ここが変だよ漫画業界 小売り編

最近、出版社が出す通常版と限定版だけでなく、アニメイトとらのあなと言った小売りが出す特装版が増えてきてコンプリートするファンの金銭的負担が掛かる昨今ですが、私のような該当するショップがそもそも半径50km圏内に一件も存在しない田舎暮らしだとコンプリートすることが現実的に無理な訳でして。
しかしまぁ、最近は出版社も苦しいのかちょっと人気のある作品だと限定版とか出しまくりですよね。講談社が生み出したOAD付き限定版とかかなり美味しいシステムですしね。フィギュア付きとか割とありきたりな限定版もまだまだ現役だし、フォーチュンポーカー付き限定版とかレアなのもあるし、雑誌の付録に掛け替えカバーを付けて雑誌の売り上げ促進を狙ったりとあの手この手で攻めてきて凄いですよ。


ただ、そういった出版社のはともかくショップの限定版がですね、ちょっと問題かな、と。手に入れられない僻みも入ってますが、このまま行くと作者パンクするんじゃないかと。先日発売された「咲-Saki-」6巻なんてカラーってモノクロの数倍の労力掛かるのに何種類あるんだよ、と。休載の理由ってコレなんじゃないかと邪推してしまいますよ。
しかもあまり知られてないけど、この手のショップ特典の描き下ろしって基本的に全て作者は無償で描いてるんですよね。小売りの理屈では「本の売り上げが上がればそちらも印税で得するでしょう?」なんだろうけど、それにしたって限度あるんちゃうかと。出版社(編集部)が一括で引き受けて金銭のやり取りをしてくれれば良いんだろうけど、聞くところによるとそういう細かい金銭の動きは嫌がる傾向があるらしいですからねぇ。なら次の原稿料に上乗せとかすれば良いじゃん、とか思うんですけど、何だかんだで及び腰らしい。大手三社以外の萌え系作品でショップ特典カバーが多いような気がするんですけど、大手三社以外だとどうしても小売りの方が発言権強かったり作者との契約関連が甘かったりするのかな。


ついでに言うとエロゲのショップ特典も全て無償らしいし、小売りの文化的には共通してるんだろうけど悪しき文化だよなぁ。仕事には見返りがあるべきだと思う。それに絡んで思ったんだけど、ライトノベルショップ特典が皆無に近いのは「本の売り上げが上がればそちらも印税で得するでしょう?」という小売りの理屈が通じないからじゃないかな、と。何しろライトノベルの場合、イラストレーターのほぼ全ては印税契約ではなく買い切り契約だから幾ら売れてもイラストレーター的には関係ないですからね。タダで描く義理はない訳です。ならギャラを払って描いて貰うという手段はあると思うんだけど、それはしていない。つまりショップとしては金出してまで特典を付けたくない、と。単にケチなだけなのか、ギャラが発生した場合は黒が出ないのか、そもそも検討していないのか。


話戻って漫画の場合ですが、単行本作業で減ページ数とか休載とかあるけど、一部地域在住の読者しか手に入らない限定版の為の作業で減ページとかになってるとしたら地方読者としては割を食うだけで全然旨味ないんだよねぇ。得をするのは手に入れられて嬉しい一部読者と売れて嬉しい小売りと、一部とはいえ売り上げ上がって嬉しい出版社と、ついでに言えば仕事が受注できる印刷業界くらいかな。大多数の読者と作者は損をする構図が現在の萌えオタ向け漫画業界…
読者が本当に望むのは週刊だったら毎週、月刊だったら毎月載ってて、作者が気持ちよく仕事してくれて面白い作品を描いてくれることだと思うんだけど、現在のショップ特典のアレコレはモチベーションを低下させる要因にこそなれ、向上する要因にはなってないように思えるんですよね。せめてちゃんと対価払ってあげれば良いのに、と思う次第です。


ちなみに一番「ないわー」と思ったのが小売りが雑誌のペーパーを看板作品の作者にロハで描いて貰うことですね。雑誌の売り上げと原稿料は直接結びつかないじゃん… まぁ、無理矢理理屈をこねるとしたら雑誌の売り上げが落ち込めば仕事がなくなる危険性ある、というぐらいはあるけども。
サラリーマンにもサービス残業っていう概念はあれども、それを是とすることはないです。(是とするなら病んでます)そして何より業界全体がサービス残業が慣例となっている…、みたいなシステムは絶対におかしいと思うんですよね。読者に対するサービス精神は大事だとは思うけど、必ずしもそれが無償な必要はないし、小売りがそれにつけ込むかのような慣例を強いるのは変だと思うんだよなぁ。


漫画業界って変なトコですよね、ホント。