献本報告。

 この本はまったくと言っていいほど著者献本をしてません。


 お金を払ってお買い上げいただいた方に、なんのしがらみもなく自由にお言葉をいただきたいからです。


 もともと個人的な私小説で、著者であり主人公である私という人間に対して好き嫌いはあるでしょうから、思ったことをそのまま聞かせていただきたいと思ってそうしているわけです。


 それでも、この本を献本しなければならないひとがいますので、本日献本してまいりました。




「約束、覚えてますか?」


 私がステージ裏でそう聞くと彼はすぐに、


「覚えてるよ」


とサングラスの奥で微笑みながらそう答えてくれました。


 五年前の三月、私は彼のプロデュースのもと、『アンダマンの涙』の日本語版をスタジオでレコーディングしながら、今回自分が見たことをちゃんと書いて本にし、日本人に読んでもらえるようにします、と約束したのです。


 その約束から四年たってようやく去年、この本が出版され、それからさらに一年半経ってやっと彼に報告できたというわけなのです。



 というわけで本日、エート・カラバオさんに献本できました。


 こうして無事に報告できるのはひとえに、最初から最後までこの本の制作に付き合ってくれたフリー編集者の小形克宏様、出版を引き受けてくださっためこんの桑原晨様をはじめ、応援してくださったたくさんの皆様のおかげだと思っております。


 ほんとうにありがとうございました。


 ようやくこれで一段落したような気がいたします。




 でも、同時に何かがまたはじまったような気もいたしますが。



 それでは皆様重ねてありがとうございました。