復讐 THE REVENGE 消えない傷痕

★★★★☆:1997年 日本

  • 製作:須崎一夫
  • 企画:神野智
  • プロデューサー:伊藤正昭 下田淳行 鎌田賢一
  • 監督:黒沢清
  • 助監督:吉村達矢
  • 脚本:黒沢清
  • 撮影:柴田高秀
  • 撮影助手:安田圭 寺田緑郎
  • 録音:郡弘道
  • 照明:金沢正夫
  • 編集:鈴木歓

出演:哀川翔菅田俊,小林千香子,逗子とんぼ ,井田州彦,諏訪太朗,しみず霧子,仙波和之,芹沢礼多,三上剛史,倉田昇一,賀川黒之助,根岸大介,大森南朋,なかはら五月,下元史朗,大杉漣,塚原孝則,澤山雄次,その他

 本当に乾いている。カラカラに乾いた銃撃音が、パンッ…パンッ…と響く。無造作に撃つ。無造作さを際立たせるスムーズかつオーソドックスな演出。無造作な死と、カラカラに乾いた復讐。おまけに復讐される老人もカラカラに干からびてしまっていて多少萎えているのかどうか、それすらオクビに出さず哀川翔の演じる安城伍郎は、殆ど完璧に計算し尽くした復讐を続ける。吉岡(菅田俊)の奇行が目立つのは、安城にそれだけ惚れこんでるからかな?とかいらない妄想をしながら引き込まれる。

雪の断章―情熱

★★★☆☆:1985年 日本
雪の断章-情熱- [VHS]

  • 製作:伊地智啓 / 富山省吾
  • 監督:相米慎二
  • 助監督:米田興弘
  • 脚本:田中陽造
  • 原作:佐々木丸美
  • 撮影:五十畑幸勇
  • 音楽:ライト・ハウス・プロジェクト
  • 美術:小川富美夫
  • 録音:斉藤禎一
  • 照明:熊谷秀夫
  • 編集:池田美千子

出演:斉藤由貴, 榎木孝明, 岡本舞, 矢代朝子, 藤本恭子, 中里真美, 伊藤公子, 東静子, 高山千草, 中真千子, レオナルド熊, 伊達三郎, 斎藤康彦, 酒井敏也, 加藤賢崇, 森英治, 大矢兼臣, 寺田農, 伊武雅刀, 塩沢とき, 河内桃子, 世良公則,その他

 「あしながおじさん」か「源氏物語」か+復讐+推理劇 with アイドル斉藤由貴というわけで、相米監督の映画に出てくる当時のトップアイドルたちはみんな相米色をしていることを確認しながら、 丹念に育て上げた紫の上が、難しい年頃に突入したのを目の当たりにする世良公則榎木孝明の2人の光源氏の煩悶を観る。おまけに煩わしい「世間の目」カネさん(河内桃子)。
 見かけ上透明な関係性を成り立たせていた場、ガラスのようなそれが偶発的に叩きつけられる疑念によって割れて崩れ去った後、互いに言葉が使えなくなってしまう苦しみは、台風クラブの中では、「ただいまー/おかえりなさい」に集約されていたのだが、この映画の中でも、黒い波に打たれる世良、思い出深い服をハサミで切り裂く榎木という形で現前する。
 こういった「でぃすこみ状態」には、当然陥りたくはないし、普段から極力避けているつもりなのだが、いざこうして見せられると、やはり痛々しくリアルで切実なものだと思う。「でぃすこみ状態」こそ人間関係の基本だなどと、あえて言ってみる。だから道化師のマスコットが常に必要なのかもしれない。

THE SECOND CIRCLE (КРУГ ВТОРОЙ)

★★★★★:1990年 ロシア

  • 監督:アレクサンドル・ソクーロフ
  • 脚本:ユーリ・アラボフ
  • 撮影:アレクサンドル・ブーロフ
  • 美術:ウラジミール・ソロヴィヨフ
  • 音楽:O・ヌッシオ「音楽と絵画」
  • 録音:ヴラジミール・ペルソフ
  • 編集:ライサ・リソヴァ
  • 監修:タチヤーナ・スモロジンスカヤ
  • 製作:V・D・シュリーク 

出演:ピョートル・アレクサンドロフ, ナデージダ・ロドノヴァ, タマーラ・チモフェーエヴァ, アレクサンドル・ブィストリャコフ,その他 

 父の死に直面して、その埋葬の手続きに翻弄される青年(ピョートル・アレクサンドロフ)。蒼白い殆ど陰影だけの画面のなか静かな緊張が持続する。埋葬屋(ナデージダ・ロドノヴァ)は立て替えた葬式資金のことで頭が一杯。おろおろする青年を嘲り、ののしり、青年は父の遺体に靴下をはかせるため、自分の靴下をズリ下ろす。弔うものが、もはや自分しかいない故郷における埋葬の苦しみ。

けんかえれじい

★★★★★:1966年 日本
けんかえれじい [DVD]

出演:高橋英樹, 浅野順子, 川津祐介, 玉川伊佐男, 片桐光雄, 野呂圭介, 日野道夫, 浜村純, 福原秀雄, 恩田清二郎, 加川景二, 長弘, 杉山元, 夏山愛子, 柳瀬志郎, 宮城千賀子, 佐野浅夫, 加藤武,その他

 叩けば鮮血が飛び散るような青春の日々、ハラハラと舞い散る桜の下でミチコお嬢さん(浅野順子)の手を引くと、軟派呼ばわりを受ける旧制中学生キロク(高橋英樹)。激しいけんかの日々。ワーッと湧き上がる大喧嘩の砂煙。ドキッとするようなバイオレントな描写。釘に、たわしに、剃刀。でもちょっと臆病なキロク。
 あまりに暴れまわるキロクに情操教育が必要とおもったミチコは仲良く並んでピアノを教えるが、キロクは勃●を抑えるだけで、一苦労、二苦労。その煩悶を日記に掻き付け、けんかにぶつけ、頭の固い教練教官(佐野浅夫)にぶつけ、岡山を飛び出し、会津に高飛び。会津に飛んだ後もジャンじゃかけんかにアケクレ、ある日なんだか「凄い奴」を見たりしながら、じゃんじゃかけんか。
 しかしある日たずねてきたミチコは修道院へと入るという。障子越しに指を絡める2人、別れの雪、雪の中の行軍部隊にもみくちゃにされるミチコ。落ち込んだキロクの心を捉える2.26の「大喧嘩」のニュース。騒然となる会津。キロクがかつて見たことのある「凄い奴」それは「大喧嘩」の思想的首領、北一輝だった。思わず機関車に飛び乗るキロク。一路東京を目指すのであった。

Elephant

★★★★★:2003年 アメリ
エレファント デラックス版 [DVD]

  • Writer/Director:Gus Van Sant
  • Producer:Dany Wolf
  • Executive Producer:Diane Keaton
  • Executive Producer:Bill Robinson
  • Director of Photography:Harris Savides
  • Sound Designer:Leslie Shatz, C.S.T.
  • Casting Director:Mali Finn, C.S.A.
  • Casting Director:Danny Stoltz
  • Associate Producer:JT LeRoy
  • Associate Producer:Jay Hernandez

John Robinson, Alex Frost, Elias McConnell, Eric Deulen, Nathan Tyson, Carrie Finklea, Kristen Hicks, Alicia Miles, Jordan Taylor, Nicole George, Brittany Mountain, Bennie Dixon, Timothy Bottoms, Matt Malloy,…

 コロンバイン高校銃撃事件を扱った、Gus Van Santの原色鮮やかな2003年カンヌ受賞作。物語性を完全に拒否しつつ、一見何の問題もなく明るい日溜まりの中で営まれる学園生活を淡々とした筆致で描きながら、決定的な時刻に至るまでの同一の/複数の時間を幾度も角度と対象を刻み、変化させ、入れ換えながら映し出し、繋ぎ変えてゆく。その手法は狡猾なほどに巧みだ。
 対象となる少年-少女たちの日常を隅々まで照らしながら、その中で鬱屈し、弾けた2人の少年のdie gottliche Gewaltを映し出すキャメラ

ハリケーンと宇宙戦争

 ハリケーンの避難写真。車が連なり、逃げてゆくその写真を見て、はからずも想起したのは宇宙戦争の避難シーン。スピルバーグ宇宙戦争は、その被害描写が、異様なほどに鮮烈で暴力的な映画だったことを思い出す。あれほどの巨大な破壊の前に、逃げ回ることしか出来ない主人公。その姿は、H.G.ウェルズ原作の古典的な物語の破滅的な馬鹿馬鹿しさとは裏腹に、非常にリアルだ。
 何かを、(そこでは自分の子供を)守るために、逃げること、つまり勇ましく自負心を鼓舞するがゆえに危険なだけの「積極的な戦い」にあえて背を向け、*1より困難な闘いを持続すること、生き抜くこと*2
 映画から何がしかのメッセージを読み取るという行為は、作品の矮小化をもたらすだけの陳腐な試みに過ぎないと、十分に自戒の念を込めつつも、あの映画からメッセージを受け取るとしたなら、そんなところだろう。
 ハリケーン、台風、地震、(或いは、戦争)。巨大な破壊をもたらすものの前にヒトはあまりにも無力で、頼りない存在でしかない。あらゆるインフラが引き剥がされ、剥き出しとなった生に直面しながらも、まだ、何がしかの戦いが可能なら、それはただ、生き抜くことそれ自体に向けられた戦いであって、決してそれ以上のことは、望めそうにはない*3
 被害が、最小限に抑えられることを今は、すこしは祈ろうと思う。

*1:そのために、そのような戦いに赴こうとする人物の、殺害さえ密かにおこなうトム・クルーズの姿は、やはり評価の大きく分かれるところではあるのだけれど。例えば「ゼイリブ」のあの瞠目すべき、サングラス・ファイトの演出とは対極に位置するといってもいいかもしれない。

*2:その一方で、アメリカ合衆国にさえ、逃げることすら選択できない人々が、多数いたし、恐らく今もいるということも忘れることはできない。

*3:ただし、別の観点から見るなら、不十分な防災対策と財政難の関係性などについて、なにかしら現状に対する建設的なかたちでの批判が、必要なのではないかと思う。「不十分 防災対策 財政難」でググるだけでもいろいろと考えさせられる。

100th Window

★★★★☆:トリップホップ / ブリストル

100th Window

100th Window

 Andrew Vowles (Mushroom)脱退後、Grant Marshall (Daddy G) とRobert Del Naja (3-D)の2人になった、Massive Attackの通算4枚目のアルバム。Guest VocalにSINEAD O CONNOR、HORACE ANDY。
 買ったときは、なんかMassive Attackじゃないみたいと、思ったのを覚えている。どことなく、音圧が弱く、いつもの圧迫されて打ちひしがれてサイコーみたいな感情が生起しなかったし、いつも何曲かは、入っていた演歌のようなちょっと濃い目のメロも少ない気がしたし、浸りこむような陶酔感も襲ってはこなかった。
 久々に聴き直してみても同じような気持ち。だが、このちょっと距離でも取ろうかという感じのクールさが、今は逆に心地よく感じる。

Future Proof / What Your Soul Sings / Everywhen / Special Cases / Butterfly Caught / A Prayer For England / Small Time Shot Away / Name Taken / Antistar