特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『#入管法改悪反対 4/28全国一斉アクション』と映画『ブルックリンでオペラを』

 やっとゴールデンウィーク、気持ちが良いお天気です。

 昨日の選挙の結果自体は良かったとは思います。しかし中身を見れば全然良いことはない。

 特に驚いたのが投票率です。この期に及んで選挙に行かない人の知能指数を疑ってしまいます。

 3選挙区とも前回の選挙より大幅に下がっているのですから、勝った野党も国民の不満の受け皿にはなっていないのでしょう。

 野党共闘がどうの、というのもくだらない話です。確かに野党が乱立していたら勝てませんが、消費税や安保など立憲民主と他の党は根本的なところで政策が違います。結果として共闘になるのなら良いですが、共闘を目的にするのは間違いです。
 それで勝っても長続きしないだけでなく、共産党と組んでも、最も数が多い無党派層には浸透できない前回の選挙で判っていることです。

 立憲、国民、共産など地方組織同士の関係が比較的良いところは共闘すれば良い。

 前々から言われていたこととはいえ、東京15区は酷かった。
 立憲民主の酒井という人はまともだと思いますが(腰が据わらない立憲のなかでどこまで正気を保てるかは不安ですが)、

 それ以外はマジで狂人が揃ってた。

 得票2位が山本太郎が応援した須藤元気というのも酷い。数年前 宇宙人との対談本を出した人でしょ(笑)。

 百田尚樹河村たかしと組んで、陰謀論を吹聴してた飯山陽が2万も得票したのにも驚いた。乙武より多いんです。

 右も左も老人のノスタルジーに引きずられているのですから、そりゃあ、日本が落ち目になるわけです(笑)。

 
 と、いうことで、昨日は上野へ改悪入管法施行反対のデモへ行ってきました。

 日本はまともな難民審査も行っていないくせに改悪された入管法では難民申請者の強制送還や監理制度など危険な制度が盛り込まれ、時として収容者を死にまで追い込む入管の体質も改善されないスリランカ人のウィシュマさんが医療を受けられず名古屋入管で殺されたことだって誰も責任を取っていないじゃないですか。

 法律は6月から施行されますが、人々が黙らなければ運用に影響を与えることはできるかもしれません。

 この日のデモは全国各地で行われました。東京は上野。主催は若い学生さんたちが中心でした。彼らは普段から留学生に接していますから他人事ではないのでしょう。

 良いお天気でデモ日和(笑)ではありました。デモの参加者は180人だそうで、日本人が8割くらい。テーマがテーマですから沿道の関心は必ずしも高いとは思いませんでしたが、明日は我が身なんですよね。
 上野は観光客だけでなく、働いている外国の人が多いですから、デモを見ている人は大勢いました。
 

 歩いていて気が付いたのですが、沿道には肌の色が異なる子供を連れてデモを見に来ている人がいる。この日は入管から移動許可が下りずに参加できなかった人もいたそうですが、当局の嫌がらせなど様々な理由でデモに参加できない人もいる訳です。
 なんの制約もないボクのような人間には微力でも声を挙げる義務があるなーと思いました。

 ウィシュマさんの妹さんもいます。マイクを持っているのは32年間 難民申請をし続けているエリザベスさん。自身も不安定な立場にありながら同じような立場の人の手助けを続けています。牛久市議会は自民党も賛成して、国に彼女の在留許可を出せという決議を出しています「オブエザさんに在留特別許可を」茨城・牛久市議会が意見書を可決 感謝の女性「私の国、私の県、ありがとう」:東京新聞 TOKYO Web

 マイクを持つ指宿弁護士。『国や法務省は改悪入管法を施行しても、どうせ市民は忘れてしまうと思っている』、『法律が施行されても、市民が黙らなければ影響力を削ぐことができる』と。

 指宿氏の隣にいるパキスタンの人は10年以上申請して、先週やっと在留許可が出たばかりだそうです。

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 ちなみに指宿氏はアメリ国務省から『人身売買と戦うヒーロー』として表彰されています。日本政府はアメリカの言うことはなんでも聞くんじゃないのか(笑)。


www.tokyo-np.co.jp

 東京新聞はこの日のデモをちゃんと報じました(笑)。 


 と、いうことで、新宿で映画『ブルックリンでオペラを

 潔癖症精神科医、パトリシア(アン・ハサウェイ)と現代オペラ作曲家のスティーブン(ピーター・ディンクレイジ)はニューヨークのブルックリンで暮らしている。もともと非社交的でプレッシャーに弱いスティーブンはスランプに陥り、曲が全然書けなくなる。パトリシアの勧めで気分転換のために愛犬と行くあてのない散歩に送り出されたスティーブンは寂れたバーで飲んだくれていたタグボートの船長、カトリーナマリサ・トメイ)と出会う。スティーブンは彼女に誘われてタグボートに乗り込んでみるが。

movies.shochiku.co.jp

 監督は『50歳の恋愛白書』、『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』などのレベッカ・ミラー。『レ・ミゼラブル』などの大スターのアン・ハサウェイ、大ヒットした『ゲーム・オブ・スローンズ』や昨年の素晴らしかった『シラノ』のピーター・ディンクレイジ、『レスラー』のアカデミー賞俳優、マリサ・トメイと、キャストも豪華です。アン・ハサウェイはプロデューサーも兼ねています。

spyboy.hatenablog.com

 現代最高のロックバンド、ザ・ナショナルの中心人物のブライス・デズナーが音楽を担当、主題歌「Addicted to Romance」はブルース・スプリングスティーンということで、ボクとしては昨年から手ぐすね引いて公開を待っていた作品です。ちなみに「Addicted to Romance」は昨年のゴールデングローブ賞の歌曲賞にノミネートされています。

 しかし原題「She Came To Me」が「ブルックリンでオペラを」なんて訳の判らない邦題に変えられていたので、危うく見逃すところでした(笑)。ふざけんなよ。
 ボクが見たのは公開後3週目でしたが、小品ながら評判は良いようで、映画館にお客さんは結構入ってました。

 パトリシアとスティーブンはブルックリンで暮らす夫婦です。パトリシアは精神科医、スティーブンはオペラの作曲家。

 パトリシアが若い時に産んだ息子を含めた3人家族です。多様なバックボーンはありつつも経済的にも恵まれた、仲良し家族です。

 社交が大嫌いで引っ込み思案のスティーブンは深刻なスランプに陥いり、曲が書けない状態が続いていました。一方 病的な潔癖症のパトリシアは周囲に嫌悪感を覚え、修道院通いを始めています。理想的なカップルのように見える二人の間にはどことなく隙間風が吹き始めています。

 高校生の息子は成績は優秀、ハーバード大に推薦されてもあっさり断るくらい自分の意志がはっきりしています。母とも継父のスティーブンとも表面上はうまくやっています。

 18歳の彼には16歳の彼女がいて深い仲です。彼女も優秀で高校を飛び級で進んでいる。家庭環境は大きく異なり、彼女の父は裁判所のお堅い速記者、悪人とは言えないけど超保守主義者(容赦のない描写がなされています)、一方 母は北欧からの移民ですが、偶然 パトリシアの家の家政婦だったことが判ります。これはひと悶着ありそうです(笑)。

 スランプのスティーブンは精神科医のパトリシアの勧めで犬を連れて、行き先を決めない散歩に出ます。途中立ち寄ったバーで昼間から飲んだくれているタグボートの船長、カトリーナに出会います。

 カトリーナはスティーブンを自分の船に誘います。そこで思わぬことが起きます。

 いかにもNYが舞台のドラマらしい、人種も家族の形態も階級も思想も多様性に富んだ人たちのお話です。

 お話は前半はアン・ハサウェイ、後半は息子たちカップルとマリサ・トメイがフィーチャーされています。
 アン・ハサウェイは超きれいで、ファッションもすごいんだけど、パーティーならともかく、普段の街角でこんなハイファッションで着飾った人がいるんだろうか?とも思ってしまいます。NYなら居るのかもしれませんが(笑)、違和感は否めない。目の保養ではあるんですが。

 マリサ・トメイはいつもどおり、ワーキングクラスの役柄がお似合いです。

 この映画、わざわざオリジナルのオペラのシーンを二本も作っています。スランプを脱したスティーブンが作ったという設定ですが、さすがブライス・デスナーだけあって、本気でかっこいい。説得力がある。ただ彼が音楽を担当した昨年の「シラノ」みたいなミュージカルならいいけど、コメディで使ってしまうのは若干勿体なくもあります。舞台演出も含めて、オペラシーンはこの映画の見ものです。

 ラブコメ、ロマンスの映画ではあるけれど、最新型で多様性に富んだ作品です。突飛なところもあるけれど、若い二人に導かれて大人たちが新しい家族の形を作っていくのもユニークだし、希望を持てます。

 監督の前作「マギーズ・プラン」でもスプリングスティーンの歌が2度も使われ、強い印象を与えていました。今作ではスプリングスティーンのオリジナルが主題歌です。その「Addicted to Romance」はコメディの主題歌としては名曲過ぎるのですが(笑)、この曲が流れるシーンでは映画のランクがもう一段引き上げられるような気がしました。曲を聴きながら、画面を見ると意味が全然違う。それだけの力がある曲でした。


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 登場人物たちの事情があまりにも多様で前半は判りにくかったところもありましたが、後半は良く練られたプロットでさすが、と思いました。美しいラストシーンは忘れがたい。小品ですが、良い映画でした。


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『昨今の転職事情』と『麻辣湯』

 あと、数時間の我慢でゴールデンウィーク(笑)。
 桜も散って、色とりどりの花が目を楽しませてくれるようになりました。

 マンションの中庭にも沢山の花が咲いていますが、ボクには花の種類はさっぱり判りません。単なる記号である花の名前自体は興味はない。でも心は慰められます。

 花が咲く時期はそんなに長くないですが、その短い期間のために手入れをしてくれている人がいるんですよね。

 それにしても1ドル150円で驚いていたら、今日はもう156円を超えた。34年ぶりだそうです。

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 これでは少しくらい賃上げしても物価高には届かないでしょう。


 さて、ボクが朝日新聞を許しがたいと思っている理由はいくつかありますが、これもまた、典型的な例です。エール大でイスラエルに抗議している学生の活動を一方的に『過激』と決めつけている

 コロンビア大でイスラエルに抗議した学生が逮捕されたことを受けて、エール大の学生が連帯のキャンプをしただけです。誰も暴力をふるったわけではない。
 これのどこが『過激』なんだよ。死ね、くそ朝日。『過激』と書いている新聞は朝日だけですから、朝日の記者は『政府への抗議は過激』と決めつけているのに違いありません。これも朝日のいつものやり口です。

 東京で数千人が集まるデモがあると、毎日は(熱心な記者がいるので)夕刊+ネット版にほぼ必ず(朝刊には載らない)、東京は時折朝刊に載ります。一方 朝日にデモの記事が載ることは殆どありません。朝日は市民の動きには極端に冷淡です。

 検察に媚を売ってリークしてもらうことはあっても、現場へ出て事実をありのままに確かめてみようという発想は朝日には薄い。左翼にありがちな話ですが、連中は現実を自分たちが作ったストーリーに当てはめることばかり考えているからです。

 朝日新聞のような連中こそが実は、日本人の奴隷根性を醸成している、保守反動の空気を広めていると言えるでしょう。イデオロギーに囚われて自由な発想がない、のですから。

 自分たちは正義ぶっていますが、左翼の大多数も所詮は権威に盲従しているに過ぎない。連中も本質的にはバカウヨと大きな差はない。
 

 例えばこんなニュース↓が朝日に載ったことはないでしょう。朝日の記事は警察関係の不祥事は控えめだし、検察の不祥事が載っているのは殆ど記憶にない。

 ちなみにエール大に連帯してデモを始めたニューヨーク市大ではこんな光景が見られたそうです。


 ちょっと前 ある大手銀行の人から、最近は入社した人の3割が5年で辞めてしまう、という話を聞いてビックリしました。

 遠い昔 ボクが就職活動をしていた頃は銀行は大人気の就職先でした(笑)。クラスの半分くらいは銀行や保険会社へ行きましたから、メーカーに就職したボクなんかバカか変わり者扱いされてました(笑)。でも、その頃からボクは『銀行なんて世の中の役に立ってない』と思ってたので、全く気になりませんでした(笑)。

 今や、当時存在した銀行は合併・吸収で殆ど名前が変わってしまいましたし、同級生で銀行に残っている人は多分、いない(笑)。我ながら先見の明があった(笑)。

 確かに今だったら銀行なんて将来性はないし、世の中にも大して貢献していないことは誰の目にも判ります(笑)。就職した人が辞めたくなる気持ちは判ります。
 でも、電通に入ってブラックだと文句を言ってるのと同じで、そんなんだったら最初から入らなければいい(笑)。ブタに空を飛べと言ったってムリだよ(笑)。

 少し前 週刊文春に『いなば食品の今春の一般職採用の新入社員19人のうち、少なくとも17人、実に9割が入社を辞退』という記事が載って炎上していましたが、それは極端な例と思ってました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/cc4e5a591b107c22efeca79cf213a799749b596enews.yahoo.co.jp

diamond.jp

 しかし、厚労省の調べでも最近の新入社員は入社3年以内に3割が辞めてしまうそうです。


www3.nhk.or.jp

 ブラック企業がそんなに沢山あるとは思えません。一時期のサラ金なみに転職会社のTVCMはバンバン流れているし、退職代行会社も盛況なようです。自ら辞めてしまう人が大多数でしょう。
 今は売り手市場だし、ネットに登録するだけで簡単に転職できます。就職した先が自分に合わないと思ったらさっさと辞めてしまう、は判らないでもない。『配属ガチャ』という言葉もあるらしい。

news.tv-asahi.co.jp

 一昔前まで、『雇用の流動化』や『解雇の金銭解決』は組合や左派の市民運動がそれこそ目を剥いて反対していました。今の日本では雇用が守られているのは大企業や公務員だけで中小では解雇は事実上フリーなのが実情ですが、それでも『解雇の金銭解決』は企業の思うツボではないか、とボクも思っていました。

 しかし簡単に転職してしまう若い人の意識を考えると、雇用の流動化はむしろ労働者が望んでいるのかもしれません。

 労働力不足はこれからも続きますから、企業の側は労働者に選ばれるようにならなくてはいけない。それは悪いことではない。

 しかし、企業が欲しいのは優秀な労働者だけです。新しい技術やサービスを開発したり、環境変化をとらえながら様々なデータを分析し、自ら難しい判断ができる人。こういう人は国籍を問わず不足しています。

 それ以外の労働者は発展途上国の労働者に加えて、これからは機械やデジタルとの競争になりますから、賃金は一層 買い叩かれることになります。まだ大した専門性もないのに『配属ガチャ』なんて視野の狭いことを言っている奴が本当にいたら、その子は企業の使い捨ての道具にされてしまうでしょう。ロシアの囚人部隊みたいなものです(笑)。
 アメリカで起きているのはまさにそういうことで、トランプに投票するのは繁栄から取り残された業種や低学歴の人が多い、と言われています。

 いずれにしても、これからは世の中の格差は大きくなる。それを拒否してかっての昭和流を押し通し日本人が皆一緒に貧乏になっていくのか、の2択のように見える。

 国民が自ら望むこととはいえ、雇用の流動化が良いことなのかどうか、ボクは疑問でなりません。雇用の流動化で活躍できる人もいるけれど、落ちこぼれる人もどんどん増える

 かってのソ連や今の政治が良い例で、(市場)競争や雇用の流動化がなければ人間は怠けて腐ってしまいます。でも競争や流動化が激しすぎるのも不幸になる。規制緩和が過ぎるのも問題でしょう。
 我ながら日本人的発想かもしれませんが、格差拡大や悪平等といった極端なことは良くない、とは思うんですけどね。それこそ不幸になる人が増える。

 でも物価高をもたらしているアベノミクスですら、いまだに与野党含めて反省できない。

 山本太郎は1ドル250円でも大丈夫って言ってるんでしょ(笑)。

 安倍晋三山本太郎がアホなのは仕方ないにしても、国民も似たようなものなんだから日本が沈没するのは自業自得なんだよなあ(笑)。

 


 さて、最近東京の街を歩いているとファストフード形式の『麻辣湯』の店が増えてきました。

 麻辣湯とは中国で親しまれている春雨や野菜などの具材を煮込んだスープで、辛さを選べる、具を選べる(選んだ具の量によって量り売りだったりする)、小麦の麺ではなく春雨なのでヘルシー、などの特徴があって、女性客で賑わっています。場所にもよるかもしれませんが最初は中国の人ばかりでしたが、今は日本人の客の方が多いかも。
 確かにハンバーガーなどのファストフードを食べるくらいなら、この方が遥かに良いとボクも思っています。

aumo.jp

 ただ、ちゃんとした麻辣湯も食べてみたいと思ってました。これはマツコの何とかとかいうテレビにも出てきた新宿の有名店、麻婆王豆腐で食べた麻辣湯。

 豚肉、鶏肉、野菜、イカ、エビなどがたっぷり入っています。それもさることながら、スープにコクがあるんです。ベースとなる鶏のスープがよほどしっかりしているのでしょう。

 辛いといえば辛いけど、めちゃくちゃ辛い、というわけでもない。それでいて辛さが複雑です。3種類までは確認できましたが唐辛子が何種類も入っていると思います。それに花椒やアニス、山椒など様々なスパイス。和食でも洋食でも同じですが、やっぱりちゃんと作ったスープは美味しい、と思いました。

 昨日のBS-TBS『報道1930』で経済評論家の加谷珪一氏が『今のような円安がこれ以上続くと物価上昇どころか、いずれ国民の健康な食生活すら脅かされるのではないか』と言ってました。

 TVだから彼は言葉を選んでましたが(笑)、要するにアメリカの貧困層のように生鮮食料品が買えずにファストフードばかり食ってブクブクに太って早死にする人が増える、ということです(下は違う番組)。こんなスープもいずれ飲めなくなるかも(笑)。

映画『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』

 毎度のことながら週末が過ぎるのは早い、です。楽しいことはあっという間に過ぎてしまうのは不思議です。とりあえずゴールデンウィークまでの1週間、『我慢』です(笑)。
 人生は我慢の連続だな(笑)。


 と、いうことで、新宿で映画『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-

 1968年のアメリカ・シカゴ。ベトナム反戦運動が盛んになり、民主党大会でも逮捕者が出る時代。弁護士の夫と高校生の娘と共に幸せに暮らす専業主婦・ジョイ(エリザベス・バンクス)は、2人目の子供の妊娠が原因で心臓の持病が悪化する。夫妻はジョイの生命を守るため、医師に中絶を相談するが当時は法律的に許されておらず、病院の評議会も中絶を却下する。そんな中、街で偶然見つけた張り紙を頼りに、違法だが安全な中絶手術を行う女性たちの組織「ジェーン」(ジェーン・コレクティブ)にたどり着く。彼らの手助けにより命を救われた彼女は、自分と同じ状況にある女性たちを救うため、ジェーンの一員として活動し始めるが。

www.call-jane.jp

 初監督を務めるのは『キャロル』などの脚本を担当したフィリス・ナジー、プロデューサーには『バービー』や『ダラス・バイヤーズ・クラブ』などに携わってきたロビー・ブレナーが参加。主人公を最近は監督にも進出している女優、エリザベス・バンクス、ジェーンのリーダーを『エイリアン』シリーズのシガーニー・ウィーヴァーが演じています。

 余談ですが、昨年公開されたエリザベス・バンクスの初監督作品『コカイン・ベア』、くだらないけど、なかなか良くできた作品でした。麻薬の密売人が飛行機から落とした大量のコカインでキマッたクマが大暴れする。という実話(笑)をもとにした作品でした。ボク、動物モノは必ず見るようにしているんです。
 


 この映画、主人公は架空ではありますけど、これもまた実話ベース、いくつもの実話を組み合わせて作られたお話です。
 舞台は1969年のシカゴ。ベトナム反戦運動が盛んな時代です。シカゴで行われた民主党大会も流血の惨事になりました。
 映画は、目の前で警官に殴られる若い反戦活動家を見て主人公のジョイがショックを受けるところから始まります。弁護士の妻、専業主婦として優雅に暮らしていたジョイはそんな世界があるとは夢にも思わなかったからです。

 当時は職業を持っている女性もほとんどおらず、女性は自分名義のクレジットカードや銀行口座も持てなかった。現在のように何でも金に換算される新自由主義とは違うにしても、資本主義とは思えないような世界です。ほんの50年前の話です。
 何よりも女性には妊娠中絶を決める権利がなかった。母体の安全や暴行を受けたなどのやむを得ない事情があっても、原則として中絶は違法でした。

 第二子を妊娠したジョイは心臓を患い、出産した場合、命の危険が50%もあることを医師から告げられます。夫も同意してジョイは中絶を希望しますが、それを決定する権限がある病院は許可しない。ちなみにメンバーは全員おっさんとジジイ、男性です。

 途方に暮れるジョイですが、電話ボックスに貼られていた『妊娠?困ったらジェーンに電話して』という文言と電話番号が書かれた貼り紙に気が付きます。

 彼女が電話すると、そこは女性の安全な中絶を援助する秘密の女性団体’’ジェーン’’でした。もちろん違法な活動団体です。

 秘密を守るため目隠しをさせられた彼女は’’ジェーン’’の手助けで医者の所へ連れていかれ、安全に中絶手術を受けることが出来ました。

 それをきっかけに彼女は’’ジェーン’’の活動に引き込まれていきます。
 市民運動など全く縁がなかった彼女でしたが、現実に困っている女性が沢山居ること、彼女たちが助けを求めていることを知ると、放ってはおけなくなったのです。彼女のような恵まれた立場の主婦だけではなく、貧困家庭の黒人女性、親に言い出せないティーンエージャー、事情は様々です。

 女性の送り迎えのドライバー役から始まり、中絶手術の手伝い、やがては自ら中絶手術を行うようになります。

 今までは高額の費用を取る闇医者に医療するため助けられる人の数には限りがありました。特に黒人、ティーンエージャーなど本当に助けが必要な人を救うことができない。

 自分たちで安全に施術を行うことができれば、より多くの人たちを助けられるようになります。

 専業主婦だったジョイが突然 家を空けるようになって、夫や娘はいぶかるようになります。やがて彼女の秘密は家族にも知られるようになるのですが- - -

 

 ジョイはより多くの女性たちを救うため、また自分の生活のため、ある決断をします。

  やがて73年 女性たちの活動が実を結び女性の中絶の権利は保証されるようになります。’’ジェーン’’もめでたく解散。彼女たちは1万人以上の女性の中絶を助けましたが一度も事故を起こさなかったそうです。

 60年代ポップスが多用され、終始 明るい雰囲気でドラマは展開されます。全然暗くならない。そこは特筆すべき点です。
 シガニー・ウィーバーが’’ジェーン’’のリーダーを好演していますが、団体の中の路線対立を話し合いで乗り越えるところなど非常に興味深い。女性たちを助けるという目的のためにお互いが妥協点を探していく。自分の『正しさ』ばかりに固執して、直ぐ内ゲバが始まる日本の運動体や政党とは大違いです。

 国家は信用しない。他人に頼らず自分の力で自分の身体を守ろうとした実話をもとにしたお話は同じプロデューサーが手掛けた『ダラス・バイヤーズ・クラブ』によく似ていると思いました、

 この映画でも女性たちがあくまでも独立独歩であるのも気持ちがいい。専業主婦だった主人公と保守的な価値観の家族との関係が変わっていくところも感動的です、民主主義は自分たちで作っていかなければ存在しないことを、この映画は声高ではないけれど雄弁に語っています。

 また主人公が最後に下す決断も素晴らしいと思いました。まさに大人の判断で、精神論に引き摺られる日本の市民運動とは随分違います。

 映画が作られたのは22年。ところがその後トランプに選ばれた保守派の最高裁判事たちが中絶手術を禁止する州の法律は合憲である、という判断を示します。テキサスなど一部の州では中絶ができなくなりました。

 それに対して女性団体だけでなく、オラクルやセールスフォース、ディズニーなど一部の大企業も反対声明を出したり、手術が可能な他の州への旅費支給を行うなど従業員の中絶を支援していますが、州によっては支援者まで罪に問うような法律が施行されています。

 時代はまた、逆戻りです。どうなっているのでしょうか。統一教会日本会議の手先の政治家がのさばっているのですから、似たようなことは日本だってやりかねない。夫のDVがあっても女性や子供が逃げることができなくなる可能性がある共同親権なんかその典型です。

 過去に女性たちがどうやって問題を乗り越えていったのか、思い出すことに意味がある時代になってしまいました。酷いものです。そういうことも含めて、今見るべき良い映画だと思います。結局 自分たちで戦い続けていないと民主主義は維持できないということが良く判りました。


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