ファイズギアボックス


今まで手が出なかった商品というものがあった。
2003年年末に発売されたトイザらス限定のファイズギアボックスと言う代物。
ファイズショット(ライダーパンチする為のアイテム、本来はデジカメ)と
ファイズポインター(ライダーキックする為のアイテム、本来はスコープ?)
が同梱されたモノだ。

ファイズドライバーは持ってる。ファイズブラスターもある。アクセルウォッチも。ファイズエッジも。
しかしショットとポインターは何となく面白くないという理由で買っていなかった。
と言うかこのトイザらス限定のボックスを買えば全部揃うから安くなるまで待とうと思った。

それから12年(笑)嘘、ファイズって10年以上前のライダーなの!?って思っちゃう(笑)
仮面ライダーファイズは全ライダー中デザインでは一位とも言うべき人気を誇っており、
未だに関連商品が発売される状況だ。つまり安くなる等夢のまた夢と言う事だ。
当時この商品が幾らだったか正確には覚えてないが、ショットとポインター同梱で8000円くらいだったかと思う。


そんな商品がアキバラジ館七階の某店で10000円で売っているのだ。
買わない理由が見いだせないと思い、とりあえず中身を確認させてもらうことにした。
「今日はライダー関連専門の人がいるんですよ」
と何故か店員さんが自分に語り掛けてくる。毎週来てるから顔覚えられただろうか(笑)

箱の中身を開けてみると、
店員「あ」
自分「あ?」
と二人で意外なモノを見る感じ。
箱も美品、中身のショットとポインターも傷一つ無い様に見える。
が、何故か本来同梱されていない商品が「やぁ!」と言う感じで声を掛けてきた気分だった(笑)
写真の通り、ファイズアクセル、アクセルウォッチが何故か入っていたのだ。
恐らく、ライダーに疎い人が品定めを行って現状で店に置いてしまったのだろう。
これはかなり店側の大ポカ、恐らくファイズアクセル単品でも袋詰めで5000円以上はする代物。
おまけでファイズギアボックスに入れたとしても、15000円以上でも多分安い。
店員「えっと……どうしますか? 明日には多分これ(ファイズアクセル)は無くなっている可能性が」
自分「買います」
即決だった(笑)ホント、買わない理由が思いつかない(笑)

再三お礼を言ってこの商品を買ってきた。コンセレファイズギア、これに入るかな? 多分入らないんだろうな(笑)

お久しぶりです

お久しぶりです、エクシです。
最近はずっとミクシィで日記やつぶやきを書いてましたが。
こちらも少しずつやっていこうかなと思いまして。

いやホントは日記書かないと停止されるよ、って言われて(笑)

最近は艦こればっかりですね。もう島田フミカネからは逃れられないのだ(笑)

とりあえずはこんな感じで。それではまた。

HMMゴジュラス作成

恐ろしい程のパーツ数

年末から作り続けてきた超目玉キット、ゴジュラスを作成しました。
ゾイドって正直、自分的にはそんなに注目するべきモノじゃないはずなんですが、
ゴジュラスに関しては別。コミケに一緒に行くW氏は「アレは当時は高嶺の花だったよな」と仰っていた。
実際にそうだと思うし、今回のキットだって定価が23000円もする高値の花?って所だ。

確かゴジュラスを買ったのがコミケ一日目でした。
コトブキヤが発表した時から、いつ買おうかいつ買おうかと手に入れる機会を窺っていたのです。
ラジ館のイエサブで16800円位まで値引きされてる品を購入しました。
コトブキヤで買うとオリジナルカラーとかのランナーが手に入るんだけど、さすがに23kは出したくない感じで。

12月29日。とりあえず顔まで作ってみた。
しかし……ちょっとランナーが多すぎやしませんかね。
A〜Zまでランナーあるよ。おまけに幾つかは二枚ずつあるし。
V〜Z辺りはそれほど量の無いランナーですが、兎にも角にも組み立てるにはランナーを探さなきゃいけないと言う事。
作ってる時間より探す時間にかなり手間を食います。
まあ説明書のページ上にこれらのランナーが必要ですよ、とは書いてあるんですが。
やっぱり探すのと、どのランナーがどの色でどのアルファベットが振られているかと言う事を覚える作業だった気がする。
夜の九時頃に友人W氏が東京現着。とりあえず夜更かしして幾らか作る。
隣にいるW氏は何だか手持ち豚さんみたいだった(笑)

コミケ二日目。つまり12月30日。因みにコミケには行きませんでした。
かなり時間を掛けたけど、大体首から下の胸部分まで作成。
ここで一旦アキバへと出掛ける。W氏が行きたがってたから。
宿泊拠点に帰り、手が止まる。作るのに疲れた、と言うより忙しくなって作れなくなった。
つーか三日目のチェックをする為にPCに釘付けになったと言う感じだ。
その間、W氏は何か作りたくなってきたと言うので、宿泊拠点を提供する代わりに、

積みプラになって暫く経っていたXディバイダーと、

塗装が苦手だったせいで今まで放置プレイだった秋山殿の塗装を行なってもらった(笑)
Xディバイダーは一から十まで作ってもらったが、秋山殿は自分が組みました。
考えてみればフィギュア作ったのなんて暫くぶりだったかも。
アキバに行ったのはその塗料を買いに行ったから、ってのもある。


ここで、ゴジュラス作成は完全にストップ。
何かもう、このまま首だけモニュメントにしたくなったけど、やはりプラモは作ってナンボでしょ。
つーか置き場所に困る。数十枚もランナーがあるし。
因みにゴジュラスのパッケージは巨大な箱に取っ手が付いている。
その中の内訳は大箱一個、小箱二個と言う構成だ。

まあしかし、小箱でもコレくらいの大きさがあるんですが(笑)
子供が入れる程のゴジュラスパッケージ。
もう少し小さく出来なかったのかな、とも思う。

年始の一日二日は家族で墓参りしたり初詣行ったりして、結局作り始めたのは三日からだった。
下半身まで作成。何かメタルブラックの一面ボスみたいだったのでブラックフライと記念撮影する(笑)
ホントサイズがドンピシャだったので一人製作しながら笑いがこみ上げてきたりした。

3・4・5日を使ってようやく立つゴジュラス。
しかし尻尾が凄い面倒だった。おかげで腕まで行かずまた次の休みまで放置。
8日から怒涛の勢いで仕上げる。最後時間が足りず、指四本は帰ってから作成と言う運びになった。
木曜は友人のニムとゴハン一緒に食べてくるまで送って、
その後行きつけの模型店に半完成品のゴジュラスを見せに行こうと思い大船へ向かう。
模型店の店長さんは別に何も言ってないのに白い箱を持っていっただけで「ゴジュラス持ってきたんですか」
と笑いながら言った(笑)まあツイッターで散々つぶやいてるしね。
模型店の仕事〆の時間の間、ゴジュラスを完全に仕上げる。まあ後は指四本だけだったので。

と言う事で完成しましたコトブキヤゴジュラス。
凄い密度のプラモデルでした。スミ入れとかしてたらもっと時間掛かってたでしょうね。
それに実際、接着は最小限で抑えたので外装パーツはいつでも分解出来るし。
スミ入れしたくなったらすればいいや、てな感じ。
でもこの迫力を前にしたら別にいいやーって思っちゃうですよ。

背中の情報量が凄い多目。
何だコレ、勝てる気がしねぇって感じ。
でもアニメ版ゴジュラスは凄い酷い扱いなんだ。
デスザウラーの荷電粒子砲喰らって首チョンパはちょっと心臓に悪かったですよ(泣)

別に改造ってワケでも無いですが、クリアパーツの裏にキラキラシール貼って眼付けさせてみた。
まあホントはゴジュラスって言うと目の部分はゴーグル的なイメージが強い。
発光もしてたからなんでしょうが、このゴジュラスに関しては目力でメリハリを利かせます(笑)

驚きのランナークズと余りパーツ。
まさかポリキャップ全部無くなるとは思ってませんでした。
つー事は一個でもポリキャップ無くすと注文と言うハメになってたのか。
そう思うとちょっとゾッとした。良く無事に組み立てられたな、自分。

と言う感じで、年始からホビー三昧でお送りしました。
去年はどちらかと言えば散々な目にあったので、出来れば今年は良い事があります様に、と言う事で。
それではまた〜(・_・)

第44話 迫り来る闇(1992/12/22 放映)

燃え上がる怒りのフェルミオン!

脚本:岸間信明 絵コンテ:橋本伊央汰 演出:西山明樹彦  作監:室生聖人 メカ作監オグロアキラ
作画評価レベル ★★★☆☆

第43話予告
残されたスペースポートを目指す、ソードとDボゥイ。
だが、新たなる恐怖の中、Dボゥイはテックセットすることさえも忘れてしまう。
次回、宇宙の騎士テッカマンブレード「迫り来る闇」仮面の下の涙をぬぐえ。


イントロダクション
地上に降下した、ラダム獣の植物化が急速に進む中、スペースナイツはORSのスペースポートを奪回すべく作戦を開始した。だが、ORSでは先回りしたテッカマンソードの手により八つあるスペースポートの内、七つが破壊され、残るは第八スペースポートのみとなっていた。そして、テッカマンブレードとなって戦う度に、神経核の麻痺によりDボゥイの記憶崩壊は進んでいくのだった。



「敵のテッカマンは一直線に第八スペースポートに向かっている!」
「Dボゥイとバルザックは、一体何処?」
「分からねぇ……さっきまではサーチ出来ていたのに……!」
中央コントロールルームで復旧作業に従事しているノアルとアキは、レーダーを表示するモニターを食い入る様に見つめながら言った。レーダーにはORSと光点で示された敵テッカマンの動きが垣間見える。どうやらテッカマンソードはORSの内部を移動せず、外側である宇宙を飛び回りながら地球を一周している様だ。
二人はDボゥイがラダムマザーと言う脅威的な障害により苦戦を強いられた事を知らない。いてもたってもいられずに、いらつきながらアキは叫ぶ様に言った。
「一体どうなってるの!? レビン!!」
「もぉ! そうポンポン言わないでよぉ! あれだけぶっ壊されたのを、何とかここまで直したのよぉ? 全体のセンサーなんて、まだまだよぉ!」
 ヘッドライトを付けたレビンが、コンソールの点検用ハッチから頭だけ出してそう応える。確かに、スクラップ同然だった中央コントロールルームが、今現在は照明で照らされ、随分環境が整えられている様に見える。彼らが此処に到達してから数時間ではあるが、ここまで復旧したのはレビンの手腕の賜物だった。
「ふぅ……生死も定かで無いって事か……」
「いや……大丈夫さ……」
 ノアルが溜息を吐きながら言った直後、ソルテッカマンのバイザーを外したバルザックが少し疲れた表情でコントロールルームに入って来た。
バルザック!!」
「この通り無事さ。軽い火傷を負ったがな」
 ラダムマザーとの戦闘で、彼は頭部バイザーを一撃され気絶した。そのせいでそれ以後何が起こったのかは全く知らない。彼が言う様に左頬に少し負傷した跡がある。これはラダムマザーの爆発した影響だろう。
 駆け寄ったアキがバルザックを前にして尋ねた。
「……Dボゥイはっ?」
「心配するなって。俺が生きてるんだ。あいつが死んだりするもんかよ」
「……」
 バルザックの励ましに、暗かったアキの表情は幾分か好転する。
「ただ、離れ離れになっちまっただけさ。此処に戻れば、Dボゥイの居所が分かると思ったんだがな」
バルザックソルテッカマンは、ラダムマザーが爆発した直後に宇宙へと放り出された様だ。ラダムマザーの爪が刺さったままだったのが幸いしたのか、酸素漏れは最小限に抑えられている。そして応急措置を終えたバルザックは、此処へと戻って来たのだろう。
「やったぁ! ちょっとどいて!!」
「おわっ!?」
 突然、レビンが奇声をあげたと思ったら、直後メンテナンスハッチから飛び出して、モニターを見ていたノアルを乱暴に押し退けて、キーボードを叩き始める。
「直ったのよ!」
「えぇ!?」
「本当か!」
「ここから、第八スペースポートまでの間はね。何とか……四分の一程度は生き返ったはずよ」
 モニターが様々な表示をした直後、第八スペースポートまでの表示が点灯した。
「いたぁ! Dボゥイもペガスも、第八スペースポートに向かってるわ!」
 そして、ORSの概略図左下に、Dボゥイ達の現状がリアルタイムの画像で送られてきた。見れば、Dボゥイもペガスも、第八スペースポートへと向かう為にしっかりと歩いて向かっている。 
「あ……」
 その姿で、アキは胸が一杯になった。
――――Dボゥイ……!
 泣きそうになりながらDボゥイを想った。そんなアキの横顔を見たノアルは、彼女の肩を叩いて言う。
「よぉしっ! 俺達も行こうぜ! 何としても第八スペースポートだけは守るんだ!」
モニターで見た限りでは、現状第八スペースポートを防衛できるのはDボゥイだけであろう。アキはノアルのその思い遣りに、力強く頷き返したのだった。
そして徒歩で向かうDボゥイは、スペースポートへ向かう最中、ORS外壁の窓から地球を見下ろしていた。
地球、青い地球を愛していたミユキの幻影が蘇ってくる。彼女は沢山の花に囲まれた場所で微笑みながら自分に向かって走ってくる。白い花園……だが、どんな花かは思い出せない。
そしてその可憐で儚げな姿を、巨大なシンヤが握り潰そうとする。邪悪な笑みが、Dボゥイの脳内に木霊し、
「うぅっ!?」
幻影を見たDボゥイは窓から離れ、後ずさった。背後の壁だと思っていたモノはペガスの脚部だった。
「ドウシタノデスカ? Dボゥイ」
「ロボットの癖に、気安く呼ぶな!!」
Dボゥイは憤った。彼はペガスの事を「ロボット」と呼んだ。今まで何度も一緒に死線を掻い潜ってきたか分からないほどの相棒を、Dボゥイは単なる「ロボット」と呼称したのだ。
「俺から離れていろ!」
「ラーサー。5メートルハナレマス」
そうペガスは言うと、無骨な脚部を動かして後退した。ぴったりDボゥイから五メートル分だけ離れると、ペガスは動きを止めた。
 それを見て、Dボゥイは歩みを進める。すると、ペガスも一緒に歩き出した。暫く歩いてDボゥイが一瞬だけ足を止めると、後ろのペガスも動きを止める。
「……」
 気にせずにまた歩き出すDボゥイ。するとやはりペガスも歩き出した。ペガスはDボゥイの言う通りぴったり五メートルの距離を保ちながらDボゥイに追従している様だ。
「何故俺の後をついてくる!?」
Dボゥイは再び足を止め、突然振り返ってペガスに対して訝った。
「アナタニハ、ワタシがヒツヨウダカラデス」
「笑わせるな! ロボットに何が出来ると言うんだ!」
共に戦ってきた戦友とも、テッカマンになる為の必要不可欠なマシンユニットとも言うべきペガスに対して、むしろ彼は邪魔者と判断している。明らかにDボゥイのその態度は異常だった。
「ロボットトイウナマエデハアリマセン。ワタシノナハ、ペガス。スペースナイツにショゾクシ、セイゾウバンゴウハT23−911――――」
「もういい!」
 製造ナンバーを続けようとするペガスに、Dボゥイは手で遮る様に、拒絶するようにそう言いながらペガスを律する。
「ラーサー」
 ペガスの様子にDボゥイは諦めた風だった。自分の戦いを邪魔する様なモノなら排除するが、ただ付いてくるだけならそれほど害も無いだろうと思ったからだ。
 Dボゥイとペガスは、そのままの足取りで第八スペースポートを目指す事になった。
その頃、ホバークルーザーを駆り、高速でアキは第八スペースポートを目指す。その彼女を、二機のソルテッカマンが走りながら追従する。先行しているDボゥイ達に追いつく為に、三人は必要以上に先を急いでいた。
レビンが直した監視システムから、Dボゥイ達が無事なのは分かっていた事だが、先の爆発による衝撃波や支援している防衛軍兵士達が皆無な事を考えると、今現在彼は孤立した状態で敵と接触する事になる。以前ならまだしも、テックセットする度に記憶を失う事を考えれば支援するのは当然だった。
 ライトで照らされた先を見てアキはクルーザーを止めた。第八スペースポートへ行く途中の道が瓦礫で塞がっている。実はこれは、先程の衝撃波が起こった場所、ラダムマザーが爆発した余波で出来た瓦礫だった。
「こっちよ」
アキはクルーザーを降りると、センサー端末を見つつ左の横道に向かう。
「おい、第八スペースポートはそっちじゃないぜ?」
「近道を使うの」
「近道?」
 バルザックが怪訝な声をあげる。
 横道の通路に入った三人はエアロックブロックへと到達した。
「なるほど、外から第八スペースポートを目指そうってワケか」
 エアロック施設のロッカーから気密ヘルメットと空間姿勢制御用のバックパックを取り出したアキに、ノアルは合点がいったように言う。
 ヘルメットを着用し、バックパックを装備したアキは通信システムをオンにして言う。
「そう、下から上へ対角線を通れば、距離はずっと短くなるし」
「障害物にも邪魔される事も無い」 
「何か嫌な予感がするのよ……Dボゥイがまた……」
 先程見ていた映像では、Dボゥイ達は無事な姿は確認できた。しかしアキは不思議に思ったのだ。何故Dボゥイはこの急がねばならない時に、ホバーモードのペガスに乗って急行しないのかと。何故わざわざ徒歩で目的地を目指すのかと。
「……一刻も早く第八スペースポートへ行かなくちゃ!」
「開けるぜ」
二人のソルテッカマンはエアロック扉の両側に位置した。姿勢制御する為の操作レバーを握ったまま、アキは扉の前で構える。そして、バルザックがエアロックを開くレバーを押し下げると、重い扉が両側へと少しずつ開かれた。空気が流れると同時に、其処彼処にあった残骸や浮遊物が一気に外に流れ出る。アキは流される様に宇宙へと飛び出したが、最小限の圧縮空気の噴出で体勢を立て直し第八スペースポートを目指す。エアロック内でそれを見届けたノアルとバルザックも、ほぼ同時に宇宙へと躍り出て脚部バーニアを噴射させて目的地を目指した。
その頃、第八スペースポートの巨大な隔壁扉を開き侵入しようとする影がいた。一足先に目的地に着いたテッカマンソードである。彼女もまた、アキと同じ考えだった。全てのスペースポートを潰す、と言う事はある意味地球を一周するのと同義だった。彼女はやはりORSの対角線上の内側の宇宙空間を通ってDボゥイ達の先手を取っていたのだ。
「第八スペースポート……」
テッカマンソードが隔壁が開くと、やはり細かな残骸が宇宙へと放り出されていく。それを全く気にも留めずに、彼女はそう静かに一人ごちた。何かを懐かしむ様な、仮面の下の表情は郷愁に捉われていた。
――――あの日……アルゴス号は此処から旅立った……。
 そう、あれはもう3年半以上前になるのか。ソードの言う通り、此処はタイタン調査船が飛び立ったスペースポートである。彼女はその記憶を昨日の事の様に思い起こせる。それは、調査船が飛び立つ数時間前、入念な準備を相羽一家とクルー総出で行っている最中の出来事だった。
「あれぇ? それ、なんだい?」
「え、あぁ……これは……」
 いつも笑顔を絶やさない次男、相羽タカヤがフォンの顔を覗き込みながら左手の薬指にはめてある指輪を見つつ、そう言った。フォンは咄嗟に指輪を隠しながら、しどろもどろになって顔を赤らめる。
「バッカだなぁタカヤ兄さん。これは婚約指輪だぜ?」
「そぉよぉ! フォンの誕生石だもん!」
 すると、三男であるシンヤと、その妹である長女ミユキが立て続けに言った。
「へぇ〜! じゃ、とうとう決めたんだ! ゴダード?」
「ぐほっごほっ! わ、ワシじゃねぇぞぉ!?」
 団長の相羽孝三と話していたゴダードが咳き込みながら、シンヤに言う。無邪気な三人は分かっていてフォンをからかっているのだ。
「それじゃ! 誰からだい?」
「……ケンゴ……」
 フォンは小声で、顔を真っ赤にしながら言った。
「えぇ〜? 何だってぇ? 聞こえねぇなぁ!」
 顔を赤らめるフォンに対し、ゴダードまでその輪に入ってからかい始める。
「えぇ〜? もう一度言ってみてよ!」
「誰だって〜?」
「ねぇ〜?」
 4人は大袈裟そうにフォンの周りで耳に手を当てながら、その結婚指輪は誰からなのか、と分かっていながらはっきりとフォンの声から聞きたがった。
「んもぉぅっ! あ……」
 彼女が抗議しようとしたその時、大柄な男がフォンの肩を抱きながら言った。
「俺が贈ったんだ! 誰か文句があるかぁ〜?」
 相羽一家の長男である相羽ケンゴが、周りの4人を見ながら、やはり大袈裟そうに言う。
「はっはっは! あるわけないだろぉ?」
「おめでとぉ! ケンゴ兄さん!」
「フォンもな!」
「ケンゴ兄さんのお嫁さんなら、絶対幸せになれるわよ! 羨ましいなぁ〜」
 タカヤが高笑いし、シンヤもゴダードも満面の笑みを浮かべながら二人を祝う。ミユキはお似合いの二人を見て大袈裟でなく、心から羨ましがっている様だった。  
「この航海が終わったら、結婚式を挙げるつもりだ!」
 そしてケンゴは、フォンの肩を抱きながらそう、高らかに宣言する様に言った。
「いやいやぁ! そう言う事は早く済ましちまった方がいいぞぉ?」
「そぉよぉ! 土星のリングをバックに、宇宙結婚式なんて言うのもロマンチックよねぇ!」
 ゴダードがまるで急かす様にそう言って、ミユキは子供の様にはしゃぎながら提案する。確かに、早くても数ヶ月、遅ければ年単位にもなる土星への長い旅である。良い事は直ぐに行いたいと思うのは人情だった。
 そして話の輪に微笑みながら入って来た相羽孝三が言う。
「あぁ、それはいい考えだ! よぉし! 二人の結婚式は、土星の周回軌道に乗ったら挙げる事にしよう!」
たちまち周りのクルーから拍手が湧き起こった。その中にはフリッツやモロトフの姿がある。皆笑顔で二人を祝福していた。そして肩を抱かれながらフォンは幸せを胸いっぱいに感じ取っていた。
――――けれど……土星の周回軌道に乗るとまもなく、私達の運命は変わってしまった。母なるラダムと遭遇するのが後一日遅れていたなら……。
 土星のリング付近でアルゴス号はラダムに取り込まれ、遂に宇宙結婚式は行なわれる事は無かった。赤いルビーの宝石が地球と、ORSのリングと重なる様に、彼女の回想は終わる。
「フン、ラダムとなった身で、余計な感傷だったわ……」
そう言いながら、記憶の残滓を一蹴する様に言いつつ、ソードは内壁のスイッチを操作して隔壁扉を閉ざした。その様はまるで自分の記憶を思い起させない、過去に蓋をする様な行為に等しかったのかも知れない。
だが。彼女はテッカマンにフォーマットされても、その記憶を引き摺っていた。現に、スペースナイツ基地が崩壊間際に、テッカマンレイピアを捕えて尋問する時でも、他のテッカマンが凶刃で容赦の無い一撃を見舞ったが、彼女だけはミユキを一撃しなかった。彼女の持つテックシレイラは棍棒の様な武器であり、尋問する際に殺さずに痛めつける事も出来たはずだったが、何故か彼女の身体は動かなかった。
これは、彼女の心中でミユキを痛めつける様な行為を拒否していたからであった。結婚すれば義妹にもなったであろうミユキを、いずれ死に逝く彼女を、苦痛を与えず、楽に葬りたいと言う気持ちがあったのだ。
それはこの彼女の記憶に起因する。宇宙結婚式、と言う一時の夢をミユキはフォンに与えてくれた。だからこそ、フォンはミユキを痛めつける様な非情な仕打ちが出来なかったのだ。ラダムと言う存在に遭い、人間ではなくなったとしても、彼女はやはり過去にこだわっていた。それも無意識に。それは、ラダムの掟をある程度破らなければ許容される行為だったのかもしれない。
暗いスペースポート内をソードは見やる。其処には、未だ無事なスペースシップが数機あり、施設は無傷なままだった。
「奴らを月には行かせない!」
 紅い眼光が煌くと同時に、ソードは宙を舞った。そして無傷なスペースシップのエンジン部をテックシレイラで激しく突く。スパークが巻き起こり、爆発が起こった。
 スペースシップから一瞬で離れると、港湾施設を踏み潰す様に着地し、主要な機械群を容赦無く破壊していく。天井付近にある動力伝達ケーブルをランサーで叩き折り、ポート内は一瞬の内に火の海と化していった。
 ソードが破壊活動を効率良くこなしていた丁度その頃、Dボゥイはようやく目的地に辿り着いた。
「ここからが第八スペースポートか……」
 Dボゥイが隔壁をペガスと共にくぐると、気密が確保された黄色い回転灯が鳴る。
その瞬間、鋭い感応をDボゥイは感じた。
「うっ……何だ……?」
「ツヨイセイタイハンノウアリ」
「エビルかっ!? それとも……」
 ペガスが無骨な機械音声で警告する。
と同時に、突如数メートル離れた通路のつきあたりで、爆風が起こった。
「何ぃっ!?」
    
            〇

 
「ふぅ……これで、レーザーは復旧したはずよ? 試してみて!」
 コンソール下から出てくると、レビンは一つ嘆息して脇にいる元連合防衛軍兵士のロイにそう声を掛けた。
「了解ぃ」
 軽快にそう応えてキーを叩く兵士。元防衛軍兵士の愚連隊は彼を含めて三人以外全て全滅すると言う状態になったが、それでも彼らは良く働いた。その中のロイは、特徴的で巨大なアフロヘアーをしている。
「北側六キロの空間に、廃棄物が漂ってるわ。あれを狙って?」
「了解! レーザー照準完了! 第36号レーザー砲塔群、一番から五番、発射!」
 モニターを見つつ、レビンがそう指示すると、ロイは口頭で確認しながら発射ボタンを押す。
「えっ!?」
「ラダムか!?」
宇宙空間に明るい爆発光が煌いた事を受けて、アキとバルザックが声をあげたが、
「違うわ。レーザーシステムが復旧したの! 今のはテストよ」
 すかさずレビンの通信が入った。
「ふぅ……脅かすなよ……」
 せめて警告してから撃って欲しいとバルザックは思う。ORS付近に無数に点在する衛星レーザー砲と言う兵器はある意味、地上の人間にとって数ヶ月前まで恐怖の対象だったからだ。
 しかし、レーザーの復旧が完了したと言う事は、地球側もそれなりの軍備が整った事を意味する。反応弾すら無効化する敵テッカマンには効果が無いだろうが、ラダム獣に対してはそれなりの効果を発揮する兵器であろう。勿論、衛星軌道上から発射されるレーザーの威力は絶大であり、乱射すれば地形を変えてしまう程の威力を持つ。おいそれとは使用出来ない大量破壊兵器ではあるが、復旧を指示したのは他ならぬフリーマンだった。使うのは異常な非常事態、最後の手段であろう。
「レビン! Dボゥイと、敵のテッカマンはどうなってる?」
「キス出来ちゃう位に接近してるわよぉ……熱源反応も感知されたわ。急いで!!」
 アキの質問に、レビンは冗談半分で応えるが、直ぐに三人を急かす様に口調を変える。
「くっ……遅かったか……!」
 そして、遂にDボゥイは第八スペースポートへと到達したが、ポート内の様子を見て舌打ちする。
「ふふふ……来たわね、ブレード」
「ソードぉ!!」
 爆炎を背後に、スペースシップの残骸の上から敵のテッカマンが声を掛け、Dボゥイが激情で応えた。
「タカヤだ……」
 丁度その頃、生体幽閉球の中で、シンヤはDボゥイがテッカマンと対峙した時の、精神感応を感じ取った。
「タカヤが、戦っている……」
 全裸になったシンヤは、それまで何の情報も入ってこないこの場所で呆然と、陰鬱としていたが、数万キロ彼方でも届く精神感応を感じ取った。誰かにこの幽閉球を外部から破ってくれない限り、この場から脱出出来ない事は彼も良く知っている。だから、半ば諦めかけていたのだが、
「タカヤぁ……オォォオ!! ウアアァァアアッ!! 出してくれ兄さァァんッ!!」
 突然起き上がって軟質の幽閉球を強かに叩く。まるで気が触れた様な形相で、テッカマンオメガを叫びながらシンヤは何度も叩き、何度も叫んだ。
「タカヤがぁっ! タカヤがあッ!! 俺をここから出してくれ兄さん! 兄さァァァァンッ!!」
 しかし応える者は誰もいない。テッカマンオメガにとってシンヤは仲間であり愛すべき実弟である。彼の焦燥感で満たされた叫びを、声が枯れ喉から血が出る様な慟哭を聞いていても、オメガは徹底的に無視するしかなかった。
 進化したテッカマン、ブラスターテッカマンは自滅の道である。そして恐怖すべき巨大な力だった。今のテッカマンエビルにそれを屠る事は不可能であると言う事を重々承知しているオメガは、シンヤを出撃させる事は絶対にしない。それはシンヤを死地に向かわせるのと同義だったからだ。
 しかしオメガにとってDボゥイが自滅するであろうと言う判断は、大いなる誤算だったのかもしれない。
「テックセッタァァァっ!! うぅっ!?」
 そしてORS内の第八スペースポートでは、Dボゥイが飛び上がりながら敵テッカマンと交戦しようと、テックセットを試みる最中であった。しかし、
「な、無いっ!!」
 気密服の胸のポケットに添えた手は空しく空振った。Dボゥイとしては、テッククリスタルを取り出し、頭上に掲げてテックセットするつもりでいたのだ。
「死ねぇぇぇッ!! むっ!?」
 そんな風に動揺するDボゥイに、テッカマンソードが襲い掛かるが、ペガスの壁の様な体躯がそれを遮り、ソードの攻撃は跳ね返された。
「Dボゥイ、テックセットシテクダサイ! Dボゥイ!」
「無い!! クリスタルが無いんだ!! あれが無ければ、テックセット出来るものか!!」
 本来なら「ペガス、テックセッター!」と言うキーワードを発し、ペガス背部のテックセットルームへと躍り掛かるはずのDボゥイが、激しく動揺し辺りを見回して自分の一部とも言えるクリスタルを探している。
 例えDボゥイが生身だったとしても、ソードは構えを解いていない。手に持ったテックシレイラを二つに分割すると、ワイヤーで繋げられた棍棒は二節棍、巨大なヌンチャクの様な形に変形する。 
「ど、何処で落としたんだ!?」
 四つん這いになって、Dボゥイはクリスタルを探し続けている。明らかに異常な行動だった。今のDボゥイは、相棒の名前すらも思い出せず、今までどうやってテックセットしたのかも忘れてしまっている様だ。
「どぉしたブレード! テックセットする事を、忘れてしまったの?」
「忘れた!? ……馬鹿なっ! クリスタルさえあれば、テックセット出来るんだ!!」
――――ブレードは、記憶が混乱している……これがオメガ様の言っていた、無理なブラスター化による、副作用なのか……?
 ソードや他のテッカマンにしても、現状のテッカマンブレードの状態を理解しているつもりだった。テックセットユニットとも言うべき支援ロボットでテックセットする事も承知している。しかし、目の前にそのサポートユニットがあるにも関わらずそれをしないと言う事は、ソードにとってもそれは異常であり、記憶喪失に陥っていると言う結論に簡単に至れた。そしてそれが、ブラスター化の副作用であると言う事も。
 ここでソードは、一計を案じる事にした。そして分割したテックシレイラを片手に纏め、構えを解いた。
「テックセットシテクダサイ。Dボゥイ!」
「よぉく聞け! ブレード! お前の名前は、相羽タカヤ!」
 ペガスの電子音声の警告を遮る様に、テッカマンソードは叫んだ。Dボゥイの本名を。
「っく……そうだ、俺の名前は、相羽タカヤだ!!」
 Dボゥイは探すのをやめて、立ち上がってそう応えた。その言葉には怒張が含まれている。
「そして……お前はフォン・リー!」
「そぉよ? タカヤ。シンヤもケンゴも、あたしと一緒よ。どぉ? もう一度家族が一つにならない?」
 ソードはその気になれば一瞬でDボゥイとの間合いを縮める事が出来たが、何故か一歩ずつ近付きながら、手を広げ、優しげにそう言った。
記憶喪失や混濁があるのならそこを突く。彼女にとってはブラスター化の副作用は好機だった。そして懐柔する事でDボゥイを捕える事が出来れば、彼を仲間にする事も不可能ではない、と考えたのだ。
「あたし達は、お互いに戦う事なんか無いのよ」
 勿論、右手に持ったテックシレイラはいつでも振り下ろせる様に手放さない。そんな少しずつ近付くソードの様を、Dボゥイは背中越しに凝視した。
「Dボゥイ!」
そんな対面が起きていた時、アキはようやく第八スペースポートの天蓋部分に辿り着いた。小窓からDボゥイと、少しずつ近付いて来ているソードを目にして声をあげる。
「違ぁうっ!!」
 優しげに近付く奸計を弄じる悪魔に対して、Dボゥイは向き直って拳を握り締め、叫び、否定した。 
「むっ!?」
「俺の家族を奪ったのは……貴様らラダムだ!!」
 ソードを指差して、Dボゥイは絶叫する。義姉にもなっただろうフォンに対して言ったのではない。自分の家族を悪魔に仕立てあげるラダムに、怒りと共にDボゥイはテッカマンソードの申し出を激しく拒否した。
「フン! ならば死ね!! テックセットする事を忘れてしまったまま、惨めに転げまわってねぇ!!」
 Dボゥイがラダムに対しての怒りを顕わにしたと同時に、ソードは再びテックシレイラを両手に構える。
「裏切り者に相応しい、最後だ!! たぁっ!!」
 そして背部のスラスターを全開にしてDボゥイに迫る。ポート内の床をすれすれに滑空して突っ込んでくるソードに反応し、ペガスはまたDボゥイをガードするべく目の前で壁になった。
「ブレード! 覚悟ぉっ!!」
 しかしソードはその防御行動を読んでいた。ペガスに接触する前に床を蹴って飛び上がり、更にペガスを踏み台にしてDボゥイに対して急降下してくる。
「おぁぁっ!!」
 超高速で動き、ランサーを大上段に構え振り下ろそうとするソードに、生身のDボゥイは反応出来ない。
 しかしその刹那、突如天蓋付近のハッチが爆発を起こした。 
「うぅっ!? くぅっ!!」
「ぐはっ!!」
 二人は爆発の衝撃を受け、床に叩きつけられた。天井付近まで飛び上がっていたソードはその爆風を直に受け、一瞬動きが止まった。床にいたDボゥイはソードほど強かに叩きつけられたワケではないが、一瞬脳振とうを起こしかけ動けなくなる。
そして、空気の流出が起こり、天蓋付近にDボゥイは吸い込まれようとしていた。
「Dボゥイ! Dボゥイ!!」
 その声と同時に、三人の人影がスペースポート内に飛び込んできた。アキはバックパックのスラスターを全開にして宇宙へ放り出されようとしているDボゥイを抱え込み、そのまま床へと押し倒し飛ばされない様に踏ん張った。
「第八スペースポートのハッチに穴が空いたわ!! 直ぐに非常用シャッターを降ろして!!」
 中央コントロールルームでは、スペースポートに異常が起きた事をモニターで確認したレビンが、直ぐ様指示を出した。そのおかげで、ハッチに穴が空いた時に使用される予備シャッターが塞がり、空気の流出は最小限に抑えられる。
「ごめんなさい……ああするしか無かったの……」
「アキ……」
 どうやらハッチを破壊したのはソルテッカマンのフェルミオン砲だった様だ。かなり荒っぽい救助だったかも知れないが、アキの判断に間違いはなく、Dボゥイは仲間の支援に感謝していた。
「くっそぉ、レーザーだけじゃ、蚊が刺してる様なモンだぜ!!」
 そしてDボゥイとアキをガードする様に、ソードの前で陣取ったバルザックとノアルは、レーザーガンでテッカマンソードを銃撃している。勿論テッカマンにそんなモノが通じるはずも無い。テッカマンソードは肩にランサーを抱える様に構えて、ゆっくりと近付いてくる。
「と言ったって、ここでフェルミオン砲を使うワケにはいかねぇだろ! スペースポートごとぶっ壊れちまうからな! 兎に角、外へ追い出すんだ!!」
 ポートにある殆どのスペースシップや施設がスクラップになっていて、既に此処を守る価値があるかどうかは疑問ではあったが、威力の強いフェルミオン砲を使えば空気の流出が起きて全てのモノが宇宙へと流されてしまう。復旧の見込みを失う事は彼らにとっても痛手であった。そしてそれとは別に、ソードが破壊してきた港湾施設の残骸が辺り一面に無重力で浮遊している。残骸で対消滅を起こしてしまうこう言った状況だと、ソードにフェルミオン砲を当てるのは至難であった。
ノアルがそう言った刹那、ソードがスラスターを全開にして突っ込んできた。 
「うわぁぁっ!!」
 一瞬の出来事だった。テッカマンソードはバルザックソルテッカマン一号機改に体当たりを仕掛け、ポート内の隔壁に叩き付けた。
「ぐぅぉぉ!?」
「ふっふふ……ふぅっふっふ!」
 そのまま装着者諸共、潰す様に押し付ける。残虐な笑みが鎧越しに響き、バルザックは隔壁にめり込みながら苦悶の声をあげた。スラスターを吹かしながら凄まじい力で徐々に壁に一体になる感覚。
「がぁっ!!」
 上半身が埋没し掛かったその時、バルザックはまだ自由な脚部でソードの腹部を蹴る。かなり強かに蹴ったつもりだったが、ソードには何のダメージも無い。一瞬だけ彼女は無重力のポート内で中空に漂った。
「レビン! 今だ! シャッターをもう一度開けろぉっ!!」
「ラーサ!!」
 通信機越しにレビンの声が聞こえたその時、先程爆破された箇所の予備シャッターが開く。
「はっ!?」
空気の流出が起こり、ソードは頭上にあるハッチから宇宙を垣間見た。
「うぉあぁぁっ!!」
その隙をノアルは逃さなかった。今度はノアルのソルテッカマン二号機がテッカマンソードを抱える様に体当たりし、スペースポートから彼女を追い出した。そして、隔壁に埋没していたバルザックも何とか脱して戦線に復帰する。スラスターを全開にして、二人を追い掛けた。
「ノアルっ!! どけぇっ!!」
「んぅっ!?」
 バルザックがノアルに対しがなりつける様に叫ぶと、ソードを抱えていたノアルは即座に離れた。潰され掛けた意趣返しと言わんばかりに、バルザックの拡散フェルミオン砲が唸る。
「ふっふふ! それが貴様達の力なのぉ!?」
 ノアルの二号機も同様にソードを撃ったが、フェルミオン弾は掠りもしない。ソードは腕組みしながら余裕の言葉を吐きつつ、超速の機動で二人を翻弄していた。
考え様によっては、ソルテッカマンと敵テッカマンの、宇宙空間での初戦闘だ。ソルテッカマンは宇宙空間での戦闘も勿論考慮されてはいるが、試作一号機と二号機は本来、重力下の地上運用がメインの機体である。宇宙空間、それも無重力下ともなれば下も上も無く、ノアルとバルザックの力量で何とか戦闘が出来ると言うだけで、宇宙空間が庭とも言えるテッカマンを追いきれるはずもなかった。
「どうしたらいいんだ、アキ! クリスタルは何処にいったんだ!!」
「く、クリスタル? どういう事?」
 その頃、ポート内ではDボゥイがアキの両肩を掴んで詰め寄っている。アキはDボゥイの挙動がおかしいとは思っていたが、彼の必死さに動揺した。明らかにDボゥイは混乱していると言った状態だった。
事態を代弁するかの如くに、ペガスが電子音声でアキに言う。
「Dボゥイハ、ワタシデテックセットシマセン」
「まさか……!」
「そんな目で俺を見るな! クリスタルが無ければ、テッカマンにはなれないんだ!!」
 Dボゥイはアキから離れて、憐憫の眼で見られる事を拒否する。だが、アキは決意していた。記憶が無くなったとしても、そのフォローは自分達がすれば良いと。そして言った。
「あなたのクリスタルは、壊れてしまったの」
「な……何ぃっ!?」
「でも、クリスタルが無くても、ペガスがいればテックセット出来るのよ」
「……そんな事まで忘れてしまったのか……俺は……」
 アキが無骨な青いロボットを指差しながら言うと、Dボゥイは改めてこのロボットが自分に追従してきた事の意味を悟った。
「じゃあ! どうやるんだ! 教えてくれ! アキ!」
「そ……それは……」
――――このままテッカマンになれなければ……Dボゥイは……記憶の崩壊も今のままで……
「頼むアキ!! 俺はどんな事をしてでも、ラダムを倒さなければ!!」
 Dボゥイの懇願でアキは逡巡した。ポート内のスペースシップは破壊し尽くされて、ORSから月を目指す作戦は失敗していると言っても良かった。今ここでDボゥイを連れて撤退すると言う選択肢もあったからだ。
「テックセットはさせないっ!! 相羽タカヤのまま死ねぇっ!!」
 その時、閉じていた予備ハッチを打ち破って、ソードが再び迫る。Dボゥイ達の直ぐ傍に降り立つと、テックシレイラを振り下ろした。アキをどかして何とかその攻撃を避けるDボゥイだったが、無重力と言うハンデを抱えた彼はいつかその攻撃を喰らってしまうだろう。
 そうはさせまいとノアルとバルザックもポート内に入ってテッカマンソードを押さえ付けようとするが、高機動に翻弄され捕まえる事も侭ならない。 
「Dボゥイ! ……っく!」
 最早アキに迷う暇は無かった。ペガスの背部に回ると、膝の裏にあるパネルを開いてスイッチ類を押す。
「ペガス、私の声を登録して」
「トウロクシマシタ」
「ペガス! テックセッター!!」
「ラーサー!」
 ペガスがアキの声を受けて、Dボゥイをテッカマンへと変身させる為に飛び上がる。
本来テッククリスタルとは、テッカマンになった者のボイスキーにしか反応しない。フォーマットを受けていない者が幾らボイスキーを発しても通常ならテックセット待機状態にはならない。しかし、Dボゥイが何らかの要因で声を発せない場合、例えば音も伝わらない宇宙空間等と言った環境でボイスキーを入力できない状態に陥った時に備えて、ペガスには前以てDボゥイの音声を録音してあるのだ。
この機能を使って、アキは自分の音声を登録し、あたかもDボゥイがボイスキーを発した様にクリスタルを誤認させ、テックセットを行なわせたのである。
「ぐぉああっ!!」
 やっとソードを空中で捕まえ取り押さえようとしたノアルとバルザックだったが、ソードの膂力で即座に引き剥がされてしまう。跳ね飛ばされた二人は隔壁に叩きつけられ、一瞬呼吸が出来なくなる程の衝撃を受けた。
「ふっふ!! これで最後だブレード!!」
最早何の障害も無いソードは、一直線にDボゥイの元へ急降下してくる。が、それよりも僅か先にペガスがDボゥイへと飛来した。
「うぅっ!? しまった!!」
 Dボゥイは何をどうすれば良いのかまだ理解してはいないが、背部ハッチを開いたペガスを見て、吸い込まれる様に搭乗した。そしてペガスの頭部ハッチが開くと、テッカマンブレードが勢い良く射出され、スペースポート内の残骸へと降り立ち、叫ぶ様に名乗りをあげる!
テッカマン! ブレェードォッ!!」
「くっそぉ……」
 結局テッカマンソードはDボゥイがテックセットするのを阻止出来なかった。懐柔策など弄さなければ良かったと、彼女は激しく後悔していた。
「Dボゥイ……」
 そしてアキもまた、Dボゥイをテックセットさせた事を後悔している。今度はどんな言葉や記憶が無くなったのか。だが彼をテッカマンにしなければ、殺される事は必至だった。ベストな結果とは間違いなく言い難いが、ベターなであると言えるだろう。
 そしてテックセットを終えたテッカマンブレードは、煮えたぎる様な怒りを全身から発していた。
「俺のこの身体の中にあるのは……お前達ラダムへの、熱い憎しみだけだ!」
 燃え上がる怒りは、家族と言う言葉をソードが使った事に起因する。ラダムに取り込まれなければ義姉になったであろう、女性の声や姿を借りて自分を弄した事に怒り狂っていたのだ。
「見ろ! ソードォ!! うおおおぉぉぉぉっ!!」
 全身から吹き出る怒りのオーラが、フェルミオンの光となってテッカマンブレードを包んでいる。そしてブレードは一瞬にしてブラスター化への変身を遂げる。
「おのれぇ! ブレェードォ!!」
 白鳥の如き白い重装甲を前にして、テッカマンソードは雄叫びをあげながらブラスターテッカマンブレードに向かって突っ込んでいく。だが、その直前にブラスターブレードは超ボルテッカの発射体勢に移行した。ガシンと肘装甲と肩装甲が開き、反物質レセプターが顕わになると、フェルミオンの光が収束していく。
「おおおぉぉぉああぁあっ!!」
「させるかぁっ!!」
 例えブラスターテッカマンと言えど、ボルテッカを撃つ前は無防備なはずだ。発射される前にテックランサーで急所を一撃すれば、ブレードの構えは解けるとソードは思う。確かにソードの超速なら発射する前に一撃する事は可能だろう。だが彼女は、至近距離ボルテッカを跳ね除ける程の防御力を、ブラスターテッカマンが持っている事を知らない。その行為は殆ど自殺行為だと言えた。
――――逃げるのだ、ソード
「オメガ様!?」
一瞬、ソードはテッカマンオメガからの精神感応を受けた。
「おおぉぉぉああぁぁっ!! ボォルテッカァァァッ!!」
 その直後、ブレードの超ボルテッカが発射される。しかし撃つべき対象は直ぐ様、壊れたハッチから脱兎の如く逃避していた。そして行き場の無くなった超高密度のフェルミオンは、天蓋付近に直撃し、爆ぜた。
 そしてORSから超ボルテッカの光の奔流が迸る。それは、ノーマルテッカマンの一条の光線とは比べものにもならない。恐らく地上からも見える程の、凄まじいエネルギーだっただろう。
「な、なによぉっ! 今の!!」
「だ……第八スペースポートが……吹っ飛んだ!!」
「なんですってぇっ!?」
 その衝撃波は遠方にある中央コントロールルームにまで届き、それを受けてレビン達はうろたえた。
 そう、第八スペースポートと呼ばれた場所は、既に跡形も無い状態になっている。先程まであった天蓋が全て失われ、残骸が其処彼処に漂う。戦闘を行っていた四人は元スペースポートがあった場所にいるが、屋内だった其処は完全に屋外と化していた。
「一体どうしたのよみんなぁ! みんな無事ぃ!?」
「あぁ……無事だ……だが、第八スペースポートは……使用不能になっちまった……!」
 レビンの通信でバルザックが苦々しくそう応える。其処にいるノアルもバルザックも、遣る瀬無い気分に陥ってはいるが、かと言ってDボゥイを責める気にはならなかった。
スペースポートを利用して月へ行くと言う道は確かに閉ざされた事にはなったが、兎にも角にもORSからはラダムの勢力を撤退させたのは事実だった。
「ご苦労だった、ソード」
「オメガ様のお声が無ければ、危ない所でした」
 そして月の裏側にあるラダム母艦基地内のテッカマンオメガへの謁見の間では、人間の姿に戻ったフォンがオメガに対し頭を垂れている。オメガは、ORSが人類の手に戻った事を咎めると言う事は全く無い。つまり、計画は最終段階に入っていて、ORS利用価値は無いと彼らは判断している様だ。
「私とて、お前を失いたくは無い」
「ぁ……!」
 テッカマンオメガは、静かにフォンの身を案じる様に言う。その言葉に彼女は感激して、先程まで鬼女の様だった容貌が、恋をする乙女の様な笑顔に変貌している。
「よいか、ソード。私はラダムの母艦の最終調整のため、しばしの眠りにつく。その間の事は、お前に全て任せる」
 だが、彼らの逢瀬はその一瞬だけだった。オメガはラダムの総帥に戻り、フォンは彼の尖兵となる。巨大な体躯を包むマントの中ではどの様に足を動かしているのか窺い知れないが、テッカマンオメガは身を翻す様にして振り向くと、背後にある玉座とも言える中枢システムへと入り込んでいく。
「シンヤを……頼んだぞ?」
「あ……」
 フォンがその言葉を受け、頭を垂れながら明らかに沈んだ表情をした。彼の言う「頼む」と言う言葉が、ラダムの前線指揮官の立場にあるテッカマンエビルと言う男に対してなのか、親愛なる弟に対してなのかは窺い知れない。だが、どちらにせよフォンは自分の事よりエビルの身を案じているオメガに対して、失意に陥ったのだ。
「出してくれ……出してくれ……兄さん……」
 そしてテッカマンエビルであるシンヤは、叫ぶ程の体力を使い果たしたのか、まるで夢遊病の様に「出してくれ」を繰り返す。最早彼にはテッカマンブレードであるタカヤとの決着を付ける事、その一点に対してしか、何の興味も示さない様な状態に追い詰められていたのだった。
 そして残骸と化している第八スペースポートでは、ブラスター化を解いたテッカマンブレードが力尽きる様にして隔壁に寄り掛かり、何処を見るとも無く虚ろな眼差しをしている。
そんな彼の手を握りながら、アキは心配して声を掛けた。
「Dボゥイ……」
「アキ……俺は怖い……じわじわと自分の記憶が無くなっていく……今にラダムに対する憎しみまで、忘れてしまうかもしれない!」 
 力尽きたまま、ブレードは自分の不安をアキに吐露した。彼の不安な言葉は凶器の様な、歪な手を介してアキに響き渡っている。
「そして……アキの事も……!!」
「……っ!」
 ブレードはアキに向かって言った。仮面でその表情は見えないが、明らかに彼はアキに助けを請うている。
それを見て、アキは堪らなくなってブレードの姿のままのDボゥイに抱きつき涙した。Dボゥイは鎧越しではあったが、アキの身体の感触と彼女の温もりを確かに感じる。たったこれだけの事だったが、ブレードであるDボゥイは恐怖に怯えた心を、少なからず癒せたのであった。
 かくして、ORS奪回作戦は終了した。ラダムにしても人類にしても、両者共に最終目的を完遂する事は出来なかったと言える。だがしかし、未だ人類にラダムを攻撃する手段は無く、侵略者達が有利であると言えた。
 戦いは、最終局面に至ろうとしているのだった。