地震前後に読んだ本

 生存報告も兼ねて更新。自宅と自室に若干の被害、日々の生活に多少の不便がありますが一応は無事です。

地下街の雨 (集英社文庫)

地下街の雨 (集英社文庫)

 購入日・放置期間不明。

多聞寺討伐 (扶桑社文庫)

多聞寺討伐 (扶桑社文庫)

 2009年4月購入。1年11ヶ月の放置。

きみとぼくが壊した世界 (講談社ノベルス)

きみとぼくが壊した世界 (講談社ノベルス)

 2008年7月購入。2年8ヶ月の放置。

ウォーハンマーノベル 吸血鬼ジュヌヴィエーヴ (HJ文庫G)

ウォーハンマーノベル 吸血鬼ジュヌヴィエーヴ (HJ文庫G)

 2007年9月購入。3年半の放置。

届かぬ想い (講談社文庫)

届かぬ想い (講談社文庫)

 2008年2月購入。2年1ヶ月の放置。

篠婆 骨の街の殺人 (講談社ノベルス)

篠婆 骨の街の殺人 (講談社ノベルス)

 2001年10月購入。9年5ヶ月の放置。

いのちのパレード (実業之日本社文庫)

いのちのパレード (実業之日本社文庫)

 2010年10月購入。5ヶ月の放置。

平面いぬ。 (集英社文庫)

平面いぬ。 (集英社文庫)

 購入日・放置期間不明。

もろこし紅游録 (創元推理文庫)

もろこし紅游録 (創元推理文庫)

 2010年12月購入。3ヶ月の放置。

猫にかまけて (講談社文庫)

猫にかまけて (講談社文庫)

 2010年4月購入。11ヶ月の放置。

舞城王太郎『ビッチマグネット』

ビッチマグネット

ビッチマグネット

 2009年11月購入。1年3ヶ月の放置。「家族愛」という作者が好んで用いるテーマを中心に書かれた物語。愛人のもとに走ってしまった父、その父に捨てられた事で心に傷を負った母と弟を持つ少女・香緒里が本書の語り手である。作中で香緒里はビッチに引っかかってしまった弟を心配したり、彼氏ができたり、そして父の愛人と交流を持ったりする。こういった人々との交流によって香緒里は成長していく。これらの点は直球の成長小説でえあるといえる。テーマの扱い方もオーソドックスで、作者らしさが伺えるとはいえ舞城小説としてはお行儀が良すぎる。「奈津川家シリーズ」や『ディスコ探偵水曜日』等で顕著であったメタ趣向も抑制されており、その点でも作者の色は薄い。とはいえ、語り手はの語り口は自己言及的であり、メタ趣向という点はその語り口から感じ取れる。総じて薄味の舞城作品ではあるが、自己主張は決して弱いわけではないといえる。

鳥飼否宇『逆説的 十三人の申し分なき重罪人』

 2008年8月購入。2年5ヶ月の放置。綾鹿市で次々と起きる事件を解決すべく奔走する五龍神田刑事と、彼をサポートするホームレスの「じっとく」の活躍を描いた連作本格ミステリ短編。事件の真相を見ぬいた「じっとく」が五龍神田にアドバイスするものの、粗忽な五龍神田がアドバイスを早とちりした挙句迷推理を披露するはめになり、結局解決は他の刑事に奪われる、というのが基本パターンであり、ユーモアミステリの体を有しているといえる。また、五龍神田の失敗、というオチは共通しているものの、各短編で扱う事件が殺人・誘拐・ストーカーといった具合に全て異なり、そのバリエーションの多彩さ故にお約束的展開が続くことにより生じるマンネリ感は大きく減じられることになっている。さらに、後半に至ると、待ち受けるオチそれ自体がお約束的展開から外れていき、読者はラストの大オチに向けて目を離せなくなっていくことであろう。なお、タイトルから察せられるように、チェスタトン的逆説をミステリ的テーマに添えているのではあるが、例えば同じリスペクト精神に則った泡坂妻夫の「亜愛一郎シリーズ」ほどロジックのキレは見られない。作品単体ではまずまず楽しめるのではあるが、タイトルから受ける期待感に乗っかり過ぎるとやや肩透かし感が生じるかもしれない。

ジャック・ヨーヴィル『ドラッケンフェルズ』

ウォーハンマーノベル ドラッケンフェルズ (HJ文庫G)

ウォーハンマーノベル ドラッケンフェルズ (HJ文庫G)

 2007年9月購入。3年4ヶ月の放置。本書のプロローグはいきなりラスボス戦直前の場面から始まり、その戦いが終焉を迎えたと思われるところで終わる。しかし、多くの犠牲を経てようやく討伐したと思われたその戦いの肝心の場面は描かれない。視点人物である齢648歳の女吸血鬼・ジュヌヴィエーヴが気を失ってしまい、描写が省略されてしまうためだ。
 本編はそれから25年後・吸血鬼ドラッケンフェルズ殺しの英雄となったオスヴァルトの発案により、一連の討伐行を演劇化されることとなるところから始まる。脚本執筆の大役を任されたデトレフ・ジールックは当時の関係者から話を聞くことにより舞台イメージを固めていくのだが、その関係者が次々と死を遂げていく。また、デトレフの周囲にも奇怪な現象が相次ぐ。やがて脚本は完成し、実際に戦闘が行われた因縁の地・ドラッケンフェルズ城いよいよ上演されることになるのだが……
 実際の戦闘が行われた場面を棚上げし、かつ肝心のシーンを覆い隠すことにより読者に対して「実際過去に何があったのか?」という疑問を抱かせた上でストーリーは進行する。したがって単純なバトルメインの冒険活劇ではなく、隠された真実に起因した怪現象が巻き起こす恐怖、こそが読みどころとなっている。英雄譚ではなくまさしくホラーの文脈に則った作りで、両者の作劇の違いがそのままプロローグと本編の配置法に現れているといってよい。そしてホラーの方法論をとっておきながらも、ラストはきっちり英雄譚的な場面を用意しており、プロローグの消化不良をきちんと解消しており、その構成は好印象である。

浅田次郎『月島慕情』

月島慕情 (文春文庫)

月島慕情 (文春文庫)

 2009年11月購入。1年2ヶ月の放置。収録されている作品中では、登場人物を人生の勝ち組/負け組といった形で対比させていることが多い。表題作においては長いこと吉原で働かざるを得なかった負け組の主人公が一転、想い人に身請けされるという勝ち組に転ずる。同時に負け組となった見受け人の妻子の存在がクローズアップされ、それを知った主人公はある行動を取る――という話。続く「供物」ではDV男と離婚後、優しい夫を得た女が前夫の死の知らせを聞いてその霊前に出向く話。負け組から勝ち組に転じた女の秘められた過去が語られるのだが、負け組時代のその過去にはある秘密があった。「雪鰻」は辛い南方戦線を経験し、戦後自衛隊で師団長となった男の悲惨な戦時中のエピソード。同じ戦争を体験しながらも過酷な地域を担当した彼と、比較的安全な他地域の兵士では全く境遇が違っており、師団長らだけが飢えに苦しむ負け組であった。「インセクト」は学生運動が盛んな時代に大学進学した主人公と、アパートの隣人である妾とその娘の話だ。女は妾という待遇でありながらもプライドを持って生きていく。上京したての田舎者でまだ若い主人公はなかなかその生き方を理解できないでいる。「冬の星座」は死んだ祖母が生前に行っていた、家族も知らない善行が明らかになる話。戦後貧しい暮らしを強いられた負け組の祖母は、ある行為によって聖女のように讃えられる。「めぐりあい」は視力を失ったために彼氏と別れ、やがてマッサージ師になった女性の話。彼女の境遇はまさに負け組であるが、決してそうは感じさせない強さが伺える。さいごの「シューシャインボーイ」は戦災孤児となった男を拾い育てた靴磨きの男の話。この話は戦争と戦後がテーマになっており、戦後に生きる人々はまさに負け組である。
 これらの話に共通するのは本来負け組であるはずの人々の生き様が凛としている点だ。自分の境遇を惨めだと嘆かず矜持を持って行動する彼ら彼女らの姿には心うたれる。

東野圭吾『殺人の門』

殺人の門 (角川文庫)

殺人の門 (角川文庫)

 2006年6月購入。4年7ヶ月の放置。主人公の田島和幸は裕福な家庭に生まれたものの、祖母の死をきっかけに家庭が崩壊する。彼の母が姑の食事に毒を盛ったという噂が流れたのだ。やがて両親は離婚し、共に暮らす父は仕事を投げやりクラブの女に溺れる。学校ではいじめの対象となり、初恋の少女には失恋した挙句、その少女は自殺してしまう……といった具合にひたすら悲惨な人生を歩んでいく。そんな彼の人生には常に一人の男の影があった。倉持修というその男は和幸のことを親友と呼びながら、どこか馬鹿にした雰囲気があり、のみならず彼の不幸に間接的に関わること大であった。大人になってからは倉持の犯罪じみた商売に手を貸し、それにより多くの人を不幸にし、何よりも自分自身がいっそう惨めになっていくことを実感した和幸は倉持に対する殺意を募らせていく。しかし、和幸は実際に彼を殺すことができずにいた。
 殺意を抱くことと実際に相手を殺すことの間には厚い壁がある。例えば一番人気の馬を貫禄の伝統芸で4着に飛ばされてヨシトミシネ〜と叫んだりするように、誰かにむかつく事があり氏ねなどと思っても実際に行動に移すことなどまずないであろう。この一線を超えるほどの殺意・憎悪とはいかなるものか――文庫にして600ページを越える圧倒的なボリュームでもってそれが描かれる。テーマがテーマだけに展開はカタルシスが得られるものとは程遠く、終始鬱々たる空気で進む。およそ爽やかな新年一発目に読む本にふさわしいとは言えない。
 だが、この鬱々とした話にはひどく引き込まれる。それだけ主人公とその周辺のデティールがじっくりと書き込まれているからだ。明確に提示されるテーマも決してブレることはない。のみならず、冒頭と中盤に<殺人の門>をくぐって実際に人を殺した者、あるいはくぐれずに無様に失敗する者、この二通りの人物を配置することにより、<殺人の門>に対する主人公の立ち位置を相対化させ、結果的に明確なテーマがよりいっそう明確になっている。必然、テーマに対する読者の視点もブレることはなく読み進めていくことが可能となる。オチのサプライズが予定調和的であるがためにインパクトは弱くなっているものの、全体的にはよくまとまっている。

明けましておめでとうございます

 半分以上は死に体となってしまい、もはや誰が見ているかわからない状態の当ブログですが、一応はまだ閉鎖せずに続けていきたいと思います。ボチボチ更新を再開しようという気持ちだけはありますので、お見捨てなきようよろしくお願いいたいします。とりあえずはお茶濁しに中断期間中に読んだ本の列挙でも。

プラスチック・ラブ (創元推理文庫)

プラスチック・ラブ (創元推理文庫)

 樋口有介『プラスチック・ラブ』。2009年6月購入。1年半の放置。

虹のつばさ (講談社ノベルス)

虹のつばさ (講談社ノベルス)

 赤城毅『虹のつばさ』。2003年6月購入。7年半の放置。

テースト・オブ・苦虫〈2〉 (中公文庫)

テースト・オブ・苦虫〈2〉 (中公文庫)

 町田康『テースト・オブ・苦虫2』。2008年10月購入。2年2ヶ月の放置。

 カート・ヴォネガット・ジュニアタイタンの妖女』。購入日不明。

千年の黙―異本源氏物語

千年の黙―異本源氏物語

 森谷明子『千年の黙 異本源氏物語』。2003年10月購入。7年2ヶ月の放置。

ひねくれアイテム (講談社ノベルス)

ひねくれアイテム (講談社ノベルス)

 江坂遊『ひねくれアイテム』。2008年2月購入。2年10ヶ月の放置。

野望円舞曲〈9〉 (徳間デュアル文庫)

野望円舞曲〈9〉 (徳間デュアル文庫)

 田中芳樹原案・荻野目悠樹著『野望円舞曲9』。2010年4月購入。8ヶ月の放置。

凶宅 (光文社文庫)

凶宅 (光文社文庫)

 三津田信三『凶宅』。2008年9月購入。2年3ヶ月の放置。

火の神の熱い夏 (光文社文庫)

火の神の熱い夏 (光文社文庫)

 柄刀一『火の神の熱い夏』。2004年9月購入。6年3ヶ月の放置。

吉祥寺の朝日奈くん

吉祥寺の朝日奈くん

 中田永一『吉祥寺の朝比奈くん』。2009年12月購入。1年の放置。

白光 (光文社文庫)

白光 (光文社文庫)

 連城三紀彦『白光』。2008年8月購入。2年4ヶ月の放置。

風車祭 (文春文庫)

風車祭 (文春文庫)

 池上永一風車祭』。購入日不明。

 司馬遼太郎『新装版 妖怪』上下。2007年10月購入。3年2ヶ月の放置。

エデン

エデン

 近藤史恵『エデン』。2010年3月購入。9ヶ月の放置。

 霧舎巧『十一月は天使が舞い降りた見立て殺人 私立霧舎学園ミステリ白書』。2009年12月購入。1年の放置。

 霧舎巧『十二月は聖なる夜の予告殺人 私立霧舎学園ミステリ白書』。2009年12月購入。1年の放置。

言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)

言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)

 神林長平『言葉使い師』。購入日不明。

クラッシュ (創元SF文庫)

クラッシュ (創元SF文庫)

 J・G・バラード『クラッシュ』。2008年3月購入。2年9ヶ月の放置。

リベルタスの寓話

リベルタスの寓話

 島田荘司『リベルタスの寓話』。2007年10月購入。3年2ヶ月の放置。

シアター! (メディアワークス文庫)

シアター! (メディアワークス文庫)

 有川浩シアター!』。2009年12月購入。1年の放置。

厭な小説

厭な小説

 京極夏彦『厭な小説』。2009年5月購入。1年半の放置。

忍者ルネッサンス!

忍者ルネッサンス!

 倉阪鬼一郎『忍者ルネッサンス!』。2010年2月購入。10ヶ月の放置。

 陳舜臣『ものがたり 唐代伝奇』。2008年12月購入。2年の放置。