6月8日 International Center for Photography

International Center for Photography
企画展2つ。Perspectives 2010、傾向のばらばらな5人の作家による近作展。For All the World to See、公民権運動を巡る、視覚メディアの果たした役割の検証。後者では社会的、政治的主題が優先されているが、特にこの問題に関しては、まさに視覚を巡る問いであって、美学的視点と社会的な観点が分かち難く絡み合っている。それにひきかえ前者の展示では美学ではなく、社会や哲学が主題化されているように見えるものの、美的趣味の問題がまったく看過されたまま。言ってみれば政治と芸術、社会と個人の分離が前提とされた上で癒着が計られている。

6月6日 Karol Armitage

Walter De Maria: The New York Earth Room
なんだか知らないがもの凄く暑い部屋で、土の周辺は少し黴びている。床が土の重さに耐えられなくて真ん中がへこんでいるのかと思ったが、そういうことはないみたい。金色の棒と違って、土そのものなので、崇高とかとは無縁で気持ちよい。
Sergei Tcherepnin "A Queer Balance"
@ AUDIO VISUAL ARTS
小さな画廊でのサウンドインスタレーション。スピーカーからとピエゾで鳴らす日用品(水差し、鍋など)でゆっくり変化する持続音。音がそれ自体で変化していくのと、耳の位置による音の変化の境界。ただこのコンセプトにはマリアン・アマシェという先駆者がいる。アマシェのライヴの強烈な体験を思い出してしまう。
Armitage Gone! "Three Theories"
@ Cedar Lake Theater
相対性理論、量子力学、弦理論にインスパイアされたダンス。やはりいい加減な解釈に過ぎないが、情緒や表出と無縁でひたすらエネルギッシュに動き回るダンスは悪くない。とはいえ結局のところ面白くしているのはリス・チャタムの音楽。一番前で見ると、バレエって表情が難しい、と思ってしまった。ダンサーに蹴りを入れられる。

6月5日 Isamu Noguchi, Tony Conrad, Loud Objects

Noguchi Museum
不便なところにあるので行きそびれていた。決して興味のある作家とはいえないけれど、一度はきちんと見る必要があると思っていた。狭い空間に作品が林立するのを見ると侘び寂びをアメリカで展開した作家とはいえない複雑さがある。美術館の常設展で見かける作品は単純なものが多いが、ここにある作品は素材も手法ももっと複合的。特にアルミニウムの作品が面白い。

Greater New York
@ PS1
ここ5年のニューヨークで出て来た新しい世代の作品を紹介する展覧会。当たり前だが、まったくてんでばらばらな作品が並んでいる。敢えていえばパフォーマンス系が多いのは事実。例えば私たちの世代にはなかった熱気がそこにはあり、それ自体は悪いことではないが、個々の作品は真面目に受け取るのが憚れるほど稚拙なものばかり。更に問題は、熱気だけで個々の作品をまとめて押し切ってしまう、キュレーションのいい加減さで、企画そのものへの自信のなさだろうか。パフォーマンスも見たが、友達向けの気軽なノリ。それなりの内容をいつも提供している美術館だが過去最悪の企画。ここでは美術は社会学的興味の対象でしかない。正式な出品作家ではないようだがいつものようにKate Gilmoreだけが水準以上。

Yosuke Ito
@ M55 Gallery
絶賛する訳ではないがPS1の後で見ると、芸術の自律に向けた真摯さに打たれる。

((audience))
@ Ramiken Crucible
サラウンド映画祭のベネフィットコンサート。Tony Conrad + MV Carbon/ トニー・コンラッドは振り子の糸を弾くのとヴァイオリン。MV Carbonはエフェクトをかけまくったチェロとオープンリールの手動操作。ノイズミュージックな音だが、トニーの無茶ぶりはいつ見ても凄い。DUBKNOWDUB/ 変な格好したラップトップとショッピングカート+電飾にエレクトロニクスを載せた2人組。Loud Objects/ 蛍光灯にチェーンソーをつけて絶叫するだけ。最近のネタの合成だが、完全アコースティックのいさぎよさもあって、素晴らしいパフォーマンス。トニー、トリスタン、レスリー、クーネルに別れを告げる。

6月4日 The School House

Ryan Sawyer, Audrey Chen + Tomomi Adachi + Luca Marini, Nate Wooley
@The School House
アーティストが共同生活しているブッシュヴィックのロフトでのコンサート。告知も含めパブリックなものなのかプライヴェートか分からない領域のイヴェントはこのエリアでは大変盛ん。ギターアンプ2台を並べてPA。機材は山のようにあるが、ほとんど故障しているとのこと。Ryan Sawyer/ 発声とソロドラムによる、フリージャズな内容。Audrey Chen + Tomomi Adachi + Luca Marini/ ルカのドラムとは初めて。Nate Wooley/ トランペットソロ。ロングトーンの音色のゆっくりした変化と、特殊奏法満載の素早い動きが交錯する。

6月3日 Ken Jacobs, Brenda Hutchinson

チェルシーで画廊巡り。全体のレベルは高く、下手に美術館で現代美術を見るより面白い。美術館はここでは、その制度的な存続に汲々としているように思える。

EAIのViewing Roomでヴィデオ。
The Wooster Group/ "The Emperor Jones"ヴィデオ作品。まるで歌舞伎のようなスタイルで、特にダンスシーンが強力。ウィレム・デフォーは本当に変態的で癖になりそう。キャンプという観点から考えたい作品。何いってるかはほとんど分からないが。他、"Flaubert Dreams of Travel But The Illness of His Mother Prevents It"などを飛ばし見。
Ken Jacobs/ 近作と"Blonde Cobra"。"Capitalism: Slavery"を初めとする、90年代以降の3Dアニメは初めて見る。今なお果敢に新しいテクノロジーに挑戦するだけでなく、そこに美意識と政治性を結合させて盛り込んだ作品群。凄い。"Blonde Cobra"これを正確にジェイコブスの作品といえるかは分からないが、とにかくジャック・スミスのパフォーマンスを想像する助けにはなるだろう。奇妙な時間の流れ。最初に上演に合わせてラジオを操作するインストラクションがある。
"The Medium is the Medium" WGBH制作のヴィデオ・アート・コンピレーション。Aldo Tambellini、Thomas Tadlock、Allan Kaprow、James Seawright、Otto Piene、Nam June Paikの順。カプローのクローズド・サーキットによるコミュニケーション/ハプニング、ピーネのスカイ・アートとライトショーの合成。でもパイクの観客参加をうたった訳の分からなさが一番面白い。
Lawrence Weiner/ 最初のヴィデオ作品"Beached"浜辺の木を陸にあげる5つのやりかた。"Do You Believe in Water?"7人くらいのパフォーマーの語りと仕草が複雑に交差するシアター作品。
"The Kitchen Promo Tape"/ 74-75のパフォーマンスのコンピレーション。スティーヴ・パクストンの早い時期の、技術体系になる前のコンタクト・インプロヴィゼーションがとても面白い。
"Rhys Chatham: A Four Year Retrospective"/ リス・チャタムの初期作品集だが、曲目も作曲年も不明。最初の作品はギター2人が向かい合ってひとつの和音をハイアットのビートに合わせて延々弾き続ける。まったくエレキギター+ロック・フォームによるラモンテ・ヤング。後の方に"Guitar Trio"なんかが入っている。
Gordon Matt-Clark/ ドキュメンタリー。家屋を切る系統の作品を中心に。本当かどうか知らないが、全部作業を一人でやっていてびっくりした。ドキュメンタリーとしては冗長かな。
 
Travis Justとミーティング。
 

Brenda Hutchinson
@ Roulette
最初に兄弟との昔話があり、携帯の留守電メッセージと子供の頃に歌った曲による、過去の召還といった内容。メッセージのライヴ・プロセッシングのあと、その兄弟の声が聞こえて来るという、シアトリカルといってよいのか、妙なパフォーマンス。後半は事前の公募された人たちによる観客への贈り物。ハッチンソンは紙コップの作り方。他の人達は歌か詩が多い。最後の大勢のアカペラでクラフトワークの「コンピュータワールド」をやるのが面白かったけど、面白さを狙っている訳ではないんでしょうね。どちらも微妙な内容。