痛覚経路

届かない手も足りない歩幅も
下手を誤魔化すのが下手な自分も
誰の意味にもなれないことも誰にも覗いてもらえないことも
大嫌いで
それを全部まとめてなぞった昨日が
途方もない激痛で僕を殺そうとするから
目をつむって消し去ろうとしたけれど
悪夢と妄想と理想と現実がひとつの幻覚になって
痺れきった脳裏を荒らし尽くして
感情がおかしくなってくだけだった


すこしずつ慎重に距離を縮めてたはずの憧れ
眩しくて眩しくて眩しくてもう二度と見たくなくなってた




時間は残酷なので
なにひとつ忘れさせてはくれないから
無惨に整理された今日の景色には
焼きついてた憧れがちゃんとあった


それはあまりにも僕と無関係に輝くから
あんなに痛かったのがすこしだけ馬鹿らしくなって



こんな姿だとしても
結局やめるわけになんていかないから
相変わらずな今日に最悪な昨日をていねいに写して
奇跡なんて願いながら、どうせ起きないよと思いながら、
この手と歩幅がわずかでも伸びるように
記憶ごと明日まで引きずっていくよ




どうせまたすぐに崩れ去ってしまうのだとしても
そうしてまた何千回と昨日を繰り返すのだとしても
そんな脆さと痛みこそ僕の希望だって呼んだなら
きっとまだもうすこしだけ歩けるから。

余生

自分が流してきた血の痕を美しいと思ってしまった。
もう流せる血も残っていないのに、ナイフは刺さったままだ。
ずっと痛い。いつまで続くんだろう。愚問だ。抜かない限り死ぬまでだ。
ナイフを抜いて、傷口をえぐる茨の道をも進めば、また血を流せるだろうか。


ちゃんと、花が咲くのだろうか。

幻肢痛

これは僕の被害妄想なんだろうか。


結局、そこに確かにあるのだと思っていた熱源は、
まるで最初からなかったかのように、
無価値な空気に戻っていた。
たとえ幽かで不安定な揺らぎでも、
手繰り寄せれば消えない炎になると思っていたけれど、
甘かった。
きっと僕のやりかたが下手だったのだろう。
感じ取れなくてもまだそこにあると、そう言うのなら、
何度だって信じたいけれど、
きっとそんなことはありえないんだろうから、
どこにもつながらない部屋で僕は、
昨日のすべてを忘れるんだよ。



これは僕の被害妄想なんだろうか。
違うと言うなら、
誰か教えて。