イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うる星やつら:第37話『飛鳥ふたたび/嵐を呼ぶデート 前編』感想ツイートまとめ

 うる星やつら 第37話を見る。
 約10話ぶりに水乃小路飛鳥が大暴れし、パニックと暴力とすれ違いが凄い勢いで混乱を生み出す、過去最大級にドッタンバッタン大騒ぎな回だった。
 宇宙人だの妖怪だの、人外の存在が当たり前に顔を出すお話なのに、一番カオスなのが超絶金持ちが好き勝手絶頂やる時だってのに、強めのこのお話らしさを感じている。
 ただの男性恐怖症なら落ち着くチャンスもあろうが、飛鳥は作中最強クラスの怪力も持ち合わせているので混乱に暴力で拍車がかかり、ドンドン状況が落ち着かなくなっていくのが、ドタバタコメディに特化したデザインだなぁ、と思うね。
 おまけに無垢でえっちだ。無敵だな…。

 

 つーわけで今週は、人間の範疇が獣/女/お兄様にぶっ壊れた怪力美少女が、母からの荒療治に友引高校を巻き込むお話と、唯一なんとか話が通じる男性である終太郎とのデートの前哨戦である。
 『性差の話しされたら俺の出番だ!』つうわけで、竜ちゃんもさらしに隠したお胸を見え隠れさせつつ、久々にちょっとエロティックな雰囲気で第1エピソードが進む。
 あとフツーに妹を案じ良い兄でいようと頑張る、トンちゃんが健気でカワイそう
 時が過ぎてみると、箱入り娘を極めた結果あらゆる常識が欠落した飛鳥がお兄ちゃんに迫るのは、半世紀先取りした無知シチュみたいな手触りがあり、”うる星”の先進性を改めて感じ取る次第である。
 そこら辺のアモラルな気配を魅力的なスパイスにしつつ、過剰なパワーをパニック状態でブンブン振り回す飛鳥が、ギャグ時空じゃなきゃ許されない器物損壊と傷害を量産しつつ、ちょっとずつ屋敷の外側に慣れていくお話だ。

 

 前回描かれた終太郎の閉所恐怖症と同じく、ギャグキャラに必要な濃い味付け、そいつがそいつでいるための聖痕を消し去って”マトモ”にするわけではない。
 だが壊れてるやつなりに社会に馴染む努力とか、ぶっ壊れたまんまでも自分の手綱を握るための一歩とかが、笑いと混乱の中確かにあるのは、やっぱ見てて安心するところだ。
 いやまぁ、その過程で発生する大暴れに巻き込まれる側はたたったもんじゃないが…。

 何もかもぶっ飛ぶうる星時空の中でも、極め付きの異常環境で育てられた飛鳥は、ラブコメが足場とする”マトモ”な性差をブンブン揺らし、壁に叩きつける。
 ドサクサに紛れてスケベ根性を満たそうとするあたるをぶっ飛ばしながら、最終的に竜ちゃんを『性別:お兄様』と認識する飛鳥はかなり強めにイカれているが、あんだけ被害を出しながらなんかホッコリしてしまう可愛げがある。
 まー体だけ立派に育った鎧仕立ての幼児なので、怒る気にもならない無邪気な天災というか、お騒がせ野郎勢揃いなうる星のなかでも、かなり独特なキャラをしていると、ガラス割過ぎヤリ過ぎ完満載なドタバタを楽しませてもらった。
 やっぱ可愛いね飛鳥は…。

 あとモノ壊す作画が旧作世代の懐かしい味がしつつ、キッチリ最新鋭の”良い作画”としてブラッシュアップされてたの、すごく令和うる星らしい味わいで好きだったな…。
 こういう『古い革袋に、最新鋭の気合はいった最高のぶどう酒を注ぎ込み続ける』スタイルは、今”うる星”やる上で絶対必要だったしキッチリやりきった、このアニメが選んだ一つの戦いだったと思う。
 作品を象徴するアンセムとなった”ラムのラブソング”をほぼ封印して、MAISONdes最新のクリエイティビティに任せているところといい、古典を敬しつつやるべき戦い方を貫いてくれてるのは、本当に尊敬する。

 

 あんだけの大立ち回りをしても飛鳥の常識は書き換わらず、作中最大のイカレっぷりをどうにか方向づけようと、遂に水乃小路母が横車を押すのが、第2エピソードと次回の連作となる。
 飛鳥エピは結構潤沢に話数使って、騒々しいドタバタをたっぷり描きながら話が転がっていくので、独特の手触りと連続性があって面白い。
 水乃小路兄妹を鏡にする形で、同じくぶっ壊れた面堂兄妹のあり方が際立ってくるのも、ここまで積み上げてきた話数を活かし、一つの集大成として長尺のエピソードを編もうとしてる感じがあって、『ああ、第4クールなんだなぁ…』って思う。
 ここに一つのピークが来るように、話数を選んで当てはめてきたわけだなぁ。

 ポニテメガネで変装したラムとか、黒子衣装に下心を隠すあたるとかが暴れるのは次回になるわけで、第27話第2エピソードと同じく、今回はあくまで序奏。
 とはいえ常識の通じぬ怪力珍獣箱入り娘を相手に、ある程度の絆を育んだ面堂くんの苦労が随所に感じられて、なかなか味わい深い。
 トンちゃんにしても面堂くんにしても、身近な男衆が純情怪力モンスターを見捨てず、優しくしてくれているのは救いだ。
 つーか狂った因習で純朴モンスター培養しておいて、手に負えないから許嫁に丸投げしてる、水乃小路母のメンタリティが一番の怪物な感じしてきたな…声帯が三石さんだから、ギリギリヤバさが笑いに転換してるけども。

 

 というわけで、久方ぶりでも大火力、ヤバさと可愛さの天井が振り切れている強烈キャラの帰還・前編でした。
 あんだけドッタンバッタン大暴れしても、全体の印象が『飛鳥、可愛かったね…』なのは、長きに渡って”うる星”見てきて価値観ズレてるのか、キャラ立ての妙味か…。
 この心地よき混沌に飲み込まれサッパリ判別はつかないが、絶対ろくなことにはならないデート本番、どうなることやら大変楽しみです!

 

ダンジョン飯:第16話『掃除屋/みりん干し』感想

 迷宮変貌の法則を解き明かしても、なお見えぬ運命と心の行方。
 3パーティーが一同に介して、交わったりぶつかったりする結節点、ダンジョン飯第16話である。

 ここまで別視点に隔てて描かれた、ライオス・シュロー・カブルー各一行が合流して、物語の激浪が彼らを押し流していく寸前の一休み……という塩梅のお話。
 切れ者チルチャックが己の職分を見事に果たし、物理的迷宮から帰還する道筋を立てるものの、運命と人間関係という複雑怪奇なもう一つの迷宮を見誤り、ヤベー男どもを触れ合わせた結果、のっぴきならない状況が発火する話でもある。
 『こっちのがヤバい!』と土壇場で勝負を張った、マイヅルとセンシの方は心を込めて食事を作る者たちの共感で穏やかに繋がり、ライオス一人きりにしたシュローとの対峙は境界線を見誤って一触即発の大惨事と、弘法も筆の誤り、チルチャックだって判断力チェックにファンブルするわなぁ! という展開になった。

 

 3パーティーが合流して賑やかになる前、最後のライオス式”ダンジョン飯”として描かれるのは、ダンジョンの恒常性を保っているダンジョンクリーナーの生態だ。
 放っておけば傷ついたまんまなリアルな損傷を治し、永遠にハック&スラッシュしていられる欲望の器を維持し続けるからくりは、目に見えない小さな生き物が生態系を維持しているからだ。
 幾度か語られた、一つの大きなエコシステムとしてダンジョンを見る視点を更に補強する描写だが、ライオスはそれも口に含んでみる。
 人間の舌には合わない食材だが、ライオスは『美味い/不味い』というグルメ漫画的価値観軸で魔物食を評価していない部分があって、これも一つの経験と激マズ食感も含めて味わってる感じがある。
 傍から見ればイカれた社会不適合者だが、しかしそんな好奇心や鷹揚な態度がどれだけ楽しいものか、1クール見守ってきた僕らには結構共感できる姿勢といえる。

 クリーナーは惨劇の跡を上手く隠蔽し、チルチャックがどう誤魔化したものか悩んでいたファリンの痕跡をかき消して、地上への道を開いてくれる。
 しかし階段を目の前にしてまき起こった諍い、ライオスが不用意にパナシた真相開示で、地上に戻るルートはとたんに危うくなり、人間同士のゴチャゴチャを全部ひっくり返す衝撃の異形が顔を見せもする。
 人を危機に陥れるはずのダンジョンが、チルチャックが一瞬夢見た希望へのマッピング通り道を作り、眼の前の相手の胸の中にある迷宮を読み残ったパーティリーダーがより深い奈落に自分たちを突き落としていくのは、なかなか皮肉で面白い構図だ。
 ライオスは魔物が蠢くダンジョンに惹かれここまで辿り着いたわけだが、カブルーは黒魔術のヤバさ引っくるめて人間が織りなすよしなし事全てに愉しみを覚え、複雑に絡み合う情念と関係全部に魅入られている。
 そしてシュローは東国のしがらみを引きずりながら辿り着いた異国で、出会ってしまった北方人への恋に飲食も忘れてのめり込み、ようやっと運命のたどり着くべき場所へと足を運んだ。
 人と人の間、人の内側にも”ダンジョン”はあり、攻略され簒奪されるばかりと思える”ダンジョン”にも人間に似た不思議な面白さが、確かにあるのだと改めて描く回である。

 

 人間と人間が触れ合う領域において、カブルーは壊すも繋ぐも思うがままな達者を見せる。
 どこか高みから興味本位、修羅場も愉しむ意地の悪さを冷ややかに匂わせつつ、地上の倫理から逸脱したヤベー魔物食野郎の懐にするりと入り込み、発言を誘導して情報を得ていく。
 先週チルチャックが危惧していた、人を見抜く眼力や適切な話術に欠けているライオスの危うさに、思い切り付け込まれる形で”迷宮攻略”された……とも言えるか。
 ライオスも脳みそ空っぽのカカシではなく、下手くそなりに嘘をつき間合いを測るわけだが、専門領域には舌が軽くなるというマニア特有の弱点を付かれて、ベラベラ喋って地金を晒すことになる。
 まーここで自分を隠し通せる器用な男を気に入って、ここまでこのアニメを見てきたわけではないし、イカれっぷりの奥に確かな人間味があればこそこのお話は面白いわけだが、対人心理戦において全く、ライオスはカブルーに勝ち筋がない。

 シュローが激怒する呪われし復活を、ライオスは後ろめたく感じている気配すらない。
 そういう芝居をすれば、シュローから共感の欠片でも盗み取れそうなうろたえ方をせずに、ゆらぎのない瞳で自分が感じていたこと、仲間に共感して欲しい事を真っ直ぐ突き出す。
 ストレートにしか生きれない、感じ取れないこの気質が地上に展開する人間たちの社会では雑音の源となり、ライオスを迷宮で生きるしかないアウトサイダーにしていった様子が、容易に想像できるガンギマリっぷりだった。
 いいとこの子弟として、社会常識をある程度以上身につけているシュローにとって、黒魔術行使の大罪を平然と語るライオスは、対話不可能なモンスターに見えているかもしれない。
 この難物をどう斬り伏せ、調理し腹に収めていくか。
 あるいは許せず斬り殺してしまうか、そういう土壇場にやせ衰えたサムライは立っているわけだが……まぁヤベー奴だよなライオス、普通に考えて。
 ここら辺の価値観にチルチャックが近いってのを、黒魔術師マルシルへの当てこすりで既に書いているところとか、やっぱ好きだな。

 

 カエルスーツにツノカブト、レンガ齧りの激ヤバ集団を、魔物と同等の存在と警戒したマイヅルの判断は偏見と切り捨てるには妥当であり、主人公一行以外の視点を作中に持ち込んだからこそ、気づけば慣れ親しんだキャラクターの異常性を、客観視するタイミングが来たとも言える。
 色んな人がそれぞれの角度から、自分に見えている世界や他人をマッピングして、誰が仲間で誰が魔物なのか見定めている、複合立体視の迷宮探索。
 爆発しそうな危険物と監視の目を届かせた、センシとマイヅルの調理場ではとても穏やかなコミュニケーションが育まれ、仲間たちが久闊を叙するはずの密室では、ライオスの魔物的価値観が不用意に飛び出し、マトモなシュローを打ちのめしていく。
 まこと一寸先は闇、道が見えたと思ったら迷い道くねくねの迷宮探索行であるが、では”マトモ”なシュローの考え通り、死の運命を受け入れて火竜に食われたファリンを諦めていれば良かったのか。
 ありえぬ富が溢れ、死者も生き返る奇跡の地が、ここ迷宮なのではないのか。
 そういう問いかけも、暖かな東洋飯作りとギスギス人生劇場の間で、面白い色合いを見せてきている。

 愛する肉親との離別を諦めきれない、ライオスの”人間らしさ”にも共鳴は出来るが、しかしこの世界の社会規範を当たり前に背負ったシュローのドン引きも、そらそうだと理解できる。
 かつてカブルーが兄妹を評した、『善人ではなく人間に興味がないだけ』つう言葉を裏打ちする、非人間的なズレ方が可視化される回だと言える。
 生き死にの土壇場で禁忌に踏み込むことを選んだマルシルといい、魔物食にためらいがない隠者たるセンシといい、そういう魔物性をライオス一行は、どっかに秘めている。
 ……どっちかと言えばシュロー的なマトモさを、備えているからこそパーティーの知恵袋になれているチルチャックは、貧乏くじ引くポジションだよなぁつくづく。

 では、この迷宮のどこに出口があるのか……あるいは”魔物”を殺し進むことで突破するのか。
 おぞましい怪物をなんとか料理して腹に収め、自分の一部と変えていくのか。
 簡単に見つからないからこそ迷い込み探る物語は、一触即発の危険を孕んだまま、まだまだ続く。
 人間の心のなか、あるいは人と人との間に広がっている迷宮は、より広く大きな”運命”にも足を伸ばして、様々な人を飲み込んでいく。
 ライオス達が迷宮を食っているように見えて、その実迷宮が人間たちを食っている入れ子の反転構造が可視化されていくのも、シュローやカブルーといった異物をライオス達に切り込ませ、新たな視点を付け足したからこそだろう。


 マルシル達と視聴者がうっかり美味しく楽しいものと馴染んできた、魔物メシがドン引き必至な異常行為であり、それでも命を繋ぎ願いを叶える大事な営みだった事実も、フツーのメシを作るマイヅルの手つきで、新たに照らされてきた。
 我が子同然に慈しんできた”坊っちゃん”が、寝食を忘れてやせ衰える悲しみを癒やすように、手ずから作った美味そうなメシを、危機を目の前にしたマイヅルは手放し符を握る。
 欠乏を満たすものであるよりも、戦うものであることを選んだ彼女が捨て去ろうとしたものを、センシがコミカルにキャッチしている様子が、僕にはとてもありがたいものに見えた。
 それは空中に危うく揺らぎつつも、まだ盆の上に乗っかって皆で食べれるものなのだ。

 ライオス達の楽しい冒険をカトラリー代わりに、この魅力的な世界を味わってきた僕らとしては、ファリン復活のために彼らが選んだ道が全部間違いだったと、地上の理屈で断じて欲しくはない。
 ましてや人間マニアの楽しい観察対象として、興味本位で引っ掻き回される言われもない。
 しかしそういう反発を突き抜けて、シュローやカブルーが持ち込んできた新たな視線は、確かに主役一行が選んでしまった道の危うさや問題を浮き彫りにし、当然起こり得る問題を表に引っ張り出してくる。
 というかカブルーがライオスの人となりをジロリと観察しているのは、能天気生物マニアに見えていない破局を回避するべく、大局的視座に立っているからこそだ。
 私的興味を満たしつつも迷宮の外に拡がる大きな世界、身内(パーティー)に収まらない広範な正義感を持ってる”マトモ”な人間は、やっぱり彼……あるいは愛する人の呪われし蘇生に真っ当に怒れる、シュローの側なのだ。
 しかしこの話……つうか血湧き肉躍る冒険譚全般、マトモじゃないからこそ面白くもあってな……。

 

 踏んだら終わりの対話トラップも、話していたらひょっこり顔を出すドン引きモンスターも、山ほど潜んでいる社会と世界をどう進み、どんな宝を持ち帰るのか。
 対話不能なモンスターではなく、対話必須な人間が話の真ん中に踊りだしてきたからこそ描かれる、融和と対立……その先に待つだろう決断と運命の物語は、人と怪物の中間点に立つキメラを画面に写し、不穏に次回へと続く。
 見知らぬ同士が交流するドラマを豊かに織りつつ、いいタイミングでテーマや価値観を相対化し、客観視した後に何が描かれるのか。
 次回も楽しみ!

花野井くんと恋の病:第3話『初めてのクリスマス』感想ツイートまとめ

 私だけを特別なお姫様にしてくる魔法が、最高のクリスマスプレゼント。
 花野井くんと恋の病 第3話を見る。
 ロマンティック山盛りの第一章完ッ! で、大変良かった。

 話としては衝撃の獣欲ゼロ距離戦闘開始ッ! …を上手くスカして、冷却期間を経てスーパー紳士に戻った花野井くんが、試験期間ラストにぶっちぎりのトキメキ体験をぶち込む感じ。
 パトス強すぎて時折溢れるけども、真摯に目の前の人間と向き合うべく必死にブレーキをかけて、傷つけぬよう思いが伝わるよう素敵な体験を沢山手渡してくれる、コンセンサス重点なスーパーダーリン、花野井くん。
 その魅力がみっしり伝わって、恋愛試験期間延長にもめっちゃ納得。
 二人共どんどん恋して、どんどん幸せになっていくんだよ~~~~。

 

 ほたるちゃんは優しい家庭に守られ、極めて正しい倫理観と人格を育んだ、とても素敵な女の子だ。
 自分ひとりの特別な日であるはずの誕生日が、家族のクリスマスと重なってしまっている状況にも、妬みより幸せを感じて問題視しない。
 恋を知る前の彼女を包む、日生家という繭の中においてはそれは当然のことであったが、花野井くんという異物と触れ合ったことで、家族=私だった幼い時間にも変化が訪れる。

 貴方が貴方だからこそ、私と出会って特別に思える。
 エゴと我欲の泥水から、理想と救済を救い出した恋心の一番ピュアな部分が、自分ひとりを特別だと思えない正しく清い少女の価値を、別角度から照らしていくのだ。

 花野井くんはその優れた顔面に引っ張られて、一足先に恋のヤベー部分、それで顕になる人間性の泥を思い切りひっかぶってきた。
 ほたるちゃんの無防備に獣欲を煽られても、すんでのところで庇い手付いて傷つけないよう頑張る誠実さは、他人を尊重できない凡人との恋愛に汚されてなお、彼を眩しく輝かせている。
 どれだけ重たい気持ちを抱えていても、それを一方的にぶつけたら暴力にしかならないと、恋に傷つけられた経験から彼は学んでいるし、それを自分を律する枷として有効活用できてもいる。
 それは日生家という繭の中、幼さに微睡んでいては見えてこない、世界のもう一つの形だ。

 多分ほたるちゃんは、恋を通じてそれを知る。
 今回過剰な正しさで既に誰かを傷つけ、それをフォローしきれなかった過去が描かれることで、ほたるちゃんもまた未熟な存在であることが解っても来るけど。
 何かを間違えたのなら新たな出会いの中でそれを改めていける、幸せな可能性が二人の前には拓けている。

 

 自分の中に溢れる愛を上手く受け止めてもらえなかった花野井くんは、常人離れした正しさを自然と体現できてしまう特別な少女と出会うことで、そのパトスを愛へと昇華していく。
 花野井くんの情熱を抱きとめ方向づける中で、ほたるちゃんは自分の正しさに何が出来るのか、その特別さを知っていく。
 お互い、全くもって普通じゃない事実を知っていく。

 それが傲慢な思い上がりにならず、極めて謙虚に誠実に、眼の前の誰かを尊重しながら幸せを探していく旅になれる期待が、トキメキいっぱいのクリスマスデートに豊かに映えていた。
 幸せだけど、自分を特別な一人として選び取ってはくれないいつもの家族行事から、高校生らしいハンディな手応えがありつつ、素敵な特別感に満ちてもいるお試しデートへ。
 屋台食べ比べにイルミネーション、スケート体験と続く二人のスケッチが、そこで何が生まれているかを適切に削り出していって、大変いい。

 触れ合わなければ転んでしまう、同意と必然に満ちた身体接触
 やりたかったけど出来なかったスケートは、二人の恋の現在地を適切に示す。
 お試しで付き合って、ノートにしたいことを書いて。
 清く正しい…おままごとみたいな恋の先にある、魂と肉体の強い触れ合い。
 花野井くんはそれを強く望んでいて、ほたるちゃんはそれが良く解らなくて、二人の欲望のギャップはときに激しく衝突しかけるが、極めて善良な子ども達の魂が、恋心をお互いを傷つけない適正距離へと豊かに導いていく。

 どれだけ情熱が背中を押しても、ほたるちゃんのいちばん大事な所有物であるその体に触れる時は、『触っても良い?』と確かめてから。
 NOと言われるのなら欲望を抑え、YESと言われる時を待つ。
 理性と倫理の口枷をはめることで、恋の獣は人間の形を保っていく。

 このコンセンサス重視のダーリンっぷり、なかなか現代的で面白いなぁと思いつつ、ほたるちゃんが手渡してくれる彼女の強み…”正しさ”を花野井くんが学んでいく様子は大変に喜ばしい。
 正しすぎるがゆえに、他人の情熱を理解しきれないほたるちゃんが、花野井くんの溢れるLOVEを受け止める中、だんだん”それ”を理解していく様子とも重なるし。
 資質も性格も異なる二人が、お互いの凸凹を噛み合わせ混ぜ合わせて、違うからこそ互いの鏡となって真実の自分を見つけていく間柄を、幸せに作っていく。
 やっぱそういう、釣り合いのある恋を描いてくれると爽やかで良い。
 二人の関係すげーフェアだし、フェアになろうと頑張ってる。

 

 ほたるちゃんは世界にたった一人の自分がそこにいる実感を、幸せで清廉であるからこそ得れない人で、自分を求めてくれる眼の前の誰かを『世界にたった一人』と本気で求められる花野井くんと向き合うことで、それを学んでいくのだろう。
 これまで花野井くんの恋を不幸せに終わらせてきた、求められる強さと受け入れる優しさのアンバランスが、同じくらい奇跡の人格持ってる”自称・普通の女の子”と出会う中で是正され、あるべき善さが開花していく。

 手を差し伸べ、妬まず、濁らない。
 花野井くんが挙げたほたるちゃんの善さは、これまで求めて凡人共が返してくれなかった彼の祈りを、そのまま反映しているように思う。

 それはつまり、何でも与えてくれるスーパーダーリンに思える彼が何かを求める幼子な部分を全然残していて、救われなければいけない子どもである証拠だ。
 花野井くんは優しいほほ笑みとジェントルな仕草の奥に、結構深い傷を隠している感じがして、ほたるちゃんの自然な振る舞いがそれを適切に癒やしている手応えが、今回感じ取れて良かった。
 良すぎる顔面が邪魔をして、『あ、この人泣いてる子どもだ…』って気づいてもらえなかった少年が、ツラの良さに誤魔化されない鋭い視力を持った女の子と出会うことで、本当の自分を見つけてもらう。
 そういう話でもあるのだろう。

 とすれば、今回”看病”してたのはかなり大事な描写か。
 無意識に待望していた特別なお姫様抱っこを、自然手渡してくれる花野井くんもまた、ほたるちゃんの満ち足りた幸せの奥にある欠乏を暴き、癒やし、満たす特別な誰かで。
 そういう意味でも、二人はお互いの釣り合いが取れている運命の相手…なのだろう。
 このフェアな感じは、やっぱ好きだ。

 あとスーパーロマンティックを生み出すために都合よく機材トラブル起きて、最高の瞬間に復旧してドラマティックティック止められそうもない展開になるの、俺好みの心理主義で大変良かった。
 俺はプリキュアとか百合アニメとかで唐突に映えてくる、女と女が本音で触れ合うためだけの美しい空間が好き…。

 

 恋するなら花野井くんが良いし、花野井くんならいいな。
 そういう気持ちが自然と沸き上がっている時点で、お試しの”答え”はでてしまっているし、ほたるちゃんの過剰な正しさ、他人が持ってるパッションを感覚できない不全は、適切に丸められている。
 形から入る不自然を越えて、正しさを横に退けて何かを求める欲求が自分の中にもあるのだと、家族で過ごすクリスマスを自分だけの特別に変えた女の子は、だんだん実感していくだろう。
 その隣で、無限の愛と溢れる情熱を誰かに受け止め、返してほしかった少年も満たされ、自分らしさの使い方を見つける。
 すれ違いぶつかる時もあるけど、それすら幸せに触れ合う、恋という癒やし。

 幸福に無限延長を迎えた恋人試験がどこに行くのか、幸せに見取り図を描く第3話でした。
 キャッチーな状況とキャラで転がりだした物語が、その勢いを止めることなく一応の決着まで走って、さらにその先に可能性を広げていく。
 ”第一章”が果たすべき役割を見事に描ききっていて、大変良かったです。

 高校生主役だからこその透明度と幸福感、清廉な純情と豊かなロマンティックがしっかりあって、このお話でなければ感じられない芳香が豊かだった。
 世にラブコメは溢れているが、だからこそこの話じゃなきゃいけない特別さってのに出会えると、幸せな気分になる。
 ここら辺、ほたるちゃんが今回受け取った実感に似てるか。

 

 

 

・補論 顔立ちよりも雄弁に、己の在り方を語る靴たち。

画像は”花野井くんと恋の病”第3話より引用

 別れ際、恋人候補たちの足元を照らすカメラは、二人の装いが釣り合っていない様子をしっかり示す。
 デートするには芋っぽすぎる、ほたるちゃんのスニーカーとデニムに対し、大人びたバイカラーの花野井くん。
 それが多分、二人の現在地を何よりも雄弁に切り取っている。
 この足元の差異は不幸な摩擦ではなく、違っているからこそ照らし会える幸福な対照へと、この靴で進み出していく未来も教えてくれるわけだ。

 身長差のある二人でも、足元は平等に並び合っていて、しかし同じではない。
 同じではないからこそ面白く、無理な背伸びもなく、自然な歪さを隠すことなく晒しながら、ちゃんと向き合っている。
 恋と情熱が良く分からない未熟と、過剰に大人びてしまった痛ましさ。
 二人の足りない部分もお互いの靴選びには示されているが、しかしその欠落よりも、何も隠していないでいられる幸せ、それを見せあって認めあえる繋がりの強さが、より鮮明だ。
 足は未来へ進むための武器であり、そこに二人の現在地を率直に刻むことで、二人三脚で進んでいく未来への期待も自然高まっていく。

 いつかほたるちゃんが、花野井くんの素敵な靴に並び立つオシャレをするようになるかもしれないし、花野井くんが飾らない自分でほたるちゃんの前に立つ時も、必ず来るだろう。
 そんな”いつか”を見届けたくなる、チャーミングな二人の現在地。
 良く魅せてくれる第3話で、とっても良かったです。
 オーソドックスで濁りのない話運びに、こういう勝負をキッチリねじ込む手腕……やはり好きだ。

時光代理人-LINK CLICK- II:第2話『夜襲』感想ツイートまとめ

時光代理人-LINK CLICK- II 第2話を見る。

 先週衝撃のヒキでワクワク二機を待ってた視聴者の顔面ぶっ飛ばした時光が、決定的瞬間に至るまでのプロセスを丁寧に語り直すことで、事件のダメージを更に拡大する回。
 人情モノからサスペンスへと舵を切った作風を重たく生かしつつ、取り返しのつかない惨劇の奥に何があったのか、重いブロウを叩きつけてきた。
 激務の中、当たり前の幸せを確かに掴み取っていた平凡で善良な人こそが死んでいく、殺伐とした狂気と悪意の渦。
 これからトキとヒカリが向き合っていくものの手触りを、良く教える第2話だった。
 いやー…ハラハラワクワクしつつも、やっぱ辛ぇわ。

 

 話の大枠としては人格交換能力者の内実や周囲を掘り下げつつ、長く伸びてきた陰謀の手とバチバチやり合う感じ。
 敵もまた写真を媒介に能力を発動すると解ったことで、異能行使にルールを定め、現実を身勝手に歪めないよう生きてきた主役コンビの、歪んだ鏡としての危うさ、怖さがより鮮明になってきた。
 力を使って都合よく、現実を書き換えることにためらいがなかった場合、トキたち異能者がどれだけ凶悪な存在になってしまうか、無貌の殺戮者が振り回す凶行は良く教えてくれる。
 話の舵取りは結構変わったが、このヤバい許せなさは一期で異能を使って、人の人たる証を写真の中から取り戻してきた、時光代理人の行いあってこそか。

 チェン刑事の私生活が新たに描かれるほどに、一期でトキ達が慎重に守ってきた小さな幸せを、凄い粗雑さで踏みにじりぶち壊す連中の恐ろしさ、おぞましさは際立つ。
 因果に触れてはいけない異能者の定めと、人間としての悲痛な情の間で引きちぎれそうになっていた、時空改変能力者として生きるにはあまりにも、善良すぎる青年。
 彼らが崖っぷちギリギリで留まり、その小さな手のひらで守ってきたものを、ためらいなしに叩き壊せる連中は、情け容赦がなく悪知恵が働き、数が多くて凶悪だ。

 現状、突破口が全然見えない息苦しさを今後どう抜け出し、あるいはさらに追い詰められていくのか。
 サスペンスに必要な閉塞感と緊張感。
 そういうモノがひたひた、バキバキに仕上がった画面から立ち上ってくるような第2話である。
 味方サイドの対応を上回るスピードと苛烈さで敵の手が伸びてくるので、気が休まる瞬間が全然ないのは、ここまでの話を見てトキ達が好きになっちゃってる視聴者としては、心地よいストレスとともに先を見させられてしまう要員にもなってて、つくづく引っ張り(Suspense)が上手いなぁと感じる。

 

 知略の限りを尽くして主役を追い込む尖兵として、先週戦慄のスーパーセクシー・デビューを果たしたチエン弁護士の描かれ方も、そういう牽引力を上手く生み出している。
 元同僚の家に労りを演じて上がり込み、致死の凶器を盗み出す手際。

 旧友を信じて疑わない妊婦が差し出した飲み物を、歓迎するような仮面をつけつつ一切口はつけず、汚れ仕事を担当する助手は下品にすすってゲップを漏らす。
 歓待と食料をどう扱うかで、チエン弁護士がどういう人間であるかを鮮烈に見せる演出で、大変良かった。
 (ここら辺一期第2話で『飯を食う人』として描かれた主役たちと面白い対比で、結構フード理論で回っているアニメと言えるかもしれない)

 何しろこちらの予断を操り捻って自在に動かすアニメなので、今見えているものの印象が次の展開で、180度意味を変えても全くおかしくないが。
 現状、チエン弁護士は異能の殺人者と手を組んで、謎を秘めた携帯を奪う圧巻に見える。
 人間が人間でいるためのルールを捻じ曲げ、尊厳を踏みつけにしながら死体を積み上げる連中が、それほどまでに欲する携帯電話には、何が秘められているのか。
 物語が追いかけるべき聖杯の値段を、暴力交えつつ上手いこと上げていく展開で、アクセルバリバリ踏み込まれていて気持ちがいい。
 敵の全容も目的も分からないが、切れ味抜群の格闘アクションが前座に過ぎない激ヤバ状況がドンドン加速していってる手触りが、凄くハラハラ出来てて良い。

 状況の深刻度が増すほど、番外編で習得した<格闘>スキルの重要性がガン上がりしていくの、あまりに独特の味で面白いな。
 『ノー功夫、ノー時光』じゃんもはや!!
 受け流しとカウンターを特徴とするトキの”柔”に対し、肘と膝を多用するムエタイスタイルの”剛”がいい対比生んでたのも良かった。
 打撃部位だけじゃなくて、トラッピングと受け流しの”感じ”が凄くムエタイっぽくて、ああいう所のクオリティで作品を下支えしてる手応え、大変このアニメっぽい。

 

 アニメを構成する全領域に手を抜かない力みは音響にも生きてて、サスペンスフルなBGMが物語の緊張感を保ってもいた。
 OP/ED含めて、音楽いいのもやっぱ好きだな…。
 今後もこの全方面に力んで流麗な作風を維持して、一瞬も油断ならぬお話を貫いて欲しい。
 窮地の主役の前に現れたのは、敵か味方か。
 次回も楽しみ!

忘却バッテリー:第2話『一緒にやる?』感想ツイートまとめ

 愛好会しかないクソ公立に、野球を忘れられない男たちが集う!

 忘却バッテリー 第2話を見る。
 梶くんとマモの長尺べしゃり力に下支えされ、ギャグに振ったりスポ根したり、横幅広い作風にクセ強新キャラ達がINNッ!
 ブツクサ文句たれつつ、元智将がキャッチャーとして再起動しそうな気配もあり、小手指野球部が動き始める期待感が大きな音を立てて動き出す回だった。

 自分ペースで好き勝手絶頂語り倒す圭と、ぶっ倒した相手に興味を示さない葉流火。
 忘却バッテリーを主役に起きつつも、その過去や内面はなかなか見えてこない構造の中で、人間に興味が強い山田くんが周囲を良く見て、状況を言語化していく。

 数多の野球少年の心をぶっ壊した天才が、何故記憶を失い野球を諦めかけていたのか。
 ある種の青春殺人事件が作品を牽引するミステリとして隠蔽されている構図の中で、凡庸な探偵助手の役割は大きい。
 容疑者である圭と葉流火が、自分のこと最初からベラベラ喋っちゃうと話が壊れるし、タイプは違えど両方どっかがぶっ壊れているバッテリーの、歪な個性も薄れるからな…。

 なので山田くんは極めていい人であり、色んなことを観察して読み取る力が高い、善良青春探偵という役割も背負う。
 自分を語らぬ不器用野郎どもの理解者であり、作品が目指す方向を語る代弁者。
 その仕事ぶりを思うと、梶くんはドンピシャだったなー。
 山田くんが『喋る役』を担当することで、彼の透明度高い人格に、主役が発するクドい苦みが浄化されて、ギリギリ飲める味わいになっているのも面白い。
 ぶっちゃけ、山田くんのツッコミと解説がないと相当、圭と葉流火は受け止めにくいキャラだと思うよ…。

 

 しかし理解り手としての力が高い山田くんが、浮かれたボケッ面、冷たい鉄面皮の奥にあるものをモノローグの刃で切開してくれることで、秘めた才能や過去の遺産が解りやすくなってくる。
 それは一回脳みそリセットされた圭が、野球をもう一度面白いと思えるまでの足取りと重なって、作品が主題と選んだものがどう素晴らしいのか、噛み締めさせる手助けもする。

 ウザいカユいと文句たれつつ、シニア界に燦然と輝く星だった要圭の体には”野球”が刻み込まれていて、捨てようにも捨てられない。
 それは目標を見失った元エースへの祝福として眩しく輝き…逃げようとしても逃げられない呪いとしてのドス黒さを、今後顕にもしていくだろう。

 忘れているはずなのに消え去らず、逃げようとしても追いすがる。
 タイトルにある”忘却”の二面性が、バカと仏頂面に正反対に思える主役両方に…あるいは彼らに惹かれる野球少年たち全員に、長い影を伸ばすお話でもあるのだ。
 しかしまぁ、そういう現代野球残酷物語が牙を向くのはもう少し先だ。
 俺はそここそが好きなので、アニメでどう描くか楽しみ。

 

 さておき、忘れたかったはずの快音に脳髄揺さぶられ、心をブチ折った張本人と対峙してもう一度、バットを握ってしまう野球バカ二人が、今回は描かれる。
 オラついたパワーヒッターと、クールな皮肉屋オールラウンダー。
 これまた対象的な二遊間コンビであるが、エグみ濃い主役たちに負けないキャラの強さで、大変いい登場をした。
 葉流火の挑発…と自覚していない負け犬煽りを受けて、即座に突っ走っていく藤堂くんと、そんな彼の奮戦に静かに燃えて丁寧に服を畳む千早くんの在り方の違いが、色んな連中が集まってチームになっていくワクワク感を、モリモリ盛り上げてくれる。
 マジとボケがシームレスに混ざる、独自の雰囲気も良い。

 ガッツリ力んで青春ド真ん中、いかにも”甲子園”な野球物語へのアンチテーゼとしての顔も持つこのお話、出会ったばかりでバチバチ反目しているはずなのに、どこか心地よい空気で既に繋がってしまっている少年たちの顔は、なかなかに頼もしい。
 Cパートで描かれた、設備も才能も期待も備わった強豪校の締まった練習風景とは、全く違う制服まんまな放課後。
 消しても消えない熱を宿しつつ、どこかに”遊び”を残して野球を楽しめる気楽さと、そうじゃなきゃもう野球が出来なくなってしまった傷追い人たちの再起。
 手放し諦めようとしていたものが、愉しさの原点に戻って新たに動き出す心地よさ。

 そういうモンが、ややスベリ気味なのを一切気にせず過剰なべシャリで押し切る要圭オンステージのなか、元気に弾む第2話であった。
 あのヤリ過ぎ感がある喋り倒しも、黙ってしまえば白紙の沈黙がシリアスに迫ってきて耐えきれず、ある種の防御策としてやってる部分があると思うと、『圭ちゃん、生き直し頑張ろうね…』という気持ちになる。

 あとまー、どんな人間とも笑いを軸に楽しい関係作ろうとする人の善さと、自分がぶっ壊れ野球マシーンにしちゃった相棒が摩擦少なく生きられるように、過剰な潤滑油撒き散らす生き方選んだ結果か。
 極めてバカで空気読めないが、そういう優しさと賢さが根っこにある所、俺は好きだよ要圭。

 

 ツンツン反抗的な態度を取りつつ、いざボールとバットがあったら球遊びしちまうあたり、新キャラ共にもそういう純粋さがしっかりあって。
 『おバカなピュアボーイ達が、残酷な運命に打ち砕かれてなお消えてはくれない夢のカケラを握りしめて、チームになって野球しようとする話』つう、お話の芯がよく見える回だったと思う。
 一打席勝負の作画と音響にしっかり気合が入って、『コイツラがちゃんと試合したら、何が起こるんだ…』つう期待感が濃いのもいい。

 これらの味が濃い食材を、梶くんボイスの山田くんが丁寧にアク取りし、食べやすい味にしてお送りする、騒々しくも純粋な負け犬たちのワンスアゲイン。
 次回も楽しみ!