王佐の才

2か月に1回のペースでしか更新しないブログに意味あるの?と我ながら思うが、跋文を思い付くまでは終わらない。

江戸時代の儒者伊藤仁斎孔明論について。

『古学先生文集』巻6「読諸葛孔明伝」


或問曰,宋諸儒以諸葛孔明爲王佐之才,然乎。
曰,非也。孔明覇者之臣耳。
何以知之。
曰,以其言與學而知之。孔明嘗在隆中,自比管仲樂毅而勸後主讀韓非之書。
其學出於申韓刑名法術之流。此豈非覇者之臣耶。
(中略)
然則子能爲孔明之事乎。
曰,人各其才學,各有其所得。
不能孔明孔明不能爲我。
然則子之術可得而聞乎。
曰,可也。古之宰相有曰,以半部論語治天下者。我亦以孟子梁惠王一篇治天下乎。

孔明が王佐の才を有しているかについての問答。
孔明の言動に法家の影響がみられるから孔明は覇者の臣であって王佐の才を有しない、という趣旨である。
江戸期には朱子学が官学とされ、孔明が忠義を尽くす王佐の才であったとする朱熹の見解は日本での通説になった。一方、伊藤仁斎古義学に立脚して朱子学孔明観を批判した。
このことについてはすでにいくつかの先行研究がある。以下は私見

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眠気覚ましの方法

●首にロープを掛ける

http://d.hatena.ne.jp/chincho/20100203/1265208317
チョークスリーパーが極まると永久に寝てしまう諸刃の剣


項羽本紀を読む

明・王世貞 『読書後』 巻1 書項羽傳後


吾少時閲書至夜分而困欲寐,輒取項羽傳誦之,即灑然醒。以為非羽不能發太史公筆,非太史公無以寫羽生氣。…

人を眠らせない文章、人の筆を走らせる人生っていいよな


●兄貴の嫁さん達と同宿する

三国演義』 第25回 屯土山關公約三事 救白馬曹操解重圍


(曹)操欲亂其君臣之禮,使關公與二嫂共處一室。關公乃秉燭立於戸外,自夜達旦,毫無倦色。操見公如此,愈加敬服。…

モラルと理性のある人向け

ゲームレビュー

今年最後のエントリ(予定)。久々にゲームを買った。
すでにネット上ではクソゲーと断じる手厳しい意見もある。また、「マップが一本道」とか「戦闘が単調」とか「グラフィックの進歩に頼り過ぎ」とか批判する余地もあるかもしれない。
しかし、僕がプレイした限りでは十分に楽しめた。

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カラスコ

少し前にNHKでやってた話題を敷衍してみる。

伊達政宗は師匠の虎哉宗乙から後唐の李克用の故事を学んだとされる。よく知られた話だがおおもとの原拠を確認しておくと

『旧五代史』唐書一 武皇本紀上


是時,武皇既收長安,軍勢甚雄,諸侯之師皆畏之.武皇一目微眇,故其時號為「獨眼龍」.

とある。
政宗の軍勢の黒備えも李克用に倣ったものである。黒は五行説で北方の神・玄武を指し、李克用も政宗も北の覇者たらんとする気概を示したものである。
そして、李克用の黒備えの様子は

『旧五代史』武皇本紀上


及武皇將至,賊帥相謂曰:「鴉兒軍至,當避其鋒.」

というものである。

その番組にも出演されていた東北大の山田勝芳先生にはこういう論文がある。いつか読んでみたい。

もらいもので遊ぶ

廃棄処分になるはずだった中古のノートPCをもらった。

9年モノのDynaBook Satellite 2250 SA60C/4、モバセレ600Mhz・RAM64MB・Windows98SE入り。
メモリ増設・HDDからCFカードへの換装・Linux導入という中古パソコン復帰の常套手段をありあわせのものでやってみる。

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パリーグの覇者

大航海で有名な明の鄭和について、同時代人の袁忠徹は次のように述べている。

『古今識鑒』 巻8

身長九尺,腰大十圍,四岳峻而鼻小,法反此者極貴,眉目分明,耳白過面,齒如編貝,行如虎步,聲音洪亮…

身長180cm、腰まわり150cm、顔は方形、鼻は小さいが、貴相、眉目秀麗、耳は白くて長く、歯は貝の如く、歩く姿は虎の如く、声言は亮々、ということである(陳舜臣氏『中国傑物伝』による訳出)*1。付言するなら、「眉目分明」はクッキリした眉目でイケメンのパーツというべきだろう。「編貝」は白く整った歯並びを表し、「行如虎步」とは動作に野性的な力強さと俊敏さがあること、「聲音洪亮」とは声が朗々と響くことだろう。
これを現代人に例えるなら、ダルビッシュの眉目、小谷野の輪郭、ヒメネスの体躯、新庄の歯、稲葉の動き、多田野の声、が一個の人格に集約されたものといえよう。大耳手長とか碧眼紫髯すらかすんでしまう非凡さ、ひとり日ハム状態である。

まあ、日ハム乙ということ。

*1:なんで陳さんの本に拠ったかというと、身長が七尺になってるテキストがあるらしくて、テキスト選択の責任を回避したかったから。さすがに140cmということは無いと思うけど。というか明代の度量衡じたい錯綜してるらしくてよくわからん