特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『デューン 砂の惑星PART2』

 今日の東京は雨。寒い1週間の始まりとなりました。菜種梅雨とはよく言ったものです。こういうものを形容する単語があるなんて、こういうことだけは?(笑) 昔の日本人の感性は鋭いです。

 一方 現代はと言えば、最近 テレビでNHKをつけるとずっと大リーグとオリンピックのことばかりです。不愉快なので、すぐ画面を消してしまいますけど今の日本では、普通はチリや韓国などの軍事政権がお得意の国民をアホにする3S政策(スポーツ、セックス、スクリーン)が日々実行されているのを実感します。それを国民は自ら受け入れる。せめて、これぐらいの顔↓をしてみろって。

 こうやって日本人は日々劣化しているのでしょう(笑)。


 さて、それでも内閣の支持率低下が続いています。今朝発表された読売の世論調査でも上昇の兆しすら見えません。


www.yomiuri.co.jp

 一方 昨年 党中央への異論を唱えた党員への除名騒動以来、日本共産党も凋落の一途のようです。それに耐えかねたのか、一部地域では子供や孫(笑)を入党させろ、という方針が出ているというTwitterを見かけました。お前ら、統一教会(笑)。

 もともと地方議員も赤旗の部数も壊滅的に減少していましたから、状況は本当に厳しいんでしょう。


https://www.npa.go.jp/archive/keibi/syouten/syouten280/pdf/p15.pdf

 日本共産党の連中が言論の自由を認めないファシストなのは知ってましたが、とうとう封建主義にまで落ちぶれたか(笑)。党中央もアホなら、それを盲信する末端党員も救いようがない。北朝鮮へでも行けばいいのに(笑)。

 それが嫌なら、自ら改革するかですよね。他人に強要するのがお得意の自己批判を今度は自分でやればいい(笑)。原発ムラも自民党共産党も自ら改革出来ないのは全く一緒です。
 統一教会にしろ、日本会議にしろ、創価学会にしろ、共産党にしろ、『信者』というものは恐ろしいものです(笑)。言葉が通じないもん(笑)。犬にも劣るというか、犬と比べたら失礼ってなところです。

●リンク先の中央大教授(政治学)の中北氏の論文、礼儀正しく(笑)、論理的で非常に良かった。曰く『(日本共産党の)民主集中制パワハラの温床』。『日本の左翼・リベラルの多くはバカウヨと体質は一緒』というボクのテーゼ?を傍証してくれています(笑)。坊主頭で精神主義の旧日本軍の死霊の盆踊りみたいな甲子園を後援している朝日や毎日がまともなリベラルである筈がない(笑)。


 と、いうことで、日比谷で『デューン 砂の惑星PART2

 遠い未来。『スパイス』と呼ばれる希少な資源を算出する砂の惑星デューン。宇宙帝国を統べる皇帝とハルコンネン公爵家に家族をすべて殺され、自分も命を狙われる公爵の息子、ポール(ティモシー・シャラメ)はデューンの砂漠に暮らす先住民フレメンのなかに身を隠す。そして先住民の戦士、チャニ(ゼンデイヤ)たちと共に、皇帝とハルコンネン家への復讐に立ち上がるが。

wwws.warnerbros.co.jp

 フランク・ハーバードの古典的なSF小説の映画化第2弾。何度も映画化・TV化されていますが、あまりにも話がでかい&長いので失敗作になったり途中放棄したり、映画化は困難を極めるという曰くつきの作品です。

 ところが今回の映画化、3年前に公開されたPART1は作品の質でも、興行面でも大成功を収めました。
spyboy.hatenablog.com

 PART2の監督もPART1に続き、『メッセージ』など哲学的な映画を撮るドゥニ・ヴィルヌーヴ、出演はティモシー・シャラメゼンデイヤレベッカ・ファーガソン、オースティン・バトラー、フローレンス・ピュー、レア・セドゥ、クリストファー・ウォーケンなど。
 すでに公開が始まったアメリカでは前作の倍という興行収入をおさめる大ヒットになっています。日本ではいまいちのようですが。

 お話自体はどうでもいいんです(笑)。ボク自身はPART1のことはほとんど忘れてしまったのですが、殆ど問題なかった(笑)。それより映像が売りですから、大画面の映画館で見なくては意味がない映画です。

 さすがはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だけあって、映像のスケールが圧倒的であるだけでなく、美しい。エキストラの数もインド映画なみにすごい、どれだけお金がかかっているんだろうと思います。ところどころに挿入された白黒画面が特に美しかった。絵画みたいでした。

 俳優陣も良いです。ティモシー・シャラメ君はちゃんと演技ができるスターですが、ゼンデイヤやオースティン・バトラーなど脇を固める俳優も魅力的です。

 膨大なお話ですが端折るべきところは端折る脚色もうまいです。前作は映像の不気味さが強調されていたように思えますが、今作は起承転結がある壮大なドラマになっています。上映時間3時間ですが、全然飽きません。

 強いて言えば砂漠の民が舞台ということで、惑星デューンの先住民の姿はどうしてもアラブ系の人を思い出してしまいます。原作が書かれたのは1965年だし、設定がそうなのだから仕方ないのですが、あちらの人はこういう描写をどう見るか、ちょっと気にはなります。
 現代の価値観に合わせて、女性戦士チャニの姿などは原作よりはるかに強い意志を持った人間として描かれてはいるそうですが。

 紀元1万年という遠い未来、という設定のお話ですが、映画を見ていて、人類は再び専制政治へ向かってしまうのかな、とも思いました。この映画で描かれている未来の世界では、皇帝も貴族もやりたい放題です。一般の人々の命なんか虫けら同然。人々は専制政治を当たり前のように受け入れているように見える

 これが笑い話と片づけられるでしょうか。
 今の世の中はテクノロジーの進化に加えて、複雑に絡み合った様々な利害や立場などで複雑になる一方です。政党はもちろん、業界団体や組合、宗教など何か一つの団体や考え方を支持していればどうにかなる時代ではありません。

 最近はその複雑さに人々は耐えられなくなってきているのではないでしょうか。世界中で起きているポピュリズムの台頭はその典型です。更に頭のぶつけ所が悪いとスピリチュアルへ行く(笑)。
 いずれにしても今の世の中は難しすぎて、多くの人はトランプや山本太郎共産党のようなアホが提示する間違っているけど判りやすい、簡単な答えを求めてしまう

 ポピュリズムはたいていの場合 理屈が間違ってますから、権力維持のために権威主義へ傾いていくのが常です。プーチンがその典型でしょう。
 嫌な話ですが、現実の複雑さに耐え切れず、いずれ人類は自ら専制政治を選んでしまうものなのでしょうか?

 前作もそうでしたが圧倒的なスケールの映像美と豪華スターの演技にひれ伏す映画です(笑)。感動するとか、心に残るとかいう映画ではありませんが、大画面で見ればAクラスの映画体験ができることは間違いありません。これだけ豪華な映像を他の映画と同じ料金で見るのは申し訳ない気さえするほどです。
 今回のPART2で一応は決着がつきますが、話はいくらでも続けていけそうです。お待ちしてます(笑)。


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東京15区、お墓参りとボラのスープ(万物流転)

 桜の開花も近づいてきました。今年は早すぎるか、と思っていましたが、ちょうど良い塩梅になりそうです。
 こうやって花の開花が気になるのは、3月、4月と仕事の行事ばかりでユーウツだからです(笑)。嫌な事ばかりだから、せめて花に心を慰めてもらう(嘆息)。

●暖かくなってくると空気が翳んできます。通勤途中に富士山を見るのも、今冬はそろそろ終わり。

 さすが 朝日新聞。相変わらずです。
 今週の週刊文春で、自民二階派の元衆院議員で自身も政治資金の不記載が見つかった山梨県知事に『記者会見で裏金に関する質問をしないように』と要請され、朝日は唯々諾々と従ったことが報じられました。自ら声明まで出す恥知らず振りです。地元のTV局は逆らって出入り禁止になったのに。
 普段は正義の味方の振りをしますが、いざとなると朝日は権力に盲従します。相変わらず権威主義が丸出しです(笑)。
 


「県知事に裏金の質問はNG」と要請、地元メディアが反発…山梨県による「異例の忖度」騒動の顛末は? | 文春オンライン

 マスコミもマスコミですが、国民の側も問題がある

 かねがね思っていたことを可視化した記事も見かけました。
 東大の教授がTwitterを分析したら『共産党、れいわ、参政党の支持者にはワクチン懐疑派などの陰謀論に影響を受けている連中が多い』というのです。

president.jp

 所詮はtwitterの投稿者だけの限られた話ではあります。だけど、例えばれいわの荒唐無稽な主張↓を見ていれば、支持者はバカばかり(笑)という結果が出るのも頷けます。

 『民主』集中制と称するファシスト共産党の忠実な支持者や参政党の支持者は言うまでもありません。まともじゃない(笑)。

 だからこういうことが起きる↓。
 これは自民の柿沢未途が選挙違反の実刑判決で辞職した東京15区(江東区)補選の候補者です。ちなみに元自民の秋元司はIR汚職で2審でも有罪、今日 実刑判決を受けています
秋元司元衆院議員、2審も実刑判決 IR汚職 高裁が控訴棄却 | 毎日新聞

 候補者は、カジノ依存(維新)と犯罪者(秋元)とバカウヨの狂人(参政党、保守党)と嘘つきのファシスト共産党)しかいない

 一番マシなのが言論の自由を認めないファシスト、というのはどういう国なんだ(笑)。

 国民のレベルを反映しているとは言え、やっぱり日本なんて独立国が存在するのにはムリがあるかもしれません。アメリカの51番目の州を目指すべきです。中国共産党の省とかは嫌だもん。


  
 これだけ政府が酷いのに代替候補はもっと酷い連中を取り揃えた東京15区の惨状を見ると、日本人には自治能力はない、と認めざるを得ません(笑)。


 毎年3月中旬は、以前ボクが飼っていた犬の命日があるんです。
 亡くなってから30年は経っていますが、雨が降ろうが、槍が降ろうが、北朝鮮のミサイルが飛ぼうが、放射性物質が降ろうが、この時期 犬のお墓参りだけは絶対に欠かしたことがありません。
 自分の親も含めて人間の墓参りなんか興味も関心もないですが、犬の命日はボクには最重要行事です(笑)。

 場所は調布の深大寺奈良時代に出来た、都内で二番目に古い寺です。
 まず、本堂でお参りして、脇にある動物霊園で犬のお墓詣りをします。
 生前 彼がどんなに可愛かったか、何が好きだったか、どんな悪戯をしたか、様々なことを思い出しながら手を合わせる。そして再会を誓います。ボクの心の平安はここにあります。 

 今年はバターたっぷりのビスケットを取り寄せて、墓前にお供えしました。バターの香りがプンプンするので、彼も喜んだと思います。幼犬の時も老犬になっても、卵ボーロとかビスケットとか、赤ちゃんの食べ物が大好きな子でした。


 いったん帰宅して夕方、また近所のイタリアンへ出かけました。お斎です。家のベランダから見る春の夕日は美しかった。

 歩いて行ける範囲で美味しい店があるのはありがたいです。

 最初は泡。



 突き出しはいつも温かい発酵野菜のスープとサルシッチャのフライ。毎回 野菜の味が違います。

 その日の材料が料理法を変えて出てくる『もくじ』。
 時計まわりに鰆のカルパッチョ、ボラのカルパッチョ、太刀魚のカツレツ、トラフグの煮凝り、蝦夷鹿の湯引き。

 イタリア北部、フリウリのシャルドネ

 鰆のカツレツ
 身がレアなのがポイント、と店の人が言ってました(笑)。ソースは鮎の馴れ寿司のお米の部分をクリームにしたもの。この店の得意料理です。

 ボラのズッパ
 普通 ボラなんて、あまり食べません。この、鳴門で捕れたボラは名人の漁師さんが直ぐ血抜きしたので生でも食べられるそうです。『もくじ』でカルパッチョが出てきたけど美味しかった。

 そのボラを軽くスモークして、上にラルドのような生ハムを載せ、フレッシュなオリーブオイルをかけています。素材だけで充分美味しいからスモークや生ハムはやり過ぎとは思うけれど、このシェフ氏はどうしても自分の色を載せたいんです(笑)。

 更にその下のズッパはブイヨン+磨り潰したひよこ豆+雪菜という野菜が混じって、濃厚な味でした。これだけで充分美味しいです。
 実質的にこのお皿がこの日のハイライトです。

 太刀魚と蕗の薹のパスタ
 炭火で焼いた太刀魚は東京湾で獲れたもの。やっぱり中はレアだけど、外側はパリっとしている。蕗の薹はペースト状になっています。春の苦みって良いですよね。仮死状態の冬(笑)から生き返る気がします。

 これも東京湾で上がったトラフグの白子とオレンジのリゾット
 東京でトラフグが上がるのも地球温暖化の影響です。言うまでもなく、トラフグの白子は濃厚で大きくて実に美味しいのですが、残りの身はどうしてるのか気になりました(笑)。煮凝りだけでは使いきれない筈(笑)。たぶん、いつも満員のランチで使っているんでしょうけど(笑)。

 蝦夷鹿のロースト
 柔らかかった~。臭みがないのはまた、猟師さんの血抜きの勝利です。ソースはビーツ。左上の粉は鹿の血と塩を煮詰めたもので、調味料替りだそうです。確かに鹿の香りはありました。右下には芹と摺り下ろした黒トリュフ💛(笑)。

 バルベラのワインというと軽いイメージですが、このワインは最初は味が固い。12年の年月に合わせて?こちらも時間をかけてグラスを回しながら解(ほぐ)していくと味が開いてくる。そういうのも楽しいですよね。ボクはそんなくだらないことはしませんが、ワインの味が開いていくのを女性を口説くことになぞらえる人がいるのも判らないでもない(笑)。

 店の庭で獲れた甘夏のババロア。周りには板状に焼いたメレンゲが飾ってあります。

 今回はちょっとショックなことがありました。帰り際にシェフ氏から『この夏でいったん店を閉める』と言われたのです。
 某ガイドブックでは『東京1のイタリアン』と評されているし、実際 いつも満員なので経営は問題ない筈。理由を聞いたら『少し充電したい』というのです。

 このシェフ氏はトラディショナルな技術はありつつも、どうしても自分のアイデアを加えたい人(笑)なので、充電は必要なのでしょう。15年近く、ずっと休みなくやってきましたから。
 ご家族と一緒に店の上に住んでいるので、いずれまた、此処で料理を作る、とは言ってましたが。
 
 ただ、ボクとしてはどうしたらいいんだ(笑)。
 代わりの店を探すのは中々大変です。ちゃんとした店を探すのって時間とお金と幸運が必要です。
 さらに良い店を見つけても、こちらの顔と好みを覚えて貰って、特別に(笑)美味しいものを出してもらうようになるまで、更に時間がかかる
 それくらいやらないと今の世の中 本当に美味しいものは食べられません

 ボクはオーナーシェフの店の方が絶対美味しい、と思っています。最近は会社形式や多店舗展開でやっている店でも美味しいところはありますけど、自分でやってる店とは気合が違う
 その代わり、個人でやっている店はこういうことがある。この店のシェフ氏はボクより10歳くらい若いから大丈夫、と思っていたんだけどなあ。

 すべてのものは移り変わる。どんなものにも寿命がある。それには誰も抗えません。日々を何とか生きて(笑)、数少ない楽しい時間を味わいつつ、執着せずに忘れていくことこそが人生、なんでしょう、きっと。

『明治公園のリニューアル』と映画『落下の解剖学』

 温かい週末でした。どこも人が沢山出ていましたね。
 青山近くの国立競技場の前を通ったら、工事中だった塀が取り外され、リニューアルされた明治公園の姿が現れていました。
 

 PFIで民間資金が投じられてリニューアルしたそうです。脇には都営住宅を潰して建てた超高級マンションとスターバックス、ホテルが出来ています。手前はこれからオープンする大手デベロッパーのスパ。

 かっての明治公園はボクが犬を飼っている時 毎朝の散歩コースでした。誰もいない朝の広場を犬が嬉しそうに駆け回っていたものです。
 日曜日にはフリーマーケットが行われたり、もっと昔は学生運動のデモが行われていました。子供の時 機動隊が撃った催涙弾の匂いが翌日になっても残っていて涙がでたのを覚えています。80年代は反核集会もあったし、NYに移る前の坂本龍一が汚いランニング姿で犬と散歩してたりしていた。

●かっての明治公園のフリーマーケット。雑然としています。

 リニューアルされて公園は確かに奇麗になったけど、これではデモや集会どころか、フリーマーケットをやったりする感じではありません。それ以前に、人間も犬も汚い格好で歩けない(笑)。

 これが良いことなのか、悪いことなのか、判断には迷ってしまいます。確かに新聞紙にくるまって寝ているホームレスはいないし(笑)、小奇麗になったのは良いことだけど、芝生の周りにはコーンまで置かれて整備された空間は解放感どころか息が詰まる感じです。少なくとも子供や犬が自由に遊ぶ、という感じではありません

 何事も物事は移り変わっていくものだけど、子供の頃の思い出の場所がまた一つなくなってしまった。物事だけでなく、自分自身も変わっていくものだから、それはそれで良いんですけどね。
 それにしても、これにも森喜朗らが絡んでるわけか(嘆息)。


 
 もう一つ朝日新聞原発報道などで新聞記者最大の名誉である新聞協会賞を3度も受賞した青木美希記者が記者を外されたばかりか、他の記者には認められている休日の社外活動まで制限されている件、東京労働局から朝日新聞に『優越的な地位を濫用したハラスメントにあたる』と指導が入りました


 この記事には青木氏の実名は書かれていませんが、内容から誰のことを指しているか直ぐわかります。青木記者がプライベートな時間に取材して書いたこの本の出版が朝日新聞はそんなに気に入らないのでしょう。

 この本、結構な売れ行きのようで既に4刷が決定しています。ボクも読みましたが、穏当な内容しか書いてないんですけどね(笑)。本の中の『大手マスコミもグルになって原発利権を守ってきた』という記述が朝日は気に入らないようです。でも福島の事故前は朝日は原発推進だったんですが(笑)。

 自分たちへの対する批判を一切許さないところは朝日新聞日本共産党と瓜二つです(笑)。青木氏を配置転換したのに頭にきてボクは朝日の購読をやめたのですが、どんどん読者も離れていくんじゃないですか。これも党員がバンバン減り赤旗の部数も落ちている共産党と同じ(笑)。
 自民党もひどいけど、対する側も似たようなものです。保守反動、権威主義という点では朝日新聞自民党よりひどい、とボクは思いますけどね。


 と、いうことで、日比谷で映画『落下の解剖学

 フランスの山荘で暮らすベストセラー作家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)は、作家を目指している夫と視覚障害のある11歳の息子(ミロ・マシャド・グラネール)。ある時 サンドラは家の外で息子の悲鳴を聞いて駆けつけると、血を流して倒れる夫と取り乱す息子を発見した。ところが唯一現場にいたことや、前日に夫とけんかをしていたことなどから、サンドラは夫殺害の容疑で法廷に立たされることとなるが。

gaga.ne.jp

 昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞、パルムドールを受賞したサスペンスです。ゴールデングローブ賞脚本賞と非英語作品賞を受賞、アカデミー賞にも作品賞、監督賞、主演女優賞をはじめ5部門にノミネート、脚本賞を受賞した、非常に評価が高い作品です。
 主演のザンドラ・ヒュラーはアカデミー賞で長編国際映画賞を受賞した『関心領域』でも主演しています。

 6年前に『ありがとう、トニ・エルドマン』に出ていて、非常に印象に残った人です。
spyboy.hatenablog.com

 ミステリーということにはなっていますが、謎解きなどの要素は殆どありません。前半に主人公の夫が亡くなり、やがて主人公が殺人犯として起訴される。法廷劇の中で様々な謎が明らかになってくる、という筋立てです。

 

 殺人というより、男と女の長年の感情、同業者同士の微妙な関係、幼児性から抜けられないバカ男、自分のことを中心に考える女、その間で感情が揺れ動く聴覚障害を持った息子、異国で暮らす外国人、バイセクシュアルなどの要素が皮肉な観点で提示されていく。

 完成度はとても高い映画だと思います。面白い。簡単に結論が提示されないのも良いです。何度も見返して、様々な見方ができるでしょう。
 徐々に謎が明かされていく物語の語り口も実に巧みです。アカデミー脚本賞も当然。本当にうまい。

 それに主演のザンドラ・ヒューラーの硬軟使い分ける演技も良かっただけでなく、とにかく主人公一家に飼われている犬の演技が素晴らしかった。

 最近の映画では実際に犬に危害を加える訳はありませんから、映画に出てくるのは全て犬の演技ですが、まさに迫真でした。カンヌでPALM DOG賞を受賞しているのは当然といえるでしょう。


https://www.reuters.com/lifestyle/anatomy-fall-border-collie-fetches-cannes-palm-dog-fiercest-contest-yet-2023-05-26/

 ただ、お話自体は、ボクには良くある話のように見えちゃったんです。新鮮な観点はあまり感じられない、というか。

 女性はキャリアで成功するけど男はくすぶっているなんて、今の時代では良くある話でしょうし、頭の悪い男の幼児性も今に始まったことではない。この映画では男も女もエゴイストで、自分のことしか考えていない。ある意味 人間らしい。けれど、今 世の中で権力を握っているのは男なんだから、ゴミ男はさっさと死ねばいい。ドラマにするどころか、死ね、それだけです(笑)。

 キャリアに成功したけどは生活では満たされない主人公が浮気に走る、というのもありがちな話です。それがバイセクシュアルであっても、大騒ぎするような話ではない。ここいら辺の主人公のエゴイズムは潔くて、美しいほどです。

 女性の裁判長が女性の証人に『マドモワゼル』と呼び掛けて、証人が『そんな(差別的な)呼び方はやめてもらいたい』と抗議したり、マスコミの大袈裟な追及でベストセラー作家が転落したり、冒頭使われる音楽が女性差別的と言われるラップの曲だったり、主人公と弁護士とのくっつきそうでくっつかない微妙な関係、地方で暮らす外国人の立場の描写や母国語が異なるカップル同士の関係など細かい技は効いています。そういうところは非常に面白いです。

 ただ 感動するとか面白いとかいう話ではなかったです。新鮮味はないけれど、凄く良くできた映画。圧倒的な映画の完成度、ザンドラ・ヒューラーと犬の演技に圧倒される、そんな映画でした。
 

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