Armonioso吹奏楽団第一回演奏会

3月の第2週から第3週にかけては全国でさまざまな吹奏楽団の演奏会が行われますね。
今回は鹿児島にいたので、アルモニオーソ吹奏楽の設立記念演奏会を聞きに、谷山サザンホールに足を運びました。
このバンドは、結成してまだ1年半ほどでしょうか。
去年のコンクールに初出場していますが、その時に、精華女子高校藤重佳久先生に指導を仰いだ関係で、今回のコンサートでは、その藤重先生へのお礼という意味で、スパーク作曲「宇宙の音楽」を選曲したようです。
しかし、練習回数の少ない一般バンドで「宇宙の音楽」を仕上げて行くのは、至難の業ですが・・・・。

この日のコンサートは、3部構成。まずは、常任指揮者による、アルメニアンダンスパート1。
松陽高校卒業生によるオリジナル作品の初演。
そして現在鹿児島国際大学で声楽を専攻している2人のソリストを迎えてのオペラのアリアの披露、でした。
全体的にコンパクトで、小編成のバンドによる演奏(伴奏)もバランス良く出来ていたと思います。大学生を中心にまだまだ若いバンドらしく、友人のつてを最大限に利用した演出は好感が持てました。
そして第2部は、精華女子高校の藤重先生を迎えての課題曲のお披露目。
1番〜4番まで、1曲ずつ藤重氏の解説を交えて、最後にフルで演奏するというスタイルは、当日会場に来ていた中学生や高校生にとっては非常に良い勉強の場となったようでした。
しかし、最近は良くテレビにも登場しているので、やはり人気者でしたね〜。
第3部は、ポップスステージと、メインイベントの「宇宙の音楽」。
この気合の入り方は、おそらく今年の自由曲にするんだろうなという感じでしたが、マエストロの力で音楽の場面転換もスムーズに展開。
特に、終盤のハルモニアの歌い方は、学生でもなく、大人でもなく、その途上にある独特なハーモニーバランスが、初々しさを醸し出していました。
今の段階でここまで仕上げていたわけですが、ここから更に高みを目指すのは、非常にパワーのいる作業ですが、夏に向けてどこまで音楽を進化させて行くのか、楽しみに注目していたいと思います。
最後のアンコールは、過去の人気課題曲ディスコキッドでした。

鹿児島県は中学校や高校の盛り上がりに比べると、大学から一般にかけては、なかなか活動の盛り上がりが感じられないわけですが、こうした若いバンドが次々に登場して、シーンをエモーショナルに活性化させて行くというのは非常に喜ばしいことではないかと思います。
今回の声楽とのコラボレーションや鹿児島出身の作曲家の卵達の発掘など、慣例にとらわれない自由な発想のバンドがもっともっと切磋琢磨していけるような、そんな環境に鹿児島の吹奏楽シーンが発展して行くと、もっといろんな可能性の場が音楽を目指す若者たちに提供されるようになるでしょう。
そして、このバンドのコンクールや、次なる演奏会の拡がりを楽しみにしていましょう。

第31回精華女子高等学校吹奏楽部定期演奏会

第31回精華女子高等学校吹奏楽定期演奏会を聞きに、福岡サンパレスに行ってきました。
今回は、マエストロ藤重佳久氏、最後の精華での定期演奏会になります。
というわけで今回初めて、4ステージ全て聞いてきました。というのも、この年度の自由曲「華麗なる舞曲」は4回とも演奏するわけですが、4回それぞれのステージで演奏曲目が異なる部分があったからです。その4曲とは、「ルイ・ブルジョワの讃歌による変奏曲」「フェスティバル・バリエーションズ」「宇宙の音楽」そして、委嘱作品「ヴィクトーリア」。
最後の最後まで攻めの姿勢を崩さないアプローチに脱帽です。
聞くところによると、この選曲は、昨年の冬休みに案出ししたとの事。「華麗なる舞曲」と「ヴィクトーリア」は別にして、他の3曲は約1カ月でゼロの状態から仕上げて来たわけですね。
また冒頭のファンファーレやマーチもステージ毎に曲を変えていました。そういう気分だったのでしょうか(笑)。しかし、直管がストレートに向かってくるファンファーレとマーチは、どの組み合わせも精華の世界観そのもの。オープニングをグイッと盛り上げます。

初日のファーストステージは、フェスティバル・バリエーションズ華麗なる舞曲の組み合わせでした。プログラムとは違い、2曲目に早くも華麗なる舞曲を披露。第一部の最後がフェスティバル・バリエーションズでしたが、楽曲の生活からして、やはり華麗なる舞曲をラストにした方が、客席は盛り上がるのかな、という印象でした。
そして初日のセカンドステージは、オープニングのマーチに続いて、ヴィクトーリア。この曲は委嘱作品で、去年の夏、かなり練習していたので、音楽的な仕上がりもハイレベル。そして第一部最後に演奏した華麗なる舞曲は、〆に相応しい圧巻の演奏で、当日客席にいらしていた天野正道氏も絶賛していました。コンクール時の数倍も躍動感に溢れた名演だったと思います。
さて、2日目は、時折雨がぱらつく天気でしたが、朝早くからサンパレス前には多くのお客さんが列を作りました。ファーストステージは、ルイ・ブルジョワと、華麗なる舞曲の組み合わせ。ルイ・ブルジョワは早くから全体の合奏は完成されていたようですが、楽曲のきらびやかな世界観をしっかりと再現する演奏で、客席の期待感をヒートアップさせるのに成功していました。前半のコラールも重厚で、さすがのサウンドの安定感でした。そして第一部最後の華麗なる舞曲は、やや細かいブレはあったものの、昨日の演奏に肉薄する名演。また、ここまで3回とも全てのソロ楽器がほぼ完璧な演奏を保持し続けて来たのも、アッパレです。
さ、そして最終公演は、宇宙の音楽華麗なる舞曲の組み合わせ。仕上がりが遅れていると聞いていた宇宙の音楽でしたが、ビッグバンからのアグレッシブな音楽の展開はさすがのもの。そしてなんと言っても圧巻だったのは、時間を気にしなくていいからこそのハルモニアの重厚なハーモニーによる音楽の美の連鎖。このハルモニアは演奏する側も聞く側も、音の美の到達点を甘受する、極上の空間になりました。終盤のアンサンブルもさすがの完成度です。そしてなんと言っても、4回聞き続けて良かったと思えたのが、最高の到達点を迎えた華麗なる舞曲。マエストロ藤重佳久の最後の精華における華麗なる舞曲という思いと、3年生最後の華麗なる舞曲という「気」が濃縮されてビッグバンのごとく爆発した華麗なる舞曲は圧巻という言葉を超える「気」のパワーを感じさせるものでした。4回のステージ全てで完璧なソロを聞かせたピッコロ・トランペットを始め、全ての奏者が、それまでの音楽生活の中での最高のパフォーマンスをなし遂げた達成感を味わった事でしょう。まさに後世に語り継ぎたい残して行きたい名演の誕生、観客で聞いた幸せを演奏会が終わった今も噛みしめています。
また、2日目の最終ステージは、観客の声援も一段と活気に溢れ、奏者たちのボルテージも鰻登りとなったと思います。観客の「気」というのも、演奏会では大切な要素になるわけです。

さて、第31回精華女子高等学校吹奏楽定期演奏会は、この第一部の後、第二部では、エリック宮城氏等を迎えたポップス・ステージと、天野正道氏書き下ろしのオリジナル・ミュージカルが上演されました。そして第3部は、お馴染みマーチングやカラーガードのステージ。そして終演後には、この春に精華を去る、マエストロ藤重佳久氏の挨拶と、最後の「チェリオ・マーチ」の演奏が行われました。
ファイナルステージでは、終演後に「ありがとう〜〜〜〜!」の声が客席からも飛び交っていました。
さ、こうして精華女子高等学校吹奏楽部は4月から、また新たな時代を迎える事になります。
次なる活動の行方も、注目して行きたいと思います。

1994年東京都吹奏楽コンクール・大学の部・高校の部

前日の一般・中学に引き続いて、大学と高校の部を聞きに、府中の森芸術劇場に足を運んできました。
まずは午前中に、大学の部が開催されました。

予選を通過した8つの大学から、見事に代表となったのは、去年に引き続き東海大学
まずは重厚感があり、過不足無く見事にブレンドされた極上のサウンドが、他のバンドと一線を画していました。課題曲の5番はしっかりとアナリーゼされた好演でしたが、やや無機質に感じる部分も見られ、その表現に艶やかな部分も欲しかったなという印象でした。自由曲は邦人作品でしたが、音楽がやや機械的に進んでしまうのと、打楽器とのバランスが気にはなりました。が、全体を通して、安定したハーモニーとうねるような音楽の展開が、会場いっぱいに心地よさを響かせていたと思います。

続いて、金賞を受賞した立正大学
まずは課題曲2番が素晴らしいマーチでした。クリアでストレートながら、適度にブレンドされたサウンドが奏でる、ポジティブなマーチは、今年聞いてきた数多くの2番の中でも、トップクラスの完成度でした。自由曲においても、その心地よくブレンドされたバンドサウンドによる重厚なハーモニーと、ソロ・トランペットの安定した音色とのコラボレーションが、極上の音空間を作り上げていました。ただ、全体を通して、ストレートなサウンドが続いた感じで、これに、艶やかな部分も加わると、音楽にも更に幅が出てくるのではないかと思います。

そして、もうひとつの金賞は、1年ぶりに復帰した、駒澤大学
まずは非常に高い個人個人の演奏力に頼もしさを感じました。課題曲2番は、終始旋律が際立ち、対旋律とのバランス等もお見事。推進力を持った心地よいマーチでした。自由曲においても、全てのフレーズを再現しながら、絶妙なバランスで旋律を際立たせるという、駒澤大学伝統の音楽作りは健在だったと思います。そんな中で、金管木管サウンドブレンド具合がいまひとつで、特に、トロンボーンサウンドに深みがない為か、バンドから終始離反して聞こえてしまっていたのか残念でした。サウンドブレンドでより音楽に一体感を持たせる・・・ここが、今後のキーポイントではないかと思われます。

というわけで大学の部は、個々人の技術力の高さ、サウンドブレンドによる完成度の高さ、そして全体の音楽としての流れの必然さおよび完成度により、それぞれの賞の色と、更に代表が決まったような感じでした。言い換えれば、銀賞や銅賞の団体はそれらの部分の完成度が、金賞団体には及ばなかったという事で、その辺のレベルアップをいかに図っていけるのか、がこれからの1年間の課題になるのではないかと思います。

さ、大学の部に引き続いて、激戦区、高校の部が開催されました。
高校の部は、客席の争奪戦も激戦区でしたね。最初の段階から、一階席の前方まで超満員という物凄さでした。
そんな大きな期待感の中で行われた高校の部で見事代表のひとつとなったのが、東海大学付属高輪台高校
まずは、その重厚で、ダイナミックレンジの広い安定したサウンドが、高校の部の中でも、随一のものを誇っていました。完璧に近いオーケストレーションでスタートした課題曲4番は、終始絶妙なアナリーゼで、必要な音楽の要素を満遍なく浮き立たせる秀演。自由曲は、ゴシックな風情を持ったイントロの後、サックスと木管のアンサンブルに微妙なバラつきを感じたぐらいで、終始安定した高い演奏力を見せていました。そんな中で、場面ごとの変化に、更にメリハリが欲しかったかなというのと、低音ブラス系が、全体のバンドサウンドから離反してしまう部分が見られたのが残念でした。輝きを保ちながらも、更に深みのあるサウンドがチャイコ作品には求められるのではないでしょうか。とはいえ、全ての要素において、他バンドよりも更に高いレへルにあったのは間違いありません。

そしてもうひとつの代表は、東京都立片倉高校がゲットしました。
滑り出しは、重厚感と安定感のある音楽が流れて来ましたが、その後の展開は例年に比べると、サウンドに艶が無く、ややこもりがちになってしまったようでした。特に課題曲の5番では、アンサンブルのわずかな乱れも散見され、らしくない音楽になってしまったかなという印象です。しかし、さすがにアナリーゼはしっかりと施されており、不調に見られる中にも、音楽の骨組みはしっかりと伝わって来ました。自由曲は邦人作品でしたが、やや焦点が定まらない感のある楽曲で、演奏も内声部がもやもやする等、ややつかみ所のない感じでしたが、まあ、そういう楽曲なのかも知れません。いずれにしても終始安定した破綻の無い演奏だったと思います。

さて、その他の金賞団体、東海大菅生高校は、レンジの広いサウンドで、演奏力の高い音楽を展開しましたが、やや例年になく発音ミスか多かったのと、強奏部分でサウンドが粗雑になる部分が見られたのか残念でした。
駒澤大学高校は、打楽器を上手に配した課題曲2番がクリアで心地よいマーチを作り上げていました。スネアのサウンドも絶妙でしたね。自由曲は十八番のローマの祭。非常に高いアンサンブル力を見せる演奏でしたが、ppとffのレンジにもっと差があれば、音楽の幅がより拡がった事でしょう。サウンドそのものにも更に陰影が備わればいいかな、という印象でした。
そして、東京都立杉並高校は、重厚なサウンドと安定したハーモニーは健在でしたが、随所でアンサンブルがややバラけてしまったのが残念。自由曲も楽曲の世界観をうまく再現していましたが、早いパッセージ等に更に精度が伴えば良かったかな、という印象です。

というわけで、確か例年は金賞は4校だったと思いますが、今年は5校。という事はその分、上位5校が突出していたという事なのでしょう。
さ、というわけで、これで全ての代表が決定した、今年の全日本吹奏楽コンクール。今年はどんな名演が、エピソードが誕生するのか。楽しみにしていたいと思います。そして、出場した方々も、その関係者も、そして運営の方々も、本当に今年もお疲れさまでした!

1994年東京都吹奏楽コンクール一般の部・中学の部

東関東地区と共に、予選の最後を飾る、東京都吹奏楽コンクールを聞きに、府中の森芸術劇場に足を運んできました。
府中の森芸術劇場の大ホールは、ディレイの長い、超ライヴな響きを持っています。というわけで、サウンドの処理に甘さがあると、すぐに音がこもってしまうわけで、その辺りの対策も出場団体は必要になって来ます。

では、一般の部の感想などを、まずは代表団体から。
創価グロリア吹奏楽
ここ数年安定して代表になっているバンドらしく、その音の粒立ちはお見事。というかそれを持続させているところに素晴らしさを感じます。今年の課題曲5番は、よりバーチャルなサウンドが求められる楽曲。数多く聞いてきたこの課題曲5番の中でも、最も理想的な音色で聞かせてくれました。特に、不規則に飛び交う音楽の構成要素のコントラストはお見事。終盤、浮き上がってくるような低音の演出まで、喉を鳴らすのも憚られるような世界観を持っていました。自由曲の役人は、余裕を持って、品よく仕上げられていたと思いますが、課題曲に緊張感がこもり過ぎていたからか、やや淡々としたあっさり味のバルトーク作品になっていました。

東京隆生吹奏楽
こちらも、ここ数年の東京代表の常連ですね。一般のバンドというのは、全員が集まって合奏をする事がなかなか困難なばかりか、個人練習も仕事でままならないという中で、アグレッシブな楽曲を選ぶのはためらわれがちです。が、そこにチャレンジして来たその姿勢にまずは拍手を送りたいと思います。課題曲は、勢いを持ったポジティブなマーチでしたが、第一主題がやや暗い響きで聞こえてきたのが残念。しかしその後は、徐々に本領を発揮していった感じでした。自由曲は、まだまだ発音ミスや高音の処理等、修正部分はありますが、全体を通して楽曲特有のグルーヴ感をよく再現した好演でした。特に終盤のうねるような音楽の演出力はお見事。全国大会には更に精度をあげて来る事を期待していたいと思います。

そのほか、金賞を受賞した、板橋区吹奏楽
非常に安定感のあるサウンドと、高い演奏力が光っていました。ただ、代表バンドに比べると、中低音がやや弱いかな、というのと、サウンドにエッジが足りないかな、というのがこの会場で聞いた印象でした。また、音楽の場面に合わせたサウンドの質の変化なども欲しかったところです。
デアクライス・ブラスオルケスター
熟練した指揮者のもと、高い演奏力を誇るバンドで、その重厚なサウンドと、安定したハーモニーが心地よい演奏でした。ただ、ややらしからぬミスが散見されたのと、高音ブラスの発音がやや曖昧になってしまっていたのが残念でした。

続いて銀賞となった、豊島区吹奏楽は、懐の広いサウンドは健在でしたが、全体的に音楽がもっさりとしていたのと、サウンドの粒立ちの悪さが気になりました。自由曲は、斬新なアレンジ物の方が合っているような気がしますが・・・・。ソウル・ソノリティは、芯の通ったサウンドは健在でしたが、今回は特に中域のサウンドか希薄で、高音と低音が強調されて聞こえてくるというバランスの悪さか気になりました。しかし、課題曲5番から、レミゼへの流れの作り方は、非常に心地よかったと思います。
NTT東日本東京吹奏楽は、重厚なサウンドを持っていながら、クリアさに欠けるためか、旋律が浮き立って来ないのが気になりました。また、アンサンブルももっとタイトにスキルアップして欲しいところです。そしてミュゼ・ダール吹奏楽は、いつもの大音量をホールいっぱいに轟かせていましたが、楽器によっては、そのサウンドの限界を越えているものも散見されました。今の音量の8割ぐらいになったとしても音量は充分なので、より美しいそれぞれの楽器の音色を追求する方にベクトルを向けてみては如何でしょうか。演奏力が高いバンドだけに、そんなことを思った次第です。

そして銅賞となった、プリモ・アンサンブル東京は、いつもながらの大人なサウンドを聞かせてくれました。ただ、特に低音の発音にブレが感じられたほか、ハーモニーの重ね方等も、更に丁寧なアプローチが求められるところです。また、音楽の場面ごとに、明確なメリハリとサウンドの変化を付けることもこの部門では求められるでしょう。早稲田吹奏楽は、よくまとまったアンサンブルと合奏力の高さが印象的でした。ただサウンドがこもり気味なのと、音楽の流れが淡々としすぎていたのが、残念。また、強奏部分で、ややサウンドが破綻してしまう点には気を使って欲しかったところです。そして、足立吹奏楽は、ちょっと懐かしい選曲で会場を和ませていました。サウンド的には中低音が弱く、音楽にメリハリがついていなかったのが残念。ソロ楽器の響きなどは非常に美しいものを持っていましたが、全体とのコントラストをどう付けて聞かせるのか、そういう部分への配慮も求められる事でしょう。

そして残念ながらタイムオーバーで審査の対象外となってしまった、葛飾吹奏楽でしたが、課題曲はクリアで安定したマーチが心地よい好演でしたが、その分音楽が全体的に淡々とし過ぎてしまったようです。ハーモニーと旋律がよりクリアに響き、聞こえてくるようになれば、その音楽は激変するのではないかな、と思わせるサウンドと音楽でした。

さて、この日は一般職場の部のあと、中学校の部が開催されました。
その中て見事に代表になったのは、小平市立第三中学校
去年まで小平六中を率いていた先生が今年から三中に赴任。わずか半年で三中を代表に復活させました。課題曲3番、冒頭はやや、謳い込み過ぎかなという印象でしたが、場面ごとに更に音色の変化を演出すると鬼に金棒となるでしょう。サウンドのエッジも心地よく、楽曲の世界観を的確に再現していました。自由曲は、今年の中学の部の流行りの1曲。時折顔を覗かせる大人なハーモニーも、臆せず安定して奏でる演奏力はお見事。ここ数年の東京の中学は激戦区の様相でしたが、今回の三中の演奏は、中学の部の中でも突出した名演だったと思います。

そしてもうひとつの代表となったのが、こちらも代表復活となった、玉川学園中学部
非常に柔和なサウンドが他の中学バンドと一線を画するのに功を奏していました。課題曲2番は、その柔らかなサウンドにより、明るいというよりは美しいマーチを演じていましたが、終始停滞感が漂い、いわゆるマーチとしての推進力に欠けていたのが残念でした。美しい中にも、明るい輝きや、時に力強さも、マーチという楽曲の中では感じさせて欲しいところです。自由曲は、もともと硬質なオーケストレーションを持っている楽曲を、その柔らかいサウンドで、時にしっとりと、時に囁きかけるように奏でているのが印象的でした。しかし、終盤になっても、サウンドの質が変わらず、訴求力を持たないまま音楽が終わってしまったようです。中盤以降、サウンドの変化やテンポ感などでより説得力のある音楽に生まれ変わる事を、全国のステージは期待したいところです。

その他の金賞団体、まずは羽村第一中学校は、持ち前のエッジのある金管を中心としたサウンドは健在でしたが、トロンボーンやチューバ等、低音ブラスと全体のバランスが悪く、終始ボンボン鳴り響くだけの音楽になっていたのが残念。交響的断章も、今の中学生の志向とはややベクトルが違ったかも知れません。青梅市立第六中学校は、21名という人数での好演でこの日のオーディエンスの大喝采を浴びました。課題曲4番は、やはりこの人数で吹きこなすには無理があったようで、持ち替え等で頑張っても、ところどころでミスやバランスの悪さを露呈してしまいました。しかし、自由曲は一変して、持ち替えも完璧な名演。You Tube時代ならではの見栄えも素晴らしい演奏力で、会場全体を魅了しました。久々に鳴りやまない拍手というのを体感しました。そして、小平市立第六中学校は、指導者が代わった事もあり、バンドとのコンビネーションにやや違和感を感じる演奏でした。奏者達は演奏力の高さを見せていましたが、終始旋律が聞こえてこないなど、音楽的な処理に一考が必要なようです。しかし、サウンドを持っているバンドだけに、次なる巻き返しに期待しましょう。

というわけでこの日は、大編成ならではのダイナミックなサウンドと魂のこもった音楽から、小編成によるアクロバティックながらも音楽心を大切にしたハートに響く音楽まで、あらゆるタイプの音楽に触れられた、幸せな1日となりました。

2014年九州吹奏楽コンクール高校の部

昨日の中学の部に引き続いて、高校の部を聞いてきました。天気が持ったのは、何よりです。
では、代表団体の感想などを。

精華女子高校
音楽を奏でる最大の目的は、おそらく聞く側であるオーディエンスを熱狂させたり、涙腺を刺激したり、日々に疲れた心の琴線に触れたり、そういう、人の心にどれだけ響くか、と言うところにあるはずです。この日の精華女子校の音楽は、その音楽の語りかけ働きかけを多くの、会場から溢れんばかりの人々にもたらしていました。心が動けば、12分間がいかに短い時間なのか、そこにいるほぼ全ての人々が感じたはずです。九州大会では、珍しい満点獲得の金賞代表。この日に乱発された金賞の中でも、最も輝かしいグランプリを、精華の奏者たちは、観客からの止まらない拍手喝采から感じ取ったことでしょう。音楽の輪郭から内声部のハーモニーに至るまで、隅々に手の行き届いた課題曲と、繊細さと発奮度が同居した華麗なる舞曲は、まさに、至極の12分間。更に精度を高めて、今年も次なる頂点を目指して頂きましょう!

玉名女子高校
実に艶やかなサウンドで課題曲4番がスタートしました。数年前からすると、華麗なるサウンドの転身と言った趣です。そして、一つ一つの音楽の輪郭を、丁寧に紡いでいく、そんなマーチでした。ただ、輪郭に時間をかけすぎたのか、内声部の動きを上手く生かせず、音楽がやや平面的になってしまっていたのが残念。自由曲においても同様で、劇的な中にも、より繊細な音楽の組み立てが求められるところです。

福岡工業大学附属城東高校
ハイスピードでスタートした課題曲は、個々の高い技術と、豊麗なサウンドを魅せるのに成功していましたが、細かい要素がやや埋れてしまう部分や音楽がバラけてしまう部分が散見されたのは惜しいところ。自由曲は、冒頭部分でやや繊細さを欠く部分がみられ、楽曲のもつ緊張感が維持できなかったのが惜しまれます。中盤以降、クライマックスに向けての演出はお見事でこのバンドの本領発揮といったところでしょう。ただ、ラストは更に明るいサウンドも個人的には欲しかったところです。

続いて、金賞団体の中で、印象に残った団体を。

鹿児島情報高校は、指揮者が神様から交代し注目を集めましたが、ダイナミックで重心を低く置いた品格のあるサウンドは健在でした。ただ、まだ指揮者とのコンビネーションに違和感があるのか、随所でアンサンブルに迷いがみられたのは残念です。

鹿児島県立松陽高校は、非常にシンフォニックで、繊細かつ流麗なサウンドは相変わらずで、出場全団体の中でも突出した質のいいサウンドを誇っています。がしかし、音楽のダイナミックレンジが狭く、自由曲終盤の、めくるめく音の万華鏡が、ステージ上で完結してしまっていました。課題曲の仕上がり具合が非常に良かっただけに、残念!

出水中央高校は、去年今年と毎年指揮者が変わりましたが、骨太いミスのないサウンドと技術力は健在です。今回は課題曲自由曲ともに、音楽が塊となって進んで行く感じで、細かいニュアンスやバランスの妙が聞かれなかったのが残念でした。

佐賀学園は、九州の高校では珍しく課題曲5番にチャレンジし続けるバンド。サウンドも非常にバランスが取れていて、聞きやすい音楽を作りあげてきますが、今回はサウンド音楽ともにややバラけてしまった印象で、全体を通してサウンドに芯が備われば、音楽がが飛躍的に上質なものになると思います。

沖縄勢は、トップバッターの那覇高校が、前日の中学と比較すると圧倒的にボリューム感のあるサンドを聞かせましたが、終始すべての楽器が奈良市続けている感じで、メリハリがつかなかったのが残念でした。昨年代表のコザ高校は、変わらず煌びやかなブラスサウンドを聞かせていましたが、木管のソロなどで、ピッチが不安定になるのが気になりました。

その他、衝撃の精華の後に登場した熊本高校は、まろやかなサウンドと丁寧な音楽作りが高感度大で、続く熊本北高校は、おおらかに歌い上げたトスカが圧巻でした。サウンドのバランスも素晴らしかったと思います。
また、宇宙の音楽にチャレンジした都城商は、ややミスも垣間見られましたが、とくにハルモニアからフィナーレに向けての集中度が、会場の喝采を浴びていました。
アンコンで実績を積み上げている飯塚高校は、音色の美しさを維持しながらもアグレッシブにルイプルを聞かせ、聴衆をノックアウト。
少人数の福岡第一高校は、軽業師のように、めくるめく音楽の世界を具現化して、オーディエンスのため息を誘っていました。

さ、こうして中学高校共に今年は金賞乱発となった九州大会ですが、審査自体は相対的に評価されながら、結果は絶対評価にするという今のスタイルの噛み合わなさは、もう限界に来てるのでは無いかと思われます。音楽の審査にベストというものは無いのでしょうが、在り方を真剣に考える時期に来てるのではないでしょうか。
もう一点。今回のホール、グランシアタは、ステージの段階でサウンドが約1.5倍ほど増幅する響きを持っています。そういう意味で、そのバンド本来のサウンドとは異なるものが客席に飛んでくるホールです。つまり、コンクール向きではないホールと言えるでしょう。そして来年も、熊本県劇という、これまたサウンドにプラスαが加味されるホール。さ、どんな事が起こりますことやら。楽しみにしていたいと思います。

2014年東京都大学吹奏楽コンクール予選

東京都吹奏楽コンクールの大学の部予選を聞きに、江戸川に行ってきました。
予選を聞くのは久々です。
では、代表団体の感想などを。

東海大学
課題曲の冒頭から、小気味のいい粒立ちのいいサウンドは健在です。しっかりとアナリーゼされた課題曲は、楽曲の良さを最大限に引き出し、自由曲でもその世界観を見事にさ再現していました。しかし、鮮やかな演奏である反面、指揮者の主張は伝わってきても、奏者の存在感が感じられないのも事実。コンクールなので、点数が出ればそれでいいのでしょうが、何かオーディエンスを引き付ける媚薬のような部分も、個人的には欲しいかなと思ってしまいました。

創価大学
分厚くて、かつ艶のあるサウンドが心地よい演奏でした。アンサンブルもよく揃えられていますが、全体を通してサウンドに変化が感じられず、音楽がやや平面的になっているが残念でした。自由曲は、コンクールでよく演奏されてきた楽曲だけに、何か新しい発見が欲しかったかなという印象でした。中間部などでも、緊張が持続できず、全体を通して音楽が散漫になっていました。

中央大学
課題曲5番にあっては、すべてが開かれたサウンドになっている状態で、色彩感が乏しかったのが残念でした。自由曲は、音楽を構成するすべての要素が一つの塊になっ手動いている感じで、ここでも音楽が平面的になってしまっていました。より立体的な音楽の組み立てが望まれるところです。

立正大学
課題曲はよくアナリーゼが施されていましたが、淡々と進んでいくマーチという感じで、場面転換に乏しかったのが残念でした。まあ、経験豊富な指揮者ですから、曽於あたりの対応は本選に向けて構築してくるのでしょう。自由曲は、グールドの作品。中盤以降は、コンチェルトのような佇まいをもっています。その意味で、ソロと合奏の兼ね合いをどうもっていくのか、響きのいいホールに代わるだけに、その演出を見るのが楽しみです。

玉川大学
かつての焦点が定まらないサウンドから完全に脱皮した感のある玉川大学ですが、完全にサウンドは今の指揮者のものになった言っていいかも知れません。しかし全体を通して同じ音色で奏で続けられた感があり、特に課外曲においてはうまく陰影を使い分ける演出が望まれるところです。

駒澤大学
1年間のブランクを経て、コンクールに戻ってきました。課題曲2番は、音楽を構成する要素はこの日の演奏の中でも最も作曲者の意図に近いものを見せていましたが、まだまだその要素がブレンドしていないかなという印象です。しかし個人個人の音は出来上がっているので、本選までにどう料理するか、どうブレンドさせるかが求められるでしょう。自由曲も同じで、まだまだ曲としてのブレンド不足、合奏練習不足という感じは否めません。また、金管の発音の精度や、より美しいサウンドの追及も極限まで極めることが求められます。全盛期のサウンドを取り戻せるか、期待していましょう。

2014年東京都吹奏楽コンクール高校の部予選第一日目

東京都吹奏楽コンクール、高等学校の部予選第一日目の午後の部を聞きに、府中に出かけました。
日本列島は台風騒ぎで、府中あたりでも時折強い風が吹いていましたが、雨に見舞われる事がなかったのは幸いです。
さて、それでは金賞代表団体の感想などを。

東海大学付属高輪台高等学校
この日の最後のブロックの最初に登場したわけですが、その前の休憩時間からドッと人が客席に入ってきて、オーディエンスの期待の高さを感じました。
課題曲は、冒頭からゴージャスなサウンドでスタートします。ピッコロの高音がやや気にはなりましたが、全体の楽器のバランスは絶妙で、終始テンポも安定した、明るいマーチに仕上がっていました。そんな中で、トランペットが旋律を奏でる時や、トリオにおけるフルートのサウンド等に更に艶が欲しいかなと思ったのと、トリオでややベースラインが破綻気味だったのが惜しいところでした。自由曲の白鳥の湖は、いわゆる良く聞くセレクションではなく、今年のこのバンドの為にアレンジされたもの。前半は適度な緊張感をもって、素晴らしいアンサンブルを聞かせていましたが、情景あたりからは、音楽的な色気も欲しかったところです。また、やや打楽器が頑張り過ぎの印象も。しかし、豊かな音量で駆け込んでいくフィナーレは、お見事!今後、更にブレンド感が増して行くのが楽しみです。

駒澤大学高等学校
課題曲は打楽器を下手に配置したお馴染みのスタイル。重量感のあるサウンドで、豪快な2番に仕上げていました。ただ終始重厚なサウンドで進み続けて行く感じで、時に繊細な部分も欲しいかな、という印象でした。本選に向けて、更なるアナリーゼが望まれるところです。自由曲は、このバンドの十八番のひとつ、ローマの祭。十月祭の冒頭は、個人的にはもっと繊細な演出が欲しかったのと、ホルンの発音がやや曖昧な箇所が多く、更に精度を高めて欲しいところです。その後も、充分すぎる音量で突き進んでいきますか、トランペットのソロのバランス等、まだまだ改善の余地はありそうです。本選では、更に芯の通った祭に仕上がって来る事を、楽しみにしていたいと思います。

潤徳女子高等学校
一時期の温故知新的な自由曲のセレクションが個人的にツボだったバンドです。課題曲は、全体的にシンバルが頑張り過ぎな感じでしょう。また、全体を通して、マーチのテンポ感が不安定で、今一度マーチの基本に立ち返って、再構築すると、より音楽的なマーチが出来上がるような気がします。自由曲は、バーンズの3番。3楽章の冒頭は、打楽器だけの世界でも抑揚を持ってストーリーの除幕を演出したいところ。また旋律、対旋律、それぞれにこの技量があるならば更に謳い込む事が出来るはずです。逆に4楽章は、更に弾けて欲しいかなという印象でした。ここでも打楽器とのバランスは要注意です。本選では更に洗練された3番を聞けるのを楽しみにしています。

というわけで、今回は一日目だけしか既決せんでしたが、それぞれの予選の代表が集結する東京都大会は、9月21日に行われます。今年もハイレベルな演奏に出会えるのを楽しみにしています。