ニューヨークでまたインフルエンザ休校


とはいえ、北半球はしばらくお休みになって、秋が勝負だろうかと思っていたら、ニューヨークでは、例の数多くの感染者を出した学校でまた問題が起きている模様。


「異常に多くの生徒」に症状=インフルで教員重体、3校休校−NY
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009051500235


3校合わせて4500人ほどで、休校終了は早くても5月22日ということは1週間まるまるお休みの措置。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601124&sid=aLU4w3L.AW_E&refer=science


その上で、これを伝えているニューヨーク・タイムズによれば、ニューヨーカーたちが、症状もないのに救急病院におしかけたり、薬局で医療用マスクやらタミフルを買い占めてる、とある。

http://www.nytimes.com/2009/05/15/nyregion/15swine.html?ref=nyregion


前回書いたとおり、ニューヨークの特にマンハッタンに通勤、勤務するエリアに住む人がこうなるのはわかる。それは東京でマスクしたくなるのと同じ。人と人とが近接してるから。

マンハッタンは狭いし、人はうじゃうじゃだし、建物は古いし、区画は北米水準ではびっくりするほど狭い(東京水準だと思えばなんてことはない)し、夏になると暑いし、埃だらけになるし、なのであんまり衛生環境的に良好とはいえないから気になるんだろうなぁと思う。


おそらく、そうは言っても、なにせマスクをしないのが普通だと深刻なまでに思い為している人が多いのが北米なので、場合場合に応じて持っていて悪いことはないと判断してマスク買いとなっているでしょう。

あと、マスクといえば、マスクを使用しないという理由として、確かに広々したところだからマスクが必要がないというのが、カナダ全体としては最も適した理由だと思うし、それだけで十分だとも思えるぐらいだけど、それにしてもちょっとへんかも・・・と思えるものもある。


カナダの保健省のマスクについての発言は、

Q33. Should Canadians take any extra measures like wearing surgical masks to avoid catching H1N1 Flu Virus?
http://www.phac-aspc.gc.ca/alert-alerte/swine-porcine/faq_rg_swine-eng.php
のところにあって、


このインフルエンザへの防御策の基本は
・普通のインフルエンザ予防と同じことをしろ、すなわち、頻繁に手を洗え、咳やくしゃみを覆え、具合が悪いなら家にいろ

で、
保健省はマスクは奨めない。なぜなら、
(1)公衆の中でマスクをするのがインフルエンザの感染予防に有効だという証拠はない、
(2)人々はマスクを適切に使えなくて、マスクの着脱で感染リスクを上げてしまうことがある、
(3)例外は、H1N1で具合の悪い人やインフルエンザ様の症状を呈している人。これらの人たちは医者、看護婦、家庭で世話する人等、患者に接近する人を保護するためにマスクの着用を求められることもある、

なんだそうですよ。


よく考えるとしかし、言ってることがばらばらというか説得力がないと私は思う。

(3)はなんかそもそもへん。感染した人だけが着用するみたいにしか読めない。だけど、普通に考えて医療機関の人は、自分は感染者じゃなくても、自分も感染しないように、そして、万一知らずに感染した場合に他にも移さないように着用しているわけでしょ。だからこの例外は妙な言い方だと思う。
(しかも、もしそうやって着用を求めるのなら、マスクは感染非拡大に有効だと言っているようなものではないの?)

あと、(1)は、単にそんなことを測定した論文はあるんだろうか? マスクをした100人と、非マスクの100人の感染拡大を比較するって結構条件設定が難しくないですか? さらに、公衆の中でっていうけど、その密度や気象条件、マスクの性能、被験者のマスク着用履歴の有無とか比較条件が非常に難しいのではあるまいか。

つまり、マスクが有効だという証拠がない、のではなくて、マスクを使った有効な試験は行われていない、ではなかろうかと私と友人は勝手に想像してみているんだけど、どうだろう。


(2)は、有効なら教育すればいいだけではないのか? さらに、万一秋口から拡大する可能性があるとしたら、今からでも教育していて悪いものではないと思うんだが・・・。
(ひもを持って、捨てる時にはそこらに放置しないで密閉して捨てろとか、そいうことでしょ?)


再度言うように、実際問題、混雑したポイントに行かない限りカナダでマスクをしたくなる場所というのはそう多くはないと思う。ただ、会社とか、電車とかで、もしかしたら、万一のためにマスクをしてみるのもいいことだ、ぐらいの習慣があってもいいのでは?と思う。これを遮断するのはどうなんだろうかと私は結構この方針に懐疑的。少なくとも、マスクをすることの効用を教えるぐらいはいいと思うんだが・・・? ここまでのところ、何か、頑強にマスクを拒否しているとしか思えない(一方でNYがあるわけだが)。なんでしょう? マスクの絶対数が足らないので、それでパニックの引き金にしたくないとか、何か、別の要因を考えたくなる。


ちなみに私は、花粉症用のを日本からいくらか持ってきているので(別に花粉症でもないのだが、なんとなく買ってきた)、外出時にはジップロックに入れて持ち歩いている。使ったことはないけど、何かここはヤバイ、または自分の具合が悪い、と思ったらしようと思ってる。

その他、アルコール製剤入りのジェルは普通でも使ってるけど、若干は効用ありかも。インフルエンザに対してとかいうのじゃなくて、お絞りは出ないので、洗面所にいくまでもない場合に手を洗わないでものを食べるのが、どーーーーしてもイヤなので使っているだけなんだけど。

インフルエンザその後とマスク再考

プーチンが来た日本にいたかったとちょっと思った。いてどうするんだといわれりゃそうなんだけど、なんか、狸穴あたりに潜みたいという妄想がちょっとあった。あはは。

そうかと思ったら小沢氏は代表辞任だそうで、プーチンニュースを潰すためにそんな時間帯に発表したんですか、とまずはそっちの方が気になった。そうでもあり、そうでもなしなんでしょうね(そうなら当日がいいわけで)。


本日の現地気温は20度以上となりさわやかな春の陽気となったものの、週末にかけてはまた一桁の日があるらしく、最低気温が安定的に10度台後半になるにはもう一声といったところ。


それはそれとしてインフルエンザ。
あちこち見ていると日本の対応が大げさだと海外在住の日本人が叫んでいるというのを目撃するのだけど、個人的には、何を持って大げさだというのだよと怒鳴ってやりたい気が満々かも。


前回書いたとおり、水際でなんとかしたい国と、もう広がるままにするしかないじゃんかという国では違うというのが違いの最大の理由でしょう。


あと、チャイナが検疫で人々を留め置いたというので、イギリス他の英語圏メディアが大騒ぎをしていたけど、私は、悪意だ、とか思わなかった。なぜなら、まず第一に、一山超えたら情報が行き届いてないかもしれないわ、衛生環境は劣悪かもしれないわ、という人たちが大勢いるんだから、そこに行く前に止めたいというのは理解できる。

さらに、もしそれをしないで、カナダなんかが喜んで語るリベラルだか自由だかというのを遂行して、仮にそれで感染が拡大したら、当然に、待ってましたとばかりに非難するんでしょ? なんかなぁというより、本当に悪意と思った。


カナダの状況は、現在のところ400人弱の模様。
このうち、トロントのあるオンタリオ州のH1N1ポジティブが110人という話。

アメリカが3000人超らしいので、人口比では多いかトントンといったところか。


人数はともかく、私が最も気になったのは、トロントの大きな病院内の従事者が罹患しているらしいという話か。先週3人が確認されて現在4人だそうだ。
http://www.healthzone.ca/health/article/632835


他はともかく、なんで病院だけでもしっかりできないのかなぁと私は思うんだなぁ。SARSの時もそうだった(事情は違うんだが)。


とりあえず、自分たちが世界最先端の医療水準を誇るというあたりは置いておいて、その執行能力に何か問題がないかと考えた方がよくないか・・・とまた思った。ちょっと陰鬱なところもあると思うんだなぁと私は個人的にはそう思っている人なのだが、上の記事の下に付いているコメントを読むと、やっぱり心配している人もいる模様。

ここにあがっていた例は、トロント市内の病院勤務の人たちがユニフォームを着たままそこらを歩いている、地下鉄に乗ってる、これっておかしいだろうという話。私もまさにそう思っていた。病院まわりで休憩しているスタッフが医療用の服を着ているぐらいならまぁそういうエリアだ、で分かるんだが(限度問題はあるとして)、地下鉄に乗っていて、目の前に半コートの下にその服を着ている人がいた時は、え?と思った。


おそらく(コメント内にもあったので間違いないと思うんだが)、ユニフォームを洗濯する日には着て帰っちゃう、ってことなんだろうと思う。だけど、病院内の服って何がついているかわからない服なわけでしょ? ある種の防御が必要だからその服を着ている、それを外で着るってなんでいいの???と私は思うんですけど。どうでしょう?


今どうしているかわからないけど、こういうあたりから、ちょっとなぁ・・・という点が垣間見えると言いたいものはあるわけだす。


感染症の予防って、医療プロパーじゃなくて社会的な取り組みの問題なわけで、それは結局、その社会が、多少の感染なんかどうだっていいじゃないかと考えるか、できるだけ防ぐべき、だって弱い人にとっては深刻なんだからと考えるかで、非常にはっきりした分岐がある。

 自宅でサバイブが基本らしい


そういえば、災害で思い出す。Canadian Centre for Emergency Preparations(直訳すれば緊急時の準備のためのカナダのセンター)という団体があって、そこが、災害時の最初の72時間を家庭で生き残ってもらうための指針を普及というか布教とかいうかさせている。


何かあった場合のために、個人宅で何を準備すべきかのリストがずらずらと載っている。

PERSONAL PREPAREDNESS
http://www.ccep.ca./cceppers.shtml


そのサイトにも新型インフルエンザの項目があったのでリンクをたどると、
Public Health Agency(公衆衛生局)のサイトに、5月3日付けで、新型インフルエンザの患者さんを家庭で見る場合の注意事項が載っていた。

How to look after someone at home with H1N1 Flu Virus (Human swine Influenza)
http://www.phac-aspc.gc.ca/alert-alerte/swine-porcine/guidance-orientation-05-03-eng.php


必要なら咳止めも役に立つかもしれないし、熱はアセトアミノフェンイブプロフェンで、絶対にアスピリン飲むな、といったことが書いてある。


私も万一の時にはアセトアミノフェンはいいであろう、少なくとも害はないだろうってんで用意はしてある。つか、普通に常備薬にしてる。


つまるところ、基本的に、医者にも行かせるより、家で寝てろで対応させる様子。
やっぱり、自宅こそ第一ってのが基本という大陸なんだろうなぁとか改めて思う。


いや、それはそれで基本的にいいと思うけど、う〜ん、今回のが一般的なインフルエンザと同程度のままならいいんだけど、そうでない変容が追随した場合、どういう行動計画にするつもりなんだろう・・・。最初の3日間を自宅待機にさせたら、ウィルス増殖を抑える機会を逃さないのか? いや、季節物程度ならいいわけだが(くどい)。


今週号のThe Economistパンデミックは怖いよってな話がリードだったんだけど、その記事の入りが、今までみんなが心配していたのは鳥インフルエンザで、それはアジアから来るだろうって思ってたのに、いきなり違うところから来ちゃって、ってな感じだったのだが(このリードの結論は秋口の再流行までの時間を無駄にしないようにしよう、だったと思うが)、ひょっとして、北米で、まして豚介在でのプランは真剣に考えてなかったとかいうのじゃないよね??といきなり不安な気分になった。

公共空間と自宅

子どもの日だぁと思うものの、こちらは特にそういう区切りでもないので平常通りの火曜日。気温は日中15度、夜間予想7度。このぐらいならいいな。私は今日はシャツに革ジャンで外を歩いていたのだが、ふと見ると明らかにそれは麻ですね、というスカートに綿の薄手のジャケットに素足にサンダル履きのおばさんがいた。寒いと思うんだがなぁ。白人の体感気温だけはついにわからん。といってもじゃあ白人ならみんなそうかといえばそういうものでもなくて、そういう寒い時に薄着の人を見るたび、クレイジーだと叫ぶ寒がりまたは用心深い白い人ってのも当然いる。


インフルエンザがらみが気になるところだが、日本の報道がもっと気になる。

姉と帰国した京都市南区の会社員★★さん(35)は「日本では新型インフルエンザが騒ぎになっているけど、米国ではマスクをしているのは日本人ぐらい。特に心配してない」と冷静に話した。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009050602000086.html


代表例として例えばこういうコメント。★にしたのは記事内では名前があげられていたけど、特に晒したい意図はないので私が★にしました。


「むこう」ではXXなのに、日本は違うとなると、なぜだか無条件に「むこう」に基準をあわせる人がいるというのはある種の日本のお家芸なんだけど、こういうのってどういう心理機構なんだろうなぁとしばしば思う。


しかも、こういう傾向のある人が「むこう」という比較対象について何事か知っているかというとそうでもない、という傾向は確かにある。

今回も、
「むこう」も心配しているから、NY市内じゃ400校ぐらいの学校が休校になっていた。昨日あたりから、さすがに感染の疑いのある人がいるだけで学校を閉じるのはやめようとなって、現在は具合の悪い人は学校に来るな、という対応に変わったところ(つまり、なんでもないみんなの就学機会を優先ってところでしょう)。


あと、今回は北米大陸発信で、北米大陸は既にもはや水際作戦はできなかった。
それに対して日本は、上陸させまいとしている。


この違いがあるから対応の違いになるというのもあると思う。
このへんを指摘してあげたら人々の気持ちの中の、あれ、私ら騒ぎすぎなの・・・?というちょっとした感覚を楽にしてあげられたのではないのか。我が邦の報道機関にそんな丁寧な仕事は望めないものの、何か、とてもチグハグだったなぁとか思う今日この頃。



で、日経さんが妙に無責任な「感想」を吐露していた。

▼「ヒスパニックがパニックを引き起こす」。1990年に米国でヒットしたメキシコ系ラップ歌手キッド・フロストのアルバムだ。表題は過激だが、懐の深い米社会への誇りが音ににじみ出ていた。疫病は人の心の垣根を高くする。姿が見えない敵におびえるあまり、外国から来た隣人を避ける“副作用”がこわい。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20090505AS1K0100A02052009.html

でも、あなたも避けるかもしれないでしょ?
それなのに他人は避けるだろうことを想定して、他人を非難するというのは非常に汚い根性してるよな、と私は思う。いいこぶりっこ。


こうならないためには、どの国も感染対策の基準が高ければいいわけだすが、上でも書いたとおり、北米なんかは、感染者数の広がりをスローにすることには注意はあっても、もう水際じゃないからそれほど厳しくしても意味がない、という状況にあり、日本では、できるだけ感染の最初が入ってくるのを遅らせようとしている、と異なるフェーズにいる。


あと、北米との差でいえば、日本は公共交通機関を使う頻度の高い国で、北米はそうでもないという点も非常に大きい。


ジョー・バイデンが、先週はじめ頃だったか、こんな時には飛行機だの地下鉄になんか乗るなって自分の家族には言うよ、と言ったらしいけど、これが簡単に言えてしまう、このリアクションってのが要するにアメリカなわけだす。


でも、さすがにアメリカ人でもこの発言には何か、カチっと来た人もいたようで、パット・ブキャナンは、外に出るのが怖いという状況だったら、なんで最初にまずメキシコのボーダーを締めて様子を見ようという気にならないんだ云々と嘆いていた。
http://buchanan.org/blog/pjb-the-obama-flu-1520


私にいわせれば、要するにアメリカだから(より少ない程度にカナダも)だと思う。
何を言っているんだ、パット、と思った。


つまり、世界のために頑張る疾病対策センターとかは世界的な仕事をしていると思うけど、基本的な国の仕組みとしては、何かあったら自分が責任、もっと具体的には自分んちで篭城しろ、という暗黙な了解があると思う。公共の場所(公共交通機関を勿論含む)まで守ってやらないとならないという発想はないでしょう。空間内で何があろうとも、俺んちさえよければまずそれが一番(家族には篭れと言う、という発想)、というのが基本だから、ボーダーを締めようなんていう厄介なことを考えないのだと思う。


NYが今回他と異なる動きを見せていたのは、NYはマンハッタン周辺という、アメリカの中では例外的な場所を含むからじゃないですかね。マイケル・ブルームバーグは予想通り頑張っていた。この人は東の人、街のある人だなぁと思う。


災害が発生した時にどういう対応を取るかって、その国の地理的環境とそれが紡いだ歴史的空間認識とが色濃く反映されるんだと思うだす。

 バンクーバー偏重はなぜ?


本筋とはまったく関係ないので切りますが、日本ではどうしてカナダといえばバンクーバーなんでしょうね。最初の移民の人たちがそこだからというのは理解するけど、でも、カナダを知るためにはバンクーバーじゃなくて、オタワ−トロントモントリオールを知る方が社会的、文化的に得るもの多くないですか? このトライアングルを抜かしてカナダを語ることはできないと思うんですけど。また、英語圏のニュースでバリューをもたれるのは圧倒的にこっちのトライアングルで、バンクーバーではないと思うんですが・・・。

西部の重要性にしても、このトライアングルと、アルバータという自由主義的傾向の強い西部地域とのせめぎ合いというのがカナダを見る際の一つの鍵ではないのか、と。いずれにしても、オタワの重みを外してカナダを見るわけにはいかないし、トロントの金融業界を外してカナダ経済を語るわけにもいかないし、モントリオールのフランス系住民を見ずして、カナダの多文化主義なんて語っても何の説得力もない。

そして、これら3地点を見れば、カナダというのが、なんとなくさわやかな山とか森の人々のイメージを他所に、どれだけ政治的なのかがよくわかり、それこそがまさにカナダなのだと納得できるはず。カナダ人とみればのんびりした人と思い為す、妙な印象もなくなるかもしれません。普通に、こすっからい人いっぱいいるに決まってるでしょうが、金融業界他のサービス業界で食ってるのに、とトロント民としては非常にそう思う。


いや、バンクーバーの人、怒らないで!!
バンクバーがいけないというのじゃないです。きれいなところだと思ってます。


しかしなぁ、バンクーバーにいたらNATO軍にカナダがいる理由が感じられないのじゃないのかとも思う。


単純に、先導する人たちのネットワークが大きく日本社会に食い込んでいるってことなんだろうかなとか思ってみる。アメリカ西海岸、ニューヨークは確実にそうでしょう。何か書く、調べる、となったらコネクションがあるところの方がやりやすいし、そこから、留学斡旋業者、旅行関係者のコネクションにも繋がるだろうし。

日経のビジネス関係は当たり前にトロントに拠点を置いてそこからカナダを見ているわけで、ということは、文化系、メディア系のバンクーバー偏重傾向があるということだろうか。


いや、再び、別にカナダのトライアングルがなくても世界を知るにあたって何の問題もないですが、でも、それを言うならバンクーバーだって同じなわけで。結局、同じポテンシャリティならもう少し東側にも人の感心が割かれてもいいのではないのかと思い続けている私。

カナダが話題になってる今日この頃

カナダ続報。


新型インフルエンザ:人から豚へ感染 200頭、カナダで
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090504ddm002040114000c.html

【ニューヨーク小倉孝保】カナダ保健当局は2日、同国西部のアルバータ州の養豚場で人から豚への新型インフルエンザ感染が確認されたと発表した。人から豚への感染確認は初。同国食品検査局は豚肉の安全性に問題はないと強調している。

安全性に問題はないと専門家は言っているが、それは食料としての豚肉の話で、それじゃなくて、豚から人間、人間から豚、となったら、これが繰り返された場合、当然にミューテーションに影響を与える、それはそれもそもそうなんだが、エスカレートさせてしまうのではないのかとそっち方面からの懸念が問題になっているというのがこの話の肝ではあるまいか。

「同国食品検査局は豚肉の安全性に問題はないと強調している」でこのリードを締めてしまうのはちょっと外してないか、という気はする。

Human-to-swine transmission escalates mutation risk
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20090503.wflumain04/BNStory/National


[補足]
その前に、「新型インフルエンザ:人から豚へ感染 200頭、カナダで」
これはどこの情報なんだろう?

カナダ当局(Canadian Food Inspection Agency)の最新の発表では、豚が人から感染した可能性が非常に高い(highly probable)とある。
An Alberta Swine Herd Investigated for H1N1 Flu Virus
http://www.inspection.gc.ca/english/corpaffr/newcom/2009/20090502e.shtml


ただ、現地の報道(上のG&Mの記事)では、

The province quarantined 2,200 pigs on a central Alberta farm after Canadian Food Inspection Agency officials confirmed that a farm-worker infected the animals with influenza A H1N1.

とあるので、当局がメキシコ帰りの従業員から豚に感染したのを確認したと言うのはほぼ確定事項でいいのだろう。
が、その上で2200頭をquarantineした、ということは、quarantineは、検疫を受ける、検疫のために隔離するということなので、すべてが問題のインフルエンザに感染したとわかったという話ではないのでは? 隔離した分のうちの何頭が問題のインフルエンザに罹患したのかはこれから分かるのでは? 多分・・・。


それにしても数が合わない。200頭というのはどこから出てきたのだろう? 
いや、私が見つけられていないだけだろうかと思うので、後でわかったらまた書くことにする。
(Sunday May 3, 11:50pm)


 カナダでは、80人以上の感染が確認されている。ホンジュラスウクライナがカナダからの豚肉を輸入禁止にしカナダ政府は両国に抗議している。豚への感染が確認されたことで、カナダ政府や農業関係者は、豚肉の輸入制限の動きが加速することを懸念している。


これだけじゃなくて、チャイナがアルバータ産豚肉の輸入を禁止したようで、この動きに米国が追随するのではないのかとアルバータの畜産業界はパニックに陥っているようだ。

Pork industry in panic as pigs catch the flu
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20090503.wflupork04/BNStory/National/home


あと、人間の罹患ケースはここ数日は増えるだろう、なぜなら、貯まっていた検査が追いついてきたからという指摘もあるので、人数が増えたからといって急激に感染者が拡大しているというのとはちょっと違うだろうと考えておくのがいいかと思う。ま、実際拡大していない、という確証もまたないわけだけど。


季節物のインフルエンザはもう終わりだけど、昨日も書いたとおり決して暖かいわけではないので、案外この時期に体調を崩す人がいるというのもちょっと関係なくはないのかなぁと思わないでもない。20度と2、3度が隣り合わせの季節だから。


カナダへの修学旅行延期
新型インフル受け 静岡英和女学院
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shizuoka/news/20090502-OYT8T01055.htm


ついに来ましたね。
現地民といったって、バンクーバーが行き先だったそうなので、そうだとそことここは国が違うほど遠いのでなんと言っていいかわかりませんが、カナダは逃げないので、またの機会にゆっくり気持ちよく来てください、と勝手にカナダ人の代わりに申し上げたいと思います。


山梨、静岡の英和出身の友達が何人かいるんですけど、みんないい人。なんでなのかと感心するぐらい。一方的ですが、私の好感度めちゃ高です。

 アメリカのソフトパワー


米ドルが凋落するってホント?
中国の基軸通貨改革論、その奇妙な論理
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090427/193151/#


基本的には私はこの説または趣旨に心から賛成したい。また、日本は過去何十年か、とにかくそっちにしかステークを置いていないから、勢い心理的にも、そうであらねばならない、と思って見てる。


で、賭けはそんなに悪い賭けではないだろう、と・・・どこまで行ってもしかし、そう思いたい以上にはないのが現実じゃないですかね、など思う。


そんなことを思うのは、やっぱりこの、大きく言えば米が覇権を取った第二次世界大戦がらみあたりから色々問題を内包していることなんだろうし、根本的に英帝国みたいに余裕ぶっこいて帝国をやっていられる状況にない仕組みそのものが問題だという話にはなるんだろう。

が、もっと焦点を絞れば、イラン革命以降ずっと同じように苦しんでるんだよなぁというところが問題で、しかも、さらにさらに米にとって問題なのは、その時からずっと、潜在的に米に与したいと思ってる地域が増えてるかぁ???ってところじゃないかと思う。

少し前、昔の本を読んだら、石油ショックからソ連アフガニスタン侵攻あたりの米のどぎまぎ騒ぎというのが今に重なってみえた。サウジとかイランとか、ソ連はいないけどロシアとか、そして、我々の同盟国たる西欧が西欧が西欧がぁあああと叫んでいるものの実際には西欧がアメに乗ってこない事態とか(その頃、既に後のユーロの構想を考えてたんだろうなぁとか思うと感慨深い)、パキスタンに支援しそこねている状況とか、なんか、既視感いっぱいだった。アメリカの今って、2回目か3回目のストロークなんだよね。


ただ、イラクを叩いたおかげで、多少は前進したとは言えるんだろうし、ロシアはソ連ほどわけわかめのプレゼンスはない(つか、叩いた拍子に中身を見たから今の米にとってはロシアは軍事的には怖くないとは思うが、やっぱりここはそれだけでない戦略だから怖いし、位置が問題だってのは最後まで残るだろう)・・・。これは米にとっては良いこと、なんだとは思う。

が、しかし、その行動のおかげで、かつてソ連を罵ったような真似はできないというのも痛いと思う。相手を侵略者であると断罪して、外交的に同盟側を引き締めるという作戦がもうできない。ぷ、とか笑われそうだもの。


でので、そこで「ソフトパワー」を言うというリスクも考えた方がいいんじゃないのかなぁとも思うんだなぁ。
昨日まで軍事一本やりで、悪い奴は俺が誅するという態度で来て、今日からソフトパワーかい、って、嘲笑を誘うだけだと思うわけで、むしろ道徳的プレゼンスの低下が顕著すぐる、って感じは相当にするんだなぁ、もう。

ただ、確かに、

 逆に言うと、反米あるいは嫌米の方々が今回の米国でのバブル崩壊を、「米ドル離れ」を提唱する絶好の機会だと思うのはある意味で当然のことだろう。ただし、英語の使用もドルの使用も制度で強制されたものではなく、デファクトな(事実上の)ものである点がポイントである。この点で「デファクトの帝国」は「制度の帝国」よりもしぶとく強靭であるとだけ言っておこう。

というのはある程度は本当だと思う。


が、ここがびみょーーーなのは、アメがアメ語で、つまり、アメリカ流の考え方、アメリカで普通であるのを全世界の普通である、みたいにできているわけではない、っていう傾向は今後は過去10年との比較で顕著になるのではないの?

多分、保護主義傾向と似た流れだと思うけど、例えばアメリカ本社が、アジア太平洋地区担当者という統括部隊を作って地域またはフィールドを統括する、というやり方は変わるかも?とか思ってみたり。つまり、フィールドの方が力を持つんじゃないのか、と・・・。

多国籍企業で働いている友達がこの間言っていたことを思い出す。


今までは何のかんのと、アメリカ本社なりアメリカ的教育体制下の現地人(なんか、サーカシビリとかの傀儡みたい~~;)が、あなたたち何でこれができないの、こうして、あれして、とガンガン資料を送りつけてくる、といった体制が今日まであった。

だけどさ、チャイナとかインドとかが膨らんでる中で、そこが稼げるマーケットだってことになっていくわけでしょ、その時、当然に現地のやり方ってのを重んじる傾向は強まるよね。今までのやり方、通じると思う? 「うちではそうしません」と言われて終わりじゃないの???


だそうだった。70年代後半の日本のような感じか。でも、日本は単体で逆らってたから潰されたし、その時代にはアメにはアメの光り方ってのもあったので前向きに付いていく価値というのも部分的にはあった。が、現在の事情が違うのは、アメが弱体化して、昨日は武力、今日はソフトとか言い出すし、その他は何回かクラッシュしてもまだ先に市場を持つ可能性があるほど大きい。これは結構、怖いと思うのよね。


あと、欧州で英語を使うのは、アメリカというより、イギリスがあるかもしれませんよ、とも一応言ってみる。
イギリスって単体の国としては小さいけど、コモンウェルス諸国がいるので、実は大きな影響力を今でももっちょると思われますです。カナダ、オーストラリア、インド、一部チャイナ、中東とか、基本はイギリス文化圏対応国だと思う。まず政治体制、法体系がイギリス式だし。この中にあっては、微妙にアメ語文化圏が単体で異形進化したローカル語って感じ。フランスの異形ともいえるだろうし。


アメリカが難しい位置にいるなぁと思うのは、なんつっても中世がないので西洋史の中に自分を入れないと、法とか、歴史的経緯とかを語れないことか。でもって、時代劇(コスチュームプレイ)もないから、歴史物というジャンルも振るわず、文化史跡を訪ねるとかいう行動形式もなく、なんつーか底の浅い文化しか残らないっていう話になっちゃって、お金儲け関係(政治、経済)以外のサブジェクトで人をひきつけて置けない、ってのも痛い。


ファッションはヨーロッパから来るし(特に白人)、野球やってるコモンウェルスないし(クリケットを地味に戦略的にやってるだすね。カナダが若干異質でクリケットがあまし振るわないのだが、じゃあ野球やってるかといえば大したことはなくて、ホッケーこそ王道で、そうなるとライバルはロシアとかチェコという妙なことになってる。フィギュアスケート好きも欧州臭いね。)


そういうわけで、アメリカがソフトパワーを、とか言うためには西欧組との和解が必要なのだ、というのが多分イギリスの理解だと思う。だから綱渡りして、アメリカをアングロ・アメリカン帝国にしようとしているんじゃんないのか、って思ってみたりもする。田中宇さん的にはイギリスの陰謀に見えるんだと思うけど、私の理解では、これはこれで親心もあると思うの(笑)。