初心(うぶ)めの夏


 「ギャアアアアアア・・・!」と断末魔を叫びきったきり、そのまま男は絶命した。床に死体がごろり、と転がる。その全身は傷だらけだった。傷はどれも広く、深い。ついさっきまで体内をぐるぐる流れていた血が、ありとあらゆる傷口から、ぶくぶく泡を立てて吹きこぼれている。ぼくの目の前でひとつの命が今、消えた。

 ひとつの命を消した少女が、その傍らに立っている。恍惚とした表情で。少し身体を丸くかがめ、浴びた返り血をぽたぽた下へ落としながら、その血の元の持ち主の死体を――痛みと絶望に歪んだ死に顔を――うっとり穏やかに鑑賞している。左手には見るからにずしりと重たい日本刀。ひとつの命を吸いしぼり、赤く妖しい光を照らす。

「あのー・・・」

 と、ぼくは言った。

「あのー、もうそろそろいいですかね?」

「・・・ハッ!」

 もうまさに「ハッ!」としか言いようのない挙動で、瞬間、彼女が我に返った。スイッチが切れたのだ。

「ごっ・・・ごめん関口くん! ねえ大丈夫、血ぃかかったりしてない? 平気? あ、それより急がなきゃだよね・・・わー、もうこんな時間じゃない! ごめーん」

 途端に、あたふたと彼女は捲くし立てる。先刻まで男がどれだけ許しを乞おうが意にも介さず淡々と、しなやかで優雅に上品に刀を振っていた(人を殺すのに上品も何もあったもんじゃない、と普通は思うかもしれない。けれどスイッチの入った彼女は、本当に気高く、全身から気品を撒き散らすふうな艶やかさで、しゃらりと刀を振り下ろすのだ)少女にはとても見えない。

「うん平気。かかってないし、時間も気にしないで大丈夫。人を殺すときのアキコちゃんは本当、すごく綺麗で見とれてしまう」

 と、ぼくは言った。これは偽らざる本心だった。

「えーヤダようそんなの。それじゃだって普段の私は綺麗でも見とれもしないってことじゃん」

「そんなことないよ。普段のアキコちゃんも綺麗だし好きだよ」

 もちろん、これも本心。ただし「・・・そそっかしいけど」というオマケが付くのだが、それは口には出さなかった。



 彼女の名前は中善寺アキコ。どこにでもいるフツーの女子高生、16歳。明朗快活、ちょっぴりおてんば、成績は中の下、好奇心旺盛。そしてぼく――関口タツキのクラスメイトであり、ガールフレンドでもある。ぼくとアキコちゃんはフツーのクラスメイトとして出会い、フツーのフレンドにまずなって、いつしかフツーの恋人同士になっていた、

 ・・・ら良かったんだけど、彼女はフツーじゃなかったんである。

 彼女の半分はフツーの高校2年生の女のコ、だけどもう半分は、関東一円を支配する大暴力団・中善寺組の組長なのだ。「女子高生モード」の彼女は、そそっかしくて可愛らしい、くりっとしてて小猫みたいな女のコだけど、いったん「組長モード」になる(これをぼくは「スイッチが入る」と呼んでいる)と、そこには修羅としか言いようのない別の生命体が立っている。


 その修羅っぷりたるや筆舌に尽くしがたい。組長モードのアキコちゃんは徹底的に冷酷で、残忍で、淡々とした表情の裏で、心の底から愉悦しながら人を裂くのだ。ひとたび彼女の怒りを買えば、微塵の情けも容赦もなく身を刻まれ、嬲られ、分解されて殺される。ブレザーが返り血で赤黒く滲む。赤黒く滲んだ彼女は、けれどその暗い色をも取り込んで、信じられないくらい気高くて美しい。


 そもそも女子高生がヤクザの組長だなんて荒唐無稽きわまりないにも程があるのだが、先代(アキコちゃんの父)が病に倒れ、跡目について腹心を前に「娘に継がせる」と明言したとき、居合わせた誰ひとりとして異論を挟む者はなかったという。彼らは皆アキコちゃんの内の修羅を知っていた。その残忍さを畏れていた。その美しい強さを崇拝していた。

 床に臥せながら先代は言った、
 「アキコは確かに普段は可愛い女子高生だ。実に可愛い。あれだけ可愛ければそりゃあモテるだろう。わしはアキコにセーラー服を着せたかった。だが本人はブレザーのほうがいいと頑として曲げんでな。やむなくブレザーの学校へ行かせた。大変に心残りである。

 あとアキコはね、体操服のブルマ姿も実に良いんだよ。中学の運動会に行ったとき「恥ずかしいから写真は絶対に撮るな」と言われたが、あまりにも眩しかったので安田に隠し撮りさせたんだ。安田は見つかってアキコに惨殺されたが、命を賭けてフィルムを守った。漢だったね。惜しい男を亡くしたものだ・・・そのフィルムは今も銀行の貸し金庫に厳重に保管してある。週に1度は見に行くよ。これがもう何度見ても実に」

「あの、組長。僭越ながら、跡目の話からだいぶ組長の趣味の話にズレてきているような・・・」

 口を挟んだ部下はその場で射殺された。

「とにかく跡目はアキコに継がせる。見た目は女子高生だが、あれの中に本物の修羅が棲んでおることは皆重々理解しておろう。あれなるは真の極道の姿である。というか極道を超えている。わしの代では成しえず終いえた中善寺組全国制覇の夢、叶えるに足るはあれを置いて他におらん」

「Exactly.(その通りでございます)」

 と、腹心たち(マイナス1)は口を揃えた。

 こうしてアキコちゃんは中善寺組の組長になった。極道を超えた女――誰ともなく、やがて彼女を「超極道」と呼ぶようになった。



 りん、と風鈴が鳴った。

 「超極道モード」を解除したアキコちゃんは、その音で、ようやく完全に「女子高生モード」へ切り替わったようだった。女子高生のアキコちゃんと、男子高生のぼく。そこだけ見ればごくフツーのカップルなぼくらは、今夜これから夏祭りへ行く約束をしている。ごくフツーのカップルの、ごくフツーのデートをしに。なんか足もとに死体とかあるけど。

「よし、じゃあ処刑終了。お祭り行こう。準備しなきゃ」

 処刑とか言ってるけど。

「もー、バカのせいで関口くんとの大事なデートが押しちゃったじゃんよう。バカ、ほんとバカ」

 とアキコちゃんは惨殺死体の頭部をごつんと踵で蹴りつけ、さらに顔面をズドッズドッズドッと踏みつけた。3度めのズドッでぐしゃりとつぶれて右の眼球が飛びだした。ちなみに左の眼球と鼻と唇と両耳は、超極道モードON時に日本刀で抉られ済みなので、すでにない。

 とても「女子高生の」デート前には似つかわしくない光景だったが、仕方ない、これも「超極道の」アキコちゃんの宿命なのだった。もはや5分前まで生きた人間だったとも俄かに信じがたい、赤くて丸いぐちゃぐちゃの塊と化したこの男は、中善寺組の組員である。しかし何やら大変な不義理を為し、どうしても即急に、それも組長直々の落とし前をつける必要があったとかなんとか(そのへんぼくもあまり深入りしたくないので詳しい話は聞いてないけれど)

「とりあえず血ぃ落としてくるね私。速攻でシャワー浴びてくるから待ってて、すぐ! 行ってくる!」

「いいよ全然ゆっくりで。まだ全然お祭り間に合うしさ」

「ダメ! だって花火7時じゃん。なら6時半には出なきゃ。超急ぐ!」と言うが早いが、アキコちゃんはびゅーんと颯爽に部屋を飛びだしていった。
 びゅーんの勢いで、りりりん、と風鈴があわただしく鳴った。




 楽しい時間はあっという間に過ぎる。アキコちゃんとの夏祭りデートはとても楽しかったので、とてもあっという間に過ぎた。

 浴衣姿のアキコちゃんも可愛かった。超急いで準備をしたので着つけも雑でぐちゃぐちゃで、なんだかまるで襷みたいに帯が斜めってたりもしたけれど、とても可愛いとぼくは思った。制服や私服のときと同じアキコちゃんのはずなのに、どこか貞淑でしおらしく、少しだけ大人びて見えたりする。真夏の夜の魔法か恋か、時折ふとした瞬間に、妙に色っぽい仕種をちらりと覗かせる。
 そのたびにぼくはドキドキする。
 アキコちゃんを好きになって良かった、と思う。


 祭りは5人の死者を出しただけで、平穏につつがなく終焉を迎えようとしていた。ぼくらは存分に一夏の夜を満喫した。

 しおらしくとか大人びてとか書いたけれど、それはあくまで「少しだけ」そう「見える」だけ。中身はけっきょく明朗快活元気娘のアキコちゃんなので、人、人、人。でごった返す混雑の中を、するする巧みなフットワークで次から次へ動き抜けていく。
 ぼくを引っ張って「金魚掬いだ! やろうやろう」「あ、綿飴たべたい! 関口くん買って」「射的あるよ射的! やろうよ」「おなかすいたねー。お好み焼きとかいいなー」・・・次から次へ。前へ前へ。超アクティブにアキコちゃんは走る。夏祭りの夜を突き抜ける。


 突き抜けた後には死体が残る。アキコちゃんはぼくに良いところを見せようとして「見てて! 絶対とるから!」と血気盛んに金魚掬いへ挑んだけれど、一匹もとれず惨敗した。「うえーん」と可愛らしく消沈するアキコちゃんを「がっはっは。まだまだだねーお姉ちゃん」と豪快に笑った屋台のおっちゃんは15分後にこの世から消えた。おつりを100円少なく返してしまった綿飴のお兄ちゃんも処刑された。
 射的ではぼくが犬のぬいぐるみを狙って、見事ド真ん中に命中させたけど弾が軽くて倒れなかった。射的屋のおっちゃんは気を利かせて「惜しかったね。けどま、ありゃあちょっと重すぎたわな。命中だったし持ってっていいよ」と気前良くぬいぐるみをくれた。処刑された。「関口くんに恥をかかせた」という理由らしかった。
 「あんなに重いとか超ずるっこい! フェアじゃないじゃん」と、ぷりぷりアキコちゃんは怒った。ぷりぷり怒るアキコちゃんの横顔はとてもキュートで、冗談みたいな破壊力だった。円いほっぺを楕円の形に膨らまして、唇をあひるみたいにとんがらがす。とんがらがしたその唇に、いつか触れる日が来るんだろうか・・・そんなことをぼくは思った。ぼくらは付き合って4ヵ月になるが、まだキスをしたことがない。


 「いつか」は、いつかどころか、その1時間後にすぐ訪れた。たっぷり夜を突き抜けて、疲れて、おなかも膨れたし、もちろん花火もしっかり見れて、ちょっとひと休みしようかってぼくらは少し離れた公園まで歩いた。お客をごっそり祭りに持っていかれて、ほとんど公園は誰もいなかった。そのうえご丁寧にも、ベンチの真上の電灯がちょうど壊れていて、辺りは暗い。
 月の光がほんのり僅かだけ差すその暗がりで、ぼくとアキコちゃんは初めてのキスをする。差す月の光と同じくらい、それはほんのりと軽い、霞のようなキスだった。


 そして、しばらく、余韻という名の柔らかい沈黙が来た。


 「・・・なんか、あれだね、照れくさいね」
 その柔らかい沈黙をふんわり溶ろかすように、アキコちゃんが小さく口を開いた。
「そうだね」と、ぼくも小さく言った。
「初めてのキスは、関口くんがさっき食べてたかき氷のシロップの味がしたよ」と、彼女が小さく言った。
「あはは」と、ぼくは小さく笑う。
「関口くんは、どんな味がした?」と彼女が訊いたので、ぼくは「さっき最後に処刑したスーパーボールの屋台のおっちゃんの返り血の味」という正直な答えをぐっと飲み込み、「アキコちゃんがさっき食べてたあんず飴の味だったよ」とウソをついた。
 アキコちゃんはぼくのウソに気づくふうもなく「そっか、嬉しいな。おそろいだね」と小さく笑った。別にそろってないよね・・・という正直な答えを、再びぼくは飲み込んだ。



 「そろそろ、帰ろっか」とアキコちゃんが言った。名残惜しそうに、小さく言った。ぼくは「そうだね」とベンチから立ち上がる。一拍遅れてアキコちゃんも立ち上がろうとして、そのとき、立ち上がりかけたアキコちゃんのおでこに、ぼくは最後のキスをした。「わわっ」と、やや大袈裟に驚く彼女。
「なんだよー、びっくりするじゃないか、不意打ちは」と恥ずかしそうに、はにかむ。
「いやいや」と、一瞬なんて言っていいのかわからなくなって、ぼくは言葉を濁す。
「何がいやいやですか」
「いや、あの・・・えっと、」
「ん?」
 立ち上がりかけたのを不意にキスされ、中腰になったままの姿勢でアキコちゃんがぼくの顔を覗き込んだ。その色っぽい上目づかいに、ぼくはドキリとする。余計に次の言葉が出なくなってしまう。
「や・・・なんていうか、あの、なんだろ、」
「なんでしょう」
「その、不思議だな・・・と思って」
「何が?」
「今が」
「今? どうして」
「どうしてかな、けど全部が不思議。だってついさっきまでぼくは、こんなふうにアキコちゃんとキスをする日がいつか来るだろうかって思ってた。昨日まで、夏祭りがこんな楽しいとも知らなかった。1ヵ月前は手をつないだだけでドキドキしてたし、半年前はアキコちゃんと付き合うようになることさえ思ってもなかった。なのに今は、こんな今があって・・・そういう全部。全部がすごく不思議だらけだ」



 「ねえ、この世には不思議なことなんて何もないんだよ? 関口くん」



 と、彼女は言った。上目づかいでぼくをドキドキさせたまま、ずっとぼくを思考停止に追い込んだまま、今まで見た中で圧倒的に最強にいちばん可愛いとびっきりの笑顔で、そう言った。
「私たちが付き合って、手をつないで、夏祭りに来て、キスをして・・・そういう全部が、きっと当たり前のことなんだ。だって私たちは――私と関口くんは、出会って、恋をしたんだから」


 そして彼女はようやく視線をぼくから外して、立ち上がる。ぼくに背を向け「さ、帰ろ」と元気に言った。きっと彼女も照れくさかったのだろうと思う。だけど照れくさいのを押し切って、そんな気取って恥ずかしい台詞を大真面目にぼくへ届けてくれた彼女を、心底ぼくは愛おしく思う。ぼくはアキコちゃんが好きだ。

「うん。帰ろう」

 ぼくらは歩きだす。
 歩きながら、最後にしたキスの感触を唇に思いだす。アキコちゃんのおでこの、小さくて、柔らかくて、温かい、感触。その小さくて柔らかくて温かいおでこが、2ヵ月後、浮気がバレたぼくに地獄の制裁ヘッドバッドを何千発と食らわせ、ぼくの頭蓋骨を粉砕する鉄の凶器へ変化するなんて、このときは知る由もなかったんだった。


 あー、エミちゃんなんかとやるんじゃなかったなー・・・とぼくは思いながら「ギャアアアアアア・・・!」と断末魔を叫びきり、死んだ。

 私は
 たぶん、今目覚めた。


 ここはどこだろう。私は何をしているのかな。


 私は生暖かい液体に浸っている。


 眼を閉じているのか、それとも開けているのか――わからない。けれど、辺りは暗くて、とても静かだった。私は少し身体を丸める。私を浸す液体が揺れて、ぽつりと垂れる。


 声が聞こえる、悲鳴のような。
 何を怒っているんだろう、或いは、悲しんでるようにも聞こえる。


 私の気持ちは、とても安らかだった。


 少し寒い。


 私は
 目覚めているんだろうか。


 「ギャアアアアアア・・・!」

けろけろけろみのシャンメリー!

 「いつまで去年を振り返ってれば気が済むんだ」「後ろ向きにも程がある」と吉原界隈で評判の私ですが、怒涛の振り返り週間もいよいよ大詰め! 最後にライブの話です。「もういいよ2007年」「いいかげんだるいよ・・・」と皆様お思いでしょう、けどこれだけは言わしてほしい、

 俺がいちばんだるい。


 しかし仮にもダイアリー持ってる人間が、感想はともかく行ったことすら記録してないのもどうよ? て話で、せめてサボり倒した1年ぶんを1日かけて頑張って回想してチャラにしよう、という等価交換きわまりない試みです。

 はい、じゃあ2007年行ったライブ全部どーん!・・・といきたいところですが、さすがに長くて鬱陶しいんで http://d.hatena.ne.jp/amn/20070000 にリスト・アップしておきます。2007年はフェス1つと、フェスに見せかけた全日本そっくりさん選手権1つと、そして26つのライブへ行きました。多すぎもせず少ないとも言えず、実に中途半端な数です。行ったライブの本数にまで自分の人格反映させちゃってどうすんの。


■2007 Best Event

  • 1123 Mountsystem 07 @Studio Cube 326

 個々のactどうこうより、とにかくロケーションで圧勝! 田町のStudio Cube 326という、未だにあれはなんの場所なのかよくわかんない場所なんですけど、バブルの勢いでノリで建てて、弾けてそのまま放置されたかのような雑居ビルの、なんともいえない廃墟感がもうたまらなく最高でした。中にいるだけで楽しくって、なんかもうずっとわくわくしてた。次も絶対ここでやってほしいな、あの雰囲気を思いだすだけでにやにやしちゃう。

 俺は行ったときなくて知らないんだけど、ゆ(id:lazzik)さんの話とか聞いて思うのは、たぶん新世界BRIDGEっていうのがこれっぽい雰囲気だったんじゃないかな。なので大阪の方はそんな感じと想像しといていただければ(思いっきし違う可能性も大ですけど)

 廃ビル。と今も余裕で営業中のお店を呼ぶのも大変失礼ですが、あのたまらない廃墟感に親しみと敬意を込めて呼ばせていただきますけど、深夜の廃ビルの怪しげなイベントにわらわら集ってくるような連中ですから、当然お客さんもフリーダムきわまりない方が多くて、これがまたすごい楽しかった。特に最強だったのが最後のALTZのDJ中に、めちゃめちゃごっつい棍棒ばりの松明(極太)をもくもく炊きはじめて、フロアを煙でホワイト・アウトさせちゃったスーパーフリーな人とかいて、何このリアルドロヘドロワールド・・・と思いながら、あまりに臭かったんでそのまま帰りました。臭すぎてみんな帰ってたのでALTZさんは可哀相だったけど、とても楽しかったです。ライブはRebel FamiliaOptrumが◎


■その他、印象深いライブ/イベント(Fuji Rockと、The Cornelius Groupの一連は既出のため除きます)

  • 0429 「そうだ、ラブシティへ行こう。」 @LIQUIDROOM

 気取りも衒いもまるでない、つねに全身全霊全力投球な曽我部恵一の泥臭さはとにかく頼もしい。ツアー初日がオールナイトでワンマン(弾き語りsolo→ランデブーバンド→曽我部恵一BAND、と出ずっぱり)、一晩歌いっぱなしとかどう考えても頭おかしい。でもやっちゃう。だったらついてく、しかないじゃない。あれもこれもを言いだしたらキリがないけど、まさか聴けると思わなかった曲もいっぱい聴けたし、思い残すことのない長い長い夜。

  • 0602 ROMZ 5th Anniversary @UNIT

 De De Mouseさんとの出会い。あんまりキラキラしてて失明するかと思った。速攻で物販行って「Tide Of Stars」を買いました。あとCom.Aさんがライブ中、興奮してステージへ上がり込んできた謎の女性にド突かれてふっ飛んでいた。

  • 0622 Spencer Doran Japan Tour @O-nest

 Com.Aさんに「こないだROMZ 5周年すごかったですねー」と言ったら「ふっ飛ばされて下落ちたとき肋骨にヒビ入った」と言っていた。ケイオス。Spencer DoranとCom.ADe De Mouseを見に踊りに行ったんだけど、ラストに飛び入りで出てきたZUが衝撃すぎて全部もってかれました。超絶。ryonさんの写真→ id:bukkoros:20070622:p1

 The Cornelius Group vs ゆらゆら帝国、という豪華きわまりないカップリング。ゆらゆら帝国「恋がしたい」〜「美しい」の流れがあんまり幽玄すぎて反則だと思った。

 いろいろ面白かったけど初体験のTHE BEACHES! これに尽きる。最高に楽しかった。大笑いしながら40分踊りつづけていた(楽しいが極まってメーターを振りきると、いつもフロアのド真ん中で大爆笑してしまうのです。傍から見ると確実にきもい)

  • 1006-07 全日本そっくりさん選手権 @朝霧高原

 念願の朝霧JAM! 今年とうとう初めて行けました。美味しかったです。

 ガチで音響系のイベント(という言い方もどうかと思いますが)なかなか行く機会ないんで新鮮でした。Alva Notoはシビれた・・・めちゃくちゃかっけえ。あとPomasslっていう、なんか変な博士みたいな白衣のおっさんが、舌にプラグ当てたり無意味にマイクぶん回したり奇天烈なパフォーマンスを繰り広げていて超燃えました。「博士ー! 博士ー!」て絶叫してたら、隣にいたお兄さんが「まさしくあれは博士以外の何者でもないね」と素敵に同意してくれました。

 JAH SHAKAのサウンドシステムにごっつりヤラれて終始ずぶずぶ沈んでました。あーなんかこのまま死ねる俺・・・ていうくらい、超絶に気持ち良かった記憶しかない。リキッドルームに甘い匂いが立ち込めていた。

 O-nest大好きで何回も来てるけど、その真上もまたこんなに楽しい場所だったとは! というくらい7th Floorも一発で気に入りました。今年いっぱい通えるといいなー。不破さんの5 Daysの、行ったのは3日めと最終日。言うまでもなく共演の皆々様、5日間通して精鋭揃いなわけですが、特に辰巳光英さんのトランペットと外山明さんのドラムが印象的でした。あと室舘彩さん可愛らしすぎ。
 ベスト・アクトはミキちゃん(id:mikiharu-nen)がアイスコーヒーとスコーンをオーダーしたとき、アイスコーヒーとセットの時点で「あ、このコあっちのスコーンと思ってるよね」て明らかに察せれるはずなのに、何食わぬ顔で湖池屋のスナックを差しだしてきた店員さんの素敵に憎い心遣いへ。

  • 1221 Disco Sandinista! @UNIT

 こないだ http://d.hatena.ne.jp/amn/20080104#p1 を書いたばかりなんで省くけど、曽我部恵一BANDTHE BEACHESもセッションの「Baby Blue」も弾き語りの「週末」も、全部が鮮明に頭ん中に、最高の思い出として刻まれてます。ありがとう!


■ライブハウスについて

 Mountsystemの「326」はちょっと別として、好きなライブハウスは? と訊かれれば真っ先にいつもnestを挙げます。大好きです。nestの魅力はなんといっても「6Fがバーで、フロアはひとつ下りて5F」という構造と、その雰囲気・・・つったら好きなライブハウスなんてだいたい全部雰囲気だろ、て話ですけど、やっぱなんていうかnestの、うまく言えないけどあの「狭くて、開かれてて、近い」雰囲気みたいのが好き。出番前とか後の出演者さんたちが、ざっくばらんにバーで飲んだくれたりダベったりうろうろしてる、あの感じ。楽屋感、とでも言うのかな。ちょっと違うか。

 そのへんで普通ーに皆さん飲んでるんで、こっちも普通ーにすらっと喋りかけれたり。例えばUNITとかLIQUIDROOMも「バーとフロアが別の階」の構造は同じだけど、やっぱりなんか違うんですよね。nestほどオープンな感じじゃなくて。もうこれやっぱり雰囲気としか言えないんだけど、とにかくnestはそういうハードルがズバ抜けて低い。ライブに行くのは勿論ライブが見たくて行くんですけど、ついで・・・と言ってはなんですが、ライブ見たさにわざわざ出かけてくくらい好きな人たちと気軽に喋れたりしたらやっぱ嬉しいじゃないですか単純に。+αの思い出になるし。ぼくがnest好き好き言ってるのも実際そういう思い出がいっぱいあるからで。勿論そういうの抜きに、いっしょに行った友達とだらだら飲んだりダベったりするのもUNITやLIQUIDROOMより、やっぱnestのあの雰囲気が落ちつくし好きなんですけど。だから結局、雰囲気としか言えないですけど(3回め)

 もっと全然行ってると思って、数えたら去年俺nestって3回しか行ってない。えー? て思ったけど、もっと全然行ってるふうに錯覚するくらい1回1回の印象が強いんですねきっと。実際その3回でヒサシさんと写真撮ってもらったり、片山省吾さんと(出演者でもないのになぜか)久々でお会いできたり、Com.Aさんに至っては喋ってるときちょうどスタッフの人がギャラ渡しに来て、したら「よし、これで飲もうぜ」とか奢ってくれようとするし・・・良い人すぎるだろ! 結局その後すぐ片づけに呼びだされてそれはなくなりましたけど、そんな別に知り合いでもなんでもない初対面の客に、もらったギャラでその場で酒奢るとかどんだけ太っ腹だよ。というのは、まあだいぶ極端な例ですが、客に限らず出演者も含めてそういう、なーんか妙にオープン・マインドにさせるスイッチがnestだと入る・・・気がする。超主観ですけど。要は俺がミーハーてだけですけど。

 UNITに始まり、UNITで終った2007年。全部で9/26がUNITでした。どおりで「あのちっこいカップのビールが600円て何その代官山価格」的な台詞をやたら吐いた気がしてました。高いよ。高いのにけど9回も行っちゃうのは、結局それだけ魅力的なイベントが多いのと(気になるイベント見つけてどこだろ? て調べたら「またUNITか!」がほんと多い)、あと音がnestの100倍良いことですね。雰囲気は積極的に行きたいほど好きでも、行く気が削がれるほど嫌いでもないです。フロアの出入り口が詰まりやすい形をしてるので、混んでるときは正直うざい。UNICE(B1のカフェ)のご飯がしっかりしてるので、オールのイベントのときはありがたいし好きです。毎回ワカモーレ食ってる。

 LIQUIDROOMが5回。多いな。あんまし好きじゃないです、ゆったりできなくて。O-westとかも。ゆったりはポイントでかいですね。混んでる/混んでないとは微妙に違くて。混んでてもnestはゆったりできるし、空いててもLIQUIDROOMO-westは落ちつかない。7th Floorは既述ですが超気に入りました。あのビルほんと最高だな。そういえば去年1回も行ってないけど渋谷クアトロは好きです。柱うざいけど。正統派! て気がなんかする。階段上ってくのが良いんですよね、新宿LIQUIDROOMもだったけど。だりーとか呟いて上りながら、だんだんテンション上がってく感じが。


■多謝(いっしょに行く人たちについて)

 長かった(ほんと長かった(超すいません))2007年振り返り音楽日記もようやく終りですけど、最後に、去年ライブハウスやクラブとかフェスでごいっしょした全ての皆さん、どうもありがとうございました。今年もよろしくお願いします。

 2007年はFuji Rock前の7ヵ月で9回、Fuji後の5ヵ月で18回のライブへ行きました。明らかにペースが違くて、もう全然3倍くらいになってますけど、これはFuji Rockを契機にライブ・モードへスイッチ入ったせいもありますが、それ以上にでかいのがFuji Rock±1ヵ月くらいの間に、その後の半年間で頻繁に会うようになる方々とたてつづけに出会えたことです。じゃなかったら3倍とかなんないよね。勿論それより前から知り合いだった方々もそうですけど、あとTwitterで誰かがポロッと「こんなのあるって」「え、それ良くない?」「あ、行こう行こう」みたいのが手軽に共有できるようになったのも大きいけど、おかげで9月以降は週1ペースでどっかしら何か行ってるという、かなり充実した日々になりました。いやほんと超ありがたい。ありがとうありがとう。


 中にはライブをピクニックか何かと勘違いしてライブハウスに大量のドーナツを持ち込む困ったちゃんや、マンガの貸し借りをしに来たらなんかたまたまライブやってるねみたくなってる本末転倒っ子さんや、大自然の中で素敵な音楽に酔いしれ心を満たしに行ったはずが食欲だけ満たして終了の問題児とか若干名混じってるけど、そういう人たちは論外というか早めに滅んでくれるといいですね。

 2008年はみんなで朝霧JAMで「今夜が山田」ごっこがしたいです。

一富士二猿三林檎

 というのに、ぼくの2007年を表すとしたらなるかなあ、具体的には

1. やっぱり今年もFuji Rock楽しかったね
2. 年間通してThe Cornelius Groupばっか見てた気がする
3. iPod革命的すぎ

 の3本です。


■1. Fuji Rock
 については http://d.hatena.ne.jp/amn/20070808#p1 にだいたい書きました。自分で言うのもなんですが、あまりにも感動的なエントリーのため、言語の壁を軽々と越え、たくさんの外人さんからいっぱいコメントを頂いております。ああ、やっぱり音楽に国境はないんだなあ・・・としみじみ感じ入ってしまいますね。AUBREY、CALVIN、ASHLYN、ANDREW、PEANUT、ELIJAH、PUMPKIN、ARIANA、DAMIEN、BANDIT、SAMANTHA、SPENCER、BROOKE、HANNAH、DUNCAN、SIERRA、GARFIELD、SCARLETT・・・みんな今年の苗場で出会った、音楽大好きで気の良い連中ばかりです。サンキューお前ら、来年も苗場食堂で乾杯しようぜ! あと死ね!

 改めて、中でもやはり2日め夜のDeerhoof@苗場食堂はFuji Rockのみならず2007年、年間を通して文句なしにベスト・ライブです。もうほんと最高だった。忘れられない。昨日挙げた「Friend Opportunity」と「Live And Goodies」も合わせて一富士二鹿、でもいいくらいDeerhoofづくしの1年でしたが、猿も外せないので鹿は富士の中に込みで。ついでに言うと2007年my best youtubeが↓これ

http://youtube.com/watch?v=u85HF5shask

 苗場食堂の強烈すぎた残像を追い求め、8月の時点でyoutube内にあったDeerhoof動画の、おそらくほぼ全てを見倒したうえで、俺の考えるDeerhoofの魅力を限りなく濃密に凝縮し、かつわかりやすく伝えれるだろう動画がこれです。

 曲は「Flower」〜「Panda, Panda, Panda」という最もキャッチーでライブでも定番のメドレー、もちろん最高にcuteなサトミさんのフラワーダンスもばっちり収録、そして何よりカメラがGregさんの目の前なので彼の鬼ドラム(&時々素敵スマイル)を存分に堪能できる逸品です。45秒らへんでストロボ焚かれて、稲妻をバックに激連打するGregさんとかかっこよすぎて鼻血30リットルですよ。雷神降臨してるだろこれ。ライブの臨場感もたっぷりで、「Panda」の後半が切れてて惜しいけど全然問題になんないくらい。「3分半でわかるDeerhoof入門」的にも最適かと思いますので、ぜひ。

 ちなみに「No Greg, No Life. モア雷神」なガチの方(?)向けには http://youtube.com/watch?v=CEYSeygs97Q がオススメです。


■2. The Cornelius Group
 は、本当に数えきれないくらい見ました。

(06.11 新曲披露演@Tower Records渋谷)
(06.12 OOIOOXORNELIUSALTZBREAKfAST@UNIT)
07.01 Euphorium vol.1@UNIT
07.04 Sensuous Synchronized Show@AX
07.08 LIQUIDROOM 3rd ANNIVERSARY w/ゆらゆら帝国
07.09 Crosspoint@UNIT
07.10 朝霧JAM
07.10 @LIQUIDROOM w/PLASTICS
(08.03 Ultimate Sensuous Synchronized Show)

 ・・・全然数えきれちゃいましたね。6回です。とはいえ06年末の2回と、3月のツアー・ファイナルも行くのでまだつづいてる感もあって、1年を通して常に「次コーネリアスいつかなー」て思ってたような。

 そのうちどれがいちばん良かったとかは選びづらいです。何回か感想も書いたんですけど、ほんと見るごとに良くなっていくので「1回のライブとしての面白さ」のみならず「グループの成長をいっしょに体感してる感」みたいのも大きくて、全部がひとつながりで「2007年のCorneliusを見た」ような感覚です。大雑把に言うと初期の披露演→OXAf→Euphorium→AXらへんは特に顕著で、AXでひとまずShowとしての完成を見た後、さらに(この間ワールド・ツアーもあって)安定期に入った8〜10月でより磨きをかけていった、という印象。

 大半がUNITかLIQUIDROOMですが、他にタワー渋谷B1のような極小の会場から朝霧JAMのメイン・ステージまで、またUNIT/LIQUIDROOMでも最前列でかぶりついたり後方からステージ全体&スクリーンを見渡したり、いろんな大きさや位置や角度で見ていくことができたのは、とても面白かったし贅沢な体験だったと思う。「Ultimate」と名を冠したツアー・ファイナルでどれだけのものが見れるか楽しみです。3月にはライブDVDとPV集も!


■3. iPod

 林檎マジすげえ。聴き方がらっと変わったよねやっぱり。ぼんやりとそう感じてたのを、前回のエントリー書いてる中ではっきり自覚したんですけど、1年を振り返ろうとしたときに「今年はこれだなあ」ってパッと出てくるのがアルバムより、シングルとか「アルバムの中の、特にこの曲」ていうのがすごい多い。

 ・・・なんていうのは俺より何100年も早く林檎の走狗へ成り果てたお前らの皆さんのほうがとっくに理解していたことでしょうし、良し悪しつけれる問題でもないだろうけど、単純に「あーやっぱ変わりますね」と。さんざん抵抗してたわりにあっさり転ぶもんだな俺、と。林檎最高、と。甘いもん大好きなくせに林檎食えないとか意味わかんねーよ、と。「あれは梨だと思い込んでる」とか無理ありすぎだろ、と。


 ただまあ俺に言わしてもらえば林檎の何が革命かって「かるくてらくちん!」とか「リスニング・スタイルへんしつ!」とかそんなのオマケ程度でしかなくて、最大の革命は「CDもちあるかないでいい→なくさないですむ→べんり!!!」てことですけどね。林檎マジGJ。

 でも家の中で結局なくすけどね→ふしぎ!!!

焼肉定食は弱肉強食の夢を見るか

 「パッケージまで含めての音楽、そして愛」「データなんて味気ない。人間味が足りない」「小さくて軽けりゃお前らそれでいいのか」「アルバムという単位をずっと大切にしていきたい」・・・などなど。数多のアジテーションを振り撒きながら断固CDウォークマン主義、反iPodの陣に誓いと操を立てていた私が、たまたま財布に3万入ってたというだけの理由&ノリで勢いiPodを購入したのが2007年1月の初頭。

 ・・・1ヵ月後、そこには「もうiPodなしじゃ生きていけない!」とリンゴマークに忠誠を捧ぐ俺の姿が!


 というわけでiTunesの再生回数上位を中心にMy Listening '07を回想しようと思います。もちろん買ったCDを必ずしもインポートしているわけじゃないし、レコードもあったり、音源はそれほど聴いてないけどライブで見て大好きになったバンドやミュージシャンとか、これが全てではありませんが「記録で振り返る2007年」てことで。記憶も込みの回想録は次回(予)

  • 2007年リリースの新譜のみ、ただし06年末のものを若干含む
  • ジャケットの用意できないものがいくつかあったので自作の「Sorry, No Image」ネコ画像をご用意しました(キメ細やかな心遣い)
  • これ書くためにiTunesいろいろいじってたら、右上の虫眼鏡の小窓にタイトルの一部とか入れると自分のiTunes内をクロールできるって今日初めて知りました。何この機能超便利なんですけど
  • ぼくのiPodの名前は「ion」です
  • あやまりません

■2007 Albums
 Deerhoof/Friend Opportunity

 Deerhoof/Live And Goodies

 Boredoms/Super Roots 9

 LCD Soundsystem/Sound Of Silver

 Annuals/Be He Me

 Lucky Soul/The Great Unwanted

 Tunng/Good Arrows

 細野晴臣トリビュートアルバム

 De De Mouse/Tide Of Stars

 World's End Girlfriend/Hurtbreak Wonderland

 Bacanal Intruder/Lulo

 Flying Rhythms/Rhythm Mebius

 Fulborn Teversham/Count Herbert II

 どれもかなり聴き込んだ感のある作品ばかりですが、中でもアタマ2つ抜けてるのがDeerhoof 「Friend Opportunity」とBoredomsで、どちらもFuji Rockの前後(特に後)死ぬほど聴き倒しました。

 Deerhoofのもう1作は、オフィシャルにフリーでアップされていた(今もう消えちゃってるかな)ライブ音源&レア・トラックスで「Live And Goodies」というタイトルも正式に付いてたものではありません。でもこんなすげーのタダでいいの? マジで? て言わずにいれないくらい、ずっしりたっぷりの濃すぎる中身で「Friend」に負けないくらい好きです。

 AnnualsとTunngも相当ヘビー・ローテだったかな、あー俺きっと一生こういうの好きなんだろうなー、と思う。トリビュート・アルバムとかの類いは基本、信頼も期待もしませんが細野さんのは出色。選出と直接は関係ありませんが、07/08の年越しをUNITにしたんですけど、2007年最後に聴いた曲がTakimi KenjiさんのかけたLCD Soundsystem 「All My Friends」だったのでLCDにも今年ずいぶんお世話になったなー、と、そのとき思ったのでした。



■2007 EPs
 ゆらゆら帝国/美しい

 Andrew Weatherall/The Bullet Catcher's Apprentice

 髭(HiGE)/ボニー&クライド

 曽我部恵一BAND/魔法のバスに乗って

 Tha Blue Herb/Phase 3

 Mass Of The Fermenting Dregs/キラメタル

 Hasymo/Rescue

 ゆらゆら帝国はアルバム「空洞です」も当然大好きなのですが、先に出た「美しい」を尋常でないくらい聴きまくったのでアルバムは外してこっちを入れました。再生回数でいうと次点が髭かな、これも狂ったように聴いた。曽我部さんのは「曽我部恵一BAND」名義の初スタジオ音源(3曲+Dub 1曲)で、今んとこライブ会場限定販売とのこと。

 マスドレさんは来週いよいよデビュー盤が出ますね、「キラメタル」は3曲入りのDemo集です。ガールズ・トリオっていう立ち姿の強烈さも込みで超かっこよかったので後藤さんの脱退は本当に残念・・・(て、デビュー直前にネガ発言でごめんなさい)



■2007 Songs
 こちらはアルバムとかEP/シングルっていう括りじゃなしに、曲単位で特に良く聴いたもの

 木村カエラ/L.drunk

 Mr.Children/しるし

 □□□/Golden King (inst.)

 Deaf Stereo/Youth In Movement

 フジファブリック/Surfer King

 Sugiurumn/Travelling

 マキシマム・ザ・ホルモン/恋のメガラバ

 2006年ぼくにとって最大の喪失は言うまでもなくNATSUMENの休止ですが、そんな中2007年AxSxEさんから届けられたEndless Summer Sound爆裂なカエラさんの「L.drunk」は心の底から嬉しかったし興奮しました。「しるし」もめちゃくちゃ好きだなー、ド名曲じゃないすかこれ。ぼくは中3でミスチルに人生変えられるくらい強烈に打たれた人間なのですが、この曲で10年越しの「あの感覚」を瞬間、取り戻せた気がします。

 「Golden King」はヴォーカル入りも好きだけど、とにかくトラックにハマってインストばっか聴いてた。そういえば何月だったかUNITで□□□を見た後、B3のSALOONでトイレ待ちの列の隣に並んでた気の良い兄ちゃんと意気投合し・・・たかと思ったら「俺ねー□□□でベースのサポートしてるんだけど」とか言われてえー! てなったことがありまして、そんな気の良いシゲさんがこのたび□□□に正式加入だそうです、がんばってください!

 なぜか1年遅れで「メガラバ」が入っておりますが、1年遅れで知って1年遅れで夏頃めちゃくちゃハマったわけですけど、07年のアルバムにも入ってるようなので問題なし。



■2007 Cokes
 Cokesて何よ、という話ですけど例のCoke×iTunesキャンペーンで5曲DL権をいただきまして、それで購入したのが以下5つです。なので上記の「Songs」と括り的には同じですけど、なんとなく分けてみただけ、です。あの試み良かったなー、また近々やってほしい。

 Franz Ferdinand/All My Friends

 Battles/Atlas

 Just Jack/Glory Days

 The Broken Beats/Essentials

 Eccy+Shing02/Ultimate High

 以前も書きましたが、Franz FerdinandLCD SoundsystemカバーはJoy Divisionド直系で最高にかっこいい。オリジナルも好きだけど、それ以上に好きで良く聴きました。BattlesはFuji Rockでやっと見れて強烈すぎて、特に「ドラムすげー! あれ絶対ぇ人間じゃねーよ。アーミー出身かロボのどっちかだよ」とか盛り上がってたら、その映像がニコニコ動画に上がってて「ドラムはサイボーグ」タグが付いてたのを発見したとき、とても感動しました。

気付いたらもうこんな所


 ここ2週間くらい、ふと気がつくと頭の中で流れだす音楽があって、それはサニーデイ・サービスの「週末」という曲なんだけど、12月21日にTHE BEACHESが、ゲストに曽我部恵一BANDを迎えて主催した「Disco Sandinista!」というイベントがありまして、のっけからヒサシ the KIDのDJ(それも曽我部BANDの直前に、サニーデイの「Wild Wild Party」のSugiurumn Remixをかけたりとか超反則級の)→そのまま曽我部恵一BANDへ雪崩れ込み→Freak Affair:村さんのDJを挟んでTHE BEACHES・・・とさんざんフロアを酸欠に追い立てた挙句、ラストはTHE BEACHES feat.曽我部恵一Fishmansの「Baby Blue」をカバーとかいうSpecialすぎてもはや意味のわからないセッションがあったり、「Music Lovers」まで聴けちゃったし、もうなんか感無量というか、酔いと疲れと眠気でぐだぐだになってるところでオーラス、最後の最後で、ヒサシさん以外が全員捌けて、ひとりステージで「週末」を弾き語りでやったのだけれど、そのときの歌があれから2週間、ずーっと頭の中に残っていて、こびりついてて、ふとした瞬間に流れだすのでした。

 正直に言うと、それは上手な歌とはとても言えない、どちらかといえばたぶん下手だったと思う、何しろヒサシさんはもともとダミ声で、THE BEACHESのFunkyな演奏に乗せて畳み掛けるように、がしがし突き進むみたく歌う人だし、だから本人も演奏前に「こういうの普段まったくやらないんで緊張するんですけど・・・」みたく恥ずかしそうに言ってたし、なので正直、弾き語りの映える声ではやっぱりないし、おまけに彼は最初のDJのときからマイクでフロアをがんがん煽って、曽我部BANDの演奏中もそのままずっとブースでわいわい騒いで見てたり、勿論その後でBEACHESも演奏したし、で、それらの合間合間にけっこうお酒も飲んでたはずで、したらただでさえ弾き語りに向いてないダミ声は29時の時点でもうボロボロで、掠れたり潰れたりひどい有様で、高い声とか伸ばす部分とか相当ボロボロだったんだけど、その掠れて潰れてボロボロの声で精魂込めて歌い上げた「週末」が、ずっとぼくの耳の中の奥に残っている。


 ひどいだのボロボロだの何回も言って申し訳ないけれど、やっぱりそれはあまり上手な歌ではなかった。例えばあの演奏が録音されていて、今改めて聴いてもだいたい同じ感想になると思う。その音源が仮に手もとにあったとして、そう何度も何度も繰り返し聴くようなもんでもたぶんないだろう。あれはきっと一晩中踊り明かして、外ではもう始発電車が動きだしていて、フロアの中で身体は踊り疲れて重くて頭は眠たくて、一刻も早くふとんに入りたくて、そういうときにそういう状態で、歌う人のほうも同じくらいぐったり疲れきっていて、最後の力をありったけ喉で振り絞って(そしてもう1つ重要なのは、歌う人が、その曲と、それをつくった人とを心の底から尊敬していることだけれど)、そういう要素のいろいろが全部重なり合ってつながったあの瞬間に聴いたからこそ、きっと2週間たっても抜けないくらい強烈にぼくを打ったのだと思う。

 2007年12月21日29時、代官山UNITのステージでヒサシ the KIDの歌った「週末」は、そういうわけで、とても素晴らしい歌だったと思う。


 今年もそういう素晴らしい歌や演奏といっぱい出会えたらいいなあ、と思います。素晴らしいにもいろいろあって、こういう種類の素晴らしさだけが素晴らしいわけじゃ勿論ないけど、いろんな種類の素晴らしいが、いろんな場所にきっとあって、だからなるべくいっぱいいろんなところへ出かけていきたい。ただの「素晴らしい」が、自分の中の「特別」へ昇華される瞬間ていうのは、いつだってとても気持ちが良くて、どきどきする。

そよ風に抱負は乗って 2nd

 新年早々のエントリーに「座礁」だの「食いつぶす」だの絶望的なwordが並んでだるい感じになってきたので、やっぱり抱負くらいないとダメです。ので改めて、以下の3項を本年は遵守していきたく思います。

1. 麻生久美子麻木久仁子の見分けがつく男になる。

2. いいかげん前戯の人(id:foreplay)に更新頻度云々で突っ込まれない男になる。

3. 「空気読め」をKYと略すのは別に全然かまいませんが「常識的に考えて」をJKと略すのはマジでやめてください。


 1. については、がんばります。がんばりますとしか言いようがないですが、もうちょっと広い意味で言うと「違いのわかる男」になるぜ! ということです。今年もいっぱいの音楽を聴いたりマンガや本を読むことになるでしょうが、ただ漫然と受信するにとどまらず、耳や眼を養い、良いもの・好きなものを多く掘り起こしていけたらいいな、と思うのです。麻生と麻木は、その第一歩にすぎません。がんばります。

 2. についても、まあ、がんばりますとしか言いようのない点は同じですけど、あとは方向の問題で、「今年こそ飽きたり投げださず2週間に1回くらいは何か書こう!」っぽい方向にがんばってもロクな結果にならないのはもう明らかなので、もっとポリティカルに「飽きたり投げても突っ込まれないポジションの構築をがんばろう」という志向です。政治力を身につけよう、と。ただれた大人の発想です。


 3. ですが、抱負の文末が「ください」の時点で何か間違ってる気がするのはあなたの気のせいですから無視していただくとして、これはきわめて重要な問題です。ぼくと特に接点のない方や、あってもぼくの目が届かない範囲ではKYもJKもMK5も好きなだけ使ってくださって結構ですが、ぼくの目に入る範囲に於いては何卒留意のうえ控えてください。紛らわしいから。ビクッてなるから。だってお前ちょっと手の空いた時間にちらっとだけモバツイ見たらいちばん下が「ちょ、やりすぎだろJK」とかだったらどうよ。ログが気になって仕事も手につかなくなるのは自明の理でしょう。あなたの些細な一言が他者の生産力を著しく低下させ、ひいては国益の損失をもたらす可能性に目を向け、気を配らなくてはwebのインタラクティブ性など虚論でしかありえません。

 同様に「ジャンプ・コミックス」をJCと略す輩が時々いますけど、これも慎みましょう。「JC ワンピース」とか紛らわしいにも程があるだろ。何考えてんの。でも「JC ブリーチ」なら興味は逸れるので別にOKです。このへんは趣味の問題です。