デスマッチメモリーズ

ビオワインデスマッチにお呼ばれした話である。


都内東横線沿線某所。
当日ようやく発表された場所は、駅から徒歩12分。
颯爽とスマートフォンgoogleマップを操り、近道発見と先を急ぐと、立ちはだかる目黒通り(たぶん)。
結局回り道が必要なのだ、人生には。


玄関で迎えてくれたのはお久しぶりのtokoriさんであった。相変わらず素敵である。
声がかっこいいし、タイツもかっこいい。


コンクリート打ちっぱなしのデザイナーズマンションに、死にたがりたちが続々と集まってくる。
キッチンでは正気の沙汰とは思えぬ肉塊が、行儀よく解凍されている。
bitsoilさんの冷蔵庫は、一人暮らしとは思えぬサイズだ。
触れてはいけない過去が冷蔵されているということである。


ハートランドで乾杯したりして、運ばれてきたmymotさんのタイ料理に感嘆する一同。
盛り付けも美しいし、味も上品でとてもおいしかった。
揚げレモングラスはかつらにしてかぶってかえりたいくらいよかった。

ホストのbitsoilさんが何やら芋を茹でている。
nanaoさんは専用の包丁で肉塊を肉屋さながらに切断している。
そして自分はソファでぼんやりしている。

これはいかんと思って立ち上がりオロオロしたりして、仕事がないことは案外つらいことだなと思った。

しかし、カワウソが仔牛の牛タンをさして「仔牛はタンを抜かれたけれど今も元気で暮らしているよ」などと適当なことをぬかしていて、コイツは本当にダメなヤツだと思って安心した。
初対面だが予想以上にカワウソに似ていて驚かされた。


懸命な判断で、先に会計をはじめるbitsoilさん。
クレジットカード利用OKということで個人宅でぞろぞろとカード会計。
スーパースキミングおじさんのもとにクレジットカードをもって並ぶさまは、一種異様な光景であった。


bitoilさんが密造したポテトサラダは何だか色黒で、なんというかエロい…見た目で中毒性のある味だった。
エロポテトと呼ばれていたが、完全に語感がエロビデオなのでアウト。


焼きあがったnanaoさんが腕をふるったタンと羊はそれはおいしくて、うまいしか言えない不具者と化した。

そしてワインは出していただくもの出していただくものそれぞれ選ばれたもので、面白くて、美味しくて、これまたうまいしか出てこなかった。


そんな最高の時間は最後まで続かない。


曇りガラスのトイレからみえるhironica、
激務のため真っ先に寝はじめるhironica、
トイレから帰ってこないtokoriさん、
寝たhironicaの分までジェンガで奮闘するmocalogさん、
慣れない人間界での生活で疲れた脚をmymotさんにマッサージさせるカワウソ。
次第に何だかよくわからない状況となり、ひとりまたひとりとデスマッチの犠牲者が増えてくる。


最終的に明らかに終電間に合わないのに、ゾンビたちは終電を目指して歩き出す。
しかし終電はゾンビを待ってはくれない。
やむをえずオシャクソマンションへ引き返す。


途中のセブンイレブンで、「あのオシャクソベランダで花火したら楽しかろう」と何者かが脳に直接語りかけてきて、花火を購入。
しかしそこは大人である。
大人の配慮で煙の少ない花火をチョイスするあたり、確実な自分の成長を感じた。


戻ってみると、痛ましいことに家主が死んでいた。
グッドデザイン賞受賞のいい感じの建物の前で、ひとしきり土をほじくったり、小石を投げたりしたあと、僕たちは郵便受けに煙の少ない花火をぶち込み、お金の力でかえった。


今回の個人的な反省点は、デスマッチを恐れるあまりセーブしながらのんでいたため、比較的正気を保ってしまった点である。
お酒の席での正気ほど余計なものはない。
次の機会があれば、もっと死にたい。

死にたいにポジティブな意味を見いだす、デスマッチはそんな大人の哲学的な営みだったのだ。(知らないけれど)