富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

甲辰年二月初七

気温摂氏5.1/16.9度。晴。昨晩の酒飲みで二日酔いでもないが少し酒が残つてゐる感じもして何よりもパソコンの画面を見てゐて(Macではなく出先で安物搭載のWindowsで、だつたが)目がしょぼ/\してかなり疲労感じる。まさに寄る年波には勝てない。

昨日の備忘録になるが、その①、昼に水戸駅で母に声を掛けられ母は大人の休日倶楽部ジパングカード:ビューカードの更新手続きに水戸駅に来た由。もう所有のクレジットカードが限られるので、このカードの更新をしてゐないと、のことだつたがビューカードで大人の休日時ジパングだと年会費4,364円でジパングなしのビューカードだと年会費524円なので後者にすれば良い気もしないではないが、まだジパングで旅をする意欲があるのは良しとすべき。

その②は昨晩の上野での宴会にて。岸和田兄が少し具合が悪いといふ話。そこで「岸和田って救急車が〈だんじり〉なの?」と尋ねたら(関東人ならツッコミは出来てもボケが下手なのだが)さすが関西人で岸和田兄は「2回に1回くらいやな」と受けるから、やはり上手。

安井仲治と吉村順三

辰年二月初六。気温摂氏0.3/18.3度。晴。昼から東京。

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生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真 | 東京ステーションギャラリー

初期のピクトリアリスムからリアリズム、フォトモンタージュそして街角のスナップまで十代半ばに写真撮影を始め38歳での夭逝まで20年ほどで驚くほどの様々な技法への変化。個人的には初期のピクトリアルな絵画のやうな作品が好き。技術的にも素晴らしいが何よりも「独自の被写体を見出す感性」こそ安井仲治の一番の魅力だらう。ちょっと見に寄つたつもりが安井仲治では1時間余でも時間が足りなく感じた。東京ステーションギャラリーも考へてみたら訪れたのは初めてだつた。

エルメス(丸の内店)で香水(テールドゥエルメス)購入。エルメスの入つてゐる新東京ビルなんて高層化の進む丸の内では昭和テイストの低層ビル。このあたり今では本当におしゃれなファッション店舗が並んでゐてディスプレイも春の装ひで眺めてゐても気分も軽やか。

東京駅近くで行きたいメンズファッションのお店 | Pathee

大手町駅から東西線東陽町竹中工務店本社にあるギャラリーエークワッドにて〈建築家・吉村順三まなざしアメリカと日本-〉参観。

建築家・吉村順三の功績を紐解く「建築家・吉村順三の眼」|美術手帖

吉村順三といへば日本の戦後のモダニズム建築の巨匠であつて皇居新宮殿だとか紐育のジャパンソサエティ国際文化会館なんて傑作が並ぶのだけれど実は箱根のホテル小涌園だつたり俵屋旅館、行川アイランドホテルフジタ京都から猪熊さんの家も吉村作品で遺作が八ヶ岳高原音楽堂。そしてこちらも吉村順三の作品で、といふか奥様がこちらの創立者の大村多喜子。

小さくても、こんなすてきな家に暮らせたらあつたら本当にステキでせうと思つたのがこちら。住宅遺産トラスト:伊藤邸(旧園田高弘邸)


竹中工務店は香港でも何人か竹中の方とお付き合ひあつたがアタシのなかではとても印象が良く東陽町の東京本店の建物もオフィスの中には入れないがロビーの空間性やミーティングスペースの解放感などステキ。

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湯島に出る。湯島といへば金曜日だし木村硝子店に寄りたかつたが「グラスをこれ以上増やしてはいけない」。見たら目の毒。久しぶりにバーEST!へ。午後5時過ぎで口開けかな、と思つたらもう先客あり。同朋町の雑多な飲み屋街の中にこんな空間がひっそりとあるとは。


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上野広小路組紐の道明と黄楊つげ櫛の十三やに寄る。「十三や」は珍しい屋号だが櫛で九(く)と四(し)足すと十三といふ語呂合せ。道明では根付紐など好みで誂へになるが急ぎもせぬので夏前迄は待つてもよい。十三やでは櫛と耳かき贖ふ。白山眼鏡店。眼鏡の柄のネジがすぐ緩むので調整。马来西亚より槟城君一時帰国中で岸和田兄と北小金君と四人で広小路の中華料理やで飲み会。啤酒をさんざん飲んで紹興酒、焼酎2本(いずれも四合瓶)もしかすると焼酎は3本知れない……你们喝那么多吗?である。この中華料理やは「四季香」で全国に数多ある四季香なのだが上野のこの店は池袋に本店のある(町中華に対しての)マヂ中華で名を馳せる人気店の上野店。かなりの人気。確かに香辛料の使ひ方などかなり本格派。水戸に着くと本日は青春18きっぷだつたので日付が変はつてをり水戸駅で「本日も続けてお使ひになりますか?」と確認され「使ひません」で(日付を越えた駅なのか)確か常磐線羽鳥駅からだつたかの追加運賃(420円)支払ひ求められる。

原武史「象徴天皇制を問い直す」(朝日新聞)

辰年二月初五。気温摂氏▲1.4/16.9度。晴。


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銀座で両膝鉤裂きしたズボンの補修仕上がり。よーく見ると修繕跡がわかるが遠目にはわかるまい。日本の誇る技術だわ。

天皇の「象徴」のあり方。平成期とは対照的な「動かない天皇」像が定着。平成の先帝の先覚的なる天皇のスタイル。あいまいだつた「象徴」のあり方を戦略的に確立したが、いはゞ「象徴天皇制のハードルを上げてしまった」。その水準を今上天皇と皇后はクリアできていない。しかし国民から天皇と皇后への批判や苦言はほとんど出ていない(意外)。天皇の存在感の希薄化に伴ふ国民の関心の薄れか。令和は令和で流儀の見直しなどしてゆくべき。

(皇室を)どう存続させるか、ではなく、そこまでして象徴天皇制を維持する必要性があるのか議論すべき段階です。血の純粋性をよりどころにした制度は多様化する社会の統合や包摂を担うメカニズムにはなり得ず逆に排除の論理になりかねません。むしろ右派が逆説的に存廃の話をしているのに左派リベラルは存続が前提の議論ばかりしています。「平成流」を過度に理想化し上皇戦後民主主義の擁護者かのように仰いでいるのも主に左派です。改憲派に対する防波堤的機能を期待する声すらあります。しかし、その時々の政治の否定勢力が天皇とつながろうとするのは二二六事件を起こした青年将校が抱いた理想に近い。筋違いも甚だしい。

近代の天皇制国家は国家神道の整備と大規模な行幸、学校教育によつて形成されたもの。メディアが果たした機能。平成期に天皇皇后が国民に寄り添うイメージを強く刻印。メディアは時代ごとに皇室の権威を高める役割を一貫して担つてきた。「天皇の地位は主権者である国民の総意に基づく」と憲法に明記されているがメディアはそのための自由な言論の場になつてゐない。あの特別な敬称や敬語。平成の天皇退位(おことば)もまるで第二の天皇人間宣言のように称賛されまたがそも/\「国政に権能を有しない天皇が政府や国会を通さず11分間も国民に直接語りかけ政治が動き立法がなされるというのは権威どころか権力の発露」あだが。それを問う声は主要メディアにはほとんど登場せず。新聞もテレビも皇位継承政教分離の問題を扱うことはあっても根源的な問題には踏み込まない。これでは天皇のあり方を決めるべき国民の中に冷静な議論は育たずタブーはいつまでも残つたまゝ。ジャーナリズムは本来の責任を果たすべき、と原先生。そしてそれを報じた朝日新聞は「パンドラの匣」を開けてみせたのか。

(記事編集前)原武史インタビュー:朝日新聞デジタル(以下、紙面記事に出てゐない点の要約)

明仁上皇(平成)
-積極的に行幸繰り返し国民に向き合ひ戦前とは違ふ新たな形態の〈國體〉が国民の中で内面化され天皇制はより強固に。〈象徴〉のあり方を戦略的に確立。よつてもその「務め」が全身全霊で果たせなければ退位。
-その行為により「象徴天皇制のハードルを上げてしまつた。

徳仁天皇(令和)
-疫禍とはいへ近代天皇制の歴史で天皇や皇族がこれほど長期間、国民の前に直接姿を見せなかった事態は異例。
-皇室のイメージが尚「平成流」に規定されてゐるが故に 天皇の存在感の希薄化に伴ふ国民の関心の薄れ。
-権威のhierarchyの不安定化。
-近代天皇制が明治以降の「創られた伝統」であることは歴史学専門の徳仁天皇ならわかるはず。見直すべきものは変えたり廃止できるはず。その新しい象徴像を打ち出す意欲が感じられない。
-退位の「おことば」で11回用ゐられた「国民」は誰を指すのか。移民や在日朝鮮人は含まれてゐるのか*1

万世一系」といふ近代の発想は敗戦と大日本帝国憲法改正で消滅したはずが旧皇室典範の骨格は現典範に引き継がれ、明治のイデオロギー墨守しやうとすればするほど皇位継承の危機に。この状況で悠仁親王と進んで結婚しやうとする人は現れるか。

万世一系イデオロギー*2と血の純粋性を拠りどころにした制度は多様化する社会の統合や包摂担うメカニズムになり得ず逆に排除の論理になりかねない。「和を以て尊しとなす」日本的共同性の「象徴」だった天皇はどん/\時代から遊離している。専ら「日本人」との紐帯のみ強めてきた「平成流」は、そういう意味でも乗り越えなければならない。

*1:これについては明仁天皇は皇室が朝鮮ルーツ言及してゐることに留意。富柏村

*2:岩倉具視が持ち出した万世一系という「血のフィクション」にしても南朝北朝のどちらを正統とするかというやっかいな問題を抱えており、歴代の天皇が確定したのは大正末期。それまでイデオロギーに見合う実体は未完成だった。幕末に倒幕の旗印になったのは事実だが「明治維新の過程で一気に天皇が国民統合の核になり近代国家が形成された」――そんな単純な話ではない、と原武史

JR東日本 大人の休日倶楽部

辰年二月初初四。気温摂氏3.7/12.4度。晴。廿年以上前に茨城県西で医療に携はるT先生が東南アジアへの往復の途中で香港に立ち寄られるのでお会ひして食事に何度かお供。鯉魚門などに行くと会話も面白くT先生の記憶あり。昨年の秋だつたがT先生が今でも東南アジアなどで難民医療ボランティア活動されてゐる記事あり。先日やつと葉書を出してご挨拶。本日T先生の財団の方から電話をもらふ。アタシ自身がなぜT先生とお会ひすることになつたのが記憶が不確かだつたのだが先生の方が私の名前を見てアタシの亡父の友人から紹介されて、と記憶確か。もう傘寿を過ぎたさうなのに。高齢でも皆さんしつかりとされてゐる。

JR東日本〈大人の休日倶楽部〉でかねてから疑問だつたのは会員資格の男女格差。

大人の休日

ミドル

ジパング

男性

5064

65歳以上

女性

5059

60歳以上

細則はいろ/\あるが運賃でいへば往復も含め200km以上で「ミドル」は5%割引が「ジパング」では30%割で「ジパング」はJR全社適用。一見して判る通り女性の方が男性より5歳若く満60歳でジパング会員になり女性は余命も長いのだから男性の方が不利。これは男性蔑視ではなくJR東日本の当時のオジサンたちの感覚で婦は男性が年長の方が多く女性は主婦など収入もなく優待を多少若くから、なのだらう。これを男女同等にすべきと思つたが高齢化のなか男性のジパング年齢引き下げはないかと予想はしてゐた。

JR東日本はこの格差見直しで結果的に女性の資格条件を男性に合はせた。人生百年で旅行などできる高齢者増加で高齢者優待を引き上げた。昔なら若いときから忙しく働いた年寄りに老後くらゐゆっくり旅してもらはうといふ好意だつたが高齢者こそ生活に余裕がありカネもある連中が多いのだから寧ろ若年層に何か優待でも必要なのかもしれない。たびキュンパスなどほんと購入できる年齢を制限して優待条件を良くして若年層こそ優遇とすべきである。

茨城新聞(12日)に掲載されたチェロ奏者堤剛氏の小澤征爾追悼より(拔萃)。

小澤さんはオーケストラを「歌わせる」のが抜群にうまかった。それは斎藤先生の教えです。アスリートのように俊敏で、彼の動きを見ていれば、奏者は自然に、自分なりにベストな演奏をしている気になる。個々の奏者たちのベストを引き出し、全体を高みに導く神通力がありました。(略)偉大なのに親しみを感じさせる人柄で(略)学員は「この人をサポートしよう」という気になり、小澤さんが指揮台に立つと、皆がすっと一緒に音楽をつくろうという気持ちになるんです。

この記事をテキストにするのに読み上げでiPhoneに聞き取らせたらAIなのかもはや句読点もきちんと打つて記事本文と寸分の違ひもないのには驚いた。「神通力」を「陣痛力」としてゐたのが唯一のミスであつた。

<香港>新たな治安条例案 スパイ活動禁止、統制強化の懸念:朝日新聞

香港基本法23条による国家分裂、政権転覆の動きを禁じる法令は、もはや国安法制定されたのだから、こちら(23条立法)は要らないのではと思つたが香港政府はこの条例案を立法会に提出。23条に基づき「香港政府自らが制定」が大切。中央政府の強制ではないこと。現に23条条例に関して政府に寄せられた市民の意見約1.3万件のうち98.6%が制定肯定なのださう。香港市民の大多数がこれを支持してゐるのだ(なんてね)。倉田先生は朝日の取材に対して「扇動罪の対象拡大と厳罰化」を懸念。保安局長は『蘋果日報』のバックナンバーを所持してゐることでも罪に問はれる可能性があると明言したのださう。狙ひは「香港中の人々が持つてゐる歴史の記録の破棄」。

逃げずに、自由にモノを言はう

辰年二月初三。気温摂氏3.8/10.0度。曇のち雨(29mm)。風17.1m(最大)。夜はもつと雨風強くなる予報だつたが水戸は少し外れて南関東よりも雨少なし。館山は56.5mmの大雨。

(坂本龍一が遺したもの)金平茂紀さんが語る「逃げずに、自由にモノを言おう」朝日新聞

坂本さんの世界の核心は受け継がれず、亡くなった時も坂本さんが声を上げていた神宮の森、沖縄や東北支援や核エネルギーの話は「言えない」「言わない」「それはイデオロギー、社会的な問題だから」と言って一斉に逃げようとする。私はこの弔い方には疑問を感じました。坂本さんの世界の核心は受け継がれず、亡くなった時も坂本さんが声を上げていた神宮の森(東京)、沖縄や東北支援や核エネルギーの話は「言えない」「言わない」「それはイデオロギー、社会的な問題だから」と言って一斉に逃げようとする。私はこの弔い方には疑問を感じました。

宮崎駿「君たちはどう生きるか」アカデミー賞長編アニメ賞受賞:朝日新聞

この映画についてはアタシは「何だかよくわからない」 - 富柏村日剩(20231028)のだけれど宮崎駿監督のアカデミー賞での評価はあつても宮崎監督の政治的なコメントについてはマスコミの多くはそれに触れないのは坂本龍一忌野清志郎の場合と同じ。これが日本のマスコミの「中立」の現状で日本国民も同じやうに政治的なことを禁忌とする。その結果が今の日本の為体そのもの。

自民党過半数以上の支持を得たのではなく多くの人間が投票しなかった事によって天下を取った。ですから、これはまた変わります。永続的なものではないと思います。(宮崎駿

東日本大震災と核禍から13年

辰年二月初二。気温摂氏▲1.8/12.6度。晴。家人がこんなスタンプラリーをやつてゐると教へてくれてスタンプ集めるのが好きなので本日家人と実行。

水戸のロマンチックゾーン 早春のスタンプラリー | 水戸観光コンベンション協会

昔でいふところの常磐村の谷中一帯でスタンプを集める。水戸八幡宮から始めて廿三夜尊、保和苑のあたりがラリーの中心。保和苑の山村暮鳥詩碑を保和苑から少し離れた廃寺の墓地にある暮鳥墓と勘違ひで墓前で「スタンプがない!」と焦る。水戸藩筆頭家老中山備前守墓地もてつきり水戸藩常磐共同墓地にあると思つてゐたら桂岸寺。いずれにせよ徒歩圏内で幼い頃から遊んでゐたエリアなので2時間余でスタンプ10個ゲット。これで(水戸市外在住者はスタンプ3個で)来週末に抽選あるのださう。

山村暮鳥墓の手前で「展望台」と「五角堂」なる個人の敷地内に建造物あり。

水戸マニアックスポット!松本町 隠れ家的展望台編 - | LI WEB

水戸市外の高台から眼下には那珂川の低地から遠く福島との県境の八溝山まで眺める展望台だが高所までは怖くて登れず。こちらはテレビでも紹介され舞の海さん来られてゐたさう。

ぶらり途中下車の旅(2017年4月29日)日テレ

今日も回天堂のある水戸藩殉死藩士の共同墓地のところに猫の「ふうちゃん」がゐた。

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少し離れた愛宕山古墳にある愛宕山神社と、その西北の崖にある曝井さらしいまで歩き本日のミッション終了。曝井は万葉集三栗みつくりの中に向へる曝井の絶えず通はむ彼所そこに妻もが」と詠はれた場所で古へには女たちがそこの湧き水で衣を洗ひ、つまり裸体を曝すこともあり、それに男たちも誘はれ男女の交はふ場でもあつたさう。そんな昔話からこの一帯を観光協会がロマンチックゾーンと名付けたやう。曝井はアタシが幼い頃はこのあたりにゴミの不法投棄あり市役所がそれの防止にフェンスを立てゝ曝井も汚れた場所でフェンスの向かふにかすかに覗けただけだつたが昨今本当にきちんと整備され今では公園に。本日も整備委託の庭師が入つてゐた。


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スタンプラリーのスタンプ用紙のほかに自分の手帳にもスタンプを押したが〈月の井〉の酒のラベルはプラシートでスタンプのインク乗らず。

翁と摩多羅神

辰年二月初一。気温摂氏▲1.8/11.5度。晴。大相撲三月場所(大阪)初日。初日から大関豊昇龍が宇良に、霧島が阿炎に、そして横綱照ノ富士が錦木に黒星。

宮城野部屋閉鎖も 力士らを別の部屋に転籍方針 伊勢ケ浜一門:朝日新聞

コトの発端は北青鵬による暴力沙汰だが宮城野親方白鵬)に対する処分がかなり重く協会としての実質的な白鵬粛清、追放処分か。日本相撲協会もあのクローズドな組織でBBCに取材報道してもらはないといけないか。

翁と摩多羅神 ―中世寺院の秘神と芸能の世界ー online event by A&ANS | Peatix

このサイトの紹介文は何だか「その秘密に迫る!」でバラエティドキュメンタリーみたいだが内容は、こんなテイストではなかつた。講師は宮嶋隆輔先生(静岡文化芸術大学客員研究員)。能で〈翁〉は大切な場で舞はれる神事のやうな能で演じ手も観客も緊張を伴ふ。だが能披露の前に演者たちには酒が振る舞はれ翁の面も笑顔。このあたりがいつも不思議に思つてヰたが本日のレクチャーでは奈良・多武峰とうのみね*1常行堂の修正会*2法会の記録から摩多羅神*3の祭りと、その奉納芸能について。多武峰では〈翁〉の前に綱丁かうていといふ演目あり。綱丁とは荘園で年貢輸送する責任者で網丁が領主(多武峰)に多くの年貢を運んでくる=おめでたい(領主にとつては、だが)内容。そして〈翁〉により国家安泰、五穀豊穣を祈る。酒宴と乱舞。先月、山形の王祇祭もまさに酒宴と能楽の披露。宮嶋先生もオンラインで催馬楽総角あげまき〉など歌はれる。なか/\上手。角髪の稚児の存在。酒宴での若衆いぢり。わけのわからないことをする=巫山戯る。狂ひ。このあたり日本でも摩洛哥でも世界中に同じやうな〈悪さ〉がある。

一見くだらないものと見えるかもしれないが、その根底には天災・疫病・人災に満ちた中世、“自力救済”によって生き抜く人々のしたたかな心がある。(宮嶋隆輔)

「奉納 翁」(2011)翁:観世清和

多武峰摩多羅神、翁についてネットを見てゐたら、かういふ動きがあつたこともわかつた。

梅原猛氏が談山神社長岡千尋宮司案内のもと神社に所蔵されていた翁面・摩多羅神面と対面されたことを皮切りに多武峰能楽の結びつきを復興させるべく2011年に長年待ち望まれていた談山神社権殿(旧・常行堂)の改修完成に伴い観世流26世宗家・観世清和師による摩多羅神面を用いた能楽《翁》の奉納が実現しました。以後、談山神社での能楽奉納を継続すべく新たに多武峰談山能実行委員会を立ち上げ2012年より5カ年計画の「談山能」が始動しました。そこでは毎年錚々たる面々の能楽師が全国から集結し観世清和師監修による摩多羅神面を用いた《翁》奉納のほか神社蔵の能面を用いた能楽奉納が行われました。多武峰 談山能アーカイヴ

*1:多武峰奈良県桜井市南部にある山、およびその一帯にあった寺院のこと。飛鳥時代道教を信奉していた斉明天皇が『日本書紀』に「多武峰の山頂付近に石塁や高殿を築いて両槻宮たつきのみやとした」とある。-wiki

*2:仏教寺院において毎年1月に行われる法会。修正月会ともいう。この法会は前年を反省して悪を正し、新年の国家安泰、五穀豊穣などを祈願するものである。-wiki

*3:摩多羅神密教、特に天台宗玄旨帰命壇における本尊で阿弥陀経および念仏の守護神ともされる。摩多羅神の祭祀は平安時代末から鎌倉時代における天台の恵檀二流によるもので、特に檀那流の玄旨帰命壇の成立時と同時期と考えられる。この神は、丁禮多ていれいた爾子多にしたの二童子と共に三尊からなり、これは貪・瞋・癡の三毒と煩悩の象徴とされ、衆生の煩悩身がそのまま本覚・法身の妙体であることを示しているとされる。-wiki