「すごい」司会者が必要
- 作者: 大橋禅太郎
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2005/05/18
- メディア: 単行本
- 購入: 20人 クリック: 290回
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著者:大橋禅太郎
■評価:良
情報:○ 新規性:○ 構成:△ 日本語:△ 実用性:○
難易度:易 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:◎
お勧め出来る人・用途 :物事が決まらなくて困っている人・物事を「決める」ためにはどうすれば良いかを学ぶ
お勧めできない人・用途:会議がつまらなくて困っている人・会議を楽しくする方法を模索する
■所感
このやり方は確かに結果が出る。
但し、と私ならこう但し書きを続ける。
「すごい」司会者が必要
こればっかりはどうしようもない。
勿論あなたも、本書の内容を理解し、
可能な限り、自分自身で(セミナーなどで)体験すれば、
「『すごい』司会者」になれる可能性はある。
だが、ハードルは高い。
それは、本書が「難しい」ことを求めているからではない。
そもそも本書が解決しようとしている状況そのものが、
「非常に困難」なのである。
その状況の中で、イニシアティブをとって、
これを打開することが生半な覚悟で出来る訳がない。
ただ、本書が提示している方法は、間違いなく、
そのような深刻な問題を解決する。
その手法までは明示されているが、
問題は「誰が猫の首に鈴をつけるか」である。
方法は2通りある。
(社内も含めて)アウトソーシングする。
もしくは、自分がトレーニングを積んで実践する。
容易なのは前者である。
ただし、コストがかかる。
コストをかけてでもそれが必要なのかどうかは、
本書を読んだ上で判断して欲しい。
少なくとも本書を読むことにかかるコストは、
回収可能であることを保証する。
気持ち悪さを売りにする気持ち悪さ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/08/10
- メディア: 雑誌
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著者:鹿島田真希
■評価:不可
物語:△ 情報:× 斬新さ:× 意外性:× 含意の深さ:× ムーブメント:× 構成:△ 日本語:○
お勧め出来る人 :こんな人いるよね、というカタルシスを得たい人
お勧めできない人:ドストエフスキーの『白痴』の設定とあらすじを知っている人、不快な人の話を聞かされたくない人
■所感
一言で言い表される作品は、他を寄せ付けないほどの佳作か或いはとんでもない駄作かのいずれかである。
残念ながら本作は前者ではない。
ドストエフスキーの『白痴』をモチーフにした、「不条理」劇。
本作を一言で表すならこの言葉が適切であろう。
選考委員の面子のせいか、最近の芥川賞は「直木賞の小ぶり版」のような作品が増えてきたように思う。
端的に言うと、どうしても純文学ではなく、大衆文学としてしか読めないものばかりなのである。
この境界を曖昧にしてしまったのが、村上春樹であり、村上龍であると個人的には思っているのだが(いや、彼らの作品をあたかも「大衆文学」のように評し、宣伝してきたマスコミのせいか)、彼ら自身はいわゆる「両刀使い」であり、かつての純文学作家の大家も「両刀使い」であったことから、悪いのは案外それがどちらに属しているのかを意識せずに消費してしまう我々読者の方かも知れない。
結局本作は純文学の皮を被った大衆小説に過ぎず、読んだ感想も「あるよねー」とか「いるよね−」といった平凡なもの以外を期待されても困るのではないか。
この作品を「深読み」して何かしら凄い価値を付与した選考委員の皆々様の「読解力」には脱帽させられる、という甚だ不遜な言葉で久しぶりの書評を締めくくろうと思う。
■読了日
2012/08/20
学校は正しかった・・・って今更言われてもなぁ。
- 作者: 古森剛
- 出版社/メーカー: かんき出版
- 発売日: 2011/01/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者:古森剛
■評価:可
情報:○ 新規性:× 構成:× 日本語:○ 実用性:△
難易度:易 費用対効果:× タイトルと内容の一致:△
お勧め出来る人・用途 :学校の英語学習に疑念を抱いている高校生・学校の英語学習の意義を理解する
お勧めできない人・用途:効率的な英語学習法を模索している社会人・効率的かつ効果的な英語学習法をまねぶ
■所感
学校の英語教育がいかに正しいものであったかが非常に納得のいく形で説明されている書。
本書で提示されている内容は特に新しいものでもなく、「コロンブスの卵」的な要素が含まれているわけでもない。
普遍的で古典的な学習法、即ち我々が「学校」で体験してきた英語学習の方法そのものである。
強いて特徴を挙げるなら、現在の潤沢なICT環境をフルに活用した学習の具体的な方法が披露されている点くらいか。
しかし教育の現場に於いて、このように具体的な学習の「意義」「効果」を十分に説得力のある説明で語ることの出来る教師はほとんどいない。
本書に関しては、著者の経験や経歴が、本書で提示する勉強法が如何に有効であったかを雄弁に物語っている。
だから、「こんなことやっていて何の意味があるんだよ」とぼやいている高校生にこそ読んで欲しい。
そうすれば(少なくとも今よりも多くの生徒が)、より高いモチベーションを持って、学習に取り組めるようになるだろう。
尤も、一般の高校生はこのような本を読まないのだが・・・。
実は日本の教育の問題はこの点に集約されていっているといっても過言ではない。
残念ながら本書が主な対象としている「英語を学びたい社会人」にとって、本書はあまりありがたい本とはなっていない。
何故ならば彼らは「何をすべきか」については十二分に「解って」いるからだ。
問題はそれをやるか、やらないかだけなのだが、それを解決するような「何か」はもう純粋に個々の問題に帰してしまうので、どれだけハウツー本や啓蒙書を読んでも無駄である。
取り敢えず、何でもいいから始めることである。
それは本書で紹介されている内容でも良いし、そうでないものでも良い。
本書のメソッドはあくまで1つの選択肢ではあるが、あくまで1つの選択肢でしかない。
■読了日
2012/05/06
天才は凡人が解らない
小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
- 作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,黒沢 健二,松永 肇一,美谷 広海,祐佳 ヤング
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/01/11
- メディア: 単行本
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著者: ジェイソン・フリード, デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン(訳:黒沢 健二, 松永 肇一, 美谷 広海, 祐佳 ヤング)
■評価:可
情報:△ 新規性:△ 構成:△ 日本語:○ 実用性:△
難易度:易 費用対効果:△ タイトルと内容の一致:△
お勧め出来る人・用途 :プログラマをエイリアンだと思っている人・プログラマの生態を理解する
お勧めできない人・用途:何をしたら良いかが明確な人・最良の手続きを模索する
■所感
ここに書かれていることは、プログラマなら誰しもが思い描いている夢物語である。
プログラマなら誰しも一度は考えたであろう「理想の」職場が実にリアルに表現されている。
だが、残念なことに、そのような職場に巡り会えるのは、あるいはそのような職場を作り出せてしまえるのは、やはりほんの一握りの人だけなのである。
本書の著者は弱者に厳しい。
曰く、「時間がない」「資源がない」は言い訳でしかない。
しかり。
彼らとてそれがただの言い訳でしかないことは百も承知だ。
だから?
彼らのそのちっぽけな自尊心をたたき壊したところで残るものは何もない。
このような類いの自己啓発本に行き当たるときに必ず考えてしまうことがある。
天才は凡人を理解できない
天才にとって「凡人」の行為は甚だおかしくみえるのだろう。
何故彼らは「無駄」なことを必死になってやろうとするのか。
何故彼らは「無益」なものを懸命に守ろうとしているのか。
それは彼らが「凡人」であるが故にそうしているのである。
好きこのんでそういう生き方をしているわけではない。
そう生きざるをえないからそういう生き方をしているのである。
それが彼らの抱える「現実」である。
著者はこう反論するだろう。
「私は何も難しいことを言っているわけではない。私とて『天才』ではない。私は何も特別なことをしたわけではない。単に自ら課した原理・原則に従って行動しただけだ。勿論、ちょっとだけ機転を利かせた部分はあるけどね。」
確かに。
本人にとってはそうだろう。
だが、このあり方を「必死に」学んで実行してみたところで、果たして何人の人がそれを成し遂げられるか?
「確かに私は成功するための『原則』を提示した。だが、成功するかどうかは本人次第。私に責任を求めるのは間違っている。」
しかり。
この類いの議論は実に不毛だ。
何もない、まっさらな環境から始めるのならば、そのまま、書かれたままを実践してみても良いだろう。
だが、大半の人は既に「負の」ラインからのスタートとなる。
本書で述べられていない(あるいは敢えて「軽視」している)制約条件も数多く存在する。
だから、このような啓蒙に対する最も賢い応対は、「今の状況の中で無理なく実行出来る『改善点』を試験的に取り入れてみる」ことである。
結局、「成功の方程式」は自分で導き出さなければならない。
本書は非プログラマの(特に人事・経営関係の)人に特に読んでもらいたい1冊である。
本書にはプログラマの「夢」が詰まっている。
本書を読むことで、プログラマが「働きやすい」と考えている仕事環境について、ひいてはプログラマの考え方・生態について、かなり理解することが出来るだろう。
悩まざる者書くべからず
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/02/10
- メディア: 雑誌
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■評価:ー
読了は尾野真千子さんのインタビュー及び芥川賞2作品と選評。
以下に芥川賞のそれぞれの作品についての評価と所感を記す。
・田中慎弥 「共喰い」
■評価:不可
物語:× 情報:× 斬新さ:× 意外性:△ 含意の深さ:× ムーブメント:× 構成:△ 日本語:○
お勧め出来る人 :−
お勧めできない人:退屈な人
■所感
読んでいてただ不快感だけが残る、駄作。
誉めるべきポイントがどこにも見当たらない。
作品の「完成度」だけ見るならば確かに「芥川賞」級ではあるが、肝心の物語が××。
何が1番いけないかって、主人公の心の葛藤や苦悩があまりにも浅いこと。
そういう「抗いがたい衝動」のようなものを書きたかったのかもしれないが、それであれば見習うべき作品は(それこそ石原慎太郎さんのように)いくらでもあるように思える。
また、登場人物の人物像があまりにも薄っぺらすぎる。
特に主人公の父親に顕著だが、そんな単純な作りで出来ている人間なんていません。
石原さんが「自我の衰退」と嘆くのも無理はないなと感じた。
円城 塔 「道化師の蝶」
■評価:良
物語:△ 情報:○ 斬新さ:△ 意外性:○ 含意の深さ:○ ムーブメント:× 構成:◎ 日本語:○
お勧め出来る人 :形而上学が好きな人
お勧めできない人:難解な理屈が苦手な人
■所感
評者が述べているように「安部公房」的な作品。
従って読者の感じ方としては好きと嫌いに2分されることが想定される。
純粋に物語を楽しみたいという人にとっては、ストーリーラインを追うことが難しい本書とはあまり相性がよくないだろう。
記述された内容を元に純粋な物語として楽しむことも出来なくはないが、それにしてはノイズが多すぎる。
本書は示唆に富むもので、そういう思索に耽ることが好きな人を喜ばせるような要素がちりばめられている。
ただ、「結局なんなの」という問いに対して、本書は回答を用意していない。
否、読んだ人の数だけ正答があるという表現の方が正しいか。
哲学は思想と異なり、ただひたすらに問いを続ける行為である。
本書を「読む」こともまさにそのような行為以外のなにものでもないが、その行為自体を楽しめる人を歓待するだけの十分なキャパシティを備えている。
一読の価値はある。
しかし確かにこれは芥川賞として良いものか、そもそも純文学の立場から認めて良い「作品」であるのかは大いに物議を醸しただろう。
■読了日
2012/03/18
映像であることの意味
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」の映画を鑑賞した。
期待に反して完成度の高い作品で、感嘆した。
ここまで心を揺さぶられたのは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』以来のことだから随分と経つ。
本作を一言で表すならば、「愛」という語り得ぬものへの真摯な取り組みである。
その行き着いた先がこの一見して何を表しているのだかよく解らないタイトル(邦題のみならず原題も)に如実に表れている。
存在は証明し得ないのだが、そこに確かにあるもの、それを表現するためには言葉はあまりにも無力である。
欧米の映画はまだこのような、観る者をうならせる作品をつくるだけの力を持っている。
言葉によって書き表すことが出来るものならば活字に勝るものはない。
言葉ではどうしてもこぼれ落ちてしまうもの、それこそがまさに映像の力によって表されるべき「物語」である。
言葉によって既に表現されてしまったものを敢えて映像にする必要はない。
それはどうあがいても「2次創作」の域を出ず(ごく稀に原作を凌駕するような映像作品に出会うことはある)、従って公開前からある程度の収益を約束されている「2匹目のドジョウすくい」以外のないものでもない。
「絵になる」物語を実際に絵にすることは勝手で、それを見て一喜一憂することは自由であるが、私個人はそのような無駄な行為になんら意味を見いださない。
翻ってこの国の最近の映画は・・・と展開しようとしたところで、本作品にも「原作」があることが今更ながら解ってしまった。
というところで「邦画/洋画」のこの観点からの比較はいったん納めることとする。
いずれにしても本作、言葉で記述しようものなら1文で済んでしまう内容ではあるが、実際には言葉の限界を超えたものを表している。
殊日本では種々雑多な「愛」がひとまとめに1文字の漢字でまとめられてしまっている。
本作は本来そうあるべき意味としての「愛」の物語である。
ええい、言葉の壁が鬱陶しくなってきた。
実際に作品を観て確かめて欲しい。
これこそが「映画」だ。
人事も人間
- 作者: 楠木新
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2011/06/16
- メディア: 新書
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著者:楠木新
■評価:可
情報:△ 新規性:△ 構成:○ 日本語:○ 実用性:△
難易度:易 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:△
お勧め出来る人・用途 :人事部とは「伏魔殿」だと思い込んでいる人・人事に携わったことがあるビジネスパーソンの生の声を聞き、人事に対する理解を深める
お勧めできない人・用途:人事部に効果的にアピールしたいと考えている人・異動や昇進などの「からくり」を読み解く
■所感
「こころの定年」で有名になった、『会社が嫌いになったら読む本』の著者の本。
上作が良書であっただけに期待して頁を繰ってみたが・・・正直言うと期待外れ。
内容的には著者の個人的な体験談にとどまっており、それ以上でもそれ以下でもない。
ただ、それゆえにありのままの人事の実態、悩める人事部員の姿などがよくわかるという点では、「人事入門」として読むのであれば本書は何らか有意義な知見をもたらしてくれるだろう。
私自身、人事の実態には疎かったので「なるほど」と思わされることが多かった。
が、タイトルや帯の文言から類推されるような「人事」の「からくり」的なことは本書を読んだところで何も解らない。
強いていえば人事部は思ったよりも独自に執行できる権限が限られているのだな、だとか、実際には各部課の部課長とのネゴなのだな、といった解る人には解るごくごく「当たり前」のことが解るだけ。
ただ、実際にはこれらのことすらあまり「理解」はされていないのではないだろうか、ということを本書を読みながら感じていた。
本書は「人事」の本ではなく「人事部」の本なのだ、と割り切って読めば、あまり損をした気分にはならずに済むかもしれない。
「人事部」のことを理解したい人にはおすすめ。
■読了日
2012/01/27