[裏ワザ]納豆のタレの使い道


 最近の納豆にはカラシと一緒に必ず「納豆のタレ」というのがついています。私はカラシは使うけれども「納豆のタレ」は使わず生醤油で食べます。

 納豆そのものがすでにアミノ酸に分解された発酵食品なわけで、そこにカツオ出しとか昆布出しとかが加わると、うるさい味に感じられるからです。

 したがって私が納豆を食べると、食べた数だけ「納豆のタレ」が残って、冷蔵庫にたまっていきます。貧乏性のため捨てるのには抵抗があります。ときどきカボチャやサツマイモなど単品の煮物に使うのですが、それもうるさい味になる気がしてあまりやらないので、たまる一方です。

 ところがこのたび、決定版的な使い道を発見して、在庫を一掃することができました。

 太田垣晴子さんの『きょうのごはん』に出ていた、冷蔵保存用ビニール袋で作る即席漬けに入れてやればいいのです。

 作り方は以下の通り。

1) 大根4センチ分とキュウリ1本を拍子木に切り、冷蔵保存用ビニール袋に入れる。

2) 大さじ3杯の酢を入れる。

3) (太田垣バージョンだとさらに醤油大さじ2、砂糖1杯を入れるのだが、そのかわりに)醤油大さじ1、納豆のタレ大さじ2杯を入れる。

4) 好みに応じてトウガラシ1本、昆布3×3センチ、セロリ・ニンジンなど香味野菜適量を刻んで入れる。

5) ビニール袋のふたを閉め、少し揉んで冷蔵庫で保存する。3時間で食べられる。

 他に冷蔵庫にある「マグロ丼のタレ」でも、ラー油が嫌でなければ「餃子のタレ」でも、カツオのたたきについてきた「レモン汁」でも、鍋の季節が終わったのに残ってしまったポン酢醤油でも「すき焼きの割り下」でも、何でもこれに入れて片づけてしまいます。冷蔵庫の中がかつてなくさっぱりし、幸福な気分になれました。

 貧乏性の方はおためしあれ。

朝日新聞の与太郎見出し

 昨日の、『朝日新聞』朝刊14版一面(配達された紙の新聞です、ネットではなくて)に、すごい見出しがあったので、アップしておきます。ここでは政治の話はしたくはないのだが、あんまりひどいので例外とします。見出しの字数の制限の厳しさも、新聞社では、ヒラの記者が記事の本文を書き、デスクがほとんど数秒から数十秒考えただけで見出しをつけるのだ、という事情も重々承知しています。しかし、それにしてもこれは、とうてい普通のIQの人間が、普通の判断でつけた見出しとは思われません。

曰く、

 「日米、確証なき警戒 北朝鮮核実験」


 「警戒」というのは、「確証」がなければしてはいけないものなのでしょうか。

 むしろ、「確証」があったら、「警戒」どころのさわぎではないのではないでしょうか。

 いかに北朝鮮びいきの朝日新聞でも、これはちょっとまずいのではないでしょうか。

漫画『NANA』

 遅ればせながら買って読みました。立派な物語づくりの手腕だと思いました。

 あのカッコいいNANAさんその人の心に独占欲を掻きたててしまうハチ子さんの愛玩動物っぽい魅力。あれは何か、とよく考えてみると、寅さんなんですよね。

 共通点。

1) 世間の常識とは違う確固たる思いこみ(世界観)がある。ただし自覚はなく、それが当たり前だと思っている。

2) 生活力に乏しい。

3) 次々と美貌の異性に惚れる。

4) 作者が腕によりをかけて描いた、常識があり、生活力に長け、異性との交際にも節度があり、かつ魅力ある脇役たちすべてから、愛され、大切にされている。

 これはユートピアだわ。

トム・クランシーの宗教

 初めて知りました。熱心な読者なら誰でも知っていることなのかな。

Father of four. Catholic. Owned and operated independent insurance business before starting writing career. Did not serve in any branch of the US Military. Jesuit education - 8 years.

 Tom Clancy FAQというサイトからとってきました。唯一自分で公表しているプロフィールなんだと思います。

四人の子女あり。カトリック教徒。作家になる前は自営で保険業をやっていた。アメリカ国軍のいずれの部門でも服務経験はない。8年間イエズス会教育機関に在学した。

 小説の中身からみて相当カトリック色の強い人だと思っていましたが、そうか、イエズス会の学校にいたんですね。

 カトリックといえば第二バチカン公会議以降左翼的な動きが目立ちますが、クランシーみたいな立場が出てくる保守的な土台もしっかりあるわけです。

 そういう立場のアメリカの熱心なカトリック教徒に、日本があまり好かれていないとすると、ちょっと先行きが心配だなあ。

 

セミニーズ続き

 まだやってます

いいいぢりに みちっぴいぢ きぢみに ちききり しんびきり しちいり。

 「みちっぴい」でバレバレですね。

えええてえてえ けめゑねけ
けめせねてめへ けてねけれ

 ヒントは「けめゑねけ」でしょうか。字ごとに行が(つまり子音が)ちがうとバレてしまうんですね。逆に、「えええてえてえ」みたいに、同じ行の字が並ぶとバレにくいわけです。とくに「えええてえてえ」は、ひとつまえの「いいいぢりに」と同じく「あいうえお」と「やいゆえよ」の共通文字「え」と「い」を迷彩に使っているので、さらにわかりにくくなっています。

みゐちしび ひにみみみぢみ にきりきり ちみにいりいに いきにいひぎり

ちみにゐい ちいにびちいに にぎりひび しにびりきちに いゐりみじしり

 二首目は、ア段に直してみると、たぶん一発で解けます。この歌の上の句はア段音が(つまり母音aが)ひじょうに効果的に使ってあることがわかります。
 

なんがん がじふなん がたんな あたわ からばらば やままばらさな がたかなら。

ゑてせね めめへ けへね けれ
えめね へべけゑ ねてけせめ

「ねてけせめ」でバレバレですね。

セミニーズと旧仮名遣い

 やってみてわかりましたが、このセミニーズ遊びは、新仮名だとあまり面白くないんですね。

 旧仮名だと「わゐうゑを」があるぶんだけヒントが多いんです。新仮名だと「あいうえお」と「やいゆえよ」だけでなく「わいうえを」まで「い」と「え」なので、イ段とエ段では「わ」と「を」が完全に隠れてしまいますから、ちょっとヒントなさすぎです。

 あと動詞「思ふ」の活用語尾の「はひふへほ」が意外にヒントになるのに対して、「思う」の活用語尾「わいうえお」はかえってミスリーディングになるんですね。

 たとえば「晴れたる青空漂ふ雲よ。小鳥は歌へり林に森に」ならば「はれたる あをぞら ただよふ くもよ。ことりは うたへり はやしに もりに」で、たとえばア段にすると「へれてれ えゑぜれ てでえへ けめえ。けてれへ えてへれ へえせね めれね」で綺麗に納得がいきます。

 しかしこれを新仮名で表記すると「はれたる あおぞら ただよう くもよ。ことりは うたえり はやしに もりに」となり、エ段にすると「へれてれ ええぜれ てでええ けめえ。けてれへ えてえれ へえせね めれね」となります。「えゑぜれ」が「ええぜれ」、「てでえへ」が「てでええ」、「えてへれ」が「えてえれ」になっている分だけヒントが減ります。

 また一面これをア段でいくと、「ただよふ」は「ただやは」ですが「ただよう」は「ただやわ」になり、「うたふ」は「あたは」ですが、「うたう」は「あたわ」になります。この「わ」は唐突かつミスリーディングですよね。ふだんわれわれは新仮名の「漂う」や「歌う」や「思う」の「う」がワ行の「う」だということを意識していないからそうなるわけです。

セミティック・ジャバニーズ(略してセミニーズ)

 唐突ですが、アラビア語の文字は子音しかないそうですね。小学館の百科事典によると、

他のセム語諸文字と同じく、アラビア語は主として子音のみを記し、母音およびその他の判別記号は必要に応じてのみつけ加えられる。

 ヘブライ語もそうだから、神さまの名前が「エホバ」だか「ヤハウェ」だか、字面だけではわからないというのはご存じの通り。

 本当にそれで読みとるのに困難を感じないのでしょうか。

 日本語でいえば、子音しか書かないということは、たとえばア段の文字ですべての音をあらわすということに相当します。

 ためしにやってみましょう。最初は朔太郎の詩。エ段でいってみましょう。旧仮名遣いです。

へれんせへ えけてせて えめへでめ
へれんせへ えめれね てへせ
 せめてへ えてれせけ せべれゑけて
  けめめねれ てべね えでてめん。
けしぇげ えめめてゑ えけてけ
 めでえれね めでね えれけけれて
ゑれへてれ えれせけけてゑ えめへめ
  げげてね えせね せねねめ
えれゑけけせね めええでれ けけれめけせね。

 驚いたな。意外に読めますね。「えけてけ」、「けけれめけせね」あたりが笑えますが、やはり韻律がしっかりしているからちゃんと詩になっています。

 こんなのはどうでしょうか。調子の高い散文です。ウ段。新仮名です(というか、私は字音仮名遣いがダメで、みなさんもたぶんダメでしょうから、旧仮名でも字音は新仮名にします)。

すんるふ ぶんぬんぬゆっつ むつむるるるくつう むづくるふっす、ぐうじゅつふ ぶんぬんぬゆっつ ううするるくつう むづくるぬずむ。くつつふ つむう ぐむうぬるすむるつむぬ ぐくぐうぐ むっつむすむくづううぬ ふうすするつくつぐうっつ。うむゆ つすくつぶう つっくんくうきゅうぬ づくすんゆる うぶうくうすくつう つぬぬすんしゅつくぬる むんしゅうぬ すつずつぬるゆうきゅうづうる。ううぬむぶんくふ くぬゆうきゅうぬううず するぬくつうるつむぬうむるつ。

 ヒントは最後に近い「ううぬむぶんく」でしょうか。次は茂吉の歌。旧仮名。

はたはさら わがまたからさ さんさんた からはかなたら わがまたからさ

まがまがは さかさらなまな たたまだな はばかやはばな ならなからかま

 前の歌は『赤光』で「さんさんた」、後の歌は『白い山』で「まがまがは」がヒントでしょうか。「からかま(けるかも)」が笑えます。

 最後は芭蕉の句。旧仮名。

なたかさや たはまなだまな やまなあた

いりいみい しぢにいきちひ いみにぎひ

すづくすゆ うふぬすむうる すむぬくう

 ああ、これがいちばんの難問ですね。何しろ短いからデータが少ない。ヒントとして季語に相当する部分をあげておきます。それぞれ、「なたかさ」、「いみにぎひ」、「すむ」です。

 うすむつ(お粗末)。間違いがあったら教えて下さい。