ナイト・オブ・B級映画

サンメリ教会でやっていたカセットレーベルのイベントに突然行く気をなくす。
もう身支度もできていたのに。
風が冷たくて寒いし、きのうは友達が仕事の用事で家の近所に来て、ついでに会って昼間っから飲んだくれていたので疲れている。家にいたいと思った。
ずっと前に入手したまま見ていなかったB級映画を二本立てで鑑賞。The house on Straw Hill というウド・キアー主演の70年代の映画とNo Morera Sola という2009年のアルゼンチン映画。どちらもまあまあのエクスプロイテーション・ホラー。そういうのが好きなら見れるけど、別にお勧めではない。
一本目はウド・キアーが若い。この時代のイギリス・エクスプロイテーションはロケーションがいい。エクスプロイテーション映画の質はロケーションに左右されることを再確認。
二本目は「テキサス・チェインソー」とガス・ヴァン・サントが混じったような作風のリベンジ物。人物に思いっきり寄ったカメラで一シーンずつが長い上に、主人公の少女たちが途轍もなくのろい。殺人鬼がうろついているのにタバコ休憩を取ったり、本当に思慮に欠けてて浅はか。なのに、台詞がほとんどないので心理描写面でそれほど違和感は感じず。のろいくせに屈強な男3人に見事リベンジを果たすのはある意味すごい。

ブックオフなど

図書館にCDを返しに行く。年間30ユーロで借り放題というのは、本当に有り難い。本場なので、ミュージック・コンクレートはかなり揃っている。返却窓口のおっさんが「餃子の王将」のTシャツを着ていてびっくりする。日本語Tシャツを着ている外人にありがちな構って欲しそうな雰囲気を感じ取ったが、あえて無視。
その後、ださい服を売る卸売り店が立ち並ぶ二区、一区を通って、オペラのブックオフまで歩く。いったい誰がフランス=ファッションのイメージを日本に植え付けたのか。
途中の健康食品店で、ゴマペースト無糖をゲット。料理のレパートリーが広がる期待に胸がふくらむ。
ブックオフではモブ・ノリオの介護入門を2ユーロコーナーで発見。DVDはいいのがなかった。2ユーロコーナーで隣にいた人がオバマ大統領にそっくりでビビる。フランスももうすぐ大統領選。あいつが再選されないことを、強く願う。思えば、サルコジの任期中、滞在許可の代金が3.5倍に跳ね上がったり、碌なことがなかった。シラク時代は少々遅れても見逃してもらえた滞在許可申請も、少しでも遅れると罰金取られたり。その罰金もやたら高かったり。昨夜の両候補テレビ討論ではサルコジが醜態を晒したらしいので、もうオランドで安泰か。そろってコカイン面のサルコジ夫妻を二度と見ないで済むように祈る。

4月を振り返る PART2

昨日書き漏らしたことで、4月半ばのアンドリューWKのライブが楽しかった。別にわざわざ付け足して書かなくてもいい気もするが・・。
普段見かける人たちとは違う(多分若い)客層で、いつもしらっとしたフランス人がノリノリにのっているのを見るのは初めて、もしくは超久しぶりだったので、外国にいるような錯覚を覚えて感動。ライブ後は数人いたノイズ関係の友人と飲む。

後は灰野さんのお伴でついていった田舎の家(オーガナイザーの一人の実家)について。
場所は未だによく分からないが、パリの北、ヨーロッパ1しょぼいブーベ空港のあるブーベとか、競馬場があって、観客の貴婦人たちのでかい帽子で有名なシャンティリーの付近のどこか。
やたらとでかい敷地に母屋と離れ(おばあちゃん在住)、くずれかけた納屋、広いホール状態になっている納屋2号、ピジョニエ(鳩舎。でも外見は曰くありげな古い塔)などの建物があり、敷地外だが隣接して教会。真ん中に広い庭。農家というよりは、昔の村の共同施設で、建物のほとんどは17世紀起源だそう。
家の中はモダンで快適、ジャグジーまであった。かなり底冷えしたが。

寒くて天候の悪い日が続いたが、近所のエマウス(フランス版リサイクルセンターで、地方の方が掘り出し物が多い)に行ってイタロディスコのシングルをゲットしたり、いろんな種類の馬を飼っている場所を見に行ったりと充実した滞在だった。そこのエマウスは、もと精神病院だったらしいけど、そういう過去はすっかり浄化されていた。

記しておきたかったのは、その家の敷地の地下の不思議な穴蔵について。
パリにも地下のあるアパートは結構多いけど、今まで見た物とは比較にならないほど深い。探検好きなその家の息子さんの解説によると、建築様式から中世起源の納骨堂ではないかとのこと。壁に落書きがいくつもあり、古い日付で18世紀の物もあった。戦争中に人々が隠れていた痕跡もかなりあった。
その息子さんと彼の二人の兄は、20年以上かけてその穴を発掘しているそうだ。掘りすぎて、近所の家の台所に出てしまったという体験談に衝撃を受ける。
もともとその地方には地下トンネルが多くて、よその村に続くトンネルも存在するという話も聞いた。第一次&第二次世界大戦では見事に戦場になっていたので、家の敷地からも、近所の森からも、いろんな物が見つかるらしい。
息子さんが金属探知機を使って発見したコレクションを見せてもらった。軍のヘルメットとか(フランス軍、ドイツ軍両方)、からの薬莢とか。第三帝国(ナチス)のマークの入った物もあり、見てるだけで興奮。他にも、古銭のコレクションや、ローマ人の着ていた白いローブみたいな服の留め具とか。古銭は紀元前の物や、ローマ人植民以前の30数年間しか使用されていないゴート族(か何か)の発行したコインなど、非常に博物的価値の高い物も含まれていた。
次回のサイコジオフィジックス・サミットには、是非あの息子さんを誘ってみたい。

4月を振り返る

日記をさぼっていたので、適当な題をつけてその間あったことで覚えていることを書こうと思う。
4月中に印象に残ったのは、サンメリ教会というよく実験音楽、ミュージック・コンクレートのコンサートなどが行われる教会でのソニック・プロテスト(という音楽フェスティバル)のコンサートで、キム・フォワリー、トニー・コンラッド、灰野敬二さんが出演した。
なぜかルイルイのカバーをやったキム・フォワリーの教会での演奏の必然性が理解できなかったが、さすが灰野さんのパーカッションは教会のややこしい音響に一番適応しており感動。コンラッドさんはやや音が大きすぎる気もしたが、最高だった。
出番の前に楽屋でトニー・コンラッドさんが見せてくれた自作楽器のコレクションの写真(ベルリンで展示中)がとてもおもしろくて、しかも話しているだけで楽しい気分になれるようなとてもいい人だった。

ソニック・プロテストは、今年はチケット代が高くて、結局この日と初日しか行かなかったが、初日のスコット・フロウスト「タバコニスト」のライブがなかなか気に入った。

昨日は久しぶりにシネマテーク・フランセーズ付属の図書館へ。大島渚の「日本春歌考」を鑑賞。すべてにおいて最高。劇中に多用されていた象徴(国旗とか)の意味について一日中思いをめぐらせる。シネマテークはティム・バートン展のせいで見たこともないほど長い行列ができていた。

ビデオシンセ リュット/エトラ (Rutt/Etra)

70年代にリュットとエトラが開発したビデオシンセ、リュット/エトラ は、60年代にモーグの開発したオーディオシンセのビデオ版。
2年ほど前に知っておもしろいなあと思っていたら、当時の雑誌を全部スキャンにとりこんでネットにアップしてくれている人がいた。

リュット/エトラのサンプル
http://www.youtube.com/watch?v=EZQiHuTbnes

シナプス・マガジン 77年7−8月号 http://www.cyndustries.com/synapse/synapse.cfm?pc=51&folder=july1977&pic=15

不勉強であまり知らないんだけど、70年代後半あたりにアメリカで発行されていた電子音楽専門の雑誌らしい。

ダニエル・メンシェ、イタリアン・アール・ブリュットなど

パリは12月から3月初めぐらいまでは結構イベントがなくて、春になってくるといろいろおもしろいことが増えてくる。今、ちょうどそれが始まった季節。
金曜日のダニエル・メンシェのコンサートはめちゃくちゃ良かった。コンサートの前に少し話していたダニエルは、チワワと自然が好きな普通のアメリカ人おっさんという感じだったのに、ショーが始まるや否や、ステージからは底知れないエネルギー。彼はあまり海外にツアーに来ないのか、見たのは初めてだったが、パリジャンの観客もあまりのかっこよさに陶然だった。ここ数ヶ月見たものの中で、文句なしに一番いいコンサートだった。

土曜日は、日本人の女友達3人でサクレクール寺院の麓の公園で和食メインのピクニックをし、その後、そのすぐ脇のサン・ピエール・ホールへ展示を見に行った。アールブリュットを専門にしている私営美術館で、去年はじめて海外に出展された日本のアールブリュットがとても好評だったところ。今はイタリアのアールブリュット展をやっている。おもしろいものがいろいろあったが、特に印象に残ったものがいくつかあった。

ジョヴァンニ・ポデスタ氏の宗教細密画を施した家具類 ー イタリアでは最も有名なアールブリュットのアーティストの一人らしい。住んでいた地域の葬式には必ずかけつけてモラルの説教をするので、地域住民には変人として煙たがれていたらしい。

ロザリオ・ラトゥーカ ー シチリア島かどこか南の方のカヌー職人。大病で聴力を失ったかなんかで、悪夢に出てくる怪物のカヌー細工を制作した。

もう一人、メモを取らなかったので名前を忘れたが、貧しい家に生まれて毎日そうじをやらされていた人が雑巾を細く切り裂いて作った編み物風の服やバッグ、ブーツなども激しい異彩を放っていた。いっしょにいた友達は、それを見て、ローザンヌのアールブリュット美術館にある精神病のアーティストが病院のベッドのシーツを細かく引き裂いて作ったウェディング・ドレスを思い出したそうだ。

日本のアールブリュット展のときは、日本人らしい細部への偏執狂的なこだわりがとても印象深かったが、イタリア人の作品には芸術(とりわけ宗教芸術)と手工業の伝統が生きているのが特徴的でおもしろかった。

展示のリンク http://www.hallesaintpierre.org/category/exposition/en-cours/

日曜日は104へ。金曜日からずっとやっているエレクトロ音楽のフェスティバルにその日本人友人が出演するので見に行った。
104はまだ出来て数年で新しく、方向性もあまりしっかりしてなくて、なんかスペースだけがばかでかい施設という感じがする。音響も良くないし、レジデンスもないし、時々いい企画があるけど、たいていは残念なやつ。家の近くにある新しいコンサート会場、ゲテリリックもそんな感じ。あそこで見て良かったのは、灰野敬二のコンサートのみ。延々と演奏を続ける灰野さんを阻もうとするオーガナイザーを無視してさらに延々と続けていった灰野さんがかっこよかった(というか、灰野さんは演奏に夢中でオーガナイザーが仁王立ちしてるのを気付いてなかったらしい。さすがだ)。オーガナイザーが諦めて引き下がった瞬間に会場からは大きな拍手。やっぱり、みんなNYのハイソの出来の悪いコピーみたいなあの会場が嫌いみたいだ。
小さくて雰囲気もいい会場はどんどん消えて行ってる。2年ぐらい前にはよく使われていた13区の地下駐車場を改造したスペースや、バーシーの近くの倉庫のなかのトンネルなんかはすごく良かったのに。

Rudolf Eb.er パリ

Rudolf Eb.er は大阪在住のスイス人ノイズ・アーティスト。

パリ郊外Main-d'œuvreにて。

エラトゥムというレーベルのジョアキムのオーガナイズ。無料だったにも関わらず、パリの中心から遠いせいか、ほとんど人がおらず。パリの人はハイプなので、ちょっと郊外になったりするとめんどくさがって来ないから嫌だ。
ジョアキムはハイプ感のないショーになって良かったと喜んでいたけど、本当にその通り。

3年ぐらい前にルドルフが来た際のコンサートでは、会場付近の住民から苦情が出て警察が来てしまって結局演奏できなかった。
20分ちょっとだったけど、本当に良かった。