光だけで動くモーター

光だけで動くモーター開発 樹脂ベルトの伸縮で駆動
http://www.47news.jp/CN/200807/CN2008071901000456.html

 光を当てるとプラスチックのベルトが伸縮して車輪を回す。そんな世界初の
モーターを東京工業大資源化学研究所(横浜市緑区)の池田富樹教授(高分子
化学)と山田宗紀研究員らが開発した。ドイツ化学会誌に19日までに発表した。
 光のエネルギーを電気に変えて利用する太陽電池とは違い、光を動力に直接
変えるため、太陽エネルギーを効率よく利用する未来の動力源として期待できそうだ。
 池田教授らは2003年、アゾベンゼンという物質を主成分とするプラスチックが
紫外線を当てると縮み、可視光を当てると元に戻ることを発見。当初は高温で
ないと変形しなかったが、成分を変え、室温でも変形させることに成功した。
 池田教授は「光エネルギーの変換効率はまだ低いが、高くできる可能性はある。
プラスチックだけの車をつくるのも夢ではない」と話している。

車のような大きなものを作るよりも、ふつうのモーターが使えなそうな状況
(すごく小さくする必要があるとか、体内なので配線できないとか)で威力を
発揮しそうですね。

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人間の身体をラマン分光で画像化

体内の分子が1000倍拡大できる新画像化技術、完成
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2373333/2798837

  人間の体内にある分子を1000倍に拡大して画像化できる新技術を開発したこ
とを、米国の研究チームが3月31日発表した。微小な腫瘍(しゅよう)の発見
に役立つことが期待されている。
 これは「ラマン分光法」という組織や体を傷つけないこの分子画像化システ
ムを用いた技術で、物質にレーザのような単色光を照射し、散乱される光を分
光器に通して観測すると、その物質特有のスペクトルが得られ、物質の分子の
構成物や構造が特定できる。
 米スタンフォード大学医学部(Stanford University School of Medicine)
のSanjiv Sam Gambhir氏率いる研究チームによると、この手法が人体内部の画
像を得るために用いられるのは初めてのはずだという。
 Gambhir氏は「通常1度に観測できるのは1つか2つの分子だけだが、このシス
テムでは10、20、30の分子を同時に観測できるようだ」としている。さらに、
このシグナルによって、分子が体内のどこにあるかも特定できるという。
 この技術によって得られる画像は非常に繊細で、微小ながん組織の発見にも
役立つため、その除去手術への活用も期待できるという。マウスを使った最初
の試験はすでに実施され、次は人間での臨床試験が計画されている。

ラマン散乱はとても効率が低い(10-30 cm2から10-35 cm2 (注1))ので強い光を
用いる必要があり、そうすると測定対象が壊れてしまうと思っていましたが、
人間の身体に対して適用できるようになったのですね。


(注1)

不確定性限界に迫る超高速時間分解ラマン分光
http://www.chem.s.u-tokyo.ac.jp/users/struct/current/asakura.html

ラマン分光に必要なレーザー光の条件についても述べられています。

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重い原子の方が摩擦が大きい

ナノスケールでの「摩擦」研究:「重い原子」で摩擦が軽減
http://wiredvision.jp/news/200711/2007112720.html

  摩擦がどういうものかは誰でも知っているだろう。2つの物をこすり合わせ
ると、材質によって度合いは異なるものの、互いが軽く密着する。だからこそ、
地面が凍っていたり、おっちょこちょいでバナナの皮を踏んだりしない限り、
歩道でさほど足を滑らせないですむ。
  簡単な話だ。ただし原子レベルでは、摩擦の物理モデルはまだまだ改良の余
地がある。原子レベルでは、原子どうしのすき間が(比較的)大きいのだ。
  ほとんどの物理モデルは、物質の表面を比較的すき間のない平滑な面ととら
えている。ナノの世界に突入するまでは、それでほぼ問題がない。
  ところがペンシルベニア大学等の研究者たちは、原子レベルで摩擦の興味深
い特性を発見した。これにより、摩擦を大きくしたり小さくしたりするための
材料を改良できるかもしれない。
  研究チームが発見したのは、素材の表面を比較的重い原子で構成すれば摩擦
を小さくできるということだ。研究チームによると、重い原子ほど振動数が低
いため、摩擦によって失われるエネルギーが少ないという。
  研究チームは原子間力顕微鏡を用い、ダイヤモンドとシリコン結晶でできた
表面の摩擦をそれぞれ測定した。
  原子間力顕微鏡には非常に小さな探針が付いており、それでいわばレコード
針のように試料の表面を引っかいて特性を調べる。それぞれの材料は吸着剤で
薄くコーティングされた。吸着剤には水素原子か重水素のどちらかが使われた。
重水素は、原子核中性子を持つ水素原子だ。
  測定の結果、重水素を塗布した表面のほうが、熱の形で失われるエネルギー
が少なかった。重水素のほうが振動数が小さいためと推測されている。つまり、
水素より重水素のほうが探針の原子とぶつかることが少なく、その結果、運動
エネルギーの損失も小さかったと、研究チームは論文に書いている。
  機械の熱の発生や摩耗を抑えたいと考えている生産技術者にとって、この発
見は有益かもしれないと研究チームは期待している。あるいは、自動車のクラッ
チなどで、摩耗を増やさずに摩擦だけを大きくしたい場合にも役立つだろう。
  ただし、研究チームによると、原子の振動の仕組みを厳密に解明するにはま
だまだ研究が必要だという。
  論文は、『Science』誌の11月2日号に掲載されている。

同じ種類の元素だったら重い方が摩擦が大きいんですね。
他の種類の元素同士を比べたらどうなるんでしょうね?
電子状態の違いとか影響があるのかな。

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アリは5000万年前から農業をしている?

アリが農業を始めたのは今から5000万年前、米研究者
http://www.technobahn.com/news/2008/200803261901.html

  DNAを使った調査により農業を行っているアリの祖先は、今から5000万年前
の新生代まで遡ることができることが25日、米国科学アカデミー紀要(PNAS)
に掲載された論文によって明らかとなった。
 この研究を行ったのは米スミソニアン自然史博物館(Smithsonian National
Museum of Natural History)のテッド・シュルツとショーン・ブラッディー
の2名の研究者。
 両研究者はDNAを調べることにより、現在、農業を行っているアリの祖先を
系統的に遡っていく方法で、アリの祖先がどの位前に農業を開始したのかを調
査。その結果、少なくとも2500万年前には現在の「ハキリアリ(葉切りアリ)」
が農業を開始していたことが、また、アリによる農業の起源は5000年位前まで
遡ることができるということが判ったと述べている。
 ハキリアリは植物の葉を自分の歯を使って上手く切断して自分の巣まで持ち
帰ることが知られている。しかし、その葉は食料にするためではなく、巣に持
ち帰ってきた葉を使って菌糸類(キノコ)を育てることが目的。そのため、ハ
キリアリは農業アリ(Farming Ant)とも呼ばれている。
 これまで人間以外の動物で農業を行っていることが確認されたのは、アリ、
シロアリとキクイムシだけ。
 アリが少なくとも2500万年前から農業を始めていたとすると、アリの農業の
起源は人間よりも大幅に古いということになる。

昔のアリがハキリアリ特有の DNA を持っていたということはこの結果から
言えますが、このアリも農業を行っていたかどうかは疑問です。
例えばイモを洗うサルが知られています(注1)が、このサルはこれまでと
DNA は全く変わっていないのにある日イモを洗い始めたようですし。


(注1)

百匹目の猿現象 発祥の地 記念碑
http://www.kushima.co.jp/sight/koujima/kinenhi/

宮崎県串間市幸島の1匹のサルが芋を洗い始め、それが他の猿に定着した後、
大分・高崎山でも芋洗いの行動が始まり広がっていきました。

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睡眠不足だと太る? 太ってるから睡眠不足?

“睡眠不足は肥満のもと”5時間未満だと1・4倍に
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080312-OYT1T00590.htm

 睡眠時間が短いと肥満や糖尿病などの生活習慣病になりやすいことを、日本
大学の兼板佳孝講師(公衆衛生学)らが大規模調査で明らかにし、12日、発
表した。
 兼板講師らは、地方公務員2万1693人に、1999年と2006年に睡
眠時間などを尋ね、両時点での健康診断データと比較した。
 その結果、いずれの時点でも睡眠時間が5時間未満の場合、5時間以上に比
べて肥満の人が約1・4倍であることがわかった。逆に、99年で肥満の人は
06年に睡眠時間が短くなっている傾向があり、肥満と短時間睡眠が悪循環の
関係になっていることがうかがわれた。
 また、高血糖には睡眠時間が5時間未満の方が約1・3倍なりやすく、99
年時点では5時間以上寝ていたのに、06年時点で5時間未満に睡眠時間が減
少した人は、中性脂肪の数値が高い状態に約1・4倍なりやすいことがわかっ
た。
 兼板講師は「生活習慣病の予防に向け、食事や運動などだけでなく睡眠も重
視していく必要がある」と話している。

この記事だと、「睡眠時間が短い(原因)」→「肥満、糖尿病(結果)」という風に
書かれています。しかし、「肥満や糖尿病になるような身体の不調がある(原因)」
→「睡眠時間が短い(結果)」という可能性もあるわけで。この記事の言うように
睡眠時間を長くしても肥満や糖尿病が予防できるとは限らないのでは?

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暗めの室内でも使える可視光応答型光触媒

200ルクスの室内で使える可視光応答型光触媒東芝マテリアルが開発
――ガス分解性能は従来の30倍以上
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080305/148513/?ST=nano

 東芝マテリアルは,室内などの低照度環境で従来の酸化チタン系光触媒の30
倍以上という高いガス分解性能を示す可視光応答型光触媒を開発した(図)。
新しい光触媒は酸化チタン系とは別の酸化物の複合材。100nm以下の微粒子に
する加工技術や表面ナノ構造の最適化技術,ナノスケールの原子配置に着目し
た活性化処理などを駆使することで光吸収帯域の範囲を広げ,200ルクス以下
の可視光で高いガス分解性能や抗菌作用を発揮させることに成功した。低照度
環境に適用可能な可視光応答型光触媒は「世界で初めて」(同社)。 
 従来の光触媒の主流は紫外光で反応する酸化チタン系で,
	:
室内での利用を目的に開発された酸化チタン系可視光応答型光触媒もあるが,
十分な反応を起こすには6000ルクス以上の照度が必要で,実際の室内光の低照
度環境では思うような効果が得られなかった。 

光触媒は可視光で200ルクスでも使えるというところまで来たんですね。

明るさの目安 ルクス
http://ameblo.jp/tcare/entry-10063669666.html

によると会議室や事務室で200〜750ルクスなので一般的な部屋には十分な
ようです。別の酸化物って何を使っているのかな。

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単層カーボンナノチューブを金属型と半導体型に分ける技術

SWCNT:金属型と半導体型の効率的な分離法を開発
http://mainichi.jp/select/science/news/20080227k0000m040036000c.html

 産業技術総合研究所茨城県つくば市)は26日、単層カーボンナノチュー
ブ(SWCNT)の製造段階で、1対2の割合でできる金属型と半導体型につ
いて、従来より容易に短時間で分離する方法を開発したと発表した。効率的な
分離法の開発は、SWCNTの実用化へ向けた大きな課題だった。
 SWCNTは炭素原子が六角形に連なった直径0.7〜4ナノメートル(ナ
ノは10億分の1)程度の筒。軽量で強い新素材で、金属型は太陽電池や液晶
ディスプレーなどに使う透明導電膜の材料など、半導体型はナノサイズの半導
体などへの応用が期待されている。
 産総研ナノテクノロジー研究部門の研究グループは、SWCNTの水溶液を
作成。分子レベルの細かな網目構造を持つゲル状物質の中に閉じ込めて電気を
流したところ、電気によって動きやすい金属型のSWCNTだけがゲルから飛
び出し、30分ほどで分離に成功した。遠心分離器を使う従来の方法は、12
時間もかかるという。
 グループの田中丈士研究員は「原理が分からない部分が残るが、原理の解明
と、さらに効率的な分離法の開発を進めたい」と話している。【石塚孝志】

以下はより詳しい解説です。

金属型と半導体型のカーボンナノチューブを高い回収率で分離
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2008/pr20080226/pr20080226.html

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」
という)ナノテクノロジー研究部門【研究部門長 横山 浩】自己組織エレクト
ロニクスグループ 片浦 弘道 研究グループ長、田中 丈士 研究員は、ゲル電
気泳動の手法を用いて、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を金属型SWCNTと
半導体型SWCNTに簡便に分離することに成功した。
	:
  今回、産総研は、アガロースゲル電気泳動法を用いることで、簡便に金属型
と半導体型のSWCNTを分離できることを世界に先駆けて発見した。特に、SWCNT
を前もってゲルに閉じこめた状態で電気泳動を行うという手法を開発し、ほぼ
全てのSWCNTを金属型と半導体型に分離することができた(図1)。
	:
 回収率の向上のため様々な条件での分離精製を検討して、SWCNTを水溶液試
料とするのではなく、あらかじめSWCNTを分散状態で含ませたゲル(SWCNT分散
ゲル)を調製し、その試料に対して電気泳動を行うと分離効率が劇的に改善さ
れることを発見した(図1)。つまり、SWCNT分散ゲルに対して電気泳動を行う
と、金属型SWCNTだけが移動して、はじめに含まれていたゲル部分から抜け出
すが、半導体型SWCNTは、最初の試料位置から移動しないという現象が起った。
結果として電気泳動に使用した試料のほぼすべてを金属型と半導体型に分離す
ることが可能となった。通常のゲル電気泳動では分子量や長さの違いにより試
料が分離されるが、SWCNTに見られる現象は全く異なる原理によるものと考え
られる。
 さらに、平均直径や直径分布の異なるSWCNT試料について、SWCNT分散ゲルを
用いた電気泳動による分離を行なった(図3)。これらの場合でも金属型と半
導体型のSWCNTに分離することができ、直径分布に対応した異なる色調をしめ
すSWCNTを得ることができた。このことは、金属型と半導体型の分離が、様々
な種類のSWCNTに対しても有効であり、この手法の汎用性が高いことを示して
いる。

アガロースゲル(寒天)を使っているんですね。
通常の方法で水溶液で電気泳動を行うと回収率は10%以下だそうですが、
ゲルにあらかじめ SWCNT を閉じ込めておくのがポイントのようです。
この方法だと大量に処理できますね。

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