧にカウンターカルチャーで、単なるSci-Fiじゃなかったんですよ。だからどれくらい熱狂的に受け入れられたかっていったら、ビリー・ジョエルの歌で『We Didn’t Start the Fire』というひたすら歴史的なイベント、20世紀の歴史的なイベントを並べていく歌があるんですけど、そこにちゃんと出てくるんですよ(笑)。それは置いといても、

    山路:今特に、ガザとかパレスチナの話ってすごいアメリカなんかでも注目を集めているわけじゃないですか。アメリカなんかの民主党も共和党も、イスラエル寄りだったりもしますよね。だけど、この『DUNE』ってものすごくある意味、アラブの人のほうにどっちかというとシンパシーを感じさせる話になってませんか、それはちょっと穿ちすぎですかね?

    小飼:こういうのもなんだけれども、『DUNE』7部作なのかな、ハーバード本人が死んだ後も書かれ継がれたので、じつは。被抑圧者が抑圧者のほうに回る話でもある。映画の第3作目がそうなってほしいな。虐げられたアトレイデスが、虐げる側に回る話、本当にそうなんですよ。ハルコンネンがかわいく見えるほどの(笑)、

    山路:あらそうですか、めちゃめちゃパート3楽しみじゃないですか。

    小飼:ちゃんとそういう話になってくれてるかな、という。

    山路:ヴィルヌーヴ監督、やっぱり私、今まで『メッセージ』『ブレードランナー2049』と『DUNE』パート1見ましたけど、全部どれも刺さったので、私のなかでかなり信頼している監督にはなってますけどね。

    小飼:主人公が報われない話でもありましたよね。

    山路:ああ、どの作品にも共通してるかもしれない。

    小飼:その意味で期待してます。その意味では最初の映画というのはわりと勧善懲悪というのか、ポール・アトレイデスが虐げられて逆転する、逆転して勝った、で終わる話ではあるので。でも第1作っていちおうそれで終わりではあるんですよね。アトレイデスの逆襲なので(笑)、

    山路:『帝国の逆襲』ならぬ(笑)、

    小飼:そうそうそう。

    山路:『DUNE』パート2を見てないで20分語ってしまいましたね(笑)。

    小飼:いやでも、テッド・チャンの『あなたのための物語』というのは、いきなり報われないというのか、あれを本当にお話にしたのはすごいよなと。でもさ、英語のタイトルが『Arrival』で、日本語のタイトルが『メッセージ』だったっけ、ってしちゃったのはなー。でも、ちゃんと一番最初に最後を提示するというのは、本当に原作通りで。

    山路:私、原作未読で映画見ましたけど、映画、全部見終わってから席立つ前に、「そういうことか!」と(笑)、席立つ前にああ、そういうことだったのねと気づいた。

    小飼:ネタバレ耐性の強さがすごいね。
     それでいうと『ブレードランナー』の続き、シークェルはいちおうもう原作がなくて、自分でどうにでも脚本を書ける立場にいたわけじゃないですか。あれでああいう終わりにするっていうのも、渋い監督だなと。

    山路:どっちもやっぱり傑作なんで、もしも『メッセージ』と『ブレードランナー2049』見てなかったら、

    小飼:(コメントを見ながら)そうそう、バカうけが宇宙から来る話です。でも、そのバカうけが宇宙から来る前というのが本当に、映画の肝中の肝で。

    山路:さっそく次、もうニュース、

    小飼:(コメントを見ながら)第3作目もヴィルヌーヴ監督がやるの? それは期待高い。

    マイナス金利解除の影響と「目をつぶる」重要さ

    山路:今日の、今話題になっているニュースに行きますか。日銀マイナス金利解除を決定という。

    小飼:ずいぶんかかったね、というやつだけれども。

    山路:これってすごいことなんですか?

    小飼:それよりもマイナス金利を発動したということがすごいんですよね。歴史的には、どっちかというと。

    山路:白川さんの時だっけ、あれ、黒田さんの時だっけ、どっちだっけ、ちょっと忘れたけど。ある意味マイナス、日銀から民間の銀行へのところがマイナス金利になっていたわけですよね。

    小飼:そういうことです。当座預金に入れると、利子がつくじゃなくて金取ると。日銀のメッセージとしては、なるべく当座預金に入れとくなと。

    山路:で、市中にちゃんと金を供給しろというメッセージだったわけですよね。結局、それってあんまり効果的に働かなかったというか、前回、「今の日本の状況ってどうなんですか」って私が聞いたら、弾さんは「これはマイルドなスタグフレーションだね」って言ってたじゃないですか。要は物価が上がっても、賃金がそれに見合ってないっていう。それってどうしてマイナス金利とかで市中にお金を供給するように日銀がやったにも関わらず、そんなに金が回らなかったんですかね。

    小飼:それは日銀がお金を渡せる対象というのが、要するに銀行だけだから。いちおうウルトラCを使ってETFとかを買って、間接的に株式市場とかにもお金を流すということもやったけども、要は末端にお金を配る術というのを日銀は持ってない。だから日銀がどうしようが、どうしようもないわけ。

    山路:日銀にできるのはほんとにその当座預金の金利をどうするかみたいなことを調整したりとかするだけっていう、

    小飼:そうそう、日銀が無能とかっていうのではなくて、日銀の機能ではないんですよ。ただいちおうそのベースとして、最初に配るべきお金がどれだけあるかっていうのは、これは日銀マターで、これはもっとできたでしょうと。だから、あんまりETFを買うとかマイナス金利をやるとかではなくて、日銀がやるべきことというのは国債をドーンと買うという(笑)。貨幣を配ると。それを政府が受け取って、それを政府がばらまかなきゃいけなかったんだけど、これをやんなかった。

    山路:だから結局、金が一部のところに溜まっちゃって。

    小飼:そうなんですよ、政府は小賢しいことばっかりやってたわけ。

    山路:ポイントとかね(笑)。

    小飼:そうそうそう。

    山路:ポイント大好きだからなー。

    「日銀が大量に保有しているETFはどうするんでしょう」(コメント)

    小飼:それはこっそり市中に流すでしょう。

    山路:前、弾さんが言ってたようなベーシックアセットの原資にできないんですか? だって日本国のもんなんでしょ。だったら私らのもんでもあるわけじゃないですか。それって売却しなきゃいけないってことじゃないですよね、べつに。