「花。」
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「俺からちゃんと話をさせてください。それが当然だし、その権利はあるでしょう」
「わかったわかった」
だけどあいつは嘘を吐いた。
「じゃあ、あなたはもう降りていいよ」
「は?」
「あとは事情はこっちから聞くから」
「こっちからって、俺もこれから行って、あなた達に説明しますよ」
「いやでも、いいから」
その後、あいつに「そんな奴は、おかしいんだ」と彼は言った。
「おかしい?」
おかしいだと?
俺には説明する義務があるのに、他人なんかじゃないのに、
むりやり引き離された。
罵声を浴びせてパトカーのガラスを殴った。
悔しくて持っていたipodを走っていくパトカーに叩きつけた。
何事もなかったかのように走り去っていった。
半分に切り裂かれた胸。
だけど、変わらない。変わらないものがここにある。
恥ずかしいことなんて何もない。何もなかった。照れることも。
苦しい。