『異世界車中泊』芳賀 概夢 (著)灯 まりも (画) 普通は変われるはずがないクズが、どのように自分を変えていけるのかのところが素晴らしい

異世界車中泊物語 アウトランナーPHEV(1) (アフタヌーンコミックス)

評価:未完成のため未評価
(僕的主観:★★★★★星5つ)

これなろうとカクヨムでも連載して続きが見れるのですね、、、読んでて、めちゃくちゃ楽しかった。マンガから入って、続きが気になるので小説を全部読み直すというのが、最近のペトロニウスの定番の行動です。

kakuyomu.jp

afternoon.kodansha.co.jp

物語は、モチベーションゼロ、評価も能力も最低のサラリーマン大前現人が、仕事で大失敗をやらかすところから始まる。彼は、どう考えて自分の責任なものを、不貞腐れ、リカバー、も謝罪もせず、仕事の資料を持って逃げ出す。無理して買った最新のPHEVアウトランナーに乗って、車中泊をしていたところ、異世界に転生していた・・・・というお話。


🔳ここまで性格が捻じ曲がった主人公が、変われるものなのか?

LDさんから紹介されたマンガだったのですが、最初の導入部の主人公が、「とても許し難い性格」をしていて、仕事をするサラリーマンとしては「クズオブクズの行動考え方」をするんですね。完全に自分の責任だし、言ってみればそもそも仕事とかまともにできていないのに、全て他人の責任にして努力する気もなく、逃げてばかりいる。あまりに、ひどくて、異世界転生系の話で読んでいて楽しいんだけど、さすがに「それはないよね」とLDさんと話していました。


が、しかし、なんか凄い良くて繰り返し読んでしまうのが不思議なんですよね。あまりに主人公の最初の出来事がサラリーマンとしてはクズすぎて、物語としても肯定できなくて、、、。


この物語の面白さのポイントと、僕の許し難いポイントは同じでした。


仕事で失敗した主人公が、リカバーもせず、資料を持って会社を逃げ出してしまうんですね。せめて、資料置いて帰れよ、と思ったのですが、、、、そこではなくて、こんな難しい仕事与えた会社が悪い、とか他責にしまくって、馬鹿馬鹿しくてやってられねーって逃げ出すんですよね。


この物語のコアは、車で「異世界転生して現実に帰ってきて行ったり来たりする」所に面白さがあるのですが、異世界に行ったことで、主人公が心を入れ替えて、仕事を頑張ったり、謝れるようになるんですよね。


でも現実の社会では、いくら何でもここまでのクズは、絶対に自分を変えることができない!と、サラリーマン道30年近くのLDさんとペトロニウスは、太鼓判を押したんですよね(笑)。


絶対に変われない!と。


たとえ異世界に行ったという「強烈な体験」があっても、この手の人間が腐ってしまった人は、変われるはずがないから、いくらドラマとしても、受け入れ難いという感じがあったんです。


でも、マンガの3巻を超えて、小説まで読んだら、これが見事に納得!!!できるんですよ!!!これ、素晴らしすぎる物語だ!!!!。好き。まだうまく言葉になっていないのですが。この「異世界に行く」という強烈な体験の、「強烈さ」が、いかに人をコペルニクス的体験として変えてしまうかが、この後、小説では次々に描かれていて、異世界に転移することの「重さ」がこの作者の中では、よくよく重く設定されているのが伝わってきます。

最初、僕はサラリーマンで管理職の立場にあるので、この現人君の行動は、許すことができませんでした。物語としてわかっていても。これを、普通の若者は、どうよ読むのかわからないのですが、これって目の前で戦友や部隊を見殺しにする「敵前逃亡」行為ですから、銃殺なんですよね、レベルとしては、しかも、何らかの深い理由があるわけでもなく、ただ捻くれているからだけです。まぁすぐには解雇にはならないとしても、彼はそれまでにも長きにわたってのマイナス評価が積み重なっているので、通常ならば、これはアウトだと思うんですよね。

それほど、主人公が、ペトロニウスもLDさんも、嫌いです(笑)ので、それが、読んでいるうちに愛おしく、こいついいやつじゃないかと変わっていくのは、物語の力だと思うんですよね。


ちなみに、この記事では、では「何によって変わったか」が、まだペトロニウスの中で言語化できていません。なので、もう少し考えたいと思います。めちゃくちゃ好きになったので、何度も読み返しているので。

『とある科学の超電磁砲』19巻 食蜂操祈サーガが止まらない(笑)

とある魔術の禁書目録外伝 とある科学の超電磁砲(19) (電撃コミックス)

19巻最新刊が3月に発売。ええ、毎回予約して当日に購入していますよ。毎回心待ちにしている。冬川基さんは、同人誌時代からのファンというのもあるけど、やはりこれは単品でとんでもなく面白いんで、本当にいつも心待ちにしている。『とある魔術の禁書目録外伝 とある科学の超電磁砲』は2007年4月から連載しているから、、、うちの子供が生まれる前からのファンなだ、おれ(笑)。え、17年くらい、、、。

🔳「御坂美琴、一年生」編が、まるっきり食蜂操祈、一年生編になってる!(笑)

食蜂操祈って、巨乳、豊満な駄肉あふれるボディで女の色気満々のはずなのに、中学一年生の、まだ背も伸びていないチビでガリガリの上に、自分が精神系の能力者で人に嫌われているのにビクビクしているまだ、人として幼く未熟な状態で描かれている。「獄門開錠(ジェイルブレイカー)」編(第14巻 - 第16巻)が終了して、17巻の131話から「御坂美琴、一年生」編。御坂美琴の一年生編なんだけど、食蜂操祈のリーダーの資質が示されていくみさきちゃんサーガの過去編になっている(笑)。ついに本編まで侵食をって気分になります。


https://dengekidaioh.jp/blog/railgun/entry-10655.html

原作の鎌池和馬さん、うますぎる。美琴もそうだけど、本編の中2−3の時点で、人の上に立ち、社会性も高く、社会の闇魔でも射程距離に入れた大人としての解決能力に溢れる隙がない人間位成長している二人とは思えない、未熟さ幼さが「エピソード」で示されてて、本当にうまい。本編の対比があるので、二人の未熟さが、極めて目立つ。しっかし、みさきちゃんは、どんな姿でも、かわいいな、おいっ。過去編は、常盤台中学の「学舎」としてのシステムが、凄い機能しているからこそ、この中で揉まれていると、急速に人として成長していくのが良く良く伝わって来る。いやはや、学園都市の常磐台中学って、行った創立何年なんだ?って思う。ウルトラエリート集団。旧制中学のイメージですよね。


永代姫君(マジェスティ)の制度って、よくよく考え抜かれてる。


これも、「能力」が前提の、学園都市だから起きるシステムなんだな、、、、この作品がかなり踏み込んでるSFなんだって、時々気付かされて驚きます。こんな幼い中学生の少女たちが、世界を操る、リードする権力を握る可能性が高い存在であると言うのは、物理法則無視の「能力」によって構成されているからですよね。


🔳食蜂操祈のリーダーの資質が示されていく姿


145話の「銀笛」がほんと、よかった。胸にブッ刺さった。もう最高。

普通に考えて「他人の心を操れる、心をのぞける能力」なんて、不幸への一直線だし、なによりも、そもそも「他者の考えがわかる」だけで、対等の関係が成り立つわけがないじゃないですか。ぱっと思い浮かばないけれども、「他人の心が読める」ことで、不幸のどん底になっていく超能力者とかの物語類型って多いですよね。あ、 佐藤マコトさんの『サトラレ』とかかな。あれも、大前提として、「他人の心が読める」存在が、社会にはじかれて恐怖の対象として孤立していく恐怖が前提として物語が組まれている気がします。そうか、これエスパーものの物語類型としても、「他人の心を操れる、心をのぞける能力」という異能をネガティブに社会から孤立させないってだけで、この学園都市の在り方と、食蜂操祈のキャラクターって、とっても斬新なんだ。。。。

petronius.hatenablog.com

前の記事でこう書いたんだけれども、操祈ちゃんのキャラクターって、エスパー系の物語なので、基本的に人間の社会に生きるのは凄く難しいと思うんだよね。先日、3月のアズキアライアカデミアの配信で竹宮恵子の『地球へ』の解説をしたんだけれども、あれも起源はSFの A.E.ヴァン・ヴォ-クトの『スラン』と言うエスパー迫害ものなんですが、人類社会の中でミュータントとして生まれたエスパーは、超能力を持たない旧人類と対立して、差別、迫害、最終戦争に至る話になっているんだよね。この前提は、相手の心が読めたり、ましてや精神操作ができたら、「人間として対等な関係は築けない」と言う前提があるからなんですよね。


つまり、エスパーものには、「対等な人間関係が築けない」というドラマトゥルギーが前提なんですよね。


それに真っ向から反対のエピソードを積み上げていく操祈ちゃんサーガの説得力に、クラクラしちゃいます。と当時ですら思っていたのに、この19巻の、彼女が対等な友人関係を作り出し、それでいながら常磐代最大派閥という「組織」を作り上げていくところに、さらにさらに驚きのセンスオブワンダーを感じてしまいます。


いやーあの小さな体で、まだエクステリアや能力を使うのにもエネルギーが必要そうで、かなりそんどそう雰囲気なのに、しかも、精神的に未熟だからだいぶ問題の解決解決能力もリスキーな危うさがあるのに、、、、自分を恐れる学生たちに、叱咤激励をして、たった一言で指導者の自覚を思い出させ、奮い立たせ、動かす。あの火事のシーン、見てて鳥肌が立ちました。生意気だ、生意気だって思ってる年上の先輩が、「リーダーの資質だ、、、」と感心してしまうのも、見事。組織の上に立つ人間は、「縦社会の上から愛される人」でないと、ダメなんです。


・・・・・なのに、飼い猫を探して、命をかけちゃうのが、、、、猫の名前が「みーちゃん」なところとか、もうやばすぎる。


そりゃ、周りの人は、こんな人なら、、、って思うよ。誰も見ていないだろうけど、猫相手のシーン、かわいすぎるでしょ(笑)。


🔳本当に媒体が入り組んでいて複雑なのに、関係なしに魅入ってしまう


記事を毎回書くのは大事だなと思う。その時々の、盛り上がった感情を記録していると、後で読み返すと、どの観点で自分の感情動いたかがわかるので、読みがどんど深くなる。コツコツ描きませう。

petronius.hatenablog.com

脇役が本当に輝くんだよね、鎌池さんの話って。