入試における根拠資料と「検査実施者への助言(College Board)」翻訳

以下の文章は、College Boardの「Advice for Evaluators」を筆者が翻訳したものです。受験生がCollege Boardが実施する試験で合理的配慮を求める際に、添付して提出が求められる根拠資料が満たすべき基準について、手引きが示されています。米国のCollege Boardは、日本でいうところの共通テスト(大学入試センター)のような「SAT」という試験などを実施・運営している団体です。

私自身、研究および実践テーマの関係から、さまざまな障害のある受験生の根拠資料を目にすることがあります。しかし、残念ながらこれらの基準を満たさない根拠資料ばかり、といっていい状況です。そうした根拠にならない資料や診断書が添付されてしまうと、受験生本人にとって、本当は必要だった配慮が得られなくなってしまいます。

共通テストや資格試験などの大規模な入試では、配慮申請を行う受験生の数も非常に多いことから、試験を実施する側が、対面で受験生一人一人の配慮の必要性を現認できない場合がほとんどです。そのため試験実施者側は、提出された根拠資料の内容でしか、リクエストされた配慮内容の合理性を判断できないという制限があります。

合理的配慮として入試でもさまざまな便宜が図られるようになった今、検査者の方は、ぜひ以下と前回の記事に掲載した翻訳も参考に、丁寧な所見作成を心がけていただければ幸いです。他にも、「エッセンシャルズ 心理アセスメントレポートの書き方 第2版(日本文化科学社刊, 2023年)」も優れた書籍で、適切な所見を作成する際におすすめです(特に11章のケースリポート)。

合理的配慮の定義には、障害者権利条約によれば、「必要かつ適当な変更及び調整」であるという定義が含まれています。入試などの競争的な場面では特に、この「必要性」の判断を行う際に、本人の医学的な疾患や機能制限の状況が、客観的に記述され、またそれが「求める変更及び調整」の必要性を具体的に示した資料(根拠資料)が必要とされがちです。

以下の文章でも、「障害(disability)」という単語は、その書きぶりから、受験生本人側の医学的な障害の状況を意味していると読み取れます。その点で、障害の社会モデルの観点からの「障害(disabilty)」を意味しているわけではない点に注意が必要です。合理的配慮の必要性や適当性を判断するのに、関係者の合意形成のためにこうした医学的な資料が必要とされるところにはジレンマがあります。しかし、特に競争的な場面や、実施の過重性が問われる場面では、根拠資料の存在とその内容は、望むアコモデーションを得る上で、大きな影響を持っていることは紛れもない事実です。

受験生に対して、こうした根拠資料の作成を支援する社会資源は日本では限られています。私たちのDO-ITの活動の中では、スカラーに根拠資料の作成をバックアップすることも続けています。最近は、地域の教育センター等がそうした役割を担ってくれるケースも出てきているようです。そうした社会資源が多くの障害のある受験生にとって、手の届くところにあることを願います。

(以下、翻訳)


検査実施者への助言

College Board の試験でアコモデーションをリクエストすること(そしてそれらのアコモデーションの必要性に関する根拠資料を作成すること)は、学校や州にリクエストする際のプロセスとは異なる場合がある。根拠資料のガイドラインを注意深く読み、診断名を記載しただけの一般的なレターがあるだけでは、通常、不十分であることに注意すること。

手引き

1. 以下の基準に適う根拠資料を作成すること

合理的配慮の適格性を判断するために、College Boardは以下の点を確認する:
(1)(訳註:検査者は)その障害を書面(根拠資料)として示すことができているか?
(2)その障害は、試験への参加に影響を与えるものか?
(3)要求されたアコモデーションは、必要性があるといえるものか?

2. 適切かつ詳細な書類を提出すること

根拠資料は、生徒個々人について、以下を含む、詳細かつ説明的なものでなければならない:

  • 具体的な診断情報(検査得点、目視による評価、または詳細な医学的情報など)。
  • ナラティブ情報(生徒の障害の既往歴と、その障害が生徒のアコモデーションの必要性にどう影響しているかを説明するもの)。
  • その障害の機能的インパクトに関する情報(症状の頻度、持続時間、強さなど)。
    一般的に使用される診断テストを参照すること。

3. 根拠資料が最新ものであることを確認すること

可能な限り、最新版の検査を用いて評価結果を報告すること。また、場合によっては、生徒の障害の変化を反映させるために、更新(完全に再検査するのではない)が必要になることもありうる。

以上

College Board「Documentation Guidelines for Other Disabilities」翻訳

※College Board「Documentation Guidelines for Other Disabilities」(2022/05/21閲覧)を翻訳したものです。「accommodation」については、一般の方の理解の混乱を避けるため「合理的配慮」と訳していますが、本来の意味通り「便宜」や「変更・調整」と読み換えていただいても構いません。

(以下、上記URLの翻訳:訳注は私)


「その他の障害」に関する根拠資料作成ガイドライン

このWebサイトに掲載されていない特定の障害は、掲載されている障害の下位分類になります。例えば:

  • ディスレクシアとディスグラフィアは、学習障害に含まれます。
  • 脳性麻痺および糖尿病は、身体的/医学的障害に含まれます。
  • DSM-IVに基づく自閉症の診断は、自閉スペクトラム症に含まれます。

College Boardの試験で合理的配慮を受けるには、障害のある学生は、College Boardの障害学生サービス(SSD)を申請する必要があります。これは、個別教育計画(IEP)、504プラン、または学校や州の試験ですでに合理的配慮を行っている場合でも必要です。

すべての申請は、以下の7つの基準を満たしている必要があります。

基準

  1. 診断が明確に記載されている
    根拠資料には、診断された特定の障害が記載されている必要があります。診断は、適切な専門的資格を有する者が行い、具体的に記述され、「精神疾患の診断・統計マニュアル」(DSM-5または診断時に最新版であったもの)を参照している必要があります。
  2. すべての情報が最新のものである
    障害は時間とともに変化するため、根拠資料は最新のものであるべきです。ほとんどの場合、アセスメントおよび診断テストは、5年以上前のものであってはなりません。ただし、医学、視覚、および聴覚のレポートは、1~2年以上前のものであってはなりません(詳細については、それらの障害に関するガイドラインを参照してください)。
  3. 履歴が提示されている
    診断と機能制限(functional limitation)を裏付けるために、関連する教育歴、発達歴、受療歴を提示してください。生徒が学校で合理的配慮を受けた履歴と、現在受けている合理的配慮に関する情報は、カレッジボードが生徒の障害の特性と重篤度、合理的配慮の必要性を理解するのに役立ちます。教師の観察も役立つことがありますので、「教員アンケート用紙」に記載しても構いません。

ダウンロード:教員アンケート用紙訳注:このPDFの翻訳は文末
教室でのテストにおける生徒のニーズについて、教師の詳細な意見を記録するために使用する用紙です。教師の観察は、生徒の合理的配慮の要望を裏付けるために役に立つことがあります。2021年8月13日現在 PDF 109.9 KB

  1. 診断がテストによって裏付けられている
    治療提供者からのメモでは、通常、便宜供与の必要性を裏付けるには十分ではありません。根拠資料では、総合的な評価が行われたことを示す必要があり、以下を含む必要があります。
  • 診断に使用したアセスメントの手続きと手法の概要
  • アセスメント結果の説明的な要約
  • 検査結果および下位検査の得点(標準得点または評価点)
    頻繁に使用されるアセスメントについては、「一般的に使用される診断テスト訳注:リンク先は原文)」のページを参照してください。
  1. 機能的な制限について説明されている
    生徒の障害が、生徒の学業に関する機能およびCollege Board試験に参加する能力にどのような影響を与えるかを説明してください。生徒の特定の障害によって違いがありますが、機能制限については様々な方法で根拠資料を作成することができます。
  • 標準化されたテストの得点とその説明を含む心理教育的アセスメント。診断と機能制限の両方を裏付けるために、全国的な基準を使用してください。
  • 言語療法または作業療法の評価(該当する場合)。
  • 生徒の発達歴、教育歴、または/および受療歴の概要。
  • 教師による観察など、学校からの説明的な情報(教員アンケート用紙に記載することができます)。
  1. 推奨される合理的配慮には、根拠が示されている
    合理的配慮の要望について、以下の点に焦点を当てた詳細な根拠を示してください。
  • 生徒の診断された障害と合理的配慮の要望の関連性。
  • 機能的なインペアメントや学校での合理的配慮を含む、生徒の現在の学業上の必要性。
  • 現在の症状について、頻度、期間、程度を含めた詳しい説明があるとよい。
    時間延長、休憩時間、読むことと見ることへの合理的配慮、回答の記録方法、四則演算電卓の使用、支援技術に必要となる要件については、「頻繁に要望される合理的配慮に関する根拠資料ガイドライン訳注:リンク先は原文)」を参照してください。
  1. 評価者の専門的な資格が記載されている
    評価と診断の妥当性を担保するために、評価者は、その評価者が開業している州の免許を取得していなければなりません。

Documentation Guidelines for Other Disabilities」の翻訳はここまでです。

以下は、上記ガイドラインの文中でリンクされている「教師アンケート用紙」の翻訳です。


教員アンケート

生徒氏名:

返信先:                

教師氏名:               

科目・クラス:             

先生へ: 上記の生徒は、College Board のテストに合理的配慮を要望しています。教室でのテストにおける当該生徒のニーズに関する先生の詳細なご意見は、私たちが意思決定を行う上で、非常に重要です。

  1. 当該の生徒は、あなたのクラスに参加してからどのくらいになりますか?
  2. 見立て: 授業中、当該の生徒の障害とその影響についての見立てを簡単に説明してください。可能であれば、具体的な例を示してください。授業中に現れる当該の生徒の症状の頻度と程度を教えてください。
  3. 使用している合理的配慮:授業中のテストにおいて、当該の生徒が使用している具体的な合理的配慮はどのようなものですか?また、それらのうち、どの合理的配慮が一貫して使用されているかを示してください。
  4. 時間延長: 当該の生徒に教室での試験で時間延長が与えられている場合、次のそれぞれの形式の問題を解くのに、通常どれくらいの時間延長(例:1.5倍)を使用していますか。(注:許可された時間ではなく、実際に使用した時間を示してください)
  • 多肢選択式の問題
  • その他の形式の問題(記述問題、小論文、計算問題など)(該当する問題タイプごとに使用した追加時間数を記入してください)
  • 当該の生徒は延長した時間を通常どのように使っていますか(例:試験問題を解く、解いた試験問題を見直す、休憩を取るなど)。
  1. 影響: 提供された配慮が学生の成績に与える影響を記述してください。当該の生徒は、その合理的配慮を効果的に使っていますか?テストでの成績はどのように変化しますか?合理的配慮を提供しなかった場合、どうなりますか?

署名:               

日付:               

質問がある場合は、College Boardに連絡してください(訳注:原文には電話番号が掲載されていますが、この翻訳では削除しました。原文に当たってください)




以上、「教師アンケート用紙」の翻訳はここまでです。この原文はhttps://accommodations.collegeboard.org/media/pdf/Teacher-Survey.pdfで一般公開されているもの(2022-05-21閲覧)を、翻訳者(近藤武夫 kondo@bfp.rcast.u-tokyo.ac.jp )が日本語の文章に訳したものです。翻訳文については、原文を公開しているCollege Boardとは全く無関係ですので、上記連絡先へは問い合わせないでください。

最後に、「Documentation Guidelines: Extended Time(時間延長に関する根拠資料ガイドライン)」の一部を引用します。

For Students with Learning Disorders or ADHD

When requesting testing accommodations for students with learning disorders or ADHD, the most helpful information is a comprehensive cognitive and achievement battery that includes scores from both timed and extended time or untimed tests. Note: In itself, a low processing speed does not usually indicate the need for testing accommodations. In this instance, documentation should show how the low processing speed affects the student’s overall academic abilities under timed conditions.

学習障害またはADHDのある生徒の場合

学習障害やADHDの生徒のためにテスト・アコモデーション(試験の合理的配慮)を要望する場合、最も役立つ情報となるのは、時間制限のあるテストと時間延長されたテストの両方のスコア、または時間制限のないテストのスコアを含む、総合的な認知および学習成績バッテリーです。注:処理速度が低いこと自体は、通常、テスト・アコモデーションの必要性を示すものではありません。この場合、処理速度の低さが、時間制限のある条件下で、生徒の全体的な学力にどのような影響を及ぼすかを示す根拠資料が必要です。

以上です。

最近のプロジェクトいろいろ

何年も更新していなかったので、このところ私がディレクションしているプロジェクトを以下に書いておきます。詳細はそれぞれのウェブサイトへ。多くのスタッフや関係者に支えられてプロジェクトが運営できています。感謝。

DO-IT Japan
https://doit-japan.org/
障害のある子どもたちが、テクノロジーの活用により大学進学やキャリアへの移行していくことをサポートすることで、将来の日本のリーダーとなる人材を障害のある若者の中から育成するプロジェクトです。ウェブサイトには毎年の報告書と動画を掲載しています。報告書はPDFでダウンロードできます。

AccessReading
https://accessreading.org/
読み書きが困難な児童生徒のためのオンライン図書館です。学習障害、視覚障害、肢体不自由など、印刷物を取集うことが難しい中高校生向けに、検定教科書をアクセシブルなデジタル図書に変換したものや、読書感想文の課題図書の書籍を同様にアクセシブルにしたものを無償で配信しています。

AEMC
https://aemc.jp/
上記のAccessReadingは児童生徒や学校をサポートする事業ですが、2020年度からは、全国のアクセシブルな教科書を作成するボランティア団体と教科書出版社をサポートするため、その間をつなぐ支援と研究を行うナショナルセンターの事業を開始しました。

IDEA
https://ideap.tokyo/
自治体や企業と連携して、通常の雇用から排除されやすい状況にある人々を雇用に接続するプロジェクトです。「超短時間雇用モデル」などの雇用モデル開発と地域実装を行っています。2020年1月31日午前には、先端研にて以下のシンポを開きました。
https://www.kokuchpro.com/event/b6ef9e85ebf06f53d3c2dbd4fa3e13af/

(関連)ショートタイムワークアライアンス
https://www.softbank.jp/corp/csr/special/stwa/
上記のIDEAプロジェクトが実践する超短時間雇用モデルに基づき、実際に超短時間雇用を実施・賛同する企業によるアライアンスです。現在170社以上の企業の参加があります。私のラボは、このアライアンスの元となる「超短時間雇用モデル」を開発したことから、産学連携パートナーとして協力しています。

PHED
https://phed.jp/
全国の大学や企業をネットワークとしてつなぐプラットフォームを構築するプロジェクトです。一般社団法人全国高等教育障害学生支援協議会 AHEAD JAPAN(http://ahead-japan.org/)をはじめとした、大学や企業による組織とも連携しています。オンライン・オフラインでの専門的研修や、多くの大学や企業と連携して開発した「障害学生支援スタンダード集」を公開しています。

IDIS Symposium
https://www.idis-symposium.org/
IDIS(「アジア環太平洋・障害とキャリアのインクルージョンに関する国際シンポジウム」)の第1回を、2020年1月に開催しました。この国際シンポを通じて、特にハワイやミクロネシア、ASEAN諸国での障害のある大学生を支援する大学との連携を行っています。

以上

「Some Facts about Persons with Disabilities(2006)」翻訳

障害のある人々に関する事実(国連,2006)

「Some Facts about Persons with Disabilities(2006)」
http://www.un.org/disabilities/convention/facts.shtml
※訳注:上記の近藤による翻訳。国連障害者権利条約の採択に向けてまとめられたファクトシート。急いで訳したので,間違いなどがあればコメントください。

全体

  • 世界人口の10%,6億5千万には障害がある。障害者は世界最大のマイノリティ。
  • 世界保健機構(WHO)によれば,この割合は人口増加,医学の進歩や高齢化によって増加を示している。
  • 平均余命が70歳を超える国々では,人々は平均して8年,または人生の11.5%を,障害とともに過ごす。
  • 国連開発計画(UNDP)によれば,障害者18%は発展途上国に暮らしている。
  • 経済協力開発機構(OECD)事務局によれば,OECD諸国では,障害率は学歴の低い群で有意に高くなる。平均して,教育をあまり受けていない人々では障害者が19%いるが,よく教育を受けている人々では11%。
  • ほとんどのOECD諸国で,男性よりも女性において,障害に関連する事例が多い。
  • 世界銀行によれば,正解で最も貧しい人々の20%には障害があり,また,その自分がいる国の中でも,最も恵まれない状況にあると見られている傾向がある。
  • 障害のある女性は,重複した不利益のある人々であると考えられており,その性別と障害による排除を経験している。
  • 障害のある女性や少女は,特に虐待の対象とされやすい。オリッサ州(インド)で2004年に行われた小規模な調査によれば,障害のある女性や少女は事実上全員が家庭で虐待を受けており,知的障害のある女性の25%はレイプ被害に合っており,障害のある女性の6%に強制不妊処置が行われている。
  • UNICEFによれば,ストリートチルドレンの30%には障害がある。
  • 英国国際開発省によれば,5歳以下の死亡率が20%以下に低下した国々でも,障害児の死亡率は80%と高く,いくつかの事例では,子どもたちが「除去されている」ようにも見えると報告した。
  • 障害関連の法律に関する国際比較研究によれば,障害差別禁止およびその他の障害関連法を持つ国は45カ国のみ。
  • 英国では,ロンドン株式市場FTSE 100 Indexの企業の75%で,ウェブのアクセシビリティが基本的なレベルにも至っておらず,1億4700万ドル以上の収入を失っている。

教育

  • UNESCOによれば,発展途上国に暮らす障害のある子どもの19%が学校に通っていない。
  • 1998年の国連開発計画(UNDP) 調査によれば,全世界の障害者の識字率は3%,女性障害者の識字率は1%の低さに留まっている。
  • OECDによれば,OECD諸国では,高等教育における障害のある学生の数は増加しているが,依然過小評価されたままである。

雇用

  • 国際労働機関(ILO)によれば,就労年齢にある世界人口のうち,推計3億8600万人に障害がある。
  • 幾つかの国では,障害者の失業率は80%に及ぶ。事業主はしばしば,障害者は働くことができないと考えている。
  • 国立インド障害者雇用促進センターによれば,インド人口の5~6%に障害があり,また「インド障害者法」では,政府雇用の3%が障害者の雇用枠として確保されているにもかかわらず,就労ニーズはマッチングされていないままである。インドにおける障害者7千万人のうち,産業界で就労できるのは10万人ほど。
  • 2004年の米国調査では,障害のない人々では就労率は78%だが,就労年齢にある障害者では,35%のみが実際に働いている。回答した失業している障害者のうち3分2は,働きたいが仕事を見つけることができない。
  • 米国ラトガース大学の2003年調査では,身体および精神に障害のある人々は,米国の職場で極端に過小評価され続けている。調査対象となった雇用主の3分の1は,障害者は効果的に成果を上げられない,求められる職務を果たせないと考えている。障害者を雇用しない理由の第2位は,特別な設備にかかるコストに対する恐れであった。
  • 2003年に行われた雇用主に対する米国での調査では,配慮にかかったコストは500ドルかそれ以下であった。雇用主の73%は,労働者は特別な設備を何も求めなかったと報告した。
  • 2002年の米国調査では,企業は障害のある労働者の雇用定着率が高く,離職率のコストを低くしていると報告した。その他の米国調査では,採用1年後の雇用定着率は,障害者では85%であった。
  • 米国労働省によれば,数千人の障害者が,小規模ビジネスの事業主として成功している。1990年国勢調査では,自営業や小規模ビジネスの経験者は,障害者で12.2%に対し,障害のない人々で7.8%であった。

暴力

  • 戦争において一人の子どもが死亡するたびに,3人の子どもが負傷または永続的な障害を受ける。
  • WHOによれば,幾つかの国では,障害の最大で4分の1は,怪我または暴力によって起こる
  • 英国の2004年の研究では,障害者は暴力やレイプの対象となりやすく,一方で警察の介入や法的保護,予防的治療の対象とはなりにくい。
  • 研究によれば,障害のある子どもへの暴力は,障害のない子どもと比較して,1年の発生率が1.7倍大きい。

以上

DO-IT Japan 2014年度新規スカラー募集!

またしても大変ご無沙汰です。そして,今年もDO-IT Japanスカラー募集の季節がやってきました!ぜひ,ご応募よろしくお願いいたします。

 

(以下,DO-IT Japan 2014 新規スカラー募集案内文/転送自由)

DO-IT Japan2014 新規スカラー募集

DO-IT Japanでは,障害や病気による困難を抱える学生の大学進学や就労といった本人の希望の実現をサポートすることで,未来の社会のリーダーとなる人材の育成を目指しています。DO-IT Japanプログラムは,DO-IT Japan ウェブサイト内「プログラム概要」をご覧ください。( http://doit-japan.org/doit/index.php/programs/program_top

【参加者を募集するプログラム】
■小学生・中学生プログラム
対象: 高校進学・大学進学を目指している,読み,書き,コミュニケーションに困難のある,3年生以上の小学生から中学生。希望校や障害の種別は問いません。*募集人数:若干名(各参加者に,保護者1名の同伴が必要です)

■高校生・高卒者プログラム
対象: 大学進学を目指している,障害あるいは病気による困難のある高校生,高卒者。障害あるいは病気の種類や程度,希望大学は問いません。*募集定員:約10名

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高等教育と障害:全国協議会設立準備大会のお知らせ

ブログの方,大変ご無沙汰してしまっています。イベント紹介の時にたまーに書くようではいかんなと思いつつも,イベントの紹介です!

三年後の障害者差別解消法施行の準備という目的もあり,以下のような全国協議会の発足に向けた会が開かれることになりました。一般公開されますので,このテーマにご関心おありの方々のご来場を心よりお待ちしております。

以下,転送自由です。

ーー<ここから>ーー

「高等教育における障害学生支援に関する全国協議会(仮称)」
設立準備大会のお知らせ

概要:
高等教育での障害学生支援が全国的に広がりつつあります。大学の国際化
と多様化を考える上で,障害学生に対する合理的配慮やその他の支援は,
大学にとって重要なテーマの一つとなっています。

加えて,今年6月の障害者差別解消法の成立により,3年後の4月から,
障害学生への合理的配慮を行うことが国公立大学では義務化,私立大学で
は努力義務化されます。本大会は,全国の障害学生支援の取り組みを行っ
ている大学による協議会の設立を目指すものです(協議会の発起人となる
大学名を当日公開いたします。全国の国公私立大学から40校程度の参加
となる予定です)。

会の後半では,全米の大学が加入する協議会AHEADから,会長である
Scott Lissner氏を招き,米国での障害学生に対する支援の実際について
お話を伺います。米国では,障害者差別禁止法により差別の禁止と合理的
配慮の提供が義務化されています。AHEADは,高等教育における障害
学生への合理的配慮の担当者が多数参加する協議会です。

本大会は,障害のある人々の大学進学や,高等教育での障害学生支援に
関心をお持ちの方々を対象に,広く一般公開いたします。多くの方々に
ご来場いただけましたら幸いです。

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DO-IT Japan 2013の参加者募集

お久しぶりです。DO-ITの申請書類提出期間が今月末からGW明けまでになっています。最近問い合わせの多かった「中学生」からの応募も,今年から受け付けることになりました。他にも,今年は昨年以上にいろいろな新しい取り組みをお知らせできそうです。ぜひどしどしご応募ください。よろしくお願いします!

 

(以下、DO-IT Japan 2013 新規スカラー募集案内文/転送自由)
====================
DO-IT Japan 2013 新規スカラー募集
====================
~障害や病気による困難を抱える若者の社会参加を支援します~

DO-IT Japanでは,障害や病気による困難を抱える小中高校生,高卒者,
大学生の進学や就労といった本人の希望の実現をサポートすることで,
未来の社会のリーダーとなる人材の育成を目指しています。

夏季プログラムでは,テクノロジーの活用方法を学び,自分自身や障害に
ついての理解を深め,周囲に自らのニーズを適切に説明して配慮を得ていく
方法を身につけます。また大学進学後に起こることを大学生活の疑似体験を
通じて学ぶ等,多くの経験を得ることができます。
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10月5日 シェリル・バーグスターラー博士(米DO-IT創始者)講演会

私たち日本のDO-IT Japanの原型となった米国DO-ITの創始者であるSheryl Burgstahler先生が来月,来日します。来日は仙台で開かれる日本LD学会の第21回大会での特別講演で,LD児の学びを支える支援技術利用に関する発表を行うためですが,都内でも障害者や高齢者の教育と就労を支えるテクノロジー利用に関して,講演会が行われることになりました。

Sherylは米国での支援技術利用と教育のユニバーサルデザインについての最もよく知られた実践者の一人です。米国の障害学生支援と就労移行について,どのような取り組みが,どのような考え方の下に行われているのか,またその成果はどのような形で現れているのかを知るため素晴らしい機会になると思います。ぜひ皆さんに会場に足を運んでいただけましたら幸いです。

<以下,転送歓迎>

ユニバーサルデザインとIT活用セミナー
「教育や就労の環境を多様な障害のある人々が共に参加できる環境にするために」

米国DO-IT(http://uw.edu/doit/)を1992年から継続してこられたワシントン大学・バーグスターラー博士の講演会が開催されます。障害のある人々が様々なテクノロジーとインターネットを活用して社会参加(高等教育や就労への移行)するための支援を米国で長年続けてこられた博士のご経験について伺うまたとない機会です。障害学生の支援や就労への移行支援にご関心をお持ちの方々に,ぜひお越しいただけましたら幸いです。

<講演概要>
 開催日時:2012年10月5日 金曜日 10時~12時 (受付時間:9時30分〜)
 会場:富士通トラステッド・クラウド・スクエア(浜松町貿易センタービル30階)
 定員:150名
 参加費:無料
 情報保障:日英通訳,手話通訳,文字通訳あり
 バリアフリー:車いすでの会場アクセス可能,多目的トイレあり
 主催:富士通株式会社
 共催:DO-IT Japan(http://www.doit-japan.org/

参加申込・講演詳細ウェブサイト:
http://fjid.jp.fujitsu.com/events/seminar/2012/10/12004110.html
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DO-IT 2012「重度肢体不自由・重複障害のある子どものためのICT活動体験プログラム」参加者募集

DO-ITで,以下のような新しいプロジェクトが始まります。締め切りが迫っており恐縮ですが,ご関心おありの方はぜひご応募ください。

—–
DO-IT Japan(http://doit-japan.org/programA.html)は困難に直面した子どもたちがテクノロジーを用いて最大限にその可能性を発揮できるように2007年より高等教育機関進学に焦点を当てて支援を行って来ました。2012年度より、新たに、障害が重度な子ども達 の意思表出や能動的活動を支援するプログラムを開始します。

このプログラムでは、重度の肢体不自由があるために意思表出や活動に制限のある子ども達をキッザニア東京に招待し、東京大学と日本マイクロソフト (株)が開発したゲーム用カメラを用いた動き検出技術を用いて、キッザニア東京の中でその技術を活かしたアクティビティを体験してもらいます。保護者の皆様への専門家によるセミナー、兄弟児のキッザニア職業体験も含んでいます。ぜひご家族でご応募下さい。

*なおこのプログラムはキッザニア東京サイエンスフェアの一環として実施されます。

主催:東京大学先端科学技術研究センター DO-IT Japan
共催:KCJ Group(株)キッザニア東京・日本マイクロソフト(株)
後援:文部科学省、厚生労働省
日時:2012年10月5日(金)〜7日(日):キッザニアのプログラムは第1部(9時~15時)、第2部(16時~21時)に分かれています。希望日と第1部か第2部かを選択して頂きます。
場所:キッザニア東京(東京都江東区豊洲2‐4-9 アーバンドック ららぽーと豊州3F)
募集定員:3歳から15歳までの肢体不自由のある子ども30名程度(応募書類により選考させていただきます)
参加費:無料。対象児も含め家族4人までキッザニア東京にご招待いたします。ただし現地までの交通費・宿泊費はご負担下さい。

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DO-IT Japan2012 障害のある児童生徒・学生の進学を考える公開シンポジウム

今年もDO-IT Japan夏季プログラム期間最終日の8月4日,公開シンポジウムを開くことになりました。今年も障害学生の進学とキャリア育成に関する議論が中心となりますが,いくつか進展があります。

今年は文科省の高等教育局でも,ついに「障害」と名がつく委員会が作られました。これまでは,初等中等教育局にしか,障害や特別支援教育と名がつく部署はなかったのです。権利条約の批准と合理的配慮の提供のあり方を議論する必要性の高まりが背景にあります。日本もついにと思うと,本当に感慨ひとしおです。私も委員として参加させていただいていて,他の委員の皆さんの知識やご経験はもちろん,やる気や熱意の高さも素晴らしいと感じます。

高等教育から就労へ向けて,さらにメインストリーミングされた移行支援が必要になってくるでしょう。今年のテーマには,大学や入試での支援の現状に加えて,「試験の本質を考える」というテーマもあります。合理的配慮を考える上で,何が「合理的」なのかを決めるためには,その試験が問おうとしている本質は何なのかを避けては通れないためです。これらの議論を通じて,障害のある人もない人も「共に学び,働き,暮らす」社会について考えられたらと思います。


DO-IT Japan 2012 夏季プログラム特別企画
一般公開シンポジウムのお知らせ(転載自由)

<開催情報>

日時:2012年8月4日(土)13:30~17:00
場所:東京都目黒区駒場4丁目6番1号
東京大学先端科学技術研究センター
3号館南棟大ホール(一般公開シンポジウム)
4号館2階講堂(交流会)
地図:http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/maps/index.html
参加予約:必要(後述の「お問い合わせ・参加申し込み」をご参照ください)
参加費:無料(交流会参加者のみ軽食費千円を当日懇親会会場にて申し受けます)
※当日の会場には要約筆記による情報保障あり,車いすでの会場への入場可能
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