中堅企業での ERP 導入プロジェクト 2/4

中堅企業での ERP 導入プロジェクト 1/4では、ERPプロジェクト、と言いながらも、5つのポイントを指摘しました。その中には、組織改革や業務改革も含まれており、ERPと呼びながらも、かなり広範囲に渡っている事が容易に把握できるでしょう。ただし、これまでは、こうした業務系のプロジェクトは単独で推進されている、または業務系のプロジェクトが上位にあって(優先されているということ)、ERPはあくまでも業務系のプロジェクトの下についていることが大半だったのではないでしょうか。私も、これまでは業務系のコンサルタントでしたから、情報システムが上位に位置付けすることなどもっての他でした。しかし、ERPを知るにつれて、徐々にその考え方に変化が生じてきたことは、今更詳細に記述することは止めておきましょう。

今回は、組織改革の部分についてちょっと詳細に記述しましょう。
組織改革では、以下の事に関してコンサルタントがメスを入れる必要があります。

  • 業務分掌の把握と改定
  • 組織構造の改定
  • 新組織構想に基づいた経営指標の設定
  • 方針管理の仕組み概要設計

これで ERPにおけるKPIを設定する必要が出てきます。私は、上記を実施するために Value Engineering (価値分析)という手法を適用するのが最も早いと信じていますが、それがBestであるかどうかは、未だに明確ではありません。しかし、経験上これが最もFitするようです。

まずは、ERPを実施しようとされているお客様に対して、業務分掌を見せて頂くように依頼すべきです。業務分掌には、通常各ポジションの要求項目(Skill-Set)、権限(意思決定できる範囲)、業務責任(業務範囲)が示されているはずです。これによって、部長や課長の役割が明確に定義されているはずです。ただ、通常は、この業務分掌が曖昧だったり、長年改定されておらず、現場での動きと相違しているのが通常ですから、コンサルタントとしては、間違いや誤りを指摘するには、格好の材料になるはずです。ちなみに、私が担当したプロジェクトでは、業務分掌の改定を実施しました。ただ、残念ながらこの業務分掌をもとに権限設定したかどうかは確認できていません。

業務分掌をとりあえず確認して、現状と掛け離れているようであれば、新組織構築の提案を入れることが必要です。まずは、現状の組織図を見て(必ず、会社には存在するはずです)、問題点を指摘する必要があります。部長はどういうポジションにいるか、課長は、本部長は・・・肩書きと業務分掌がマッチしているかを確認することは、組織図を把握するには重要な作業です。これが、出来るようになれば、ちょっと自慢できるでしょう。世間のコンサルタント、特にERPコンサルタントでここまで可能なコンサルタントを見たことがありませんから・・・あくまでもERP導入が目的ですから、組織図と業務分掌が、ERPの権限設定とKPI設定には不可欠なことをお客様に説得することです。

私は、組織的に中小企業の組織は、最大で4階層程度が限度だと経験的に感じています。最近では組織というのはフラットがいい、といっていますがこれはコミュニケーションが出来ていない企業に限って、そうした発想になっています。階層があってもコミュニケーション手段と、権限と責任が明確に定義されていれば、上手く運用できるはずです。

さて、もし組織図に偏りがあったり、業務分掌と掛け離れているようであれば、新組織構築の提案を入れます。実は、組織構造には正解がありません。よって、こうしたらこれだけ良くなる、何てことはありえません!ただ、新しく組織を構築することによって、これまで眠っていた"モチベーション"が上昇することが多々あります。また、ある手法に基づいて構築した組織は、根拠があると錯覚をお越し、自身満々で業務遂行を継続することが多いようです。ここでいっている手法とは、"Value Engineering:VE" を指しています。詳細な手順はここでは記述しませんが、VE は、製品の機能を分析して、原価低減へ繋げる手法として良く設計で活用する手法ですが、かなり前から組織設計でも活用されています。

VEによって、一旦組織構想が完成したら、各機能に対して経営指標を設定していきます。各業務は、数値で計測が可能な尺度で測られるべきであって、感覚で評価すべきではありません。VEで作成された樹形図(詳細は、別の機会に記述します)全てに設定します。ここまで出来れば、新組織に基づいたKPIを設定できたことになりますから、ちょっとERPの雰囲気が出てくるでしょう。

私は、このKPIの設定が完了した後、マスタデータの設計をスタートさせる必要があると信じています。KPIを計測するために、マスターデータは揃っているのか、新しいキーが必要ないか、等々を設計していく必要があります。残念ながら、いままで実際に実施したことはありませんが・・・

さて如何でしょうか。どれ位把握できますかね・・・ここまで、Scopeを広げなくても・・・と考えている方もいるでしょう。それはそれでOKですが、少なくとも本当に効果があるERPは、まずはこれくらい範囲を広げておく必要があるでしょう。