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ゴールデンウイーク中に起こったジェフのスタイルの変化とその後の課題

 昨日投稿した戦術的な話を踏まえて、お休みいただいていたGW連戦と先週の甲府戦を振り返っていきたいと思います。
 まず、4月27日(土)、アウェイで行われた仙台戦。

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 ジェフからすれば、3試合ぶりの勝利となった試合でした。
 お互いにプレスとサイド攻撃が中心となった展開でしたが、ジェフのゴールは中央でのポストプレーなどから生まれたもの。
 これを機に中央からの攻撃も織り交ぜることで、攻撃の幅を広げていければと期待したのですが、その後の試合ではあまり感じられなかったと思います。

 ジェフが2-0で勝利した試合ではありましたが、スコアは出来過ぎで相手の攻撃面にも救われた試合だったと思います。
 プレスに関してもはまり切らず、相手の左右への展開にかわされることが多い試合でもありました。
 そういった不安が出てしまったのが、続くいわき戦。

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 5月3日(金)に行われたアウェイいわき戦は、0-1でジェフが敗れた試合でしたが、完敗といっていい内容だったと思います。
 ともかくいわきのジェフ対策が見事にはまって、ジェフは対抗策を打ち出せなかった印象でした。

 Youtubeでも話したように、ジェフは2CBと1アンカーでのビルドアップを実施している。
 現代サッカーでは前線2枚がプレスのスタートになることが多いので、そこでの数的優位からジェフがフリーな選手を作って、大きく左右に展開する攻撃を作っていきました。

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 そのジェフに対して、いわきは2トップとトップ下の同数でプレスに来た。
 さらに、ジェフがSBに繋げばいわきWBが前に出てチェイスにいき、前に出たWBの背後は3バックがスライドして対応。
 その分、逆サイドのWBが後方で絞って穴を埋めるといういわきの守備に、完璧にはまってしまった印象です。

 後方からサイドを走らせる攻撃を封じられてしまったジェフですが、この日もプレスははまらず。
 いわきはサイドに人数をかけて素早くパスを繋ぎ、前へ展開するビルドアップを実施してきて、攻撃面でも良い形を作っていきました。
 ジェフは人に食い付く守備をしているだけに、こういった密集したパスワークからの展開を苦手としているイメージもあります。


 結果的にサイド攻撃もプレスからのカウンターも封じられたジェフは、思うようなサッカーが出来ず。
 後半からは相手の運動量も落ちた上、いわきに退場者も出たため押し返すことも出来ましたが、流れの中で良い攻撃は作り切れずに終わってしまった印象です。
 この敗戦の内容でさすがにまずいと感じたのか、連戦や怪我人などの影響もあったのかもしれませんが、次の横浜FC戦で大きくスタメンを入れ替えることになりました。

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 5月6日(月)に行われたホーム横浜FC戦でのジェフは、スタメン8人を一挙に変更。
 上記の感想で記載したとおり、昨年終盤のスタイルに近いサッカーに戻った印象でした。

 呉屋、ドゥドゥ、田中役の岡庭などをスタメンで起用して、岡庭が右サイドを縦に仕掛けてクロスを上げ、逆サイドのドゥドゥが飛び込む展開を見せていきました。
 シンプルながらも、わかりやすい攻撃と言えるでしょう。
 この起用法からしても、やはりドゥドゥと小森は若干相性が悪いと小林監督も思っているのかもしれません。


 加えて、呉屋、エドゥアルド、小林、矢口などはプレスの面でも期待できる選手。
 今年のジェフは相手にボールを持たれた状況では、4-4-2でセットして守ることも多かったですが、この日は前ではまらなくてもなるべくボールを奪いにいく意識を持った守備をしていき、攻守に昨年終盤に回帰した戦い方になった印象でした。
 ゴールも呉屋のハイプレスから相手のミスを誘い、そのままゴールを奪った展開でした。

 ホームということもあってかスタイルを戻した効果もあったのか、伸び伸びと戦えた試合で勝利を挙げたジェフですが、ゴールは相手のミス絡みでの1点止まり。
 上位チームの横浜FC相手に勝てたことは良かったですが、まだどちらに転ぶのかはわからない状況で、GW連戦を終えた状況でした。

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 そして、5月12日(日)アウェイで行われた甲府戦。
 この試合では甲府がゴンザレス、ウタカ、アダイウトンと外国人選手を前線に並べて戦った試合で、ジェフがボールを持つ時間が目立つ展開となりました。
 横浜FC戦とほぼ同じメンバーで戦ったジェフですが、このメンツだとボールを繋ぐという点で課題も感じる状況に。

 特に前半はボールを持たされるような展開となり、遅攻の課題が出てしまう試合となってしまいました。
 パスを繋いでゴールに迫ることが出来ず、アーリークロスが非常に多い内容に。
 プレスに関しても相手に交わされてしまうことが多く、スタメンを入れ替えてもプレス面での課題が出てしまった印象でした。


 それでも後半に入ってからは相手が失速し、ジェフが2点を奪い一時は逆転。
 そこからは甲府が前に出てきてきたこともあって、プレスからのカウンターが仕掛けられる時間帯も作れました。
 しかし、試合終盤は再び甲府が前に出てきたことからも、ジェフの時間は短かったようにも思います。

 後半のようにプレスがはまればいいものの、遅攻になると弱い状況には変わらず。
 試合展開も後半ATに失点して2-2の痛み分けと、悔しい試合になってしまいました。
 小森、ドゥドゥと決定力の高い選手が活躍してゴールを決めた試合ではありましたが、スタイルを戻したもののさっそく課題が感じられた試合だったとも言えると思います。


 まとめると、GW半ばに戦ったいわきのジェフ対策を前に、手も足も出なかったジェフは、横浜FC戦でスタイルを昨年終盤のものに戻し勝利。
 しかし、同じスタイルで戦った甲府戦では2-2で引き分け、課題も感じられた内容だったということで、まだまだ戦い方がはまり切っていないように見えます。
 フィジカル重視のメンバーに変えたもののプレスもうまくはまらなかったですし、攻撃も岡庭のクロスやドゥドゥの飛込みに可能性は感じますが、大味な展開には変わらないと思います。

 今後の身の振り方というか、どういった戦い方を選んでいくのか。
 昨年終盤のスタイルに戻したということは一歩後退したとも言えなくもないし、戻したスタイルもまだはまり切ってはない印象を受けます。
 サイドからのアバウトな攻撃とコンディション回復を待ったプレスだけでは昇格争いは厳しいかもしれませんし、大きくチームが崩れているわけではないとはいえ、波に乗っているとも言えない難しい状況にあるのではないかなといった印象です。

今季ジェフが試してきた左右のアイソレーションと2インサイドと偽SBの関係性

 今日から少しずつ、日常の更新も再開していきたいと思います。
 お休みをいただいていた間も、サッカーのことというか、ブログで何を書くのかは常に考えていました。
 その中でも、特に横浜FC戦前までに考えていたのがこちらの内容。

 今年のジェフはなかなか有効なビルドアップができず、特に中央へ縦パスを送れていない印象で、この点において昨年以上に苦労しているイメージもあります。
 1つには何度も取り上げたように、1アンカー2インサイドを固定化したことによって、後方のビルドアップに参加する選手が減ってしまったこと。
 2インサイドにすることで1トップとの関係で打開しようという意図かもしれませんが、逆に中盤前方が詰まってしまうことも多いように思います。


 それと関連するのが、表題にもある左右のアイソレーション。
 アイソレーションとは直訳すると「分離、隔離、独立」などといった意味があるそうですが、主にサイドなどで味方アタッカーにあえてサポートせず孤立させて、1対1で仕掛けられる状況を作る動きのこと。
 近年の日本で言えば三笘のタスクなどでイメージが湧きやすいと思いますが、広義で言えばオシム監督時代のジェフも片方のサイドでタメを作り、逆サイドの村井や水野に仕掛けさせる展開を作っていたわけで、古くから発想自体はあるものではないかと思います。

 さらに言えば、ジェフも昨年から右サイドの田中がワイドに張って、アイソレーションの形を取っていました。
 しかし、今年は主に右に田中、左に椿と、左右のサイドでアイソレーションを展開してきたことになります。
 その分、中央では2インサイドを固定して、前線に厚みを加えようとしているという見方も出来るでしょう。


 この形を試している理由は、ドゥドゥを左サイドに起用してゴール前に飛び込ませると、中央のスペースが少なくなり小森との相性が悪いこと。
 あるいは、そもそも小林監督は就任当初も2インサイドで戦っており、本来これがやりたい形だった可能性があること。
 または、チームのさらなる進化・変化への期待などさまざまな思惑が考えられますが、小林監督はあまり戦術の詳細を話したがらない監督なので、細部に関してはわかりませんし今後もわからないまま終わるかもしれません。

 この変化によってYoutubeなどでもお話ししたように、CBなどから大きく展開して左右をワイドに仕掛けるエスナイデル監督風のビルドアップになりましたが、その分中央を縦に繋ぐパスワークは少なくなってしまったように思います。

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 左右が大きく開いて縦に仕掛ける形は、5レーン理論にも通ずるところがあるでしょう。
 左右SHがタッチライン沿いにいて、2インサイドがハーフスペース付近を狙い、中央には1トップが構えることで、5つのレーンに選手が配置されることになる。
 小林監督はそこまで5レーンを意識しているわけではないようにも思いますが、欧州などでも珍しくはない立ち位置だとは思います。

 ただ、左右SHがワイドに開いて待つ形になると、中盤中央の人数は少なくなる。
 例えば、3-4-2-1なら中盤中央は2ボランチと2シャドーの4枚。
 古典的な4-4-2でも2ボランチに加えて2SHが中央に入ってきたり、前線の1枚がトップ下のような位置取りで中盤に絡むこともあるでしょう。


 そこで昨今生み出された形が、偽SBと呼ばれる守備時はSBの位置を取り、攻撃時はボランチの役割を果たす選手を置くことで、中盤の薄さを補う手法。
 ジェフも本来はボランチの高橋を、昨年途中から右SBで起用していることにはなります。
 ただ、思ったよりも、偽SB的な仕事にはなっていない印象を受けています。

 もともと高橋はそこまでパスワークの起点になれるタイプではなく、どちらかといえばミドルシュートや大きな展開がウリのMFだったこともありましたが、それでも高橋が右SBに入ったことでDFラインのビルドアップの逃げ道になったことは事実。
 ただ、チームとして見てみると、最終ラインで回している時の左右SBは、左右に開いた位置で関わっていることが多い。
 日高がポケットを狙った飛び出しを見せたり、高橋がハーフレーンからミドルシュートを狙うこともありますが、あくまでもそれは相手を押し込んでからで、ボールが後方や中盤にある時は外でパスワークに関わることが多いと思います。


 ようするに、高橋や日高などパスを出せるSBを起用していることは事実ですが、偽SB的なボランチの仕事を果たしているとは言い難い。
 そのため、左右SHがワイドに開くと中盤は3枚と薄いままで、構成力の面で苦労している部分もあるのではないかなと思います。
 結果的に小森などが引いてくることも増えている印象ですが、それも良し悪しなところがあるでしょう。

 もちろんそれだけが問題ではなく、例えば各選手のビルドアップ能力。
 後方の選手だけでなく、横山なども縦への鋭いプレーが武器の選手だとは思いますが、細かな繫ぎや周りを活かしたプレーはあまり得意ではないように見えます。
 オシム監督時代の日本代表に羽生や山岸といった選手が選ばれた要因には守備力、運動量などもありますが、細かなビルドアップ能力の高さも評価されたのではないかと言われていました。


 シンプルに素早くパスを繋いで、動き直して、また繋ぐ。
 目立った動きではないですが、そういったパスワークの潤滑油になるような黒子的な選手が少ないようにも思いますし、それらはどのポジションでも求められる基礎的な動きとも言えるのかもしれません。
 そういった意味で間でスッと受けてパスを繋げる風間などは、オシム監督風に言えば"サッカーを知っている選手"と言えるのかもしれませんが、ちょっと調子に波があるのと最後の質に課題があるのかもしれませんね。

 小林監督1年目は前への勢い重視で戦ってきたチームではありますが、ここからは縦への仕掛けばかりではなく細かな動きや連動性なども問われるのではないでしょうか。
 チームとしても、このまま大きな展開とサイド攻撃を中心としたチームで良いのかどうか。
 球際だとか1対1の勝負ももちろん大事だとは思いますが、それだけではサッカーは成り立たないと思いますし、もう一歩大人なサッカーを目指せるかが注目ではないかと思います。