哲学入門読書会第二シリーズ選書作業

哲学入門読書会で最初に選んだ六冊が 2024年秋には読み終わるため、第二シリーズの書籍選定をおこなわねばなりません。

次期選書の大まかな方針としては、

  • 極めてよく売れた・難しくない哲学の本で、かつ中高国語科教師の好きそうなもの:三冊
  • (できれば「読者」という歴史的存在者に関する歴史的反省を含む)読書論:三冊

というところまでは決まっています。

哲学書の候補

  1. 柄谷行人『哲学の起源』(岩波書店, 2020) ISBN:4006004133
  2. 浅田彰『構造と力』(勁草書房, 1983→中央公論新社 2023) ISBN:4122074487
  3. 永井均『翔太と猫のインサイトの夏休み:哲学的諸問題へのいざない』(ナカニシヤ出版, 1995→筑摩書房, 2007) ISBN:4480090924
  4. 永井均『倫理とはなにか:猫のアインジヒトの挑戦』(筑摩書房, 2003→2011) ISBN:4480093435
  5. 野矢茂樹『哲学の謎』(講談社 1996) ISBN:4061492861
  6. 内田樹『ためらいの倫理学:戦争・性・物語』(冬弓舎 2001→KADOKAWA, 2003) ISBN:4101035415
  7. 内田樹『寝ながら学べる構造主義』(文春新書, 2002) ISBN:4166602519
  8. 内田樹・難波江和英『現代思想のパフォーマンス』(光文社, 2004) ISBN:433403277X
  9. 東浩紀『訂正可能性の哲学』(ゲンロン, 2023) ISBN:4907188501
  10. 東浩紀『訂正する力』(朝日新聞出版, 2023) ISBN:4022952385
  11. 東浩紀『観光客の哲学』(ゲンロン, 2018→2023) ISBN:4907188498
  12. 國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社, 2011→太田出版, 2015→新潮社, 2021) ISBN:4101035415
  13. 國分功一郎『中動態の世界:意志と責任の考古学』(医学書院 2017) ISBN:4260031570

読書論の候補

  1. 1912 エミール・ファゲ『読書術』(松柏館書店, 1934、春秋社, 1940、中央公論新社, 2004) ISBN:4122043700
    Auguste Emile Faguet, L'art de lire.
  2. 1920 アラン『芸術論集(芸術の体系)』(岩波書店, 1941、光文社, 2008)ISBN:4334751474
    https://dl.ndl.go.jp/pid/2935196
    Alain, Le Système des beaux-arts.
  3. 1940 アドラー&ドーレン『本を読む本』(日本ブリタニカ, 1978、講談社, 1997) ISBN:4061592998
  4. 1950 桑原武夫『文学入門』(岩波書店ISBN:4004140013:
  5. 1957 リチャード・ホガート『読み書き能力の効用』(晶文社, 1999、筑摩書房 2023) ISBN:4480512179
  6. 1972 清水幾太郎『本はどう読むか』(講談社ISBN:4061156977
  7. 1991 イタロ・カルヴィーノ『なぜ古典を読むのか』(みすず書房, 1997、河出書房, 2012) ISBN:430946372X
  8. 2003 トーマス・C. フォスター『大学教授のように小説を読む方法』(白水社, 2010) ISBN:4560097305
  9. 2007 ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』(筑摩書房, 2008→2016) ISBN:4480097570
  10. 2009 中村雄祐『生きるための読み書き:発展途上国リテラシー問題』(みすず書房ISBN:4622074583
  11. 2012 橋本武『橋本式国語勉強法』(岩波書店ISBN:4005007260
  12. 2015 大出敦『クリティカルリーディング入門:人文系のための読書レッスン』(慶應義塾大学出版会) ISBN:4766422740
  13. 2016 楠見孝・道田泰司『批判的思考と市民リテラシー:教育、メディア、社会を変える21世紀型スキル』(誠信書房ISBN:441430007X
  14. 2016 ジェラルド・ドーソン『読む文化をハックする:読むことを嫌いにする国語の授業に意味があるのか?』(新評論, 2021) ISBN:4794811713
  15. 2017 野矢茂樹『大人のための国語ゼミ』(筑摩書房ISBN:4480816801
  16. 2018 メアリアン・ウルフ『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳:「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる』(インターシフト, 2020) ISBN:4772695672
  17. 2020 村上慎一『読解力を身につける』(岩波書店ISBN:400500914X
  18. 2020 高橋源一郎『「読む」ってどんなこと?』(NHK出版) ISBN:414407255X
  19. 2020 橋本陽介『「文」とは何か:楽しい日本語文法のはなし』(光文社) 4334044883
  20. 2021 千葉一幹『コンテクストの読み方:コロナ時代の人文学』(NTT出版ISBN:4757143575
  21. 2022 山口尚『難しい本を読むためには』(筑摩書房ISBN:4480684336
  22. 2022 マシュー・ルベリー『読めない人が「読む」世界:読むことの多様性』(原書房ISBN:4562074043
  23. 2024 阿部公彦『文章は「形」から読む:ことばの魔術と出会うために』(集英社ISBN:4087213056

【選定】清水幾太郎(1972)『本はどう読むか』

目次

 はしがき 003
1 私の読書経験から 007
2 教養のための読書 037
3 忘れない工夫 069
4 本とどうつきあうか
5 外国書に慣れる法
6 マスコミ時代の読書
 1 新しいマスメディアの出現
 2 マス・メディアの種類と性質
 3 文字の世界
 4 活字メディアと電波メディア

はしがき

 過去数十年間、私は、人間とつきあうよりも、書物とつきあって来たように思う。少しアブノーマルな生活であったかも知れない。しかし、その代り、書物とつきあう術は或る程度まで身についたような気がする。
 どういう本を選んだらよいか。どういう方法で読んだらよいか。読んで得た内容を忘れないためには、どうすればよいのか。蔵書の整理には、どういう方法があるか。外国書に慣れるには、どうしたらよいか。
 これらの点は、すべての読書子にとって重大な問題である。正直のところ、私自身、何回となく、これらの点で愚かな失敗を重ねて来たし、後悔の苦さも味わって来た。
 本書は、ー人の読書子としての私の経験を回顧しながら、ーつーつ、右の諸問題に答えようとしたものである。私が読者にお伝え出来るのは、所詮、私自身の流儀に過ぎないが、それでも、きっと、若干の点で読者に役立つであろうと思っている。

【選定】アドラー&ドーレン(1940)『本を読む本』

原題は How to Read a Book. そちらのほうがよくないですか。

  • 日本の読者の皆さんへ(アドラー
  • 第一部 読書の意味
    • 1 読書技術と積極性
    • 2 読書のレベル
    • 3 初級読書──読書の第一レベル
    • 4 点検読書──読書の第二レベル
    • 5 意欲的な読者になるには
  • 第二部 分析読書
    • 6 本を分類する
    • 7 本を透視する
    • 8 著者と折り合いをつける
    • 9 著者の伝えたいことは何か
    • 10 本を正しく批評する
    • 11 著者に賛成するか、反論するか
    • 12 読書の補助手段
  • 第三部 文学の読みかた
    • 12 小説、戯曲、詩の読みかた
  • 第四部 読書の最終目標
  • 日本人の読書:訳者あとがきにかえて(外山滋比古

【選定】橋本陽介(2020)『「文」とは何か─愉しい日本語文法のはなし』

目次

  • はじめに
  • 第一章 「文」とは何かという根源的な問い
  • 第二章 助詞と助動詞は秘密の塊
  • 第三章 「文」と西洋ロゴス
  • 第四章 「文」とは、必要なことが必要なだけ表されたものである
  • 第五章 自ら動くのか、他に働きかけるのか
  • 第六章 AIが人間に近づくのではなく、むしろ人間がAI?
  • 第七章 認知主体としての人間に商店を当てた考え方
  • 第八章 言語は試行を決定しないが表現と解釈を縛る
  • 第九章 複雑な「文」の作り方
  • 第十章 「文」の文法からこぼれ落ちた問題──語用論、テクスト
  • おわりに
  • 主要参考文献

The Five Books:ウェーバー(1920)『社会学の根本概念』読書会

https://the-five-books-max-weber-sociology.peatix.com/

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涜書:ウェーバー(1920)『社会学の基礎概念』

読書会用



ISBN:4003420969 ISBN:B000J9P61U

目次

  • 緒言
  • 01 社会学と社会的行為の「意味」との概念
  • I 方法的基礎
  • II 社会的行為の概念
  • 02 社会的行為の諸動機
  • 03 社会関係
  • 04 社会的行為の諸類型:習慣、慣習
  • 05 正当的秩序の概念
  • 06 正当的秩序の種類:因習と法
  • 07 正当的秩序の妥当根拠:伝統、信仰、制定律
  • 08 闘争の概念
  • 09 共同社会関係と利益社会関係
  • 10 開放的関係と閉鎖的関係
  • 11 行為の帰責。代表関係
  • 12 団体の概念と種類
  • 13 団体の諸秩序
  • 14 行政秩序と規制秩序
  • 15 経営と経営団体、結社、アンシュタルト
  • 16 権力、支配
  • 17 政治団体、教権政治団体

酒井泰斗+吉川浩満「読むためのトゥルーイズム」第三回

「哲学の講義」案内ページに、吉川浩満さんとの共著連載「読むためのトゥルーイズム」のためのセクションを設置しました。 現在は投稿フォームへのリンクを置いてあります。連載に関する疑問・質問などお寄せください。執筆の参考にさせていただきます。
いただいた投稿は連載内や解説・告知動画のなかで回答させていただく可能性があります。投稿用のペンネームを添えてください。

連載のほうは、数日前に第三回の原稿をなんとか入稿できました。2024年3月7日発売号(四月号)に掲載予定です。
初回と第二回では連載の趣旨をお話ししたのに続いて第三回では読解方針の導出を行い、メニューはこんな感じになりました。発売をお待ちください。

  • 1. 前回の演習と今回の話題
  • 2. 読解方針の導出──「どうしたら読めるか」から出発して
  • 3. 準備作業の概要──読書会開催日までにすること
  • 4. 準備作業の実際──目次を読む(準備作業B1)
    • 4-1. 目次とは?
    • 4-2.目次を読む1──量的構成をみる(準備作業 B1a)
    • 4-3.目次を読む2──読解ガイドを作成する(準備作業B1b)
  • 5. 考えたこともなかったことを考える──文書に即して文書を追尾することで得られる果実
  • 6. 演習

追記:解説動画を公開しました

今回の内容に関連して、ふだん Word や Excel を使う機会があまりない方のために、記載内容に関わるもっとも基本的なアプリケーションの使い方について解説しています(75分)。