『隠し砦の三悪人』 監督:樋口真嗣
3度目の正直ならず。2度あることは3度ある。『ローレライ』『日本沈没』と連発し、いまや日本の底抜け超大作の第1人者となった樋口真嗣。興行成績と裏腹に、その薄っぺらな内容から映画ファンを辟易させてきた樋口監督が今回もやっちまいました。オリジナルである黒澤明版『隠し砦の三悪人』の肝はと言うと、次から次へと襲い来るピンチを知恵と勇気で乗り越えて行く展開であり、この映画をリメイクするのならば最大限その見せ場を外してはならないのだが、どうにもそこいら辺りを全く持って分かっていなかったようで、脚色上も演出的工夫も何1つされずに、オリジナルと同じことをやっているところも頭が悪く見える事この上ない。ラブロマンスとか爆発ドッカ〜〜ン!!とかどうでもいいから脚色するならば、先人たる菊島隆三 小国英雄 橋本忍らに引けをとらないくらい頭を捻って作らないと。「リメイクを作るならオリジナルと同じ事をやっても仕方ない」という監督の言葉は一見もっともそうに聞こえるが、オリジナルにある魅力と全く違う斜め上に力を注ぐくらいならリメイクを作る意味自体がないのだ。(違う事をやりたいのならばリメイクではなく『ローレライ』みたいにオリジナルでやればいいだけだ。長編監督経験の無かった人のオリジナルに何十億も出すような方々がいるのだからさ)。そのスタンスは、オリジナルの『キングコング』を愛し、深い思い入れを持ってリメイクしたピーター・ジャクソンと比べれば一目瞭然だ。どうやら樋口監督のスタンスは、残念ながらピーター・ジャクソンよりも、ギラーミンや『13ウォリアーズ』のジョン・マクティアナンに近いらしい。ちゅうか、そんなに『スター・ウォーズ』が好きなら『スター・ウォーズ』をリメイクすればいいじゃん!!樋口カントク、あなたはオリジナルの『隠し砦…』を好きでもなんでもないでしょ?ただの馬鹿にしか見えない主人公の武蔵と新八。凛々しくもなく聡明でもなく美しくもない雪姫(上原美佐のカッコよさの欠片にも及ばず。いま雪姫をリメイクするならばツンデレで、かつ、姫でありながらも剣の達人、くらいにはするべきだろ)。最悪なのは椎名桔平演じるダースベイダー!! どうしてこんな事をやって恥ずかしくないのか全くワカラン(笑)。繰り返すが、そんなに『スター・ウォーズ』が好きならそちらをリメイクしろよと。最悪なのは2度にも及ぶ『裏切り御免!』の使い方もで、いやアンタら使いどころ間違ってるよ!ヘンだよその使い方!!長澤まさみの「裏切り御免」に辟易したところで最凶のタイミングで流れるエンディング主題歌!!(笑)。怒りとか悲しみを遥かに超えた絶望感で、エンディングロールを眺めながらこの主題歌を聴いていたけれど、製作陣はホントにこんな歌でいいと思ったのでしょうか?? それを言ったら、そもそもこんな映画でホントにいいと思ったのか?って話だけれど。映画ファンは誰一人もハリウッド・ブロイラーのような『隠し砦の三悪人』なんて望んでいなかったと思うのだけれどね。
『映画クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者』 監督:本郷みつる
ぼくらのクレしん映画に本郷みつる監督が帰って来た!! 数えてみればなんと12年振りの登板だそうで、これだけの年月が空いての登板には本人もやはり思うところがあるようで、その辺りはパンフレット収録のインタビューでもちょろちょろ語られております。けれど出来上がった映画を見ると、本当にこれが本郷テイストのフイルムになっていて、まるでヘンダーランドの大冒険の次に作られたのが今作だと言われても不思議ではないくらい、作品観に揺らぎがない!変わっていない!! スタッフ的にもいざ鎌倉!的に設定デザインで湯浅政明氏が参加しているのがポイント高し。かつての本郷クレしんと変わらぬ雰囲気を維持できたのはこの人の功績が大きいのではないでしょうか。深夜の玄関先から迷い込むシュールに変貌した街の描写なんて秀逸そのもので、まさしく湯浅マジック! 映画全体のテンポが12年前と同じくらいで、この間の作品群を見てきた者には鈍く感じてしまったり、序盤から中盤の日常の繰り返しでダレてしまったりと(作品のテーマ的には必要な繰り返しなのだけれど)気になるところもなくはないし、賛否両論はあろうけれど、近年の過去3作の憂さを晴らす見事な漫画映画に仕上がっているのではないでしょうか。本郷監督には今回だけと言わず、是非来年以降も監督をしてもらいたいですねえ。
いわしげ孝『単身花日』#32「雷鳴の夜」(ビッグコミック12.25号)
「お母さん、私を産んだことを後悔しとるの? 私、産まれん方が良かったの?」
「何を今更…」
『誰もいない………私の味方は、誰一人としていないんじゃ。』
順調に仕事が上手くいっている桜木舜と対照的に、議員の息子の佐々木に手を上げたことで追い詰められ、教職を辞めてしまう桐野花。実際、辞表を出してしまう程の状況であったかどうかには疑問ではあるけれど、そこまでしてしまうのは花のトラウマ「誰からも必要とされていない」という思いからか。回想にある、父親からの性的虐待(という処までは描かれていないけれど、常に父からオンナと意識をした視線で見られていた)と、母親からの愛情の希薄さ。両親からの歪んだ愛情が、現在の花のミョ〜に不思議ちゃんチックなコミュニケーション不全な感覚が形成されていった模様。確かに、親からの愛情が歪んでいたら人格形成に問題は出てくるかも知れないけれど、現在の花の問題は、少なくとも過去のトラウマだけではない事は明白ではあるし。旦那の武田氏との事や、片山の事とかね。個人的には、社会の中で働いたり生活したりしていても、「自分は誰からも必要とされていないのではないか?」という感覚が俺の中にも多少なりともあるので、花の持つ気分は全く分からないでもない、けれど、なあ。自分の子供や新しい家族を妄想する時に出てくるのは、旦那との事ではなくて、「桜木……花」というのは……。まあ、舜は初恋にして運命の相手らしいけれどさ。いや、でも、旦那は本当にどうなってるんだ?? 調子こいてる舜に、清水が告げた秘密は「片山と桐野が兄妹」らしいとの情報。まあ、只ならぬ関係とは思ってはいたけれど、兄妹でしたか。詳細は次回へ。
原作:室積光/作画:猪熊しのぶ『都立水商!』#198「安物ですが」(週刊ヤングサンデー01号)
近藤先生の、ヘタレっぷりと黒沢先生へのツンツンっぷりが可愛いなあ。黒沢先生の屁理屈な言い訳に納得し丸め込まれちゃうホステス科女生徒達は単純と言うかビミョ〜ですが(笑)。田辺と吉岡先生の小学生レベルの恋愛進展具合もナンだけれど(苦笑; ちなみに今週号分は244ページ目で『都立水商!』は終わりで、245ページは次の漫画の冒頭かと思ってしまいました。
ゆうきまさみ『鉄腕バーディー』#197(週刊ヤングサンデー01号)
長かった温泉篇「千年の鼓動」篇もようやく終了。旧作では短編だったのになあ。「新章開幕まで、しばらくお待ちください」とハシラにあるけれど、しばらく連載はお休みなのかな? まあ、春くらいに再開するかなあ??くらいに気長に待ちます。バーディーって、2002年の暮れに連載開始だから、ここで丸5周年なんだよねえ。