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…するんだな?

かなり愚痴っぽいエントリ。おk?
北海道●●会よりアンケートが来た。「臨床研修に関するアンケート」。臨床研修制度のあり方について検証を行うべく…との説明書きだが、Q.13以降が噴飯ものだった。

仮に、国等の公的機関が医師を計画配置することとした場合、本人の希望を勘案しつつも最終的にはあなたの勤務地を公的機関が決定するという考え方についてどう思いますか(選択肢の番号を1つお答え下さい)。

臨床研修制度関係ないじゃん、コレ。最初ハナっからこの質問する気まんまんだったんだろう。しかも、真意が透けて見えるこの文言はホトホト呆れる。

  • 仮に、国等の公的機関が医師を計画配置することとした場合
    • する気、なんですね?
  • 本人の希望を勘案しつつも最終的にはあなたの勤務地を公的機関が決定する
    • 「グダグダ言わずにお国の命令に従え。希望? そんなのシラネ。」という意訳でおK?

そして何より、選択肢が笑える。

  1. 賛成
  2. 一定の時期・期間であれば賛成
  3. インセンティブとの組み合わせなら賛成
  4. 反対
  5. その他

…3/5が賛成ですか。そしてQ.14が「『インセンティブとの組み合わせなら賛成』と回答された方に伺います。」3と答えるのが前提ですか。



このblogで度々述べてきた持論であるが、嘗て日本は世界でどの国よりも“完成された社会主義”国であった。戦前・戦後で多少の性質の差はあれ、根幹は共通であった。“中途半端な資本主義”国に変性した昨今でも、つい最近まで医療分野は“完成された社会主義”の“最後の聖域エルスウェア”であった。其れゆえの「アクセスフリー」であり「国民皆保険制度」であった。まぁ、さらに言えば、それを実現可能にしていたのは「医療者の(奇妙な)使命感」であり「医局制度」であった訳で、問題が無かったとは間違っても言えないが、少なくともある程度は機能していたのは間違いない。
そこに市場経済を持ち込んだのが事の発端であろう。競争原理が働けば医療の質は競い合うように高くなり、価格は競いあうように安くなる、と。さしずめアメリカの医療制度の宣伝でもしたかったんだろうが。ただこの吹聴は「良くなること」しか言わなかった。一種の詐欺行為だった訳だ。今のアメリカの医療制度の顛末を見るまでもなく、結果はある程度予測し得たものなのに。
まず、競争原理が働けば、当然格差が発生する。そもそも、離島や数千人規模の人口の中の病院と、大都市の病院で同じことができる訳がない(当科の例を出せば、奥尻島では化学療法R-CHOPは出来ません)。また、より高い質の医療を受けたいと思うのは誰しも当然のことだが、その対応能力には限界がある。そこに“需要”が一気に集中すれば、診療を受けられない“難民”が発生するのは当たり前である*1。また、より高い医療の質を確保するためには、それだけ人材も資材も必要なため、それらのリソースがますます一極集中化する…まぁもっとも、「高い医療の質を確保する」どころか、現状維持するだけでも人材も資材も必要なのだが。また、市場経済が“利潤の拡大再生産”を基本概念としている以上、“採算の合わない部署”を切り捨てるのは当然の結末であり、また“条件のより良い部署へ希望が集中する”のも当然の結末である。結果、病院は採算の合わない救急・産科・小児科を閉科し、訴訟リスク・費用対効果の不良な同科への志望者も激減する(血液内科だって、抗腫瘍薬・抗生物質など高価な薬剤、真菌・ウイルス検査などの高価な検査を湯水のように使う分、病院には頭が痛いことだろうし、既に色々言われている。まぁもっとも、だからと言ってやらないと患者が死ぬが)。
そして、事実そうなった。今騒がれている「医療崩壊」など、既に予測された事態が“そうなった”に過ぎない。“中途半端な資本主義”を導入した必然たる結果である。そして事もあろうに“中途半端な資本主義”を扇動し、導入した張本人が“公的機関が医師を計画配置する”などという“完成された社会主義”の“幻影”を復活させようとしている。それはまるで、過ぎてしまった時間を戻そうかと足掻くような児戯、あるいは死者を復活させようと蠢く亡者の如き行為。“噴飯もの”と表現したのはこういう理由である。「覆水盆に返らず」は東晋の時代に成立した『拾遺記』が出典のようだが、歴史は繰り返すとはよく言ったものである。
一度回りだした歯車は、それが崩壊するまで止まることはない。「この世の終わりが来るのなら、ポルカを口ずさみながら見届ける」*2しかない、そんな諦念しか内容に思われるのだ。その日には、きっと誰も彼も当事者だ、貴方も、私も。

これだけは肝に命じておけ。
我々が互いに猜疑し己が利のみを追求した結果、最後にリングに立つのは誰だと思う?
……そこには誰もいねえのさ、諸君。
俺もおまえらも・・・・・・・そしてリングもだ・・・・・・・・

広江礼威BLACK LAGOON 007」

BLACK LAGOON 7 (サンデーGXコミックス)

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*1:パレートの経験則を持ち出すまでもなく

*2:出典は虚淵玄ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ」

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