幾度となく額を打ちつけてすら

儘ならぬ指先を
勝手気侭に切り裂いて
愛しかった秋風がニヤリホクソエミ
目玉を突き刺して引き返しては狙いを定め
また視線を合わせ立つ

君が溢れ出る赤が止まる事が無いといった腕も
アスファルトでひしゃげたといった腕も
胃酸で焼け焦げているといった手も
錠剤に浸されたといった脳髄も


全ては真っ白で眩い光を見せるのです。


これぞ真のフラッシュバック現象
また響き出したこの手を如何に止めようか
波打つ胃壁と映らぬ視界


もう、いい
もう、いいのです


君がふらりと宙に揺れ
あの人の様に浮かばなければ


そう彫り込んで
お休みなさい。

多分、私より強い思いのあの手に恐怖している

不意に訪れる喧噪に呼吸器の機能を奪われたり
そんな浮世など蹴散らしてしまえ
もし良かったら、清掃はわたくしが遣りますよ等と
口を吐いてしまったりしないように
細心の注意を払う。


汚い手が余計に汚れて見える。
激しい雨に打たれても
流れ落ちてゆかなくて
其の様な手で果たして
あなたに触れても良いのか
危惧する目が駆け巡る。


そんな私を

限りなく近い掌と

数え切れない群青が
腹を切り裂いて遠のいていく


お前には合わぬ その 色彩


そう耳元で囁いて
流れ出る酸化した爪を
嘲笑い過ぎ去って


勘違い塗れ その 脳髄


あゝ、何とでも仰るが善い
見世物の真よ


唯 其れだけの 躰であること
狂気なるほど感じるのは我が身なり


浅ましく立つ事儘ならぬ
脚を呪うだけよ

去らば

此処ぞとばかりに吐く台詞というものは、何とも陳腐なものに終わる。
あらゆる物を詰め込んだと思った言葉は、
直、其処を転がる石ころとしてしか残らないときが多い。
自分の言葉が伝わらないというのは、真にもどかしいものだ。


裏腹、裏腹。
思惑とは違ったものが伝わってしまう。
言葉は一体何のためにあるのか。
本当に無くてはならない道具なのだろうか。


訳のわからない言葉で意思の疎通を図りたいのである。
実の所は、そう思っているのである。


そうも思えば言葉は更に舌っ足らずの様相を極め、
空気よりも複雑で簡素な化学式でもってできているとしか思えなく相成る。


触れ合う指先と、両の目で総ての事を賄い切れるような気もしないでもない今日この頃。
声と言葉の難しさに、頭悩ませ、知恵熱を発するばかりである。