あなたが、この初夏に目撃しておくべき出来事の一覧

5/22(tue) "Central Soul Kitchen" @
//www.clubasia.co.jp/new/home.php" target="_blank">渋谷ASIA:久々のタカツキバンドが、ソウル〜ジャズ〜ジャムバンドな濃い面々に混じって登場。7インチでシングルカットされたSINDBADとの名曲"Take us there"が、ライブバージョンで聴けるかも?
live act: thirdiq, タカツキバンド, JUJU, JAMNUTS
DJ: TAKUMI, Beat Taku around, TOMMY, TAMA
open 19:00 / start 19:30 / door ¥2500(1d)

5/29(tue)
//www.kaikou-ichiban.com/" target="_blank">"開口一番" @ 渋谷PLUG:月例ポエトリーセッションの第4回。パフォーマーやバンドの面子には、nbsa+×÷と関係の深いアーティストたちが顔を連ねている。今回は遂に下記SSWSからの刺客も参戦するとかしないとか。
HOST: Sey, SWING-O, 三宅洋平(犬式), 秋実る, 金子巧(Cro-Magnon/Jazzy Sport), Nabe, 堺野慎一郎, Tsuyoshi, 市村隼人(kamos-hita-so)
open 18:30 / start 19:00 / with flyer ¥1500(+1d) / door ¥2000(+1d)
6/10(fri)
//www.marz.jp/ssws/">"Shinjuku Spoken Words Slam"最終回 @ 新宿MARZ:最後のグランドチャンピオントーナメントということで、深夜ではなく夕方からオープン。
special guest: タカツキ, 小林大吾, 馬野幹, DJやけのはら

6/16(sat) "KOONI" @
//www.milk-tokyo.com/" target="_blank">恵比寿みるく:無頼音楽集団"風の人"のプロデュースによる、歴史ある全方位型ミクスチャーパーティー仕掛人DJ DENNOのプレイに加えて、リリースが待望されているJPC bandに注目しておかねばならない。彼らが2002年にメジャーでやっていたこと(下記"祭ばやし"のPVを参照)の意義は未だ十全に評価されているとは言いがたく、だからこそその衝撃は有効であり続けている。
live act: JPC band, SONPUB with DIAGLAM, underslowjams, and more
DJ: DENNO, KNTR, Ryota, and more
open 22:00 / with flyer ¥2000(+1d) / door ¥2500(+1d)

SUIKA、あるいは音と言葉の遊歩者たち




ここ数年のあいだ日本のヒップホップの周縁で起こっていたのは、差し当たって二つの志向の発見/あるいは再-発見だった、と言えるだろう。一つは、ジャズやファンクへの回帰を伴った生バンド形態の導入。もう一つがいわゆるポエトリーリーディングへの接近である。そしてSUIKAは、何の偶然かこの両方の志向を選び取ることになったグループだった。キーボード奏者タケウチカズタケ、カホンでビートを支えるパーカッショニスト高橋結子、ラッパーでありながらベースを兼任するタカツキ、スピリチュアルジュースでの活躍も知られているラッパーATOM、そして彼らと対等にマイクを操る朗読詩人toto――こうした特異な陣容からなるSUIKAは、これまでに3枚のアルバムリリースと無数のライブを経験している。今回ファーストアルバム"Harvest for the stripes"のフランス盤がリリースされるにあたって、タカツキとエグゼクティヴ・プロデューサーYM-Zから話を聞いてみた。
(interview & text : flow)






flow(以下f):さてさて、改めてSUIKAのそもそもの発端から確認しておこうと思うんですが。最初はYM-ZさんとATOMさんから、音楽レーベル「FLY N' SPIN RECORDS」の原型となる構想が始まったんですよね。
YM-Z(以下y):ATOMとはFlying Books*1やる以前に渋谷で出会って。あいつが路上で自主音源のカセットを売ってるときに偶然話しかけられたんだ。
f:で、2003年にSSWS*2タカツキさんを発見されたわけですね。
y:そうそう。あれって5分間ずつのバトルなんだけど、タカツキの(ベースでの)弾き語りはもっとリラックスした空間で聴いてみたいなと思って、Flying Booksでのライブイベントに出てくれとオファーしたんだよね。
タカツキ(以下t):突然「本屋でやってくれ」って言われたから、(そんなところで)できるんかいなと思ったけど。
y:totoも同じようにSSWSでパフォーマンスを見て、面白いなと思って話しかけて。
f:やはりSSWSをひとつの軸として、2003年の前後に色々な縁が絡み合っていったということですね。
y:そうだね。カズタケはタカツキ君と一緒に活動してたしね。けっちゃん(高橋結子)はカズタケとミュージシャン仲間として知り合いだったし。この6人のメンバーでよく一緒にBLUE NOTEに行ったり、うちの店の屋上でスイカを食べたりしてよく遊んでた。
f:なるほど、それがSUIKAの由来なんですね。
y:8月頭ぐらいに「レコーディングやれたらいいね」って言ってたのが、9月ごろには最初の作品「JET SET」ができてた。初ライブは友人のギャラリーでやることになってて。でも俺はそのときちょうどフランスに本の買い付けに行ってたから、モンパルナスから国際電話でお祝いの電話をしたんだ。
f:実はSUIKAの幕開けにフランスとの縁があったというのは面白いことですね。
y:そうそう。あの時フランスに行ったのがきっかけで今回のリリースにつながってるからね。フランスって夜は本屋が閉まっちゃうから、音楽関係者とばっかり会ってたのね。それでTriptikとか、フランスのヒップホップの日本流通をやることになって。


f:SUIKAは何といっても個性的なパフォーマーの集合体ですし、今回はメンバーそれぞれについて紹介も兼ねて語っていただきたいと思います。まずはウーリッツァーなど鍵盤楽器を担当されているカズタケさんからです。
t:カズタケは、自分のバンドで誰も鍵盤が居なかったときに紹介してもらった人。普通ヒップホップを演奏するときに鍵盤弾いてくれって頼んでも、あんまり思い通りの音を出せる人はいないんだけど、彼は心得てた。僕はすごい口下手やから、楽曲をつくるときに(ディティールについて)あまり言葉では言わないけど、彼は良く分かってくれる。世代も一緒やし、言葉を必要としない間柄やね。
f:カズタケさんってものすごく演奏の引き出しが多いですよね。
t:昔はソウルのスタンダードを100曲ぐらい練習してたらしい。
f:やっぱりそういうとこからあのアドリヴも出てくるんでしょうね。A Hundred Birdsでも演奏されてますし、ほんとにバラエティに富んだプレイヤーだと思います。


f:あと、SUIKAと言えばやはりポエトリーリーディングtotoさんが目立ちますよね。
y:totoはね、独特のやわらかさを持ってる。同じリリックを他の人が読むのとは全然違う読み方をするよね。ある意味でSUIKAのワン&オンリーな部分を分かりやすく提示してくれてる。SSWSで初めてパフォーマンスを見たときから、何か惹き込まれるようなものを持ってたね。
t:それから Flying Booksに遊びに来たとき、いきなり詩を読み始めたんでしょ?
y:そうそう。読んでみてくれって言ったら、普通に営業中の店内でやってくれたの。
f:いいエピソードですねえ。
y:あと客観的に見て、SUIKAができてから今に至るまでの間で一番成長したのがtotoだね。
f:そう、実はそのことを聞こうと思ってたんですよ。むちゃくちゃ巧くなってますよね。
y:当初は他のMCの2人に比べると、圧倒的にパフォーマンスの経験が少なかったし、ライブ前はすごい緊張してた。今ではフリースタイル(即興)の掛け合いもできるし、自信に満ちてきてるよね。子供がお腹にいてもライブしたりとか*3SUIKA以前に音源を出していなかったので、ファーストアルバムの中では意識的にソロ楽曲を入れてる。今後はソロ作品のリリースも含めて一番楽しみなアーティストだね。
f:日本語でないとありえないフロウですよね。フランス盤を聴かれる方も注目するでしょうね。
y:そうだね。日本語のわからない外国人にも「この女性ヴォーカルは良い」って言われるし。


f:高橋結子さんが叩いているカホンの音色も、SUIKAの独特な色の一つになっていますが。
t:けっちゃんがリズムを支えてくれてるから、僕やカズタケがふらふらしても大丈夫になってる。
y:(打ち込みの)トラックで作った曲でも、けっちゃんが色んなパーカッションを加えてくれて音がだいぶ豊かになるしね。
f:以前タカツキさんが、カホンの音はSP-1200*4の音だとおっしゃってましたよね?
t:カホンの端っこを叩いた音がね。ちょっと音の悪い(ローファイな)ドラムの感じ。
f:ヒップホップ的に打楽器を利用されているのが面白いところです。生ドラムを叩くだけではああいう乾いた音は出せないですよね。
t:でも当初は理想の音にチューニングするためにマイクのセッティングとかかなり試行錯誤してたね。
y:そうだね。ライブのたびにかなり音作りは苦労したもんね。
t:そのおかげでオリジナルなものが確立されたと思う。ヒップホップでターンテーブルを「悪く」使ったみたいに、カホンを普通とは違う使い方で使ってると言えるかも。


f:ATOMさんもスピリチュアルジュースで活動していた頃から独特なスタイルでした。
y:ATOMはラッパーとして自分の世界を持ってるだけじゃなく、ラップの譜割りもすごく面白いよね。
f:隙間のあるフロウですよね。
t:ね。どこらへんにバックグラウンドがあるのか不思議やね。誰から勉強したんかなと。
f:やっぱりヒップホップ以外の文化も含めて、広いバックボーンを持っている印象があります。
y:ロックやハウスも大好きだから、その辺も独特だね。ソロ作品も面白いものができると思う。
f:一ファンとしてお待ちしてますよ。
t:そういえば、ATOMさんは昔から「ヒップホップバンドがやりたい」と言ってたんだった。
f:道理で楽しそうにラップしてますよね。
y:そうだね、ライブで凄く生き生きしてるよね。


f:最後はいよいよタカツキさんですよ。
y:タカツキは小難しい言葉をよく使うんだけど、頭の中で視覚化しやすい詩が多いよね。トラックも渋いものからコミカルなものまで幅広く作れる人。年間6枚ぐらいのアルバムのプロデュースに関わってる働き者でもある。
f:ご自身のレーベル*5も運営されてますし、日本のヒップホップアーティストの中でもかなりハードワーカーの部類じゃないですか。
y:リリック書くのもむちゃくちゃ早い。
f:タカツキさんと言えば、ウッドベースを弾きながらラップするというスタイルのはじまりについて聞いときたいんですが。
t:まだ京都で学生してた頃に、ベース入りのヒップホップバンドをやろうとして募集したけど、集まらなくってね。じゃあ自分でやろうと、MPC*6を買うはずだった資金でベースを買って。でも周囲の楽器やってる人からはものすごい反対されたなあ。中途半端なことはするなとか。
f:そういう反対を押しのけてまでやりたかったわけですよね。
t:人と同じことをしていてもしかたがないと思って。ウッドベースが好きだったし。
f:実際やってみてどうでした?
t:なんか見た目は面白いらしいね。あとベースを持ってるおかげで、DJブースに上げられてパーティーのためのMCをさせられることはなくなった。そういうヒップホップがしたいわけではなかったから……。だからベースは無言のシンボルになってくれたかな。


f:SUIKA全体のお話になりますが、グループとして特定のシーンの中でのポジションを意識することはあったんでしょうか。
y:あんまり自分達がこういうシーンを築くとか、リードするといった気負いはみんな無いと思う。
t:それは無いなあ。
y:単に自分達が「良い音楽」と思えるものを生み出していきたいと思ったんだよね。既存のヒップホップやポエトリーの範疇に入らないものを、自分達の書店のレーベルを使うことで、普段そういうものを聞かない人にも届けていってる。
f:そういった気負いの無い姿勢にも関わらず、既存のシーンからもラブコールを受けるような存在になっているのがすごいことだと思います。
y:メンバーの音楽的なバックボーンも、イベントで競演するアーティストも詩人とかバンドとか本当にバラバラだしね。色んなコラボレートができるのが良いところかな。異なるジャンルの要素がブレンドされているのがSUIKAとその周辺って感じだよね。
f:なるほど。確かにSUIKA自体が多様なシーンの交差点になってて、多くの出会いが起こってるという印象を受けます。
t:SUIKAを通して色んなものに出会うっていうのは、すごくいいなあ。
f:今回のフランス盤もそういう新しい出会いのきっかけとなればいいですね。アルバム自体の曲目は日本盤と変わらないんですよね?
y:うん。ジャケットデザインが変わってるのと、リリックがフランス語訳されてるけどね。TrptikのDJ、Drixxxéにリミックスを依頼しているから、ボーナスCDか何かに収録できるかも。
f:フランスの方々には、是非ライブバンドとしてのSUIKAも経験してほしいところですね。
t:ライブ見ないとだめですね、SUIKAは。
f:よく Commonの"Be"なんかの名曲を生演奏でカバーしたりしておられますし、ヒップホップ的ジャムバンドとしてもすごく楽しめると思うんです。とにかく将来のフランスツアーの夢がふくらみますね。
y:まだ未定なんだけど、totoの子供が2歳になる前にフランスに行きたいなと勝手に考えてる。2歳までは飛行機がタダだから(笑)。





このインタビュー*7は、パリ発の日仏バイリンガルフリーペーパー『フランス雑波』2006年9月号のヒップホップ特集に、仏語訳で掲載されたもののオリジナルである。日本語での公開は今回が初となる。
SUIKAのフランス盤1stアルバムは、2007年から日本でも流通している。インタビューで予告されていた通りリミックス音源を収めたボーナスCD付きで、全国のレコード店にて販売中。 →[Tower][HMV]
収録タイトルは以下を参照のこと。


"HARVEST FOR THE STRIPES"


1. prelude 〜sunshine
2. JETSET
3. バードランドはおうまがとき
4. ガラム・マサラ
5. 宙飛古書店 〜Flying Books
6. reflected-reflection (inst.)
7. 水曜中目黒八時半
8. マッシュルーム・マスマティックス
9. バンブームーン
10. intermission I
11. AWAsuika edition
12. intermission II 〜ジャングルレイディヲ
13. くじらやね 〜suika edition
14. voice
15. エアーポケット
16. walking on the stripes (session)
17. マイ・チャイニーズ・ドラゴン・イズ・ビッグヘッド
18. overtune 〜the stripes


"Fresh French Remix"


1. Flying Books - Drixxxé Remix
2. Mushroom Mathmatics - Pastèque 37 Remix By Mah'ko For Jade Muz
3. Bamboomoon - Phonk Sycke Remix By Sylvain Mercier
4. Jetset - Réel Carter Remix





また、現在オンラインでチェックできるSUIKAの情報として以下のものがある。
suikaweb……オフィシャルサイト。月例ウェブラジオほか各コンテンツがマイペースに更新中で、通販も可能。
http://www.thatsniphop.com/fr/cd/suika/……フランス盤のレビューと、いくつかの試聴音源がある。
SoulSwitch SUIKA 「ことばと音楽の融合」……クリエイター支援プロジェクト"SoulSwitch"のイベントに出演した際の映像が、ほぼノーカットで公開されている。
SSWS ゲストパフォーマンス……SSWS出演時のライブ音源がpodcastにて配信されている。他のゲストやパフォーマーの音源も勿論ハイクオリティ。







*1:YM-Zの経営する古書店SUIKAのレコーディング拠点でもある
http://www.flying-books.com/

*2:新宿スポークンワーズスラム。リーディングやラップなど言葉のパフォーマンスのバトルイベントで、ATOMが司会を務めている
http://www.marz.jp/ssws/

*3:totoはこの2006年に二人目の子供を出産している

*4:ヒップホップの定番サンプラー

*5:西陣レコーズ。タカツキ自身も所属するヒップホップグループ、SMRYTRPSを近年メジャーへと送り出した
http://sound.jp/nrecords/

*6:同じくヒップホップの定番サンプラー

*7:2006年8月、都内某所で収録