梅雨中休み?

梅雨に入っちゃいましたねぇ〜

紫陽花が至る所で美しく咲いています。

ちょっと前回から日が経ちましたね。

これを書くのを忘れていたわけではなく、

「何を書こうかなぁ〜」と

色々な本を物色していたんです(笑)

今回は、そんな中で出会った本を中心におススメしたいと思います。

テーマは「ジューンブライド」です❤


日本のJune(6月)は全くと言っていいほど

結婚式には向かない月ですよね。

梅雨だし、ジメジメするし。

でも、ヨーロッパでは気候の違いか歴史の違いか分かりませんが、

「6月に結婚する花嫁は幸せになれる」そうです。

ブライダル業界がこれにあやかって色々なプロモーションを行っているせいで

日本でも随分と浸透している感がありますね。

今回、私は「結婚」をテーマに掲げる小説を色々と物色してみました。

凄く沢山あったのと、どこまでを「結婚」にまつわる小説というのか難しいところではあったんですが

まぁ、その辺りは私の独断と偏見で選ばせて頂きました(笑)

では、さっそく紹介に入りましょう。


まずは、比較的新しいめの作家さんから。

アシンメトリー飛鳥井千砂角川書店)、『フリン』椰月 美智子(角川書店)。

アシンメトリー

アシンメトリー

フリン

フリン

飛鳥井さんは『はるがいったら』で2005年に小説すばる新人賞を受賞され小説家デビュー、

椰月さんは『十二歳』で2001年に講談社児童文学新人賞を受賞されて小説家デビューされています。

私は今回「結婚にまつわる小説」を選ぶにあたり、一つ自分自身に課題を設けました。

それは、「今まで自分が読んだことのない作家さんの作品で、しかも比較的新しい出版年のもの」

というものです。

そのため、飛鳥井さんも椰月さんも私にとっては初めての作家さん。

いや〜でもね、よかったんですよ(^^)

まずは飛鳥井さんの作品ですが

タイトルが示すように「左右非対称、不均衡」な2男2女が主人公。

「結婚願望が強い女と恋愛経験は多いがSEX嫌いな女、ホモの男と結婚に完璧さをもとめる男」

一人称で4人の心理を章ごとに分けて描いています。

設定は結構ありふれた感じだったんで、表装が綺麗だから読み始めたんです。

ですが(!)読み進める内に止まらなくなってしまったんですね。

人の心理が実に巧みに描かれている上に、どこかの街で本当にありそうなリアル感があったんです。

そうですね、「連ドラ」を見てる気分と少し似てましたかね。

次は、椰月さんの作品ですが、

こちらは、タイトルが敢えて『不倫』ではなく『フリン』にした訳がわかる気がします。

罪悪感があってドロドロしてる「不倫劇」ではなく

あくまでも軽い感じの「フリン」なんです。

「結婚しても、人を好きになることあるよね〜」といった感じでしょうか。

こちらは短編なので読み易く、また、現実離れした話でもないのですんなりと胸に入りました。

椰月さんは児童文学も描かれているだけあって、「柔らかさ」の感じられる作品でした。


では、次は日本から飛び立って(!?)海外の作品を2点。

『もうひとり夫が欲しい』パク ヒョンウク (新潮社)、『初夜』イアン・マキューアン(新潮社)。

もうひとり夫が欲しい

もうひとり夫が欲しい

初夜 (新潮クレスト・ブックス)

初夜 (新潮クレスト・ブックス)

パク ヒョンウク さんは韓国の作家さんで

2001年に『同情のない世の中』という作品で文学トンネ新人作家賞を受賞され、作家デビューされました。

おそらく日本で翻訳されている作品は『もうひとり〜』だけだと思います。

さて、作品の内容なのですが、ショッキングなタイトル(!?)通り

主人公の妻となった女性が結婚後、「もうひとりの男と付き合う」ことを公言するんです。

男性の目で一人称で語られるこの作品は、心理描写が粗いところがあるのですが

その分、無駄がなくて、ストーリーがテンポよく進みます。

また、随所に散りばめられたユーモアーが、作品をコミカルなものに仕上げていて、

恋愛小説にありがちな作者のナルシズムが感じられません。

始めはそれほど好きなタイプではなかったのに、気付いたらどんどんのめり込んでしまって

最終的には妻が「浮気をする」と言っても離れられない状態になってしまったんですね。

うーーん、可哀想だけど、面白い(笑)

韓国で映画化の話もあるそうで、どんなキャストさんになるのか勝手に想像して愉しんでいます。


では、では、最後にご紹介するのは『初夜』イアン・マキューアン著(新潮社)。

これは、タイトル通りですね。ええ、そうです。「結婚後初めて迎える夜」のお話。

イアン・マキューアンはイギリスを代表する作家で、

アムステルダム』という作品で1998年にイギリスで大変権威のある賞、ブッカー賞を受賞しました。

日本でも人気の作家さんで、大勢の読者がいます。

マキューアンの作品の魅力の一つは、詳細かつ繊細な情景&心理描写にあると思います。

そのために読者は、主人公の息づかいや気配までも感じ取ることができ、

作品世界に深くのめり込んでしまうのです。

『初夜』は主人公の男と女が「初めての夜」を迎える、まさにその瞬間から始まります。

そして、「その夜」の出来事が、後々取り返しのつかない事態に発展するところで物語は終ります。

ストーリーとしては、たったこれだけのことなのですが

ややミステリー仕立てのこの作品、本当に引き込まれます。

詳しい内容は読んでからのお楽しみ、といったところでしょうか(笑)


いかがだったでしょうか?

今回はこれらの作品をご紹介するまでに、多くの「結婚にまつわる小説」を読んでみました。

ご紹介できなかったものもあるのですが

新しい作品や自分にとって初めての作家さんの作品との出会いがとても愉しくて

よかったです。

もし、「他にもこんな面白い作品がある!」というのがあったら、教えてくださね〜

お待ちしています(^^)/

『吉原の遊郭』気になるところ(後編)

chiaki50612010-05-12

ゴールデンウィーク明けちゃいましたねぇ(^^)

うーーん、しばらくは連休はお預けなんで、ちょっと寂しいような・・

ま、ま、そんな愚痴は置いておいて

今回は前回の続きで

「吉原にまつわる小説」なぞをご紹介しましょうかね。


「吉原」って何でしょうかね。

現在の住所表示では使われていない地名で

今の「台東区千束三丁目〜四丁目」あたりがその場所になります。

「吉原」が出来たのは、

江戸初期、徳川幕府が出来て間もない頃です。

幕府公認の遊郭として、第二次世界大戦終了まで存在していました。

現在もソープ街などが立ち並ぶ地区ですが、

昔の面影は残していません。

つまり、「吉原」の歴史は

江戸幕府と共にあったと言っても過言ではなく、

一番隆盛を極めた時代は、その時期にあったのですね。


では、その「吉原」が一番「吉原」らしかった時代

のことが書かれた小説をご紹介しましょうか。

一つ目は隆慶一郎さんの『吉原御免状』(新潮社)。

隆慶一郎全集第一巻 吉原御免状

隆慶一郎全集第一巻 吉原御免状

この小説は、吉原が出来たばかりの江戸初期に時代設定が定められています。

タイトル通り「『御免状』とは何か?」というのが

小説のテーマになっているのですが

うんうん、隆さんの作品は本当に面白い(笑)

「吉原」にまつわる話だと

どうしても、ちょっとやらしいことを想像しちゃいますが(笑)

この小説は違いますね。

物語のスケールが非常に大きく、

教科書で習った歴史観がすべて吹っ飛んでしまいます。

隆さんの代表作『影武者徳川家康』の原点ともなっている作品で

この小説を読んだ方には更にわかりやすい内容となっています。

歴史だけでなく民俗学にも興味のある方には是非おススメですね。


次におススメしたいのは

松井今朝子さんの『吉原手引草』(幻冬舎文庫)。

吉原手引草 (幻冬舎文庫)

吉原手引草 (幻冬舎文庫)

この小説は松井さんの代表作で、直木賞も受賞されています。

『吉原手引草』は吉原が一番華やかだった江戸時代中期のお話。

一人称でミステリー仕立てになっている作品で

ぐいぐいと引き込まれます。

先が気になって気になって(笑)、一気に読み進められる作品です。

遊女の失踪と遊郭で起こった殺人事件の謎。

このストーリを縦軸に吉原の文化を横軸に

この作品は美しいも愉しいハーモニーを奏でているのです。

直木賞納得の素晴らしい作品ですよ。


他にも「吉原」が舞台になっている作品は沢山あるかと思います。

遠く過ぎ去った出来事は、美しい部分だけしか残されず、

そこにあった哀しい歴史は、忘れ去られているところがあるかもしれませんね。

最後におススメするのは、小説ではないのですが

「吉原」で実際に働かざるをえなかった一人の女性の日記です。

吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日 (朝日文庫)

吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日 (朝日文庫)

この日記は、江戸時代ではなく明治末期から大正時代に書かれたもので

当時大変な反響を呼んだ作品です。

とても生々しい証言に、目を塞ぎたくなる箇所が多々ありますが

「吉原」の影の部分を知る貴重な資料と言えます。


華やかな世界には表と裏がありますよね。

自分が経験するのは嫌でも

ちょっと覗いてみたいという欲求が誰にでも少しはあるのではないでしょうか?

是非、いつもと違う世界に小説を使って足を踏み入れてみてください(^^)

『吉原の遊郭』気になるところ(前編)

chiaki50612010-04-23

4月に入ってからの寒い日が続き

桜前線は停滞気味なんでしょうか?

茨城県福島県あたりにいらっしゃるようですね。

うーーん、一度は「青森県弘前城の桜」を

みてみたいもんです。


さてさて、今回は桜の中でも

比較的遅めに咲く八重桜の「一葉」にかけて

樋口一葉の作品などに触れてみましょうかね。

もう、終わってしまったと思うんですが

毎年、樋口一葉が住んでいたことのある浅草竜泉寺町あたりは

八重桜「一葉」が歩道沿いに咲くんですね。

4月の2、3週目のどちらかの週末にはお祭りみたいなものもあって

浅草近くに住んでいた時は見に行っていました。

場所柄、吉原に近く

現在少し錆びれた感じがあるのですが

それが逆にとてもいい味を出しているエリアです。

今回は、樋口一葉の作品と共に、「吉原」に関する作品もご紹介しましょう。


樋口一葉というと「夭折した天才作家」というイメージがあるのではないでしょうか。

ええ、確かに肺結核で25歳という若さで亡くなっています。

もっともっと長生きしていれば、もっともっと多くの作品を遺せたはず・・

と思わずにはいられませんね。

でも、ここからは私の偏見ですが

私は、そうは思わないんですね。

なぜなら、作品の量や質は、その人の生存年数とは無関係だと思っているからです。


樋口一葉は25年の人生の中で、苦労しっぱなしでした。

生活苦にあえぎ、恋愛も成就せず、結婚もできないまま、病気に苦しんで亡くなりました。

こう書くと悲壮感漂いますね・・で、でも、一葉はこういう人生だったからこそ

あのような香り高い名作を生み出すことができたのだと思います。

一葉の生涯はドラマや演劇の作品にもなっていたと思いますので、

興味のある方はそちらをご覧下さい。

一葉の作品と同じぐらい引き込まれること請け合いです。


では、一葉さんの作品ですが

一葉は生涯に20編程度の小説作品を遺しています。

その中で、一葉が浅草竜泉寺町に住んだ時の経験から書かれた作品が

あの有名な『たけくらべ』(新潮文庫岩波文庫、多数)です。

にごりえ・たけくらべ (新潮文庫)

にごりえ・たけくらべ (新潮文庫)

ストーリーは学校の「お勉強」でも少し習うぐらい有名なので省きますが

一葉はこの作品で思春期のまどろっこしい葛藤や人生における重い宿命を

見事に描き切っています。

原文は文語体で少々読みづらいので、

現代語訳になっているものやマンガで紹介しているものを最初に読むのもいいかもしれません。

私が一番おススメしたい読み方は、「CDブックで聴く」ですね。

にごりえ/たけくらべ [新潮CD]

にごりえ/たけくらべ [新潮CD]

「読んでないじゃん!」と怒られそうですが、

いい文章にはいいリズムがあるんです(笑)

特に文語体の作品には「音で聴く」のがいいですよ。


一葉は日記や随想、短歌なども遺しています。

日記や随想では、一葉の生活や考え方を詳しく知ることができます。

その中で、一番印象に残っているフレーズが、

「女が綺麗な着物を着たいと思って何が悪いの」

というようなことが書かれていた所でした。

一葉は、日々の暮らしにも困るほどの生活を強いられていたにもかかわらず、

「美しいもの」への執着に近い愛情は捨てていなかった、

そして、彼女は自身の勝気な性格から、

「何とかこの境遇から抜け出してやろう」と野望を抱えていた

ことが伺えますよね。

一葉のプライドの高さを再認識し、「物書く女の業」を垣間見た気がしました。

一葉ときもののことなら『一葉のきもの』(河出書房新社)を見るのもいいですよ。

樋口一葉のことだけでなく、この時代の文化にも触れられます。



さてさて、ここで、もうちょっと「吉原」のことが知りたくなってきましたね(笑)

うーーん、変な意味に取られると嫌なんですが

江戸時代初頭に出来た幕府公認の「遊郭」としての「吉原」について

とても興味深い小説があるのでご紹介したいと思います。

で、ですが、ちょっと長くなってしまったので、次回必ずご紹介したいと思います。

次の日記も是非ご覧になって下さいませ〜

井上ひさしさんを悼む

chiaki50612010-04-15

天候不順が続きますね。

もう4月も半ばなのに、寒い日が多かったり・・

うーーん、いい加減に冬物のコートとおさらばしたいのに

出来ずにいる今日この頃です・・


さてさて、今日は

先日亡くなられた井上ひさしさんに少し触れつつ、

私自身が興味を持った

日本のSF小説なぞをご紹介させて頂きましょうかね。


4月9日に、井上ひさしさんの訃報をニュースで知りました。

前の本屋での習性でしょうか。

亡くなられたと聞くと、どうしてもその方の著作や活動を調べてしまうんですね。

テレビ等で特集もされていたりしたので、

あえて私の方からは遠慮させて頂きますが、

そうですね、井上ひさしさんの劇作以外の代表作は

吉里吉里人』(新潮文庫)でしょうか。

吉里吉里人(上) (新潮文庫)

吉里吉里人(上) (新潮文庫)

「東北の一寒村が突然独立宣言をする!」というユーモアー溢れるSF小説で

出版当初大変話題を呼んだ作品だったようです。


私は、井上ひさしさんの作品もそうなんですが、

古今東西を問わず、あまりSF小説やファンタジー小説を読んだことがないんですね。

まぁ、そもそも「何をもって『SF小説』というのか」という問題もありますが。

でも、好奇心は旺盛で新しいチャレンジは大好きなんで(笑)

この機会に読んでみようかと思っています。

そして、「SF小説」を少し調べてみて、他にもちょっと面白そうな本があったので

ご紹介したいと思っているんですよ。

それは、筒井康隆さんの『家族百景』(新潮文庫)と

小松左京さんの『日本沈没』(小学館文庫)です。

家族八景 (新潮文庫)

家族八景 (新潮文庫)

日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1)

日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1)

まずは、『家族百景』ですが

これは主人公に「七瀬」という女の人が登場するので、

「七瀬三部作」の第一作目と言われているようです。

一応長編の形態をとっていますが

主人公の七瀬さんが八人の家庭のお手伝いさんとして入ってゆくので

八つの短編ともいえる作品だそうです。

この七瀬さんは人の心をすべて読み取ってしまう能力を持っているようですよ。

大勢の方がおススメコメントをしていたので、

とても読みたくなってしまいました。

次に、『日本沈没』ですが

こちらは、2006年に草なぎ剛さんと柴咲コウさん主演でリメイクされていますね。

映画で知っている方も多いかもしれませんが

あえて原作で読んでみたいなぁと思える作品です。

地震大国の日本ですし、地殻変動で日本列島が海に沈むというのは

結構リアルな感じがしますね。

そして、私が何よりも驚いているのは、

家族八景』も『日本沈没』も

今から30年以上も前に書かれた作品だということなんです。

小説はその時代の風潮や流行などに敏感に反応するものなので

一時期とても読まれていた小説でも

時代と共に全く見向きもされなくなってしまうものが多くあります。

けれども、そんな中で、しかも一番時流の影響を受けやすそうな

「SF小説」というジャンルで長く読み継がれていく作品というのは

きっと凄い力があるんだろうなぁと思ってしまいます。

そうですね、時代を超えて読まれるものには

「不変のもの」が描かれているんですね。


SF小説は他にも国内でいえば栗本薫さんや田中芳樹さんなどがいらっしゃいますね。

シリーズものなどが多くて初心者にはちょっと手を出しにくい感もありますが

いつかチャレンジしてみたいなぁと思います。


最後に、

井上ひさしさんが遺された

あまりに有名すぎる素敵なことばを綴ってみます。

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく
 ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに
 まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでもゆかいに」

胸にジーンときますね・・・ 

桜が散ってしまいます・・

chiaki50612010-04-09

4月になっても結構寒い日が続きますね・・

桜も少しずつ散っていってしまって・・

桜ってどうしてあんなに切ない花なんでしょうか。


前回は桜にまつわる小説なぞをご紹介してみましたが、

そうですね、今回は、春なんで(!?)

「せつなくて、やさしいきもち」になれる小説を

ご紹介します。


先日、本屋さんに行ったときのこと。

新刊棚で素敵な表装の本を発見しました。

中身をパラパラとめくってみたんですが、

お伽噺のような文体で、何やら甘い香りがします。

ああ、読んでみたい!と思ったその本は、

江國香織さんの『真昼なのに昏い部屋』(講談社)。

真昼なのに昏い部屋

真昼なのに昏い部屋

(すみません、前置きが長くて)

江國さんの久しぶりの新刊ではないでしょうか?


江國香織さんには多くのファンの方がいらっしゃいますね。

私が敢えておススメしなくても、

大勢の方に読まれている作家さんのひとりです。

著作も、小説だけに留まらず

童話や絵本の翻訳、エッセイや詩など

多数出版されています。

2004年には、『号泣する準備はできていた』(新潮文庫)で直木賞を受賞されて

知らない方はおられないぐらいの人気作家さんですね。


そんな江國さん作品の中で

ファンの方に特に人気が高い作品といいますと、

きらきらひかる』(新潮文庫)『すいかの匂い』(新潮文庫)『落下する夕方』(角川文庫)

などでしょうか。

どれも素敵な作品で、他にもいっぱいあると思うのですが、

私が個人的に好きな江國さんの作品は

冷静と情熱のあいだ Rosso』(角川文庫)。

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

竹野内豊さんとケリーチャンさんで映画化もされ話題になった作品ですね。

この小説は、辻仁成さんとの共作というちょっとユニークな形の作品で

そちらの方でも大変話題になりました。

冷静と情熱のあいだ』は江國さんと辻さんの両方の作品を読んで

完結するお話なのですが・・

本当にいい作品でした。

イタリアに行ったことはないんですが

フィレンツェやミラノの美しい情景が目に浮かび

かつて恋人同士だった二人の「失われた十年」が描かれているんですね。

恋は、成就したものよりも、

破局してしまったものの方が

圧倒的な力をもって胸に迫ってきますよね。

ちょっとセンチメンタルな気分に浸りたい人にはおススメです。


私は、江國さんの作品は何作か読んだことがあるんですが

江國さんの作品を読むと、

主人公が女性の場合、その人が江國さんと被るんですね。

もちろん、この現象は、江國さんの作品に限った事ではありませんし、

主人公と著者が重なるのは

ごくごく自然なこと。

けれども、私には江國さんの作中人物が江國さんに思えて

「好きだなぁ、この人」と

思っちゃうんです。

そういう意味で、私は、江國さんのエッセイを読むのが結構好きで

彼女の私生活を少し覗いては、愉しい気持ちに浸れます。

興味のある方は、江國さんのエッセイも是非お試しあれ。

小説の方が少しクセがあって読みづらかった方も

エッセイならすんなり読めるかもしれません。

そして、読後、「何だかほっこりと幸せな気分」になれること

請け合いです(^^)


本当に女性らしい文章を書かれる江國さん、

同じ女性として憧れる女性の一人です。

よかったら、是非読んでみてくださいね!

お花見しながら読書しましょ!

chiaki50612010-03-29

もうすぐ桜が満開を迎えますね。

場所によってはもう満開のところもあるかもしれませんが。

春は一斉に色々な花が咲くからいいですよねぇ。

気持ちもほっこり和みます。


今日は、桜から連想された作家さんの作品をご紹介しましょうか。

独断と偏見ですが、

花(桜)→きもの→きものに桜を多くデザインした作家さん

ということで、宇野千代さんの作品をご紹介したいと思います。


宇野千代さんは恋多き女性として、多くの方に知られているでしょうか。

女性作家兼デザイナー兼編集者とマルチに才能を発揮された方でしたね。

「キャリア・ウーマン」の先駆者的な方とも言える方で

同じ女性として憧れを禁じえません。


そんな宇野千代さんなんですが、

桜をモチーフとしたきものを多数デザインされていることでも有名ですね。

もし、宇野千代さんのデザインされたきものにご興味がおありなら、

是非『きもの日和』(世界文化社)をご覧になって下さい。

きもの日和

きもの日和

パラパラ見るだけでも、心がときめきます。


宇野千代さんは、1921年『脂肪の顔』という小説で作家デビューされています。

その後、尾崎士朗氏、東郷青児氏、北原武夫氏ら多くの著名人と

関係を持ち、私生活で波乱に満ちた生涯を送られてますね。

では、宇野さんの作品ですが、

宇野千代さんはエッセイは多いのですが、

小説は数えられるぐらいしかありません。

その中でも代表作といえば、やはり『おはん』と『色ざんげ』ではないでしょうか。

(共に新潮文庫

おはん (新潮文庫)

おはん (新潮文庫)

『おはん』は吉永小百合さんが主演で映画になっていますね。

そちらでご存じの方も多いかもしれません。

ええ、でも、もし原作がまだなら是非読んでいただきたいと思います。

ダメ男に尽くす女の可笑しさと哀しさがとてもリアルに描かれているのです。

こう書くと、悲哀な小説のようですが、作風は宇野さんの気質と同じく『陽』です。

陰湿な暗い小説では決してありませんよ。

また、『色ざんげ』という作品も素敵ですよ。

東郷青児をモデルに、当時彼が起こした心中未遂事件を題材にしたもので

「聞き語り調」という形式をとっています。

「男と女が愛欲の果てに行きつくところ」というのは

こんな世界なのかなぁと思ってしまいます。

「自分にはそんなことは起こりえない!」と

思っている方ほど、読んでみる価値があるのではないでしょうか。

そうです、恋とは「突然落ちてしまうもの」なんですから(笑)


あと、もし、この二作以外で宇野さんの作品をお探しなら

『薄墨の桜』(集英社文庫)がおススメです。

薄墨の桜 (集英社文庫)

薄墨の桜 (集英社文庫)

タイトルに「桜」も入ってますし、この時期ぴったりではないでしょうか?

ただし、作品の内容は、桜からイメージされる淡い内容のものではありません。

心してお読みあれ、といったところでしょうか(笑)


では、今回は春らしくまとめてみました。

まだまだ寒い日がありますが、確実に春はそこまできていますね(^^)

銀幕スターに憧れて・・・

chiaki50612010-03-15

随分と暖かくなってきましたね。

梅が見頃を迎えているところが多くて、

気持ちも華やいで浮足立ってきちゃいますね(笑)

ちょっとの間ご無沙汰していたのですが、

そうですね、今日は最近本屋さんで見付けた面白そうな本を

ご紹介することといたしましょう。


私は、映画のことを詳しく語ることができませんが、

でも、それでも「銀幕の大女優さん」には

とてもそそられるものがあります(いやらしい意味じゃなくて!)

なんというか、そういった華やいだ世界に憧れがあるんです。

「自分には全然縁のない世界だけど、もし次に生まれ変われるとしたら・・」

みたいな夢でしょうか(笑)

そんな私が「読んでみたいなぁ」と思ったのは

高峰秀子の流儀』(新潮社)です。

高峰秀子の流儀

高峰秀子の流儀

今年の1月に発売された新刊なのですが・・

みなさんは高峰秀子さんをご存知ですか?

・・・すみません、随分失礼な質問で。

ただ、私を含め、今の三十代より若い人は、正直知らない人も多いと思います。

私もきっと過去の書店勤めがなければ、知らなかった大女優さんです。


高峰秀子さんは、5歳で子役として映画『母』でデビューされてから

1979年に引退宣言をされて女優をお辞めになるまでの間

日本映画界の顔のような方でした。

出演された映画のことは、詳しくないので割愛させて頂きたいのですが、

高峰さんは女優引退後、数々のエッセイを執筆されています。

鋭い観察眼で書かれたエッセイにはファンも多く、

特に高峰さんの自伝的なエッセイ『わたしの渡世日記』(文春文庫上下巻)

は当時のベストセラーになった本だそうです。

わたしの渡世日記 上 (文春文庫)

わたしの渡世日記 上 (文春文庫)

私が書店員だった頃には、2002年ですが『にんげん住所録』(のちに文春文庫)

というエッセイを沢山売らせて頂いた記憶があります。


私はエッセイを数点、それも拾い読みなんですが、

させて頂いた感想からいいますと、

「面白い!!」

でした(笑)

日々、日常の細々としたことが描かれているだけだったのですが、

ぐいぐいと引き込まれるんですね。

もちろん、大女優さんだったので、

他の俳優さんとの交流や昔の思い出話など、

普通の人とは違う生活にも触れられてはいるのですが、

面白い部分はそこだけではないのです。

有名人の私生活が垣間見えるから、

また、非日常的な生活を営まれている方への憧れから

だけではないのが、

高峰秀子さんの著作の最大の魅力だと思います。

なにせ、私は、高峰さんが銀幕で大活躍されていることを知らない世代の人間です。

そして、おそらく高峰さんの出演されている映画をちゃんと見た記憶もない。

高峰さんの文章には、女優として人を惹きつけたのと同じぐらいの力があるんですね。


今回わたしがご紹介した新刊は、高峰さんご自身が書かれたエッセイではありません。

けれども、高峰さんをご存じない方も、是非興味を持って頂けたらと思います。

そして、この本がきっかけになって、

高峰さんご自身のエッセイや出演された映画などを

楽しんで頂けたら、凄くうれしいです。