富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

水戸市名誉市民

辰年三月十五日。気温摂氏13.7/20.5度。曇。春の朧月も十三夜に少し眺めただけ。

今月17日深夜(日付は18日)のNHKラヂオ深夜便(深夜便アーカイブス)で昨年12月末放送の俳優・三上博史の回再放送のところ当日は豊後水道での地震あり。緊急放送で、この放送予定が飛んで三上博史芸談を聞く機会逸したが同番組がYouTubeにあつた。

三上博史「寺山修司さんからの贈りもの」NHKラジオ深夜便 - YouTube

「写真は無垢に見えるが自分からみると当時がいちばんズル賢かつた」と三上博史。高校1年(神奈川県立多摩高校)のとき寺山修司の誘ひで映画(草迷宮)に出演するが本人には「エリートとしての将来」を確信してゐて遊びのつもりで映画に一度出て済ますつもりだつたさう。自分はエリートといふ自覚があり学業に戻つてみると寺山の映画の世界に改めて惹かれて……といふ話から始まる。寺山、大島渚に可愛がられるとは。三上博史は今年1月の自主ステージ(紀伊國屋ホール)あり、この昨年末のラジオ出演のタイミングも舞台の宣伝であつたか。

三上博史 歌劇〉寺山修司没後40年記念公演

紀伊国屋ホールは開場60周年の由。昭和40年あたりの新宿に戻れるのなら戻つて清く、美しく日々を過ごせたら。

JAFの機関誌(JAF Mate)はいつからだつたか季刊になつたが松任谷正隆さんの随筆(車のある風景)はあのテイストで快調にずっと続いてゐる。そのエッセイ(2024年春号)で松任谷さんが自動車免許の高齢者講習を受けたことを書いてゐた。昭和26年生まれと思へば、もうさういふ年齢なのは驚くことではないのだけれど。

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名誉市民にずらりと並ぶ元市長 水戸市7人中6人「市の発展尽力」:朝日新聞

市長以外で唯一、水戸市名誉市民に選ばれたのは水戸芸術館初代館長の吉田秀和お一人。吉田先生を胸像にしたらさぞやご立派なはずだが吉田先生(鎌倉市民)の胸像はなく名誉市民認定のレリーフのみ展示あり(吉田先生を水戸に招いた佐川一信元市長の向かつて右隣り)

8人目の名誉市民も市長が選ばれ胸像として飾られるのだろうか。現職の高橋靖市長は市長経験者が引退後に名誉市民に選ばれてきたのは「不文律の慣例」と認めたうえで「(私は)名誉市民になるつもりはない。次の市長にはこの慣例をやめるよう引き継ぎ私が選ばれてもお断りします」と話した。

歴代の市長=名誉市民で直近の存命の二人は現職のこの「自らは名誉市民にならぬ」コメントは聞いて不愉快なことだらう。現職が市長になつてから二人が名誉市民に選ばれたのだから。先々代は市長退任後に参院議員になつたため後任(先代)が先に名誉市民となり、先々代は前回の参院選を機に引退で晴れて?名誉市民に(その参院選での自民党議席の後任が先代市長の倅である)。

かみね動物園

辰年三月十四日。気温摂氏13.1/20.0度。薄曇。一昨晩、常磐線特急で棚に買物袋(上野道明)置き忘れ列車は高萩行きで当駅で荷物は無事に保管され本日その受取りのために高萩へ。鉄道でいけばもしかすると高萩駅から出なければ水戸駅の入場料金だけで誤魔化せたのかもしれない。だが自動車で常磐道を下る。高萩は父方の叔母が住まひ昨年一月末に亡くなつた叔父の墓参りをしてから高萩駅。10:40ころに高萩駅に到着したが改札は11時まで無人……特急が停まるどころか特急の始発/終点もある駅で無人駅ではいのだが改札窓口が開く時間が限定とは。

駅の情報(高萩駅):JR東日本

駅員が3名で1年365日昼夜問はずで連日当番を回さないといけないのならわかる。だが11時の改札再開で事務所内に3人の職員。なぜかうなるのかしら。働き方改革?とは思へず。改札再開までの時間、暇潰しに張り紙など見てゐたらこんなアプリあり。

エキタグ | デジタル駅スタンプアプリ

これを水戸駅とか見たこともあつたが、どうせ子どもだましのキャラスタンプだと思つて関心もなかつたが実は正規の鉄道駅スタンプと同じ意匠のスタンプのデジタル版。早速それを下戴して使つてみる。駅スタンプをゲットするだけではなく自分の好きな写真にそのスタンプを押すことも可能。早速駅前で撮影した長久保赤水(高萩市HP)の記念碑画像に高萩駅スタンプを押してみる。するとスタンプが常に左下であることがわかる。赤水先生像の左下にあつた「赤水圖」と呼ばれる日本地図がスタンプで隠れてしまつた。 


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高萩駅で無事に忘れ物受け取り日立へ。

日立市かみね動物園|日立市HP

2年前だかこの動物園の入場券入手したまゝになつてゐて動物園好きの家人から「どうせならこの機会に」と提案ありアタシにとつては半世紀どころぢゃない再訪。平地の小さい日立市街の西の山間にある神峰公園の一部が動物園。夏にナイトサファリも評判だが疫禍でそれも取り消され訪れる機会を逸してゐた。f:id:fookpaktsuen:20240422213357j:image

日立市は戦後、日立製作所とともに発展を遂げたが(人口も県庁所在地の水戸市を抜いて20数万人であつた)俄かな工業都市で市民への娯楽提供も急務で昭和32年に開園。


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昔の印象に比べると動物にも優しい環境となり動物の展示から動物と触れ合ふ、至近距離での動物の生態観察へと眼差しも変はつてゐた。


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午後に入園したが動物への餌やり(もぐ/\タイム)もありカバ、チンパンジーの餌やりを見学のあとカピバラ、エゾヒグマの餌やりも実体験。


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公営の動物園で日立市の人口減少もあるし娯楽多様化で動物園の入場者数など減少で赤字なのかもしれないが最近でも園内の一番奥にライオンやトラ、ジャガーなど飼育する「がおーこく」なども新設で前向きな施設拡充。園内の説明や案内などの表示も檻を不動産物件の案内に見立てて間取りや家賃表示や手書きで面白可笑しい情報など飼育員のアイデアがあちこちにあふれてゐる。


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動物園なんて日本に戻つてからは3年前に東武動物公園に行つて以来。海外でもあちこちで動物園を訪れたが最後は2017年に春にドバイ動物園、秋に紐育のセントラルパークに動物園訪れたのが最後であつた。

台湾の少年(來自清水的孩子)

辰年三月十四日。気温摂氏13.1/20.0度。曇。先日、柯宗明『陳澄波を探して - 消された台湾画家の謎』(岩波書店)を読んで岩波から台湾モノでは『台湾の少年』といふ作品も上梓されてゐるのは知つた。

本書の主人公、蔡焜霖は、1930年、日本統治時代の台湾に生まれる。読書が好きで成績優秀な子どもであり、教育者になることを夢見ていたが、少年時代は戦争の色濃い時代でもあった。終戦後、国民党政権が台湾に移ってからは北京語を改めて学び、高校卒業後は町役場に勤めるのだが、ある日憲兵が訪ねてきて……。日本統治時代から戒厳令下の時代、民主化を経て現代まで、時代の荒波に揉まれたある非凡な個人の歴史からたどる台湾現代史全4巻。

蔡焜霖(1930~2023)の数奇な生涯を描く。原題は『來自清水的孩子』。この「前書き」で何となく何が起きたか、はわかる気がして全4巻といふ大きさにすぐに食指伸びずにゐたのだが家人が市立図書館の開架にあつて借りてきて読み始めたといふ。すぐに第1巻の半分ほど読んでしまつたといふので驚いたら、これは漫画なのだつた。

『台湾の少年』第1「 統治時代生まれ」歴史グラフィックノベル『台湾の少年』(全4巻) | 岩波書店

それなら一気にいけるか、と通読。戦前の台湾で日本の教育を受けた世代。15歳で敗戦である。大日本帝国の解体で日本の植民地といふ状況から解放されたのだが中華民国による統治が悪夢となる。

李登輝さんの民主改革はぼくにあることを教えてくれました大切なのは革命そのものではなく平和裏に行われる改革なんです。それは会社も国家も同じで、それこそが正しい道なんです。(蔡焜霖)

李登輝総統は蔡さんより7歳上。李登輝も国民党の台湾統治でかなり危ない状況にあつたが蒋経国の寵愛を受け、その庇護下にあり農政の学者が欽定で55歳に台北市長に抜擢され副総統から経国逝去で総統に、といふ、こちらもかなり数奇な生涯である。この『台湾の少年』のなかにも戦後の台湾の民主化にあたり台湾基督長老教会の1970年代に果たした役割についての記述あり。李登輝が同教会の信者。神の僕となる登輝の基督教入信が1961年で蒋経国から直々の勧誘で国民党入党(事実上の政治的転向である)が1971年。

「台湾の少年」のモデル蔡焜霖さん死去 戒厳令下「パーマン」を紹介:朝日新聞

この全4巻で各巻に(第3巻は不明)別冊の解説あり。第4巻の解説は

鈴木賢明治大学法学部教授/台湾大学法律学客員教授による〈「台湾人は親日」は本当か〉で、これがとても考へさせられる内容であつた。

日本にとる台湾統治が台湾にある種の「近代」をもたらしたとしても、それはあくまでも日本のために行った植民地統治による反射的利益、つまり「おまけ」のようなものに過ぎません。そのようなものを日本人が誇らしげに、恩着せがましく語るのは傲慢だし、差別を受けていた台湾人に対しては実に無礼なことだと感じます。

御意。自民党の親台派のオヤヂ連中、それは市町村の首長、議員レベルまで一木一草に宿るところ(下草ほどそれがひどい)の“I❤️Taiwan”のあの心意気。何とも呆れる以外の何ものでもない。その阿呆どもを議員にしてゐるのが我々なのである。南無阿弥。

台湾の少年(全4巻セット)

友枝雄人シテ〈三輪〉神遊@国立能楽堂

辰年三月十二日。気温摂氏8.7/24.6度。晴のち曇。神田淡路町で散髪(The Gollum)ののち新お茶の水→湯島で上野池之端組紐道明〉へ。誂へた蝶ネクタイと懐中時計紐(銀鼠色)の受け取り。不忍池の辺りに出るとまことに暑い。東京の最高気温26.1度。湖畔でかなり良い調子で飲んでゐるオヤヂたちのなかに超ミニのワンピースで肢体も露はな女装さんがゐるのはやはり場所柄(上野オークラ特選劇場近く)。


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千駄ヶ谷国立能楽堂喜多流。シテ友枝雄人〈三輪〉で「神遊かみあそび」の小書き。村上湛君の解説あり。近代の国家神道といふ虚構、神社本庁には叱られるだらう、とんでもない邪論の極みのやうな話なのだが面白い。「神話」はけして真理だとか一つではない。湛君曰く「神話はその時代/\の人々による読み方による」。神話はテクスト。そのテクストの解釈は確かに時代によりいくらでも正邪なんでもあり。「神楽」から「破ノ舞」にかけてまるで「ミュージカルのやう」のお祭り騒ぎ、幽玄どころではないが、これはこれで面白い。本日の囃子方は皷の大小が大倉慶乃助と成田達志、太鼓は小寺真佐人で笛は栗林祐輔。このセッションがこの音楽劇にじつに適合。笛の後見に松田先生。「神楽」から「破ノ舞」にかけ笛が実に面白いところ栗林祐輔さんまことに表現豊かに務められた。

日比谷。ブルックスブラザースでともてきれいな黄色のカーディガンに一目惚れしたのだけど昨年秋からちょっと衣料費支出超で自省。外国特派員協会。ウシュマさん(スリランカ)の名古屋入管だとかジャニーズ(BBC)だとかで、こちらでの記者会見が印象的。かつては有楽町電気ビルヂングにあつたのがこちら(二重橋ビル)に移転してゐた(いずれも三菱地所所有か)。香港のFCCであれだけ飲んだくれてゐたのも懐かしい。本日はこちらで香港でもうどれほど前かバーテンダーしてゐたK君が「日本酒を極める!」と帰国してはせがわ酒店に入り東京駅地下で店頭に立ち、その後、輸出のセクションが麻布十番の店舗にあつて、そこでK君にあつたのが最後だつたかも。その後、K君は日本酒販売で企業して(さくら酒店)本日、外国人記者協会でこのイベントあり。

Sake Dinner Kai: Japanese Cuisine and Sake Pairing | FCCJ

ピンで参加だつたのでカウンターでピンの参加者で並んで座る。両側、こちらのFCCJのメンバーの方で、かういふクラブのメンバーの方であるのでとても社交的で一見の外来種にもまことに好意的に接していたゞく。「ぜひメンバーになつてください」といはれるが「有楽町(電気ビル)のときはほんと便利な場所だつたんんですけどね」とほんとその通りで有楽町だつたら気軽に寄れたが日比谷のこちらには(日比谷で観劇もないと)さう頻繁には足を運べないだらう。


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三重の寒梅梅、伯楽星、群馬の淡緑山廃、七本鎗だとかずいぶんと御酒をいたゞく。あつといふ間の3時間で20時半にお開き。数寄屋橋渡り銀座サンボアへ。ダブルのハイボール二杯飲む。帰りの常磐線特急で隣席にも客がゐて道明の紙袋を棚に載せて深酒熟睡であつといふ間に水戸駅に着き慌てゝ降りたら棚の荷物を忘れた!改札で遺失品の手続き。帰宅後に高萩行きの特急で高萩駅で現物を拾得と連絡をもらふ。

無印のルームスリッパ

辰年三月十一日。穀雨。気温摂氏13.3/21.7度。曇。北風強し(18.6m)。晩にある団体の年度末/始の宴会あり末席を汚す。宴会といふものにほんと乗りを合はせられぬ体質が悪化してしまつた。二次会嫌ひもあり。事前に会費を払つてゐたので宴会に財布不所持で参加。一次会終はり早々に帰宅。

無印で590円(US$3.8)のルームスリッパ。サイズ(長さ)は合つてゐたが甲を包む部分がキツすぎて普段なら数日履いてゐれば多少伸びるのだけど、この素材では無理。アタシの足が多少甲高なこともあるけれど親指と小指の付け根あたりが赤く腫れるほどでシューキーパーで伸ばしてみるが、それでもキツくて酒瓶で拡張プレイ。それでやつと履けるやうになつた。

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無印では以前、冬用のスリッパで底の厚みがズレてしまひバランス悪くなりカスタマーサポートに電話したら送料着払ひで送るやう指示あり無印から代替品送り返してくれたこともあつた。評判のよい無印のルームスリッパなのだが。

近江屋洋菓子店のガチャ

辰年三月初十。13.3/20.3度。曇。昨晩遅く豊後水道に面した愛媛、高知で震度6弱地震あり。本日、市立中央図書館の映画上映会で山本嘉次郎監督〈春の戯れ〉上映あり。楽しみにしてゐたが雑事多忙にて参れず残念。

知己の女性から「これあげるわ」とこれをいたゞいた。

その女性は近江屋洋菓子店loveの女性でガチャで近江屋洋菓子店シリーズの再販を見つけ初回では気づいたときはもう入手できず今回かなりリキ入れて探して水戸駅にも構内の「ガチャ場」にあつたさう。かなり投資した結果、当然ガチャでダブるアイテムがあり、このアップルパイが2つになつたとき「誰か近江屋洋菓子店が好きな女子友にあげよう」と思つたところ「あ、それよか」とアタシの顔が浮かんださう。ありがたい。昨日の時点で品薄でガチャは提供の期間と販売数制限することで購買意欲煽る、次は絶対に入手しよう!と思はせる商法なので、もう今回の再販は終焉に近いらしい。

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繁華街に空地が目立ち空き店舗や駐車場ばかりなのは地方都市のよくある光景で水戸も同様。そこに建てられるのは穴吹建設のマンション(サーパス)ばかりで、このまゝでは水府はバッドマンのゴッサムシティならぬサーパスシティになるのでは?とすら思ふほど。結局のところ地面師による土地投機が続くのであらう。それを市街地再活性化と称して市役所が公金で支援するのだから。共産党水戸市議団のチラシが陋宅にもポスティングされてゐたが指摘の通りである。

水戸市中心市街地活性化基本計画について - 水戸市

水戸市中心市街地活性化するのであればどし/\一等地に低層階の商業ビルなり緑地なり市営住宅を建設すれば良い。こんな地方都市の市街地でもマンションとなると60平米ほどで7,000万円〜とかで売り出すのだから購入できるのはそれなりの所得層だけ。結局のところ地主とゼネコンに利益が流れるだけ。それでどうして市街地の活性化が出来るのか。所詮、土建政治なのである。

 

大石真『チョコレート戦争』

辰年三月初九。気温摂氏13.2/23.9度。早朝に俄雨のち曇。午後晴れ。

チョコレート戦争 (フォア文庫 愛蔵版)

突然なぜ大石真『チョコレート戦争』(理論社)のこれを読んだのかきっかけが思ひ出せない。昭和40年の刊行で当時から人気の児童読み物だから小学校の図書館とかにあつたのだらう。だが読んだ記憶がない。小学生のころから児童図書とか「子ども向きは幼稚で好かない」と思つて目もくれなかつたのかもしれない。

ケーキやさんのウィンドウガラスが割れて、いあわせた明と光一が犯人にされてしまう。身に覚えのない罪をきせられたことから、子どもたちは町一番のケーキ屋さんに戦いをいどみます。(Google Books)

これも児童読み物とはいへジャンル的には推理小説である。だから「犯人は誰だ」なのだが、その謎解きの結末が「偶然の出来事」では面白くない。勿論「偶然の出来事」でまるで意図してゐなかつたアクシデントが生じたり不慮の事故だとか、自分が突然その事件の犯人とされてしまふことなど事実、あるだらう。だがフィクションで何か起きた事件の発端が偶然のことで、その加害者……ではないな、そんな意識もないのだから、だから「能動者」とでもしておくが、だからそんな「実はそんな能動者がゐました」はフィクションの小説で用ゐてはいけないと思ふ。こんなプロットを使つたらフィクションなどいくらでも出来てしまふ。この小説でも「ケーキやさんのウィンドウガラスが割れて、いあわせた明と光一が犯人にされてしまう」といふ発端は良いが、ではなぜ「ケーキやさんのウィンドウガラス」が割れたのか、を何か事件の因縁深い背景であるとか(横溝正史)、あるいは巧妙な仕掛けがあつたとか(江戸川乱歩)、さういふ何かしらの「知恵比べ」があれば児童小説としても面白いが「偶然でした」ではダメだろ。それがなぜこんなに評判になつたのか、当時の識者がこれを名作とするのか、が理解できなかつた。この子どもたちは無実の罪が晴れて、とされるがそも/\仕返しとはいへ窃盗を計画して立派に実行してゐるのだから、それだけでも叱られて当然の「悪い子」のはず。少年院に送らるほどではないが保護観察処分だらう。それが許容されのが1960年代、革命と毛澤東主義の時代を反映してゐるやうに思へたのでした。

戦争とジェンダー①「増える女性兵士、背景に国の思惑」一橋大教授・佐藤文香:朝日新聞

女性兵士の増加はジェンダー平等でいいことだと片付けるのではなく国家や軍が女性に門戸を開く背景にどんな動機があるのかと考えることが大切。(略)先進諸国の多くは少子高齢化がすすみ兵士のなり手不足に直面している。男性兵士だけではいずれ人材が枯渇するという危機感から女性に手を広げている。

朝日新聞(夕刊)でこんななか/\考へさせられる記事を読んだ。その隣の記事がこちら。

岡田育(ハジッコを生きる)マイノリティが多数派の街:朝日新聞

ほんとうに文章が上手い。やさしい言葉で書いてゐるのだが内容はとても深い。句読点まで心地よい。敬服。

ニューヨークは世界の中心とも呼ばれるが、地球上のありとあらゆるハジッコ者が流れ着いてひしめき合って、てんでばらばらに我が道を行くような、無理してみんなを中央揃えさせる必要はないと言わんばかりの、多様性の街でもある。日本社会ではマジョリティ側のハジッコに属していた私も、ここでは見事にマイノリティで、そして少数派の寄せ集めが最大多数派となるこの街が、故郷よりずっと生きやすい。