ここは架空の書房です
きょこさま *ものがたりの 登場人物の 絵を描いてくださいました *読んでくださる方へ* 六月雨音<むつきあまね> と申します。 玻璃の音*書房 という 架空の書房を 中心にした ものがたりを書いてます。 ものがたりから 思い出した本たち。 反対に、本棚を眺めていて 書きたくなった話。 そんなつたないものたちを 散りばめました。 * 玻璃(はり)とは ガラスのこと * 七宝の一つ*水晶 *非結晶質の物質 *きらきらのもの* → 四季編 では ものがたりを順に読める よう並べ替えてあります。 春のものがたりから コメント欄を開けました。 承認制になっていますが よかったら、感想など お寄せいただけると 嬉しいです。 「冬のものがたり」 から 「夏のものがたり」 に 向かって。 ものがたりと書評を ミックスさせたものを 書いています この書房にやってきた本は まだ迷子のよう。 時々 名前を 呼んで あげないとね ↑ 挿絵をお借りしています *リンク集 spare timeを楽しい時間に * カテゴリ
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私の大切なおともだち、きょこちゃんに 「玻璃の音*書房」の珈琲担当でカメラマンのクウヘンと 書房に住み着いているこりすの絵を描いていただきました ♡ もうこの絵が届いた時は、嬉しすぎて跳ね回っちゃいました。 何度も何度も手にとって眺めて、愛しく見つめています。 寒い空気の中で、クウヘンの頬が少し上気した感じや こりすのいたずらっぽい表情や片耳にのった毛糸の帽子。 そして、雪の地面に落ちた木の影の表情と ほんものの雪片のようなやわらかさに包まれて、 スキャナーで取り込んだので、原画はもっと質感があるのですが このすてきなプレゼントを、ここでもお見せしたくって。 * きょこちゃんは、ずっと絵を描かれている方なのに 見る人の心が晴れるものを、と心に決めてるから自分に厳しい。 何のために描くのか、書くのか。 誰のために届けるのか、伝えるのか。 創作を(捜索って真っ先に出ちゃった)続けている人に 常につきまとう 自問自答。 突き付けられて、答えに詰まってばかりの私。 私は、この絵を頂いたことで、書き続けていく勇気が湧いてきました。 ずっと、自分のために書いてました。 でも、この物語を一人でも気に入って下さる方がいるのなら その人のためにも書き続けたい。そんな風に思えます。 漠然と書けるかもしれないと放っておいた春のものがたり きちんと向き合って書いてみようと画策し始めました。 雪解けまで、あと少し。 また再会できることを約束してみよう。あと一月待っていて下さい。 #
by coton_coton
| 2017-03-04 15:00
| 淡雪のような
粉雪さんへの手紙 君を はじめて見たのは、春の野原でした ふんわりした女の子が、しょんぼりすわって、青い小さな花を 摘んでいた ぼくは みとれてしまって、声を かけることもできず 時間が止まったみたいに、動けなくなった きっと、体の弱かった 君は 砂糖さんに、おひさまにあたるのは 少しだけねと いわれて ちょっと 所在なく そこにいたのでしょう 君は、いつ ぼくを 見つけてくれたのだろう そういう 透き通るような目をして ぼくにとっての 君は あの春の日に、はじめてみた時のままの 小さな女の子 手のひらの中で、守るべき存在 失いたくなかった なのに、ぼくは 時々 自分を見ているような 気になることがあった 鏡の中の 自分のようで、傷つけたくなった ぼくが 君にしたことは 許されないことです ぼくでは だめなんだって わかっていた ぼくでは 君を連れ出す資格は ないんだ でも、君と過ごせた日々を 大切にしていきたい 決して 君のことを 忘れたくない 約束する どんな形で あるにせよ、いつか 必ず 会いに行くと たとえ、粉雪さんに 恋人ができても ぼくが、誰かまた ほかの人を 愛することになっても ぼくは、君を いつの日か 訪ねると 逢いたいんだ もう少し 大きくなってから 君に 粉雪さんからの 小さな手紙 フウチくんの 柚子さんへの 恋心は とうに 知っていました あなたが 苦しんでいるのも 知っていた それでも、そばにいて ほしかった そのきもちが 一番わかるのも、フウチくんですね 出発まで、一緒に いてくれてありがとう いつか 必ず 会いに来て 忘れようと思う 大切にしたいと思う この春までの日々を フウチくんが、はじめて 私を見ていたの、知ってるの まっすぐな目をして、こちらを見ていた 知らないふりなんかしないで、見つめかえしていたなら 何か変わったかしら、と ふと思うことが あります さようなら 風知くん ふれていても、いつも ぶち当たる 時にそれは、うすい鏡のように 自分に 跳ね返ってきた たくさん 謝りたかったけれど 謝ってばかりいると、もっと 傷つけるようで 確かに ぼくの心にいた 粉雪さんへの想い 愛しいという想いだけ 伝えたかった 遠い あの寒い国に 住むことになる 粉雪さん 彼女は また 雪の結晶を つくりはじめるのだろうか 空からの贈り物ではない あの結晶たちは 万華鏡が 織りなす 模様のように 手をつないで ビーズの きらめく欠片のように 光りながら 君の手から さっとこぼれ落ち 空に還って 消えていった 長い時をかけて 作り上げた 六花の標本 ぼくが 君の家で ルーペを 覗いている時 きっと 粉雪さんは、いつもぼくを いとおしそうに 見つめていてくれたのだろう 感じていた その視線を 今になって 想い出す そっと ぼくの近くにきて そっと 手を 携えたくて それが 今なら よくわかる いつか きっと 君に 逢いたい こうして、玻璃の音*書房 のある 森の冬は 過ぎ去ろうとしています 春の花が咲く その日まで、すこしの間、 おやすみ 今日の1枚の絵 日常妄想絵本 の きょこちゃん が 玻璃の音*書房 の 粉雪 を 描いてくださいました 雪の熔けない国へ 行ってしまった、フウチが せつない恋心を 抱いた 少女 はじめて 粉雪のことを 書いた時、ちょっとした エッセンスのつもりでした 粉雪との恋が 気になるという メッセージをいただいて いつしか、ふくらませてみたくなり 期間限定の恋 (ああ、悲しい) として、書いてみたくなりました この絵を みつけた時に、自分を 吹き抜けていった風は ほんとに 冬のあいだ ここに存在した 風のようで この儚げな まなざしが、痛かった 少しずつ 別れがつらくなったのは、フウチだけでは なかったみたいです いつか、二人が 再会するお話が、書ければよいのですが きょこさんの絵からは、いつも 流れくる言葉を 感じます この絵を描いていただけて、ほんとに 嬉しかった ものがたりを 書いてみてよかったと、心から思っています * * * そして、いつも見守ってくださる みなさまへ 春、そして、夏の ものがたりは もう存在しています 今度は きっと、季節に合わせて 春の到来と共に 発表したいな 冬のものがたりは、完結です また お逢いできると 嬉しいです #
by coton_coton
| 2016-08-12 18:15
| 淡雪のような
ぼくは、氷の上で あお向けになって 目を閉じた 春の足音 が 何処からか 聞こえてくる ピシリ ピシリ と ひび割れるような 小さな音が やってくる 凍えるばかりだった 大切な 冬の日々を 一瞬で 記憶から 消してしまえと 氷の上を 撫でるように やさしく 春風が 吹きぬける もうすぐ 汽車の 出発の 時刻を迎える 小さな荷物を持った 粉雪さんと 砂糖さんは 駅で みんなに見送られ、別れを 惜しんでいるはず ぼくは 行けなかった みんなの前で 泣きじゃくる こどものようになったら そんな自分を 晒す勇気なんて さらさらなくて でも 涙も見せずに 君を見送ることも きっとできないから ぼくは まだ 莫迦な ただの少年です 朝早く、ふきのとう を 花束にして 空色のリボンでくるんで 玄関先に 手紙と一緒に そっと 残してきたんだ 君が 拾い上げて 抱きしめてくれる姿を 思い浮かべるよ 粉雪さん いとしい 砂糖菓子のような 少女 * 氷のつめたさが ぼくの背中を 浸食していく もうつめたさは わからずに 麻痺してくる 冬の想い出 だんだんと 感覚を 失いかけて ずっと このままでいいような ちらちらと 春の雪 が 舞ってきた ああ、これは あの結晶たちが 降らせているんだね ぼくは 別れの言葉を つぶやいてみた 自分の声じゃないような 心の奥底の声が 雪片に乗る 君に届け あの列車を どこまでも 追いかけて 流れてくる涙は そのままに ぼくを がんじがらめにした 涙の糸が 何万本も 氷って 凍り付いて もう二度と 立ち上がれないように 縛りつけていってくれても 構わない このまま 氷が割れて、ぼくを のみ込むのなら そのまま 従ってもいいと 思っていた あの時、誘いにきた 氷の女神 になら、喜んで 従うよ * ずしりと 大きな音がした ぐいっと 腕を引っぱられて、ぼくは 抱き起こされた クウヘンさんだった これ、粉雪ちゃんから フウチに そう言って、小さな手紙を ぼくに 手渡した いつまでも こどもだと 思っていたら いつのまにか、おまえも 大人になっていくんだな クウヘンさんは 笑いながら、ぼくの頭を こつんと叩いた そして、大きな黒いコートで ぼくの冷え切った体を くるんでくれた 柚子が 心配している、 帰ろう いいんだよ、フウチは フウチのままで 心のまま いつまでも おまえのままでいれば いつか、少年は 自然に 旅立つものなんだ 世界は、願うようにも 願わないようにも 変わるから ぼくは 時々、思うことがあるんだ ぼくが 柚子さんを 好きなのは 或いは この人が 選んできた人だから、なのかもしれない クウヘンさんは、ぼくの肩に 心配そうなコリスを のせた めずらしく コリスは 首の周りを 何度も ぐるぐるまきついて あったかいしっぽで ぼくの顔を ぱたぱたと くすぐった いつか 変わっていく 世界 ぼくのきもちも、自然に 変化していくのだろうか かつて少年であった クウヘンさんに 聞いてみたかったけど ぼくは、自分のきもちを、今はまだ 心の奥底に 閉じこめて 鍵をかける 決心を していたんだ 帰りたいから 柚子さんのもとに ぼくの心は ぼくだけのもので ぼくが責任をもつもの * 風は もう春を きちんと連れてきていて これから咲く花々の耳元に その訪れを ささやいていた あの人の 笑顔のもとに 帰りたい 帰るんだ もうずっと 静かな湖に ひとりぼっちのはずなのに ぼくには 待っていてくれる人たちが いる * 今日の1冊 「雪の女王」 ハンス・クリスチャン・アンデルセン 著 ラース・ボー画 おそらく 絶版の、ラース・ボーの絵の 「雪の女王」 ラース・ボーは、アンデルセンと同じ デンマークの画家 悪魔の発明した 鏡の破片が 目に入ったために 心が乱れ 妖しくも 美しい雪の女王に 連れ去られた 少年カイ 少女ゲルダは、一途な愛の力で、カイを 救いに行きます こどもの時、読んだ記憶が 甦ります #
by coton_coton
| 2016-08-06 11:26
| 淡雪のような
ぼくは、粉雪さんに ほんとうの きもちを 話すことにした 柚子さんへの あこがれのような 恋 粉雪さんは、そんなの 知ってる、と言った ささやくように 喋る いつもの声と ちがう きっぱりとした口調 その声は、氷の刃のように ぼくに 突き刺さった 知っていて、ぼくのそばに いるのは つらかったよね でも ぼくは 君のことだって 彼女は、悲しそうに 首をふった 君を お話の中の お姫さまのように 仕立てたのは ぼくだったのかもしれない ぼくが 本気で 愛さないから 彼女は いつまでも めざめることのないまま そして、今 ぼくは また 遠い昔の ものがたりの 分厚い本の中に 彼女を 閉じこめようとしている 粉雪さんは、ぼくに しがみついて 泣いた ぼくの胸は、悲しみで いっぱいになった ちゃんと 向き合った時に はじめて 感じた 彼女のぬくもり * ぼくは、まだ 蕾もつかない 林檎の林を 抜けて どこまでも 走った 振り返らずに 走った 途中から、涙が あふれてきたけど 構わずに、枯葉だらけの 林を 突き進んだ 枯葉は 氷のかけらのような うすく 冷たい音を 立てて ぼくを 追いかけてきた つかまえようと 手を伸ばしてきた いけないことをしたんだ 彼女の きもちを 利用して ぼくの手に ぽたりと落ちた 彼女の涙は とても 静かで あたたかかった * 最後の夜、ぼくたちは しんとした湖で 待ち合わせた さよならと 言うための 夜 粉雪さんは 大切そうに 透明な箱を 運んできた その箱には 彼女が こどもの頃から 創ってきた 雪の結晶たちが いくつもの 六花たちが そっと静かに 佇んでいた まるで、この日を 待っていたかのように 旅立つ日を 空に還る日を ゆびおり数えていたかのような 顔をして 結晶たちは ひとりずつ ふわっと 舞いはじめて それは 真冬の蛍のように きらきらとひかり ゆらめきながら ぼくらの周りを くるくると 浮遊しはじめた 粉雪さんに さよならを告げる その結晶たちは みんな ぼくも 逢ったことが あるんだよ 幾度も 見つめ合ったことを 覚えているよと 去り際に 伝えにきた ぼくの涙が こらえきれずに 同じように 宙を飛ぶ 粉雪さんは もう この世のものとは想えない 美しさで 地上で 誕生した 雪の結晶たちは 逆の道を辿り、大地から 空に 吸い込まれるように 遠くなってゆく どこまでも きっと 宇宙の果ての果てまで 溶けることなく それどころか もっともっと 結晶のかけらは 大きくなって いつしか 巨大な彗星のように なりながら * 空に稲妻が走る 春の雷が 沈んだような 地響きを立て あとから遅れて 音を連れて、彼女を 迎えにやってくる 君の てのひらから 放ったもの 最初は 草原で摘んだ ただのちっぽけな 小さな青い花だったもの 離してしまったら、粉雪さんは 空っぽになってしまわないの 君は 生きていく 糧を 失いはしないの 見つめるぼくに向かって、君は まるで やり残したことはない というように ほほえんで それから、ぼくの瞳を まっすぐ見つめて いとおしそうに 最後のキスを してくれた あたたかい 体温を感じる そのくちづけを ぼくは 永遠に 忘れることなく 生きていく #
by coton_coton
| 2016-07-31 22:24
| 淡雪のような
まだ息が白い朝、玄関の扉を 開けると そこに 柚子さんが 立っていた ああ、何日振りなんだろう 柚子さん だった もう長い間、会っていないような 気がした 世界が ぐらりと 揺れて、ぼくは めまいを 起こした 柚子さんは、檸檬を 持って 立っていた そして、それを ぼくに 手渡した 昨日ね、フウチの本が 売れたの だから、その報告 隣の街に 住んでいる 初老の紳士がね あなたの本を 気に入って 昨日の午後 ずっと、珈琲を飲みながら 読んでた これを書いた方は ここに来ますか、と 聞かれたから ええ、きっと と 答えておいたよ それは、ぼくが はじめて書いた 詩集で つたない つたない 言葉を 集めたもの でも、柚子さんが とても 気に入ってくれた 記念の本 柚子さんは、ぼくを 覗き込むような目を しただけで 粉雪さんのことは 聞かなかった ただ、ちゃんとたべてるの、と訊ねた ぼくは、柚子さんが 作ってくれた あの 林檎のパンを 食べてる、と言った 手が 届くほど 近いのに ふれることも できない 遠い人 ずっと 手で、包んでいたのだろう 檸檬は とても あたたかくて、身に沁みるほどに ぼくは、二人に 分裂していた 自分が 手をつないで ふっと 結束してゆくのを 感じた 檸檬の中で、 ぼくは ぼくに 帰っていく ぼくは、自分の心が 叫んでいるのを、聴いた たとえ ぼくが、柚子さんにとって オトウト であっても ぼくは、柚子さんのもの なんだ 近くに いられるだけで いいんだ たとえ 叶わぬ 恋なれど 同時に 二人を 愛すこと できぬ ぼくは やはり 臆病 * 今日の1冊 「レモン・ドロップス」 石井睦美 著 三日月形の レモン・ドロップ それは 甘酸っぱい 恋の香り いつのまにか 大人になってしまったけど みんな こういう時代を 通ってきたはず なんだよね #
by coton_coton
| 2016-07-29 15:36
| 淡雪のような
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