台北!


士林夜市のフードコート終電間際。


5月、夏の予感に満ちた季節になってきましたね。
なんとなく一足先に同じような季候を味わったような気がしていたのですが、先月末に台湾に行ってきたのでした。


スペイン、ミャンマー、韓国、上海という候補たちを蹴散らし、台湾です。ヨーロッパはメチャクチャな理由でポシャッたんですが。んじゃどうする、となると距離的にも経済的にもやっぱり東アジア。上海やソウルには知り合いも住んでるし、昔の同僚でよく遊んでたぶっとび女子Mなんて彼氏と北京に住んでるのに、上海に来るなら列車に乗って会いに行くYO!とまで言ってくれたんだけど、なんででしょう。何年ぶりかにぼくも会いたかったんだけどね。どこかの洋館で食事して、プラタナス並木の衛山路の安いバーでカクテル飲んで、ライトアップされたバンドの路地裏あたりでも散歩して。駅で北京行きの夜行列車を見送って。チープだけどスパイみたいな素敵なデートができたかもしれないのに。



淡水の町に建つスペイン軍が建てた砦跡


でも今回は台湾、それも首都・台北。まぁ、ちょっとひとり旅がしてみたかったのですね。そそ、気分的にはプチ・ナカータかスナフキンあたり。予定を入れず、勝手にいろんなものを見て、気の向くままに歩き回るような、そんなことをしてみたくなったわけです。……ここまで書いといて、我ながらカッコつけんなという感じですが、まぁたまには許してくださいませ。


すると台湾というのはいいですね。知り合いはいないし(厳密には何人かいるけれど、とても急な旅で時間を割いてもらえるほどの仲じゃない)、何よりぼくは台北をよく知らないというのがいいのです。台湾は仕事であちこち行きましたが、台北は初日と最終日に滞在するだけで、ほとんどスルーだったために、故宮すら見てない体たらく。唯一わかってるのは、24時間開いていて、素敵な本がたくさん並んでる本屋さん〈誠品書店〉があるということ。夜中にホテルを抜け出し、タクシーで行ったことがありました。恐らく中華圏で(あるいはアジア全体でも)、もっともクオリティの高いアート本「漢聲雑誌」を山ほど大人買いしたのでした。重かった。



淡水の港。船上パーチーもあるとか。


まあ、それとぼくにとっての台北は、台湾映画の世界でもあるわけです。敬愛する映画監督のひとりエドワード・ヤンが「クーリンチェ少年殺人事件」で魅せてくれた世界。これはワクワクしないほうがおかしい。ラッセ・ハルストレム的な、閉じた世界・がんじがらめの人生からの離脱・脱走・解放、みたいなシチュエーションにアドレナリンが放出されやすい性格なので、このただれた時代のただれた街のただれた青春の静かな断片と、最後の爆竹が目の前で爆発したような衝撃の映画が、モノクロームの色調と一緒にいつも頭のどこかに刻み込まれています。台北はグルメと足つぼマッサージとショッピングの宝庫Death的な宣伝のされ方ばっかりのような気がしますが(HIS5割、渡辺満里奈3割、台湾観光協会2割)、そんな下世話な感じ、決してキライじゃないとはいえ、それだけじゃないだろ台北! という感じです。



竹がモチーフという101Taipei


まあ、そんなことを思いつつ、バイクの修理工場が軒を連ねる、いかにも治安の悪そうなストリート沿いの食堂〈林東芳〉で死ぬほど美味い牛肉麺を食べ、台湾ビールの廃工場跡を改装したビアホールで一杯。翌日は少し前まで世界一ノッポのビル(508m)だったけど、ドバイタワー(643.3m)に抜かれた〈101Taipei〉の最上階でMovenpickのキャラメル・アイスクリームを舐め舐め下界を見下ろし、「WarHammer ONLINE」のビルボードで台湾じゃ「戦槌」なんだというのを再認識し、台北の北の町・淡水の海辺で船に乗り、ムール貝の蒸したのをつまみにまたビール。夜市で蒋介石の顔がデカデカとプリントされたTシャツを友達に買い、こういうの喜んでくれる友達がいる幸せをかみしめつつ、フレッシュ・パパイヤシェイクで堂々の〆。どうでしょう。香港の持つ、夜の世界の女性じみた色気・怪しさ・ケバさはほとんどありませんが、たくましくランニング一丁で枝豆にビール片手に巨人戦かなんか見てる親父的な、健康的であったかい雰囲気の街だな、と思いました。そして実は香港や上海より知的で上品です。そーゆーわけで、ひとり旅万歳!



「破壊の勢力が町に迫っている。君は台北を守れるか」というコピー。こんなゲームだったのか。へー。



淡水の夕方の空。雲がイイ。

三つ星ピザの消息


今さら言うのもなんですが、ぼくは食べることが大好きです。


旅先の食堂やレストランで知らない食べ物に出会うと、それだけでテンションがあがる。「それは何?」「どうやって食べるの?」と相手を質問攻めにしたあげく「早くもってきて!」とかワガママを言い出します。だからといって、ぼくはグルメでも美食家でもなく、感度の高い舌も持ち合わせていないので、手の込んだ高級料理よりも、土地土地で長く伝えられてきたような素朴な料理のほうにひかれます。丹念に手入れを施された薔薇の花よりも、冬の空に伸びる裸木の枝をいいな、と思うような感じ……とかいうとカッコイイんでしょうが、要は安くてうまいものが一番だと考えているわけです。取材で行くような三つ星級の値段がはる料理はもちろんおいしいですが、こんだけ高けりゃうまくて当然だろ、と心のどこかで思っちゃってるんですね。


さて、思い出に残る料理は数あれど、若い頃にもっとも衝撃を受けた料理のひとつに、パリで食べたアラブ・ピザがありました。なにしろ学生でロクにカネもなかったので、ヨーロッパを数ヶ月かけて見聞するにはまずクソ高い食費と宿泊費を削る必要がありました。そこでパリでは、キッチン付きのアパルトマンを借り、市場で食材を買って、自炊するという手段に出ました。まあ、しかしこれが楽しかった。市場でサラミやチーズやフルーツやワインを買い込み、料理法をデリのおばさんに教えてもらい、帰っていろいろ作ってみるわけですが、なんというか、すべてがおいしい。旅がもたらす高揚感と見知らぬ土地にいる緊張感からか、防腐剤が入ってないからか何なのか知りませんが、100円程度の安ワインは日本で飲んだどのワインよりおいしかったし、バゲットは口に突き刺さりそうなパリパリ感。サラミやチーズに至っては、今まで日本で食ってたアレは一体なんだったんだろ、という感じです。


そんなある日、市場で買い物を済ませ、重い買い物袋をもって、とぼとぼと路地裏を歩いていると、小さい店から強烈なスパイスの香りが漂ってきました。気になって覗いてみたら、薄暗い店の中で、中東系の彫りの深い顔立ちの人たちが、聞き慣れないアラビアの言葉で話しながら、汗だくになって円盤状の生地をクルクル回して延ばしています。さて、こういうとき「また今度」とか「機会があれば」と自分に言い訳して通り過ぎるか、不安もあるけどサクッと立ち寄ってみるかで、人生はガラリと変わります。そしてヒゲ面のおっさんにヌッと突き出されたピザは、ぼくにとって忘れられない味になりました。ラムの挽肉にチリペッパーやハーブがこれでもかとのっかったパリパリの薄ピザは、味蕾にガツンと一発きて、その後じんわりと旨みが広がっていく。一発でファンになりました。以来、昼食は毎日ここに通い、ヒゲ親父も「また来たか」と大盛りサービスしてくれたりするようになりました。2月のクソ寒いパリの石畳の路地で、スパイシーなピザを立ち食いする幸せといったら!


いま考えてみれば、もう10数年以上前の話です。


そして最近、ぼくの友人がパリに出張するというので、ダメもとでそのピザ屋がまだあるか確認してきて欲しいと頼んだのですが……なんと、まだあったとの報告が! しかも店も多少拡張して店内での飲食もOKになったといいます。あわわわ、なんという嬉しいニュース! 冒頭の一枚がその証拠写真です。ああ、食べて〜〜! たまらなくなって、目下フランス、スペイン自動車旅行を計画中です。


【B級グルメ列伝】

長野は中央アルプスの麓、駒ヶ根名物ソースかつ丼。蜂の子もおいしいヨ!

旅と本


ちょいと実家の熊本に帰省しました。熊本城の改修も終わり、天守閣がきれいに見えてよかった。若松屋の鰻もあいかわらずおいしかった。


ところで、旅に出るとき必ず持っていくものってあるんじゃないでしょうか。飛行機の中で観察してたら、iPodとかDSはもうデフォルトになってそうですね。ある編集の後輩の女の子は、いつか飲み屋で「旅には熊のぬいぐるみを持参して、それを主人公に旅写真を撮ってるんです♪」と楽しそうに話してました。かと思えば、いつかチベットのド田舎で出会った女傑は、ヒッチハイクでおんぼろトラックに乗せてもらったはいいものの、荷台にくくりつけていたバックパックが途中で谷底に転落し「もう換えのパンツもありませんよ! アハハ」と笑ってました。モノには一切こだわらないので荷物は現地で買い直せばOKとのことでした。


まあ、世の中にはいろんな人がいて、旅のスタイルも旅グッズへのこだわりも十人十色なんですね。さて、そこでハタと自分のことを考えてみたら、月並みですが旅の友は本と音楽でした。荷造りの最後には必ず本選びをしています。18歳くらいのときは、Smithsとか遠藤賢司とかOasisとかRadioheadとかFishmansとか入れたテープと、ドイルの『シャーロック・ホームズの冒険』とカポーティの短編集、そしてなぜかブリア・サヴァラン『美味礼賛』を持ってロンドンへ出かけました。サヴァランは当時は難解すぎて挫折し、パリ発ヴェネチア行の特急のコンパートメントで一緒だったモロッコ人の大学生に記念にあげました。


というわけで、たまには書評でもしてみようという企画です。



『モーニング』での連載当時から毎週楽しみに読んでた『悶々ホルモン』が本になって新潮社から出ました。20代の女性である著者が、年がら年中酒浸りのオヤジでいっぱいのホルモンの全国の名店を巡る飲み歩き記録ですが、特にテンションが高いわけでもなく、全編とおして淡々と綴られる感じと、食べ歩きに同行する人たちとの人間模様がなんともおもしろいです。今までも『居酒屋礼賛』をはじめとする名作は多々ありましたが、21世紀のB級酒場ガイドかもしれません。旅に持って行くと、昼間から酒飲んじゃいそうで怖い。





ドイツ児童文学の巨匠プロイスラーの名作『クラバート』。ずーっと前に買ってなんとなく後回しにしていたのを実家に帰省の際に持参し空の上で読了。子供の頃に大好きだった『大どろぼうホッツェンプロッツ』シリーズとはちょっと違う、ずいぶん大人向けのファンタジーです。浮浪児のクラバートが、沼の水車小屋で仲間とともに魔法を学んでいくお話ですが、土地や運命、魔法に縛られる人の歓びと哀しみが、美しいドイツの季節の移ろいのなかにじわりと溶け込んでいて、ページをくるたびに心にざわざわと波が立ちます。もの悲しくて透きとおったアンビエントを一枚聴いたような気分。これはやっぱりイイです。


ほぼ自分の記録っぽくて申し訳ないのですが、こういうの、今後もちょくちょくやってみようと思います。

ホワイト・アウト


積雪被害に遭ったねずみ男さん(300歳)【2日ロイター/共同】



取材で山陰に行きました。萩・石見空港に飛び、レンタカーで長門・仙崎→出雲→松江→米子→鳥取の順に回るドライブ旅です。総距離にして約400キロ、長いし取材件数も多いし、行くの2回に分けたほうがよくね? という素朴な疑問は編集部から完全シカトされ、そのまま出発。「がんばってきてくださいネ」と出版社の編集者に見送られました。が、彼女には悪いのですが、正直、カニを食うことしかアタマになかったことをここに告白しておきます。あとは米子の水木しげる記念館に行けるのが嬉しいくらい。ええ、鬼太郎、好きですとも。アニメ版の学級委員みたいな正義感あふれる鬼太郎にはちっとも心ひかれませんが、最近になって貸本時代の『墓場の鬼太郎』漫画版をコンプリート。ファンならわかると思いますが、漫画版には独特の妙な「間」とリズムがあって、今読み返してもうなってしまいます。落語でいえば古今亭志ん生にも通じるプロの業を間近に見られる、これはまたとないチャンスといえるでしょう。



水木先生が壁に即興で描いた妖怪たち。か、かわいい


さて、山陰は去年行っていてある程度は予想できたんですが、雪と寒さだけは予想ができませんでした。同行したカメラマンOさんは雪国用のスノーブーツで装備は万全。しかし悲しいかな、萩・石見あたりでは雪などチラとも舞っていず「この重装備が恥ずかしい」としきりに嘆いておられました。ぼくも一応トレッキングブーツは履いてましたが、スノーブーツはパンツの裾をinする必要があるため、見た目がカウボーイというかギャル男というか、なんかハデなんですね。「もう一足もってくればよかった」とボヤくOさんですが、じつはかの岡倉天心の玄孫さんというすごい血筋のお方。その血統は伊達ではなく、スノーブーツは松江から鳥取にかけてまったくムダではなかったことが証明されるのです。


「アンタら、すごい時に来たねえ、これ一年に一回あるかないかのひどい大雪だよ」とは、鳥取の取材先の方のセリフです。この言葉は大げさではなく、米子あたりの道は、折からの雪と日本海から吹き込む冷たい風で完全なアイスバーンと化しており、びびったドライバーが時速20キロほどのノロノロ運転で大渋滞を引き起こし、ちいとも進みません。翌日の新聞にはスリップ事故が数件発生していたことも判明。恐ろしい。思えば山陰に着いて翌日にはカーラジオのニュースで、とんでもない寒波が押し寄せてきてますので高波、強風、大雪にご注意くださいと警告を発していました。移動の多い我々にとってこの上もなく縁起の悪いニュースだったし、騒いでもどうしようもないのでOさんとはお互い聞こえないふりをしてましたが、まさかこれほどとは! クルマを降りると、ぼくのトレッキングブーツは雪でツルツル滑って非常にストレスフル。一方のOさんはさすがスキーブーツ、がっちりと地面を掴んでいるようで、スタスタ歩いています。ちくしょう。



つららとかアリですか


そんなわけで雪にはずいぶん悩まされましたが、食べ物にかんしては最高の旅でした。もちろん松葉ガニのかにしゃぶやら鳥取和牛やら新鮮この上ない魚介類が目白押し。こうなると欲しくなるのは何をさておいても酒です。Oさんがとんでもない呑んべえであることに加え、寒いこともあって酒がとまらず毎晩のように焼酎や日本酒のボトルをあけ、ホテルのベッドに倒れ込み→気絶という即死コンボを炸裂させておりました。しかし松江で食べた穴子にはびっくりしました。関東では身の締まった小ぶりの穴子が上物とされますが、松江の居酒屋のカウンターで目にしたのはかなり太くて巨大あなご。Oさんとふたり、あれだけ大きいと、味もきっと大味なんじゃないか、と失礼な憶測を飛ばしあっていたのですが「そういわずに天ぷらで食べてみてよ」という主人のすすめに従い、口にしてみておどろきました。外はカリッ、中はとろけるほどジューシー。ふぐの白子のような、淡泊ながらコクのある、なんともいえない至福の味でございました。


【おまけ】

出雲大社の巫女さんたち。キレイ

新年映画特集


新しい年を迎えたとたん、仕事や仕事にもならない細々としたことでバタバタしてるうちにずいぶん日がたってしまいましたが、あけましておめでとうございますん。今年もよろしくお願いしますネ!


最近、まわりの編集者やデザイナーが英国の映画監督エドガー・ライトの作品に順番に狂ってきており、その余波で『HotFuzz』(邦題『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン』)を観にいきました。2007年公開の旧作ですが、日本では長く未公開で幻の映画となっていたのが、ファンの署名運動により、ここにきてやっと公開されてるいわく付きの一本でございます。


予習的にこの監督の作品である『ショーン・オブ・ザ・デッド』と『SPACED』(ドラマ)をあらかじめ観ていきましたが、どちらも小粒ながら、なかなかよくできたコメディでした。ということでいざホットファズ。いやー、これは楽しかったです。スバらしい出来。署名運動が起こるのもわかります。DVDレンタルもはじまったそうなので、まだの方はぜひとも。ちなみに、この作品の公式ページはネタバレ満載です。鑑賞前に見ないようにご注意くださいまし。


あ、これ書いてて思い出したんですが、埋もれていた作品がファンやマニアの声でDVD化されたケースで『片腕カンフー対空とぶギロチン』という限りなくC級にちかい奇作がありました。王羽という、カンフー映画マニアの間で絶大なリスペクトを受ける浙江省出身の俳優兼監督の代表作です。片腕ながら超強いカンフーの達人である主人公が、復讐に燃える謎の暗殺者と対決する、という内容ですが、基本的にストーリーは支離滅裂です。


さて、この敵の暗殺者が使う武器が有名でして、見た目は変型の鎖鎌。しかしヒモの先についているのが刃付きの帽子なんですね。これを敵の頭めがけて投げつけ、スポッとかぶせてグイと引っぱると一瞬にして首がもげるという極めて強力かつ残酷な武器なのです。1975年公開のこのとんでもないB級カンフー映画、あまりにも濃すぎる登場人物および奇想天外なストーリー展開が、その後、各界で活躍するクリエイターたちに強い影響を及ぼしているという意味では、かなりの名作といえるでしょう。ちなみに誰が、どんな風に影響を受けているのかというと、下記のとおり。

  1. クエンティン・タランティーノが『キル・ビル』に空とぶギロチンと似たような武器を登場させている(後にこの映画へのオマージュだと語る)。
  2. 漫画家ゆでたまごが『闘将!拉麺男』のなかで、空とぶギロチンとほぼ同じ武器を登場させている(これはぼくが小学生のときに読んだので間違いなし)。
  3. カプコン社員が『ストリートファイター2』の開発時、この映画の武術大会に出場するインド出身の腕が自在に伸縮するヨガ・マスターにヒントを得て、ヨガフレイムでおなじみのダルシムを創造。
  4. ナイン・インチ・ネイルズが「Closer」という曲に、この映画で使用される銅鑼の音を使用。



どうです、すごいでしょう。この暑苦しいイラストおよび適当なタイトルとは裏腹に、なかなかやるじゃないか、というかんじがしませんか? するわけないか。というわけでまだ未鑑賞の方はいますぐ最寄りのレンタルショップにBダッシュをお願いする次第でございます。



噂の空とぶギロチン

復活

インフルエンザで倒れてしばらくの間、スランプの松井みたいな冴えない状態が続いていましたが、ようやく復活。


たまに病気をして寝込むといつも思うんですが、ちょっと世界がちがって見えますね。カメラでいえば、望遠レンズがマクロレンズになるというか。ふだんワンワンと音立てて回っていたアタマのモーターみたいなのがスーッと回転数を落として、身の回りのことによく気がつくようになる。カーテンのゆれ方とか、ふとんのふくらみ具合とか、天井の模様とか、タバコの煙のかたちとか。とても新鮮に感じます。iTunesを立ち上げる元気もないので無音の状態もまたよし。身体が自身の快復のために、ほかのどうでもいい情報をシャットアウトしてるのかよくわかんないですが、たまに病気すると生きてる実感がよくわくという話デス。


そういうわけで、クリスマスイヴは何とかケーキを食べることができましたん。ありがたや。サンタがプレゼントもくれなくなった今となっては、どうでもいいイベントと化している日本のクリスマスですが、ケーキがいろんな種類食べられるのがスバらしい。やっぱ生クリーム最高ですね。あんことチョコとならんで今後もリスペクトしていきたく。ちなみに中国語ではクリスマスは「聖誕節」。「メリークリスマス!」は「聖誕快楽!」と言います。さらに余談ですが、中国人のかわいい女の子にニコヤカにこれ言われると、わけもなく嬉しくなるという意見が在中日本人男性の間で多数を占めておりました。日本人の女の子が明るく「メリークリスマス!」とか言ってるの、たしかに聞いたことないけれども。それにしてもあの白ヒゲ、どんだけ世界を席巻しとるんだ。あ、ちなみにケーキは自分で買いに行きましただ。我ながら自分の食い意地に驚かされます。


さあて、そういうわけでいよいよ年末。年賀状も書いちゃったし、あとは恵比寿のLIQUIDROOM石野卓球を聴きに行くか、伊豆の友達ん家でしんみりすごすかの決断をするのみ。DJがEYEだったら確実に行くんだけどな。年明けからはじまる新連載と、NYと上海の雑誌との提携交渉、企業プレゼン何件か、とかなんとか楽しみな予感の新しい仕事にもとりかからなくっちゃ! ヘタくそな結婚相手さがしはしばらく放置して、来年もがんばろっと。


これを見ていただいてる(はずの)少数のみなさまにおかれましても、どうかよいお年をお迎えくださいませ。

年末のお買い物


ファッション誌の原稿を書いたから、というわけじゃないけれど、久しぶりに洋服を買いました。いつもトップページのゲイっぽい男が気に入らないアバクロでパーカ×2、Tシャツ×1。一週間で太平洋を越えて到着。Outerにはそんなにひかれないけど、パーカやセーター類はデザインもセンスも好み。あんまりない微妙な色合いも◎。ピンクとか明るいブルーがいい。サイズはちと袖が長いけど、men'sだとほぼ日本のサイズでOK。齢も30を越えたことだし、そろそろSilas & Mariaとかアバクロとか卒業して、おっさんモード系みたいな方に行った方がいいのでしょうか……イヤすぎる。


まーたこういうの買って、いっぱいもってるでしょうとか周りに言われるのが怖い……。でも服も本も映画も、必需品でないものを欲しいと思ったら、勢いでジャンプするかどうかが、失敗も多いけど彩り豊かな人生になるか、ソツがないけどつまんない人生になるかの境目だと個人的に思いこむようにしているのでしかたがないデス。


「人も物も、よい縁をつくるには、瞬発力がないと」とは先輩の文筆家・佐伯誠氏の言。
「人の人生を決めるのは、生い立ちでも性別でも努力でもない。選択だ」とは映画『ヘル・ボーイ』で出てきたコトバ。


ぼくは先輩たちの教えを守っただけだ!