大学が展示場を持っている

グジャラート州の首都アーメーダバードで開催されているEngineering Expo 2012という工場設備機械の見本市を訪れました。会場はグジャラート大学のExhibition Hallだというので、キャンパスにあるでかい講堂のようなものを想像してでかけました。そしたら全然ちがいました。専用の駐車場や食堂もある本格的な展示場。これが大学の施設の一部とは驚きでした。


出展企業は200社くらいと中くらいの規模。平日の午後遅い時間なのですが来場者は少なく閑散とした感じ。今年1月にバンガロールで開催されていた工作機械見本市と比べるとマイナーな感じは否めませんでした。出展されているものは、機械部品、工具、ハンドツール、電源設備、ソフトウェアと少しバラバラな感じで、工場で使いそうなものを集めました、という展示会です。出展者たちはくつろいでいて出展者同士でにこやかに談笑している。会場の照明が明るいのでトロピカルな感じの展示会で日本の真面目なやつとの違いを感じました。



工作機械の展示会ではないので工作機械の展示数はすごく少なかったのですが、マシニングセンターを展示していたAutotechCNCというブースに立ち寄りました。応対してくれた営業マンはビシャル君といい今年7月に大学を出たばかりでこの会社に勤務して2ヵ月しかたっていない。入社して少し研修があってこの展示会がいわば営業デビュー戦。そして展示会初日の今日にもはや1台契約できたと、それを全くヨソモノの私に自慢げにしゃべってくる。この素朴さにつられて私も笑顔になりました。



インド人の平均年齢は27歳だそうです。ビシャル君のような元気な若者がいっぱいいるこのインド。やっぱりどんどん成長していく国だなと納得しました。

GEがインド風力発電企業に5千万ドル

風力発電機メーカーとしてインドで真っ先に名前があがるのはスズロンエナジー、でもインドには他にも有力な風力発電機メーカーがあります。


GEグループのGE Financial Servicesが、インドGreenkoグループの風力事業に5千万ドル投資すると発表されました。Greenkoグループはロンドン証券取引所が運営するAIM市場に上場している会社で、インド国内で水力発電所を7つ、バイオマス発電所を6つ、ガス/液体発電所1つなど、環境にやさしい電力事業に特化しています。


同社ホームページ ↓
http://www.greenkogroup.com/


今回GEが投資するのはGreenkoが設立したGreenko Wind Business Projectに対してで、GEのシェアは12.5%のマイナーシェアですが、これからますます拡大していくであろうインド国内の風力発電ビジネスへの入り口を作ったことになります。また、出資を受けるGreenkoは現金だけでなく、Greenko事業の将来性をインド国内に対してアピールできました。Greenkoにとってはすごく有利な条件での出資受入れです。


シーメンス、フィリップス、GEの世界の重電3社、それに日本から三菱重工日立製作所がインド国内の再生可能エネルギー事業に力を入れてきています。一方、インドの再生可能エネルギー企業がインド市場の世界から見た価値を知っており、インド企業に取って有利な資本事業提携を締結していくでしょう。私もインド企業と交渉する場面で、相手方がインド市場の価値をそれとなく示してこられるのに何度も遭遇しています。インド企業家、本当にたくましいです。

Economic Times の記事原文 ↓
http://articles.economictimes.indiatimes.com/2011-10-12/news/30267235_1_greenko-wind-farms-wind-turbines


***おまけ****
チェンナイのマリーナビーチで見かけた可愛らしいメリーゴーランドです。
木製の円盤の上に子供用自動車が乗せてあって、それを係の人が手で回転させる。
なんとものんびりした景色です。

グジャラート州に注目

国土面積329万平方キロ、人口12億人と、広さも人の数も日本の約10倍という巨大国家インド。その上、多民族、多言語の国であり、州が違えば国が違うのと同じと良く言われています。インド進出を考えた時、どの州に進出するかが大変重要です。


日系企業が現在最も進出しているのはデリー首都圏(Delhi NCT)/ハリヤナ(Haryana)州で、最近になって日系企業が急増しているのがタミルナードゥ(Tami Nadu)州です。

最近インド専門家のN氏と話していて、これからはグジャラート(Gujarat)州が有望だと意見が一致しました。グジャラート州有望であるという根拠は、


1)DMICの中心に位置する
DMICとはデリー・ムンバイ間産業大動脈構想(Delhi-Mumbai Industrial Corridor Project)という日本とインドが協力してデリーとムンバイの間に貨物専用鉄道を建設、民間資金を活用してその沿線地域に工業団地や物流基地を整備し、一大産業地域を形成しようというプロジェクトです。
下の地図はDMICプロジェクトの地図で、真ん中を走っている赤い線が貨物専用鉄道です。そして左側の青い斜線部分がグジャラート州です。この地図でわかるようにグジャラート州はプロジェクトの中心に位置し、尚且つ外洋にも面しており、輸出入に使える大きな港もあります。


2)州財政が豊かである
インドでは電力や水道は州政府が投資しています。州財政が豊かであれば電力や水道などのインフラは整ってくるということです。グジャラート州は黒字財政で、例えば昨年度は日本円にして1,000億円もの黒字を計上しています。赤字に悩む他州、例えばチェンナイのあるターミルナドゥ州は、過去何年も新規発電所が建設されていません。州政府が主体的にインフラ投資ができるグジャラート州の強みです。


元々、繊維、化学、製薬の企業がたくさん立地している州ですが、超低価格車で有名なタタ自動車のナノ生産工場が建設されています。GMは90年代に工場を操業開始、マルチスズキ(Maruti Suzuki)も新工場を同州に建設すると新聞発表しており、これから自動車を中心とした部品産業が勃興してくると思います。
上述したようにデリー首都圏/ハリヤナ州には日系企業328社が進出していて一番多く、タミールナドゥ州240社、マハーラシュトラ州198社の順番です。それらの州と比べると、グジャラート州は現時点では29社と日系企業には縁遠くなっていますが、今後増えていくと思います。


グジャラート州には一つ大きな欠点があります。インドを良く知っている人ならグジャラート州=「酒が飲めない州だね」と反応されます。州の法律で公共の場所での飲酒を制限しており、外国人の場合でも事前に飲酒チケットを取得しないと酒が飲めないところです。下戸の私にはさほど影響はありませんが、仕事の後のうまい酒を楽しみにしている人にはつらい場所かもしれません。

循環型農業に貢献する日本企業

日本に対して批判的な記事が多い人民網日本語版に、珍しく日系企業に対して好意的な記事が掲載されています。中国企業も見習うべきだとのニュアンスが記事にあり、他の日本企業の中国市場開拓のモデルになると感じました。


記事のタイトルは「5年間赤字続くも循環型農業に挑む日系企業 山東

記事本文はこちら→http://j.people.com.cn/94476/7437441.html


記事内容は山東朝日緑源農業高新技術有限公司という山東省にある日系企業が、化学肥料なし、農薬なし、除草をしない、というやり方で周囲の農家の半分の収獲量しかなく2006年の設立以来5年も赤字続き。だが、「安全」「安心」「高品質」を求める中国のハイエンド消費者に徐々に受け入れられているというもの。

この日系企業アサヒビール住友化学伊藤忠商事などが出資して2006年に設立された企業で、新しいコンセプトの農業を中国でやろうという企業です。


その新しい事業コンセプトは、

1.牛糞を用いた堆肥を利用して化学肥料などに頼らず地力を維持する循環型農業を実施します。
2.農民への農業指導、次世代の中国人農業指導者を育成します。
3.栽培から販売まで一貫したフードシステムを構築します。
4.安全・安心でおいしい農作物を中国で販売し中国の食生活工場に貢献します。


豊かになった中国が求めるものは日本と同じです。「安全」「安心」「高品質」で先行する日本のノウハウを使って中国市場を開拓していく山東朝日緑源農業高新技術有限公司の事業モデルは農業だけでなく、環境対策、老人介護、省エネルギーなどの他事業にも応用できると思います。

反ワイロのサイト-私はワイロを払いました

I PAID A BRIBE、直訳すると「私はワイロを払いました」という衝撃的な名前のWebサイトがインドにあります。


インドで商売をするには購買決定者に何がしかのお礼を渡すという習慣があるようで、近年は昔ほどひどくはないものの、相手によっては時々必要なことがあるようです。


この悪習に対して毅然と立ち向かっているのが、バンガロールの市民団体が運営するこのWebサイト。市民が自分の経験、「私はこんなワイロを払わされた」「私は拒否したからこんな目にあった」とかを匿名で記載しています。

下記のような話が毎日のように書かれています。

「私が空いた道をオートバイで60キロのスピードで走っていたら、警官が出てきてスピード違反だと止めました。警官が罰金は100ルピーだと言うのでその場で100ルピーを支払い、領収書を要求しました。すると警官は領収書が必要なら罰金は300ルピーだと・・・」

「税金還付請求書をバンガロール税務署に提出してから5年経ちます。その間、年に4回は手続きの状況をチェックをしに税務署に行っていますが、いまだに還付金2万ルピーは支払われません。私の友人は還付金の5%を担当者に払ったらすぐに還付された、と言っています・・・・」


インドはまだまだ後進国だね、と上から目線で感じる方もいるでしょうね。でもインドの悪習が少しずつなくなって来ているということや、このように堂々と役人の悪口を書けるという自由性に私は感心します。インドは世界最大の自由主義国家です。


***おまけ***

小さい列車を追いかける3匹の野良犬
世界遺産の島、エレファンタ島の光景です

努力が報われる国ーインド

最近訪問したインドの中小製造業3社に共通したことがあります。
簡単に言えば、「汚い狭い工場で、少量品を作っているが、若い経営者はやる気満々で働き者で業績好調」ということです。


共通点1:工場アパートの中に会社を構えている

工場ばかりが入居している工場アパートに3社とも入っています。日本でも中小製造業が集積している東大阪大田区に小規模工場のための工場長屋があります。でもインドのそれはビルの外観も内装も”汚い”、日本とはメンテナンスに対する基本的な考えが違います。工場ビルの1室のサイズは様々でしたが、一番小さかったのは1室が6畳くらいのもの、でもそこに入居している訪問した会社は1社で6室を使っていました。


共通点2:少量多品種製品を製造している企業である。
3社ともお客様から仕様や図面をいただいて、お客様仕様に沿った部品や製品を製作しています。1図面1個の製品が多いようでした。大量生産品と違い1個を生産するのにものすごく手間がかかりますがその分付加価値が高い製品を作っておられます。


共通点3:若手経営者が会社を引っ張っている。
3社とも20代、30代の若手経営者が実質会社を引っ張っています。その内、1社は若手経営者自身が創業した会社、2社は2代目で創業者である父親が社長だが実際は若手経営者がバリバリ会社経営をやっています。

左写真の右端のラビさんは24歳、大学で機械工学を勉強した後MBAコースを卒業したばかり。お父さんが創業した会社の営業を担当しており、将来は自社製品を海外に販売していきたいとおっしゃっていました。従業員10人と小規模ですが、業績は絶好調で近々24時間操業体制にするそうです。

右写真のヒゲのいかついジェイエッシュさんはお父さんが創業した会社に入って約10年。肩書はまだですが、実際は社長として活躍されています。給料の額までお聞きしましたが日本の大企業の役員なみの給与で、物価の安いインドではびっくりするような金額です。


お会いした3人の若手経営者はみんな朝早くから夜遅くまで働いておられます。勿論、日本の若手経営者も頑張っている方多いですが、大きな違いは「今のインドでは、頑張った分だけ会社が成長する」ということです。経済が右肩上がりで急成長しているインドでは努力が何倍にもなって返ってきます。インドに進出されている日本企業の方も同じ感覚をお持ちの方が多いですね。昭和40年〜50年代の日本の姿が今のインドにあるなぁ。

「インドでは努力は報われる」

300ドル(=24,000円)で家を建てる

インドの方とメイドインジャパン製品について話していると「日本製品の品質は優れているのはわかっているが価格が高い」と良く言われます。逆を言えば、価格をある程度あわせていけば、日本品質のメリットがあるので巨大なインド市場で大きく販売することができます。例えば自動車でいえば、先駆者であるスズキは勿論、トヨタETIOS、ホンダHNSC、日産MICRAとインド市場に合わせた小型モデルを販売する方向です。タタ自動車のナノは当初10万ルピー(約20万円)で販売すると発表して世界を驚かせました。結局現在はその倍の20万ルピーで販売していますが、それでも圧倒的な安さであることには変わりなく、ここに来て販売台数が急増しています。

ナノは自動車ディーラー以外にビッグバザールというスーパーでも上の写真のように販売されています。ビッグバザールは全インドに100店以上展開している中流向けスーパーです。今まで2輪車を乗っている人たちの4輪車へのエントリーカーとしての需要があります。


このブログで以前伝えた教育機関向けの3,000円パソコン開発など、びっくりするような安い価格をまずはブチあげて開発を行っていくというやり方です。


次は家を300ドル、即ち、日本円で24,000円で作ろうというコンテストが発表され話題を呼んでいます。インド国内というよりもアメリカのHarvard Business ReviewのWebサイトを通じて募集されたコンテストで、優勝者には25,000ドルの賞金が与えられます。
このコンテストの中心となっているのが、ハーバード大学のインド人教授であるVijay Govindarajan氏です。


上は応募作品の一つ、全世界から約300点の応募があった。

貧富の差の激しいインドでは投資用にたくさんの住宅を保有する金持ちもいれば、田舎から出てきてものの働き場がなく家族そろって路上生活を余儀なくしている貧しい人々もたくさんいます。この300ドルハウスは貧しい人たちが住む場所を得ることにつながります。
いかに安い材料を使って部材を量産しようとも、300ドルのコストで家を建てるのは至難だと私は思います。でもナノでも当初は夢の夢という批評だったものが、価格を倍にしながらも圧倒的な廉価で市場に出てきて、販売を伸ばしてきています。ローコストハウスも様々な変遷を経て実現されていくような気がします。何故ならば、そこに大きな需要があるからです。