ザカリーに捧ぐ 2008年米

若くして殺されてしまったアンドリューの、残された息子ザカリーのために、友人の映像作家カートが撮ったアンドリューの人生と人柄を追うドキュメンタリー。
アンドリューはザカリーに会うことなく亡くなってしまったため、いつかザカリーに見せるために撮られたこのビデオは冒頭「パパはこういう人だったんだ、みんなに愛されていたんだよ」というメッセージ性が強かったのだけど、やがて物語は思わぬ方向へと進みだす。

アンドリューの両親の、息子に対する愛、孫であるザカリーに対する愛情はすごい。なんか本当に二人とも善良で愛に満ちていて、アンドリューを殺した犯人であるシャーリーとは真反対の人間であると言える。多分シャーリーは、自分を救うのはアンドリューのような人間だとわかっていたのだろうな。世界を信用できない人間にとって、色んなものを無条件に信じている人間っていうのは眩しく見えるものですし。
アンドリューが亡くなってから、生きる理由を探すようにザカリーのための活動にのめりこんでいく二人の様子が鬼気迫る。そうしてないと大切な人を失ってしまったとき、まともでなんかいられないのかもしれない。

シャーロック・ホームズ 2009年米

シリーズその2。美術も衣装も美しく、すごく完成度の高い一大趣味映画。「ホームズって実はこんなんだと思うんだよねー!」っていう作り手の燃えが随所にちりばめられていて、楽しそうで大変よろしい。ホームズは推理のことだとか自分の興味があることになるととたんに世間と没交渉になるくせに、ワトソン君にかまってもらえないといきなり捨て犬みたいな顔になるところがいい。弱点があるヒーローはステキだ。あとアクションがスピード感があってすばらしい。ロバート・ダウニー・Jrのアクションが、地に足の着いたリアルな感じで好感が持てます。ワトソン君のジュード・ロウも動く動く。見ててすごく気持ちのいい映画。次回作に期待してしまう。

アイアンマン1・2 2008・2010年米

ロバート・ダウニー・Jrの、人間としてはダメだけど天才、だけど憎めないシリーズその1。
主人公の正義感のあり方とか(自分が作った兵器で紛争がおきていることを悔いていながら、結局それを制御するために作るのはまた兵器)、自分のテーマパーク造っちゃうとことかいろいろツッコミ所はあるものの、ものすごくキャラが立っていることは間違いない。子供っぽくて、だから天才の自分を制御しない。そこにカタルシスがあるように思います。ロバート・ダウニー・Jrの憎めない感じのキャラクターもいい味で、姿勢のよさとか鍛えた体つきとか、43歳には見えねぇ。

40歳の童貞男 2005年米

思ったよりもずっと質の高いコメディ映画でした。なによりもこの童貞男に対する描写に愛を感じるところがいいな。ある程度の年齢以上で童貞である、というコンプレックスを持つ人にだけじゃなく、誰でもが持ってしまう、世間に対する見栄の滑稽さみたいなものが、この話を普遍的なものにするんじゃないだろうか。あと友達がすげーいいやつで燃える。押し付けがましいとこもあるけど、それは友情のためなんだ。
とりあえず突っ込んどくべきポイントは、主人公モテてんじゃないかよwwwわりとwwwってところ?wでも自分は出会いがないと思っている人も、何らかの恋愛のチャンスって意外とあったんじゃないかしらん。

シャネル シャネル 1986年

シャネルの生涯や、そのファッションに対するスタンスなどを歴史の流れに沿って解説してくれるドキュメンタリー。シャネル自身が語る言葉や、その後継者、カール・ラガーフェルドから彼女を見たインタビューなんかが興味深い。いろんなドキュメンタリーを見るたびに思うけど、第一線にいる一流の集中力と、それを持続させるエネルギーはすごい。彼女は言う、「働かないなんて信じられない」「翼を持たずに生まれたなら、生やすのだ」と。センスももちろん大事なんだと思うけど、この執念こそが天才を作るのじゃないだろうか。

ナイト&デイ 2010年米

娯楽映画なんだけれど、その中で独自の進化を遂げている変な映画。おもしろいけれども、全然重たくならない。見たあとに何も残さない、娯楽映画の見本みたいなよくできた映画なのに、どこかその枠から逸脱しているのはトム・クルーズのキャラクターのせいなのかしら。よそでレビューを見たら、「中年下り坂のカップルが頑張っている感じ」って言われてて納得。まさにその感じが、変な奥行きをもたらしている気がする。主人公の二人ともが、もう生活の重さを感じさせないでいることはできないから。