「スプラッター・ナイト/新・血塗られた女子寮」他

bigsnapper2011-07-03

☆「プレデターズ エヴォリューション」PROIE(10・未)〜DVD
何をかいわんやな邦題はさて置き、ちょい前なら「ジェヴォーダンの獣」、最近なら「人間狩り(Pig Hunt)」や「チャウ」に続くレイザーバック物、すなはちイノシシ恐怖の仏蘭西製の新作である。何かに追われて鉄柵に突っ込んだと思しき大鹿の死体から巨大なイノシシの牙が見つかるオープニングから、早速にむさい男達がイノシシ狩りに突入ーって御話の清い流れは大いに結構。いまどきイノシシを CG でなくハリボテで見せようってのは嬉しい限りだが、男達の内輪もめって話のアレンジが退屈極まりなく、赤点もいいとこ。また、徹底してそれの一部しか見せようとしない演出は序盤こそジョーズに利くものの、次第に苛々を募らせる。撮り手の一押しセンスなのか、単に予算不足なのか、とうとう最後までイノシシの全貌を披露しないまま終了するのには正直呆れたよ。まあ、尺が76分しかなく、こちらの頭に血が上りきる前に終わってしまうのが御愛嬌。主演にグレゴワール・コラン。共同脚本&監督/アントワーヌ・ブロシア。



☆「NAKED サバイバル・フォレスト」SHADOW(09・未)〜DVD
西班牙や仏蘭西に比べると中々出てこない感のある、イタリアの若手が撮った「フロンティア」×「バイオレンス・レイク」なありがち田舎ホラー、と思ったら何とまあ「◯◯◯◯◯◯・◯◯◯」だったと云うありえなさ。気違いが中世の処刑人風情なのがユーロっぽくて丸だが、ジーザス!いくら何でもあれはないやろ。懲り過ぎてどっちらけである。英語原題から連想させる通り、アルジェント同名作へのオマージュ・カット有り。Director wishes to thank としてそのアルジェント、ランベルト・バーヴァ、マッテオ・ガローネ、サヴィエ・ジャンの名前。因みに、今作の助監督はランベルト・バーヴァの息子さんである。共同脚本&監督/フェデリコ・ザムパリオーネ。



☆「ホスピス」FREAKDOG(08・未)〜DVD
アイルランドのホラー大将にされた感のあるパディ・ブレスナックが「デス・トリップ」(そんなええとは思わんが)に続いて撮った「ラストサマー」×「怒霊界エニグマ」な一本。変態がヤングに虐められて植物状態になる導入部の好テンポは持続せず、残酷場面含めて、暇潰し程度の出来。ラストが「スキャナーズ」となるのに笑ったが、この作家って、こういうジャンルを撮っていくには実直過ぎやしないかと改めて思う。主人公のプチ狂気を嗜めると思いきや、これ幸いと己の狂気を解き放とうとするスティーブン・ディレーンのマッドサイエンティストぶりを活かさないのが口惜しい。



☆「SHOT/ショット」LA CASA MUDA(10・未)〜DVD
ウルグアイ製「ブレアウィッチ〜」×「◯◯◯ン◯◯◯」。売りになっているワンカット撮りってのは十中八九はったり、肝心のカメラは、主人公の目線を保つって割にアクロバティックに動くのが紛らわしいが、よくある結末に説得力を持たせるのに一応の効果が感じられる。そこいらは「◯◯◯ン◯◯◯」より巧いのではないか。序盤にラヂオから漏れるエレクトロフォークな曲("Please" by Lucia Gonzalez)&終盤、二階から漏れ聞こえる "キャロル・アンのテーマ" みたいな曲と、音のセンスがいい。今年なら「ビー・デビル」を思わせる所があるのも興味深い。既にアメリカでは Lionsgate の製作、「オープンウォーター」監督組でのリメイクが限定公開済み。監督/グスタフォ・エルナンデス



☆「スプラッター・ナイト/新・血塗られた女子寮」SORORITY ROW(09・未)〜DVD
うっそー、まさかの「血塗られた女子寮」リメイク♪ 80年代のそれを直球で再現するんでなしに、15年位前にそれをリサイクルしたケヴィン・ウィリアムソンの線でアッパーに全面新装という趣き。巨大手裏剣などの殺法は中々ヴァラエティに富んでいるし、血量も割に多め、何よりキャンピーでバブリィ、そしてオッパイと一応ツボを揉み押さえているのが合格。真犯人の変態ぶりにもう一捻り欲しい所だが、少なくとも、あの忌々しい「プロムナイト」リメイクよりはずっとか楽しめる。開巻時の長回し、さっと挟まれる街景のフィックス画が良い。キャリー・フィッシャーの怪演に、デミ・ムーアの娘とグレッグ・エヴィガンの娘!の共演も御安い見所。脚色はジョシュ・ストールバーグとピーター・ゴールドフィンガーの「ピラニア 3D」チーム。監督/ステュワート・ヘンドラー(’78年生まれ)。

「狼たちの処刑台」他

bigsnapper2011-04-10

☆「ソーシャル・ネットワーク」THE SOCIAL NETWORK(10)〜新宿三丁目
市民ケーン」(そう言われているとは全く知らずに観た) の NERD 版。ちりちり頭の主人公が、ローズバッドちゃんへの全くミクロな想いだけであれだけマクロな事態を引き起こしてしまう辺りに、ちょいとヴォネガットを想う。「ゾディアック」と同じ筆使いであっという間に終わらせるのが凄いが、こうなるともう少しヴォリュームが欲しい。なんて野暮を言うくせに、ラストは大泣きだった。阿呆だねえ。



☆「ネスト」THE NEW DAUGHTER(09)〜池袋
「地下室の魔物」×「モンスター・パニック」+「わらの犬」少々という大穴的快作。演出、音が初期カーペンターっぽい、かも。肛門みたいな面した変態怪物のアナログ感も素敵である。ここ数年 Gold Circle Films が連発する恐怖映画群の中で一番の出来栄え。俺の青春、サマンサ・マティスも出ています。監督はスペインはパコ・プラサ&ハウマ・バラグエロ軍団の構成員、ルイス・アレハンドロ・ベルデホ。



☆「天下泰平」(55)〜阿佐ヶ谷
主演の三船敏郎然り、女の子にきゃあきゃあ言われている佐野周二の軽さ、左卜全の御怒りなど、役者のいつにない佇まいが面白い(とくに卜全。かみさん役、飯田蝶子との掛け合いが可笑しい)。その佐野に、三船、久慈あさみらの恋のベクトル/トライアングルが滅法楽しく、"すてきな片想い" 久慈あさみが三船の耳元にさっと唇を近づけて囁きかける瞬間、さらにそこへ堺左千夫がお茶ですよーとしゃしゃり出るタイミングなんてウキウキさせられる。そんな一方、手抜かりなく撮られた高架下での暴力場面が光る。 尚、後編にあたる「続 天下泰平」は全く帳尻合わせ程度のもんであった。監督/杉江敏男



☆「8時間の恐怖」(57)〜NFC
意識していただろうか、同年東宝製作の「三十六人の乗客」ってより「恐怖の報酬」発「弾丸特急ジェットバス」行なチャカチャカでスウィンギーなバス BUZZ 映画で、真っ当なサスペンスを期待すると肩透かしを食う、誠に清順なる一作(鈴木清太郎名義)。何はともあれ、「要塞警察」っぽい金子信雄は非常にナイス。あと残酷カニバサミに、二谷英明のミュージカルなひと時&ランジェリーな一瞬がこれ又ナイスです。助監督に武田一成。



☆「狼たちの処刑台」 HARRY BROWN(09・未)〜DVD
マイケル・ウィナーよりイーストウッド。それも「グラン・トリノ」じゃなくて「許されざる者」の線だろう。そこにニール・マーシャル以降の大英帝国暴力感覚と、ロン・シェルトン某作のクライマックスをぶっ込んだ感じ。終盤、元特殊部隊員だった主人公の脳裏にベルファストの悪夢が甦るってのが極めてえげれす的な妙味。フィックスで捉えた街の風景が良く、とくに地下道の段階を経た見せ方に作家の冴えを感じさせる。



☆「チャットルーム」CHATROOM(10)〜新宿三丁目
元になったのは、一昨年話題となった "Hunger"(09・未)の共同脚本家、エンダ・ウォルシュの舞台劇。思慮深く創られ、撮られたチャットルーム内のヴィジョン(撮影は俊英ブノワ・ドゥロム)はあくまで作り手側の視覚にしか過ぎず、そこに主人公らの居る現実世界を直接に侵す緊張関係など無いのだから、彼らがログアウトして現実に戻ったところで、何だか非常に白けるんだよな。要するに、主人公らは机上でちゃかちゃかキーボードを叩いた文字を読み合って一喜一憂しているだけで、フレディ・クルーガーや貞子に取り憑かれてしまう訳ではないのだ。他にも、他人の自殺願望に異常な興味を抱く主人公の体育会系、健康的な風体も逆を突いたとんちとは思えないし、挿入されるストップモーションアニメのセンスはかなり恥ずかしい。サーヴィスとは云え、随所に挟まれるリング的な場面には食傷気味の雰囲気が漂う。監督の中田秀夫本人がエロいチャットルームで女王様にぺこぺこ頭を下げて喜んでいる数秒間の画が一番面白かった。あと、現在のえげれすヤングスが揃った配役が見物っちゃあ見物なのだろう。一番目立つ娘を演るイモジェン・プーツは、この後、リメイク版「フライトナイト」のヒロインに抜擢された。



☆「キック・アス」KICK ASS(09)〜渋谷
この英国人監督って「レイヤー・ケーキ」でなく「スターダスト」を観れば解る様に、今時な暴力描写以上に捻った泣きこそが持ち味じゃなかろうか。今回ならニック・ケイジが「クリプトナーーイトッ!」と絶叫絶命する最中の英雄誕生劇で、ヒーローでなくヒロイン、それもヴァージン・クイーンが誕生してしまう件に、この作家の極めてえげれす的なへそ曲がりゆえの共感が在ったのではと妄想するのである。それにしてもぉ〜ここ最近、欧州の奇異な撮り手と組んで異質なアメリカ映画を産しているニック・ケイジが興味深い。対照的なのは、米国の野心的な撮り手と正統なアメリカ映画を実は作り続けているキャメロン・ディアスで(脚本コーエン兄弟+監督マイケル・ホフマンの新作とか選択眼良過ぎ!)、二人共ボックスオフィス的には既に微妙な位置に居るけれども、今の米国映画における二人の裏重要度は相当のもんだと思うよ。さて、今作でプチ敵を演じた人気の若手、クリス・ミンツ=プラッセの新作は、リメイク版「フライトナイト」の Evil Ed 役なんだってさ。


追伸:そのリメイク版「フライトナイト」(全米公開 ’11年8月)を監督した男にあの "Pride and Prejudice and Zombies" の御鉢が回ってきた模様。

「アダルトボーイズ 青春白書」他

bigsnapper2011-02-13

☆「ある日モテ期がやってきた」SHE'S OUT OF MY LEAGUE(10・未)〜DVD
って邦題には「ああ、そうですか」と返す他なく、てっきり阿呆な作劇かと思ったら、ジャド・アパトウ、ジョン・ハムバーグ、デヴィッド・ウェインといった最近の潮流ながら、初期キャメロン・クロウの酸味とファレリー兄弟の変態性が効いた青春ロマンティック喜劇の良作であった。主演二人は勿論、双方の取り巻きキャラが光る。脚本は "Hot Tub Time Machine"(10)に加筆しているコンビだからか、Hall & Oates のカヴァー演奏しか出来ない!素敵な男が登場したりするのが妙。主演二人が街中で初デートする場面と初キスする瞬間には泣いてしまった。監督は ’79年英国生まれのジム・フィールド・スミス。



☆「アンストッパブル」UNSTOPPABLE(10)〜新宿&有楽町
100分足らずのポップコーン仕立ては無問題として、こういう骨格の話なら「クリムゾン・タイド」の態度で撮って欲しかったなあ。また、終盤がやけに御気楽、尻すぼみに感じられた。まあそんな野暮は兎も角、騒動の原因をこさえた風船太りの運ちゃん、イーサン・スプリーが良い。電車を追っかけてどさっと倒れる所や、その後の電撃大作戦をテレヴィ中継で見守るも、丸っきり他人事みたく盛り上がっている姿が最高だった。米国映画界はこーいう肥満俳優が充実していて誠に素晴らしい。



☆「ザ・カラテ」(74)〜円山町
米国帰りのカントリーボーイ(っつうかほとんど原始人)山下タダシが洋食屋で悪漢と狂った様にメンチ斬り合う所&敵の腕を畑の大根宜しく引っこ抜く!瞬間が最高。まあ総じておんぼろな具合を見抜いてのサーヴィスか、タダシの唐手に合いの手を入れるかの如き山城新伍のアドリブ的アンストッパブル・ナンセンスを讃えたい。ザ・シンゴ、Enter the Shingo の面目躍如。返す返す、日本は惜しい人材を無くしたもんである。



☆「デッドクリフ」VERITIGE(09)〜三原橋地下
フランス Gaumont 製のルーマニア山岳マサカー。序盤は小じんまりながら欧州伝統の山岳場面が健闘、そこに主人公のおっぱい谷を平行して写すサーヴィスは一興だが、中盤から芸も冴えも無いフッツーの田舎ホラーに失墜。延々と続く暗い場面、痴話喧嘩の絡む脱出劇がつまらん。フランス人のくせに(だからこそか)襲いかかる変態の LOOKS にセンス無さ過ぎ!ほんでもって終幕のテロップ、あんな興醒めもないと思ったよ。まあ、全く大丈夫じゃない状況下でのSupergrass "Alright" のフィーチャリングぶりには乗せられて、暇潰しにはなりました。変態退治の際に「13日の金曜日 part 2」を思わせる所有り。



☆「青春怪談」(55/新東宝)〜神保町
撮りは役者に御任せ的なだだ回し気味(長回しってもんでもないやろ)、才気走った繋ぎなど無いし、競作となった日活の市川崑版より創りは野暮なんだが、こちらはこちらなりに役者陣のノリがえらく楽しくて予想外にデキた一作。おそらく獅子文六の原作が鉄板なんだろう。特に高峰三枝子は絶品。安西郷子の Mr.Lady ぶりが随分もっさりなものの、市川版の北原三枝とは違うショートカット姿にそそられる。そしてこちらのブラック・スワン的趣向の脇固めはあの方が、市川版で印象的だった男のオネエ言葉はさる方が、それぞれ抜け目なく担当!



☆「アダルトボーイズ 青春白書」GROWN UPS(09・未)〜DVD
アダム・サンドラー軍団総出演の Happy Madison 版「再会の時」。Kids Are Alright!ええ年こいた軍団員達が娘の豊乳や尻を眺めたり、屁をこいだりして盛り上がるってだけながら、弔いで始まり花火で終わる枠組みといい、エンド・オブ・サマーな中年黄昏感がしかと漂う辺りがやはりサンドラー、作家たる性である(脚本&主演)。プールでエヴリバディがはっちゃける所で涙が止まらなくなった。毎度おなじみ変態要員、ロブ・シュナイダーに時間がいつになく割かれている配慮が嬉しい。彼の末娘を演じるアシュリー・ローレンの奇面は発見だな。終幕時のちょっと引っかかる台詞はサンドラー自身の純粋さの表れと俺は前向きに取った。

「ロビン・フッド」他

bigsnapper2011-01-10

☆「ロビン・フッド」ROBIN HOOD(10)〜四日市
「ロック・ユー!」的アッパー脚色がこの監督のスランプを救ったのかも知れない、と云うヘルゲランド効果。この監督らしい一作かどうかと言えば微妙だが、ロビンとマリアンが豪州産なるええ加減を含め、主人公をサポートする三馬鹿、十字切りつつどぶろく振るまう坊さん、えらく元気なマックス・フォン・シドー、単に愚劣な悪漢としてでなく愛すべき阿呆として描かれる英国王等々、わいわいと滅法楽しい。


☆「きみがくれた未来」CHARLIE ST. CLOUD(10)〜日比谷
十中八九つまらんやろと観たら「デモンズ '95」×「臨死」(D・S・ゴイヤー)という意外作。ちょい役ながら変態俳優レイ・リオッタがてかてかと光る。やっぱり観てみんと判らんもんである。


☆「THE JOYUREI 女優霊」DON'T LOOK UP(09)〜渋谷桜丘
開巻の鈍臭さに嫌な予感がした通りの駄目リメイク。亡霊を欧州の魔女に置き換え、主演女優のそれっぽい佇まいは小知恵だとしても、主人公のキャラを変にいじったのが致命的な上、演じる男優がたいそう大根。さらに人選段階で不安視された監督の演出、とくに恐怖のそれがなっちゃあいない。まあ、監督もやはり香港人だよねと実感させられるエゲツナサに、もうオリヂナルもへったくれも無いどっちらけを連発した挙げ句「マニトウ」化してしまうやけっぱちな終盤、そしていい意味でいんちき臭くなってきたヘンリー・トーマスの熱助演辺りに、一抹の楽しみ方が見えた気がしないでもない。出資の一部は博報堂。あとこれ、ぴっかぴかの35プリント上映!