「さすが駐在員は違いますね」と一度だけ言われたことがある

ShinRai2012-08-16

ロンドンに話をもどそう。

ロンドンに4年間いて、一度だけ、お客様から「さすが駐在員は違う」と言われたことがあります。


それは、日本の某重工メーカーの子会社の役員を、場末のストリップ・パブにお連れしたときでした。

その方は、「ロンドンにはもう何度もきていて、だいたいのことは知っている」とおっしゃるので、そうか、では何か驚くようなところにお連れしなくてはと、駐在員は思ったのです。


僕は根が珍しいもの好きな性質だから、けっこう街をブラブラして、怪しい場所を探すのは好き。

実は、秘書の女性が、「ショディッチ・チャーチに、ストリップ・パブがある」という情報をくれたのでした。オフィスのあったリバプール・ストリート駅からショディッチまでは歩いて10分くらいだから、昼休みに何回か、言われたあたりを散策してみました。

意外と目につくところにパブがあるのだけど、入口にカーテンがあって、ちょっと怪しい気配。ここかなと入ってみると、意外や意外、入場料金というものはない普通のパブ。な〜んだ、パブかと思ったら、実は1mくらいの高さの踊るステージがあって、そこで女性が真っ裸になって踊っていたから、びっくり。

僕も動物だから目が釘付けになりました。


システムは、こう。
客は飲み物を普通のパブと同じように買う。

ストリップの女性にはチップを払う。これは義務ではない。自分がいいなと思った女性だけでいい。

一人の女性は二度踊る。一度目は、最後の下着を脱がないで、踊る。その後、大きなビアジョッキをもって、顧客のところを歩いてチップをもらう。だいたい1ポンドくらい(当時200円)でOK。気前がよければ5ポンド紙幣といいたいところだけど、お札を入れていた人は観た記憶ない。

チップを集めたら、女性はまたステージに上がって、今度は、最後の一枚まで全部脱いで、ステージ上でチップをくれた人の近くに行って、大事な部分をご開帳するという仕組み。

これはわりとわかりやすいシステムで、一度でつかめました。


その後、その手の店を数軒見つけて、レパートリーにしておいたのでした。
その日、日本からのお客様をお連れしたところ、喜んだのなんの。かぶりつきになって、上機嫌でした。そして「さすが駐在員の方はよくご存じだ」と褒めてくださいました。

その方とは、一緒に仕事はしませんでした。日本から同僚が同行しており、私は夕ご飯とその後のエンターテイメントだけの担当でしたが、「さすが。。。」という言葉を頂いた経験は忘れません。


常日頃から、レパートリーを広げていた甲斐があったというものです。


チャンスリー・レーンにあるグリフィンの写真と説明があったので、掲載します。ここはたまたま歩いていて見つけました。

Gentleman's Clubのテーブルダンスというんですね。


The Griffin is located in the heart of London's legal district, within easy reach of Chancery Lane tube station. The Griffin is arguably the finest Table-dance venue in the area. Sit back and enjoy the shows as beautiful girls dance for your pleasure every ten minutes on the main stage.

Entry into The Griffin is free with no cover charge. There are 50 girls on rotating shifts with a girl on stage approximately every 10 minutes starting at 1pm daily. You are required to contribute £1 to each of the girls before they go on stage. Girls give a full nude striptease and private dances are available from midday. All major credit cards are accepted and cash back is available over the bar. Stags and group bookings are welcome.

靖国神社にお参りしました

今朝、出勤途上で、九段下の駅に着くときに、「そうだ、靖国にお参りしよう」と思って、途中下車して簡単にですが、お参りしてきました。


戦争で死ねば、現人神である天皇陛下がお参りしてくれるという約束だったのに、天皇陛下はもう来なくなった。僕が行っても、屁にもならない。だけど、戦争で亡くなられた方々に、安らかにお眠りくださいという気持ちだけでも伝えたくていきました。


現人神としての天皇陛下がするべきことはたくさんあるのに、人間になっちゃあ困ります。

戦後の不幸の始まりは、主権者を喪失したことかもしれません。

土地勘を持てない不思議な空間

オリンピックの閉会式で、スパイスガールズが登場するときに、黒のオースチン(実際は日産が製造していたと記憶する)のタクシーが登場した。

ロンドンといえば、黒いタクシー。あれは、けっこう中が広々としていて、向かい合って座ると5人くらい乗れる。ロンドン市内を移動するには、もっとも便利な移動手段である。


しかし、最初のうちは、やたらとわざわざ小さな公園のあるところをグルグルと回るので、遠回りでもされてるのかと思った。あとになって、それが一番の近道であるとわかるのだが。


ロンドンの想い出は、おいしい店が隠されていることと、なかなか土地勘がつかめないことだ。

土地勘のつかめなさといったら、地図なしでロンドンの中心部を歩くことはずっと不可能だったほどだ。ようやくつかんだと思ったら、半年して訪れてみたら、また土地勘がなくなっていた。こんなの珍しい。


グルグル回るからだろうか。街自体に何か不思議な魔法でもかかっているからだろうか。


ウィンブルドンの自宅から、よく日曜日に飲茶するために、チャイナタウンに出かけたのだが、どういう道を通ったか、どの橋を渡ったか、まるで覚えていない。

ロンドンは記憶の霧の中にある。

すべて美しいものは隠されている街  実はロンドンはおいしい

ビクトリア朝の建築が美しいコノートホ

僕がロンドンに住んだのは1993年10月から4年間強

宇宙航空専門商社の駐在員として、フランスとイギリスの仕事のお手伝いをしていた

お客様の中には、何度も何度もロンドンに滞在した経験をお持ちで、今更駐在員の助けなど不要という方もおられたが、そういう冷たい言われ方をした時こそ、腕の見せ所となった。

というのは、ロンドンという街は、外から観ただけでは薄汚くて、観光名所は物価は高くて、一見の客には食事はマズイものしか提供しない街だからである。

「ロンドンって、メシまずいよね。」と言う人は、おいしい店の見つけ方や情報を知らないだけなのだ。

19世紀には、太陽の沈まない帝国と呼ばれた大英帝国の首都に、マズいレストランしかないなんて、アリエナイ。


駐在員にとって、おいしい店、何度でも行ける店を見つけることが最大の関心になる。それはお客様の驚きを生み、仕事の成功に結びつく。

意外なところに、おいしい店があった。

なんの看板も出ていない商工会議所の地下とか、
やはり地下にある広い割の人のいないパブとか、
公園の中にある、ワインバーの地下のフレンチレストランとか、、、、

なんだか地下ばっかりだが、そこにレストランがあまりにこっそりとあるので、
そこに連れていってもらったお客様は、それだけですでに感情が高まっている。
そして実際においしい。だから、みんな幸せになる。仕事なんてどうでもいい。

仕事なんて忘れて楽しむ、そうすると仕事もうまくいく。
そんなおいしい高級コールガールのような生活をしていた。

お客様といっても、日本からのお客様は宇宙航空産業だし、
イギリス人もフランス人も、宇宙航空産業だから、
客の知的レベルは実に高く、なにげない雑談も勉強になった

日本から会社の取締役が出張でくるので、何を食べたいかと伺ったら、
「ローストビーフ」という。
秘書に頼んで調べてもらったのが、コノートホテルのグリル
ここは上品で、おいしかった。
大変お気に召した上司が、
「裏を返せよ」と教えてくれた。
裏を返せとは、おいしい店にぶち当たったら、
食後一週間くらいで、お礼にもう一度食べにいくことだという。
すると店と仲良くなれるのだそうだ。
もともとは吉原の花魁用語で、初日は同衾しない花魁とは、
「裏を返」したときにはじめて一緒に寝ることができるという
使われ方だったようだ。

ロンドンは、ホテルのグリルルームやレストランは、
割とレベルが高かったが、とくにコノートと、
ハルキンがよかった。

ケンジントンの近くにひっそりとあるHalkin Hotelのレストランは
そこで食事した友人から、緊急報告、こんなおいしいレストラン見つけたと
電話をもらった

実際に試してみたらすごくおいしいイタリアン、ワインもめちゃくちゃセンスいい

Pomino Bianco Frascobaldiというトスカナの白ワインを知ったのもここでだった
なんと、後日、日本のメルシャンに買収される蔵である。
スキッとして軽い水みたいな口当たりなのに、しっかりと風味がある。

美食ばかりしていたから体重も今より8kgから9kgも太っていた。
不健康だったかも。4年で十分だったかも。
こうやってオリンピックに刺激されて思いだすことはあるが、
また行きたいと願うわけでもない。

幸いにして之を得れば坐して以て旦を待つ

ShinRai2012-08-12

金曜日夕方から、土曜日午前、土曜日夕方、日曜日午前と、合気道三昧の週末だった。

土曜日の夜の稽古は、月窓寺で、多田師範がイタリアから帰国されて初めての指導だったこともあり、非常に緊張感も充実感もある稽古だった。

合半身の片手取りで、入り身投げ四方投げ小手返し、二教とみっちりとした係り稽古が続いたのだが、私は、小手返しのときに、「肩に力が入っている。手が縮こまっている。もっとのびのびと、力を抜いて、ほら肩が上がっているじゃないか。」と、師範にご指導をいただいた。なかなかうまくいかず、何本か余分に取らせていただいたのだが、満足のいく技とならなかった。


帰りの電車の中でも、どうしたらいいのだろう、力を抜いて、肩が上がらず、のびのび技をかけるというのはどういうことだろうと考えていた。

両手をあれこれと動かしてみて、こうかなあ、ああかなあ、こういう動きならできるが、それで技になるかなあ。それは小手返しというよりは、両手取り呼吸投げのような、水平方向の動きだった。

自宅に帰り、風呂に入っても、この動きでどうだろう、と考えていた。

朝、少年部の始まる前に、一人で足と手を動かしながら、これでどうだろう、と何度も何度も稽古をしてみた。下に落とすのではなく、真横に投げる感じの小手返し。これでどうだろう。

今朝の自由が丘の稽古では、正面打ち小手返しがあったので、そこで実際に試してみた。まずまずかなぁ。力は抜けて、でも威力ある技になっているだろうか。


この気分、孟子にたしかあったと思って探してみたら、「離婁・下21(岩波文庫版)」に見つかった。


 その合わざる者あれば、仰ぎて之を思い、夜以て日に継ぎ、幸いにして之を得れば、坐して以て旦(あした)を待つ。 (其有不合者 仰而思之 夜以継日 幸而得之 坐以待旦)

(現代語訳: もし、それが今日の実情に合わない点があると、天を仰いでは思案をこらし、夜を昼についで考えつづけ、幸いに妙案がうかぶとすぐにも実行したくて、そのまま寝もせず、夜が明けるのを待ちこがれた程であった)

 秋空に胴着干したり蝉時雨

ギリシャ悲劇は観る者を運命共同体に引き込む

ORESTEIA

観るスポーツは嫌い、ボケっと観て何になるんだ
なんてことを時々言っているから、
オリンピック観戦していると息子たちや妻が
「あら、観るスポーツは時間の無駄じゃないの?」
と嫌味を言ったりする

ま、観たいときは観ている。

柔道よりレスリングのほうがおもしろい、なんていいながら。

そもそもJUDOになって、道着の色も気に食わないし、
帯がほどけるように結ぶこと自体信じられない

それに比べるとレスリングのほうがルールも着物も
はっきりしていていいい


ロンドンに住んでいたのは1993年秋から1997年末まで。
4年間、いろいろな経験をした

僕の場合は一番のめりこんだのは観劇

1994年にはエジンバラ演劇祭にも行きました。
レベル高いから、堪能しました。

一番よかったのは、アイスキュロスの「オレステイア」
つまりギリシャ悲劇だった。

それも、ロシア人の俳優が、ロシア語で、英語はテロップで、
アイススケート場を使って6時間以上かけて上演していた。

これには恐れ入った

ギリシャ悲劇には、観る者を運命的共同体に引き込む力がある
ということを感じました


ギリシャ悲劇を6時間、一気に上演する演出や俳優もすごいが、
それについてくる客も客。

あれだけのパワーと気品とカタルシスをもった芝居には
出会ったことがない。

学生時代にみた68/71黒テントの「ブランキ殺し 上海の春」
を、もっとダイナミックにした感じといってもわかってもらいようがないが


しかし、今、誰がギリシャ悲劇を観て、カタルシスを語っているだろう

世界の現実が終末的になっているから、
そんじょそこらの悲劇だと、現実に負けてしまって、
「それが悲劇なの?」と言われてしまうかも

悲劇が受け入れられる時代のほうが幸福度は高い

喜劇や軽佻浮薄なコントばかりの社会は、実は不幸かもしれない

動かない相手を礼の力で動かす方法

1994年のことだったか

仕事で調査報告書をつくる必要があり、知り合いのロンドン在住の長いインド人にお願いして、いいコンサルタントを紹介してもらった。

そのコンサルタントは、アメリカのワシントンDCに住んでおられる方で、すでに公務は引退しておられるのだが、国際学会の会長もつとめられた立派な方だった。

その方に、時給100ドル、調査取材の旅費つきで、全部で10万円程度の小さな仕事を頼むことになったのだが、仕事をしてくれているのかどうか、途中からメールを送っても返事が来なくなって、僕の頼み方に失礼でもあったのかと、悩むことになった。


いったい、どうしたらその偉い人に、こちらの思ったとおりの仕事をしてもらえるのか。仕事をしてくれさえすれば、おそらくいい仕事になることは明らかだから、仕事をしてくれていることの確認を、相手に失礼がない形でとるにはどうすればいいかと悩んだ。


で、思いついたのは、コンサルタントを紹介してくれたロンドンに住んでいるインド人を、紹介してくれたことをお礼を言うためだけにランチに招待して、さらに当時三越ロンドン支店があったので、和菓子の詰め合わせを手土産にして差し上げたのだった。

これが効いた(ようだ)。

おそらくインド人は、気分がよくなったから、アメリカ人の友人に、「どうかね、仕事のほうはちゃんとやってくれているよね」てな感じの連絡を取ったのではないだろうか。

それで十分なのだ。


それからすぐに、アメリカ人から、作業の手順について報告がきた。いつどこに出かけて、誰と話をしてくるから、報告書の仕上がりはいつくらいになる、という連絡が。


これだけでもう大船に乗った気分になれました。


大事なことは、常に前向き、ポジティブに考えて行動すること。

誰かを疑うのではなく、誰かにポジティブな気持ちをぶつける
(「ちゃんと仕事してるでしょうね」という聞き方はやっぱり失礼だから、できない。してはいけない)

それには、お礼がいい。
ありがとう。あなたのスバラシイ人脈にお世話になりました。
あなたの紹介してくれたコンサルタント、すごく立派な方ですね。感動しました。
紹介してくださったおかげで、安心できました。
本当にありがとうございました。

食事に招待。そして手土産。高いものでなくていい。ちょっとしたことに気持ちをこめる。


これがもっとも有効であると確認したのだった。